1. 総合情報サイトTOP
  2. 食のコラム&レシピ
  3. 12<海外>とっておきのヨーロッパだより
  4. 【とっておきのヨーロッパだより】世界遺産のブドウ畑と街を訪ねて(第1回)

【とっておきのヨーロッパだより】世界遺産のブドウ畑と街を訪ねて(第1回)
2017年08月25日

  • mixiチェック

<【とっておきのヨーロッパだより】ってどんなコラム?>

2017年現在、イタリアには全部で51か所の世界遺産があります。その中にワインを作るブドウ畑が世界遺産に登録されているのはご存知でしょうか?(注1)
そのブドウ畑で作られるワインの中にはバローロ Barolo、バルバレスコ Barbarescoという銘柄があります。いずれもイタリア北西部ピエモンテ州にある村の名ですが、同時にどちらも、イタリアワイン好きの間で知らない人はいない重要なワインの銘柄でもあります。
「世界遺産」に選ばれるブドウ畑とはどのようなものなのか?そして何より、2つの隣接する地域で作られるこれらワインの味わいにはどのような特徴があるのか...などを知るべく、バローロやバルバレスコのアジエンダ・ヴィニーコラ Azienda vinicola(ワイナリー)、そして世界遺産のブドウ畑や周辺の村を訪れてみました。

2つの地域の間は20kmほど離れていますが、どちらもピエモンテ州の州都トリノTorinoから70kmほど南下した地帯に位置しています。トリノからは車で1時間ほどの距離です。

photo1
バローロを生産している村々の絶景

すり鉢状の地形や丘に挟まれた地形が多く、風通りがよいので熟成したブドウが収穫しやすいのだそうです。
バローロ、バルバレスコで作られるワインに共通している特徴としては、どちらもブドウの品種はネッビオーロ種100%を使用している点です。また、土地の土壌は粘土質、または石灰質です。

photo2
粘土質の土壌

ネッビオーロはイタリア語で霧を意味するネッビア Nebbiaから名付けられたとされています。この地域は秋に濃霧が発生しやすいためです。ブドウ品種としての特徴は、酸味とタンニンが強いことです。この酸味は石灰質の水はけのいい土から、タンニンは養分をしっかり吸収する粘土質から得られます。この強い酸味とタンニンを丸くするのには熟成が必要です。この熟成によって生まれるワインがバローロとバルバレスコです。(注2)

「バローロ」の生産地域はバローロ村を含め、近隣11の村に限定されています。(注3)
「バルバレスコ」もバルバレスコ村を含め、特定の4つの村で生産されたワインのみが名乗ることができます。(注4)
それ以外に熟成期間などの様々な厳しい規定があり、それらの規定をクリアしたものだけが「D.O.C.G.バローロ」、「D.O.C.G.バルバレスコ」と名乗ることができます。(注5)
それぞれの特徴としては、バローロはしっかりしたタンニンと骨格があり「ワインの王様」と呼ばれ、一方のバルバレスコはタンニンが穏やかで華やかな香りが特徴なので、「ワインの女王」と呼ばれていることです。


~バローロ生産の中心地へ~
まずはバローロを生産する中心の村、バローロ村を訪ねました。人口は700人ほどの小さい街です。

photo3
バローロ村入口の標識

photo4
バローロ村の街中

街の中心にはバローロ城があります。この城は10世紀に建てられた城で、13世紀にはファレッティ家と言われる資産家がこの城に1864年まで住居を構えていました。19世紀には学校機関として利用され、1970年には村が買収、そして2010年にその中を改装して『ムゼオ・デル・ヴィーノ・ア・バローロ Museo del vino a BAROLO(バローロ博物館)』に生まれ変わりました。

photo5
バローロ城

この博物館では城の歴史や、ワインを取り巻く環境などを展示したパネルや参加型アトラクションなどがとても華やかに展示してあり、ワインを知らなくても楽しめる構成になっていました。

photo6
椅子を漕いでブドウ畑の四季を体感するアトラクション

この博物館の地下には公設のエノテカ(ワインショップ)があり、ワインの販売だけではなく試飲できるスペースも併設しています。


~世界遺産の城へ~
続いては、グリンツァーネ・カヴール城Il Castello di Grinzane Cavourを訪れました。
城のあるグリンツァーネ・カヴール村は、バローロ村からバルバレスコ村を目指し北東方面へ進む途上にある村です。その街の頂上にこの城があります。

