1. 総合情報サイトTOP
  2. 食のコラム&レシピ
  3. 12<海外>とっておきのヨーロッパだより
  4. 【とっておきのヨーロッパだより】フランスの隠れた名産、アジャンのプリュノ

【とっておきのヨーロッパだより】フランスの隠れた名産、アジャンのプリュノ
2017年03月10日

  • mixiチェック

<【とっておきのヨーロッパだより】ってどんなコラム?>

皆さん"プリュノ Pruneau"をご存知ですか? フランス語で、プラム(プリュンヌ Prune)を乾燥させた食品のことを指します。

photo1 photo2
(左)プリュノ
(右)プリュンヌ(プラム)。まだ色付く前の実がなっています

日本では「プルーン」と言う名前の方が、なじみがあるかもしれませんね。ヨーグルトなどに入れて楽しむ方も多いのではないでしょうか。栄養価が高く、昔から美容にも健康にも良いとされ、多くの人に愛されてきた食材の一つです。
世界的に一番有名なプリュノの産地はアメリカのカリフォルニア州で、日本で手に入るプリュノのほとんどはアメリカ産です。ですが、実はアメリカのプリュノの歴史は、元はフランスからプリュンヌの原木をアメリカに移植し、品種改良して始まったものなのです。

フランスでプリュノの代表的な産地は、南西部のアジャン Agenです。現在でも、フランスではプリュノといえばアジャンを連想するほど有名な産地で、フランスのスーパーマーケットで売られているプリュノも「プリュノ・ダジャン Pruneaux d'Agen(アジャン産のプルーン)」しか見あたらないほどです。アメリカ産の物は実が小ぶりで、皮が固く弾力があるものが多いですが、フランス産は果肉に厚みがあり、中まで柔らかいのが特徴です。

photo3
アジャンの町の標識

アジャンはフランス南西部のガロンヌ川河畔にある街で、ボルドーとトゥールーズの間にあります。周辺の他の町とは違い、町の周りには多くのプリュンヌの木が植えられているのが特徴です。

プリュノの歴史から少し調べてみたところ、アジャンのプリュノのルーツはなんと中国にあることが分かりました。ローマ帝国時代、シルクロードに沿ってアラブやシリアなどを経由し、ボルドーからアジャンへ伝わったそうです。当初は薬の一種として医師が使用したことで広まり、時代が進むにつれ栄養価の高さと味の良さからローマ帝国全域に栽培され、製造されるようになったそうです。
アジャンは降雨量が少なく夜の温度が低い気候ですが、それがプリュンヌの生育には非常に適しているそうです。アジャンでプリュンヌ栽培が盛んになった理由は、気候が大きく関係しているのかもしれません。

今回、訪問したのはアジャンの『ミュゼ・エ・フェルム・デュ・プリュノ Musée et Ferme du Pruneau』。ミュゼはフランス語で博物館、フェルムは農園や農場と言った意味ですが、プリュンヌの生産からプリュノの加工・直売を一手に手掛けているだけでなく、プリュノ生産の歴史を学べる"博物館"も併設した施設です。

photo4 photo5
(左)『ミュゼ・エ・フェルム・デュ・プリュノ』の看板
(右)博物館は、周り一面プリュンヌの木に囲まれていました

photo6 photo7
(左)入口。団体の観光客も来るそうで、外には大きなカフェスペースがあります
(右)中の販売スペース。プリュンヌを使った様々な製品や加工品が販売されていました

博物館内には、現在の収穫の様子がパネル展示されていました。

photo8

昔は手で木を揺らし一つずつ摘み取っていたそうですが、現在は大きな機械で木全体を覆い、木の幹を振動させて実を落としていく方式で収穫します。残念ながら訪問した際は収穫時期が少しずれていたため、機械をじかに見ることは出来ませんでしたが、ビデオで収穫の様子を見せていただきました。

プリュンヌの収穫期は8月から9月にかけてで、収穫した後すぐに水でよく洗浄していきます。その後、実を大きさによって3種類に選別します。

photo9
洗浄や選別などをしている様子のパネル展示


洗浄後、実を大きな木枠に均等に広げ、75℃のオーブン乾燥機で20時間~24時間かけて乾燥させていきます。乾燥が終わったものは本当にしわしわで、水分がすべてなくなった様子でした。重さも乾燥させる前と比べると、約三分の一程度になります。

photo10 photo11
(左)乾燥後のプリュンヌ
(右)手に持って見ると表面もすごくカサカサしていることが分かります

乾燥後また大きさを選別する機械に通し、大小さまざまなサイズ分けの作業をしていきます。

photo12
乾燥後、大きさの選別ゴミの除去を行う機械

一旦カラカラに乾燥させて味が濃縮したところで80℃のお湯の中に約10分~12分漬け込み、加湿すると、プリュノの出来上がりです。今回見学したお店では、真空袋に入れてから再度殺菌の為に80℃のオーブンで6時間殺菌消毒をしているそうです。

photo13 photo14 photo16 photo16
(左から)
・計量しながらパック詰めする機械
・パック詰めされ出荷待ちのプリュノ
・この木箱全てがプリュノの製品で一杯です
・乾燥の時に使用するかご