photo7
グリンザーネ・カヴール城

この城は13世紀に建てられたもので、カミッロ・ベンソ・カヴール伯爵Camillo Benso,conte di Cavourが住居を構えていました。

photo8
城内に掲示されているカヴール伯爵の肖像画

カヴール伯爵は19世紀後半に活躍した政治家で、イタリア統一運動の立役者としてイタリアでは知らぬ人のいない偉人ですが、実は同時にこの土地のワインの品質向上に大きく貢献した人物でもあります。
カヴ-ル伯爵が携わる以前もバローロでワインは作られていましたが、醸造技術が乏しく、非常に不安定な品質のワインを作っていたそうです。その不安定な品質のワインを改善しようとカヴ-ル伯爵は城の周りでブドウ栽培を始め、19世紀半ばにはフランス人の醸造学者、ルイ・ウダールLouis Oudartを招へいし、醸造の知識をこの地域に教え込み、ワインの品質を向上させて、今のバローロワインが出来たとされています。

ミュージアムにはギフトショップ、エノテカにカフェ、それにレストランなどが併設されています。ピエモンテでは昔ながらの城が多く残っていますが、近年では城を再利用しようと美術館やホテルにしようという動きがあるようです。
イタリアを作った歴史やバローロワインを発展させた歴史がこの城にはギュッと詰まっており、この城だけで世界遺産になったということも納得できる場所でした。

~バルバレスコとその生産者へ~
次に向かったバルバレスコは、人口600人程度の静かな街です。
1894年に農学者のドミツィオ・カヴァッツァ Domizio Cavazzaが協同組合を作り、バルバレスコとラベルの付いたワインを販売させました。それまでは、バルバレスコで収穫されたブドウでも、ラベルはバローロと名付けて売られていたそうです。

photo9
バルバレスコ村入口の標識

第二次世界大戦後すぐ、この辺りのブドウの木はほとんど切られて別の作物を育てていたそうです。その後にブドウの木を植えることになりますが、戦後のイタリアワインはクオリティより生産量を優先し、質の悪いワインが出回っていたそうです。
そのワインを作るワイナリーも4~50年前は十数軒ほどしかなく、農家がブドウを作り、ワイナリーが買い占めるという方式をとっていました。80年代に入り、農家の人たちが続々と自社生産のワインを始め、バローロやバルバレスコの改革が始まりました。

理想だけではなく、テクノロジーや様々な専門家からの意見や技術、製法(フランス産の樽を使用するなど)を取り入れ、おいしいはもちろん、売れるワインをどんどん作り、バローロやバルバレスコは一躍有名になりました。この改革をした生産者たちは「バローロ・ボーイズ」と呼ばれました。その改革の中では、前からの生産者との衝突もあったそうです。しかし、今日ではこの改革者達を中心にバローロとバルバレスコが生産されている状況なのです。


バルバレスコ村を後にし、隣接する小さな村カスタニョーレ・デッレ・ランツェ Castagnole delle Lanzeにある、『ラ・スピネッタ La Spinetta』を訪問しました。

photo10
ラ・スピネッタ看板

ラ・スピネッタは1977年にジュゼッペ・リヴェッティ氏が創業したワイナリー。比較的最近創業したワイナリーです。最初に製造したのは、地元の甘口微発泡ワインの代表格であるモスカート・ダスティでした。そこから徐々に規模を拡大し、現在ではバルバレスコを生産する以外にも、バローロやトスカーナ地方など4ヶ所、165haを所有する巨大ワイナリーになりました。

photo11
現在リリースしているラ・スピネッタのすべてのワイン

案内していただいたのはラ・スピネッタ3代目のマルコさんと、奥様である日本人のみおさんご夫妻。

photo12
みおさんは、13年前にイタリアでたまたま飲んだバルバレスコに惚れ込んだ事がきっかけで現在の道に

様々な場所に案内していただきましたが、大きい生産者なのですべての物が巨大でとても迫力がありました。

photo13 photo14
(左)巨大なステンレスタンク
(右)地下のセラー。圧倒的な広さ、静謐な美しさが印象的

見学を終え、いよいよ試飲です。バルバレスコ、バローロを含めたワインを試飲させていただきました。それに合わせて、個人的に合うと思われる食材、料理も記録してみました。

試飲とその感想については、次回(8/30公開)にご紹介します。



注1: ワインをつくるブドウ畑としては、『ピエモンテの葡萄畑の景観、ランゲ・ロエロ・モンフェッラート』という名でピエモンテ州の5地区と、葡萄栽培とイタリア史において重要な場所である城が世界遺産登録されました。

(1) ラ・ランガ・デル・バローロ La Langa del Barolo(バローロ村のあるランガ地区)
(2) イル・カステッロ・ディ・グリンザーネ・カヴール Il Castello di Grinzane Cavour(グリンザツァーネ・カヴール城)
(3) レ・コッリーネ・デル・バルバレスコ Le Colline del Barbaresco(バルバレスコ村の丘陵地)
(4) ニッツァ・モンフェッラート・エ・イル・バルベーラ Nizza Monferrato e il Barbera(ニッツァ・モンフェッラートとバルベーラ)
(5) カネッリ・エ・ラスティ・スプマンテ Canelli e l'Asti Spumante(キャカネッリ村とアスティ・スプマンテ)
(6) イル・モンフェッラート・デーリ・インフェルノット Il Monferrato degli Infernot(インフェルノットのモンフェッラート)

注2: 熟成期間
(リゼルヴァ riserva=一定以上の熟成期間寝かしたものにだけ付けられる名前)

バローロ バローロ
〝リゼルヴァ"
バルバレスコ バルバレスコ
〝リゼルヴァ"
38か月(18か月は木樽で熟成) 62か月(18か月は木樽で熟成) 26か月(9か月は木樽で熟成) 50か月(9か月は木樽で熟成)

注3: バローロ11の村:バローロ Barolo、カスティリオーネ・ファッレット Castiglione Falletto、セッラルンガ・ダルバ Serralunga d'Alba、ラ・モッラ La Morra、モンフォルテ・ダルバ Monforte d'Alba、ロッディ Roddi、ヴェルドゥーノ Verduno、ケラスコ Cherasco、ディアーノ・ダルバ Diano d'Alba、ノヴェッロ Novello、グリンツァーネ・カヴール Grinzane Cavour

注4: バルバレスコ4つの村: バルバレスコ Barbaresco、ネイヴェ Neive、トレイゾ Treiso、サン・ロッコ・セーノ・デルヴィオ San Rocco Seno d'Elvioの一部

注5: D.O.C.G .: Denominazione di Origine Controllata e Garantitaデノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・コントロッラータ・エ・ガランティータ
統制保証付原産地呼称。ブドウ品種、醸造法、熟成方法、熟成期間など厳しい条件をクリアしたワインのみが名乗れる呼称。イタリアワインの格付けの中で一番厳正な規定が存在する。

<参考URL>
公益社団法人日本ユネスコ協会連盟 世界遺産一覧(イタリア)
HP: http://www.unesco.or.jp/isan/list/europe_3/
Consorzio di Tutela Barolo Barbaresco Alba Langhe e Dogliani
HP: http://www.langhevini.it/

<取材協力先>
Museo del Vino a Barolo
住所:Castello Comunale Falletti di Barolo, Piazza Falletti, 12060 Barolo CN
TEL:+39 (0)173 386697
HP: http://www.wimubarolo.it/it/

Castello di Grinzane Cavour
住所:Via Castello, 5, 12060 Grinzane Cavour CN
TEL: +39 (0)173 262159
HP: http://www.castellogrinzane.com/it/homepage

La Spinetta
住所:via Annunziata, 17, 14054 Castagnole delle Lanze AT
TEL: +39 (0)141 877396
HP: http://www.la-spinetta.com/

このコラムの担当者

谷岡 敬太

バックナンバー

2009年8月まではこちら
2009年9月からはこちら

カテゴリ

最近の投稿

過去の記事

ページの上部へ戻る