乾燥はプリュノ作りに不可欠な工程ですが、乾燥オーブンの導入は1850年頃で、その前はパンや料理などで使われていたオーブンを使っていたとのこと。農業進歩により天日干しの乾燥から乾燥オーブンにかわってきたそうです。

photo17
プリュンヌの天日干し(パネル展示)

博物館では、各年代の乾燥オーブンが展示されていました。
乾燥専用に作られたオーブンというよりも、料理やパンで使っていた普段のオーブンを乾燥用に利用していました。燃料には木を利用しており、プリュノを100kg作るには燃料の木も100kg必要だったそうです。ナポレオンの時代では一番綺麗なプリュノは帝国のプリュノと呼ばれており、綺麗で大きいものは王侯貴族が好んで食べていたそうです。

photo18 photo19
(左)1850年まで使用されていたもの
(右)1850~1884年まで使われていたもの

このころから乾燥専用の機械が作られるようになりました。内部が回転する仕組みができたことで効率よく乾燥ができるようになり、生産スピードが向上しました。

photo20
内部のかごが表裏引っくり返るタイプ


このころから乾燥機内部の換気システムができ、より早く大量にプリュノを作れるよう、ラックなどを使うことで大量に早く取り出しや入れ替えが出来るように改良されています。熱を無駄なく逃がさない工夫がされていましたが、上下などの引き出しの入れ替えが大変だったそうです。

photo21 photo22
1884~1905年まで使われていたオーブンと蒸発乾燥機

1906年ごろに使われていたタイプの移動台の乾燥炉、移動台ごとの出し入れをすることにより効率よく早く大量に乾燥させることが出来たそうです。

photo23

現在使われている機械では、乾燥用のかごが円形から四角形になることでプリュンヌを並べるスペースも無駄なく、また効率的に風邪を送り早く乾燥が出来るように進化しています。

photo24

プリュノのように食品を乾燥させる技術は、1年を通じての食糧確保が難しかった時代から、食品保存方法の一つとして世界各地で発達してきました。乾燥させれば長く保存ができ、また軽量化で運搬も便利になります。ただ乾燥したそのままでは硬く食べにくいところ、水分を加える事で柔らかくなり、また生の時とは違った味わいが生まれたところに、単なる保存食を超えた「美味なるもの」としてのプリュノの歴史が始まったのではないか...などと、博物館を見学しながら思いをめぐらせました。

photo25
乾燥したプリュノをお湯に漬けて柔らかく戻す加湿器

昔の販売風景の展示もありました。1850年から第二次大戦前までは、毎年9~12月の間、近郊の大きな町の市場などでこのようにプリュノを販売していたそうです。

photo26

プリュノの保管には昔は木箱が使われていましたが、木箱は1つが12.5kgと大変重いものでした。流通を容易にするため各販売業者によって様々な改良が試みられた結果、缶や瓶が用いられ、またそれに伴って様々に意匠を凝らしたパッケージが作られるようになりました。

photo27

大きさによって選別されたプリュノはより綺麗な大きいものは高級品として取り扱われたそうですが、それも頷ける美しい缶の装丁です。

photo28

デザインが綺麗な木箱も用いられました。ちなみに、小さい粒のプリュノは、より手ごろな品として袋詰めで販売されていたそうです

日本でもアジャン産のプリュノを食べたことがありましたが、現地の物と日本で食べた輸入品との間にどれほど味の差があるかを確かめてみました。結果、現地で食べたアジャン産プリュノは、日本で食べたとものと違って中まで柔らかく、また味が濃縮されていると感じました。プリュノが苦手な人でも食べられると思われる味わい深さでした。

アジャンの名産品であるプリュノを使ったお菓子として最も有名なものが、プリュノ・フーレ Pruneaux Fourrésです。

photo29
スペシャリテのプリュノ・フーレ

"フーレ"とは製菓用語で「中身を詰めた」ことを意味し、一粒一粒種をていねいに取り除いたプリュノの中に、アルマニャックを効かせたクリーム状のプリュノペーストがしっかりと詰められたお菓子です。フランスでも他の町ではなかなか手に入らない、アジャンのスペシャリテとして知られています。そのままのプリュノも美味しいですが、その美味しさを一粒にギュッと詰め込んだと言えるプリュノ・フーレの味わいは格別でした。


アジャンでは、プリュノ・フーレ以外にも様々なプリュノの菓子が作られていました。
プリュノのペーストを固めたパート・ド・フリュイや、プリュノを丸ごとチョコレートでコーティングしたボンボン・オ・ショコラ、またアルマニャックやオー・ド・ヴィ(蒸留酒の一種)などのお酒で漬け込んだプリュノなど様々な製品があります。いずれも作り自体はシンプルですが、アジャン産プリュノの高い品質と味わいを活かした製品ばかりです。

photo30 photo31
(左)伝統的な乾燥用のかごで詰め合わせも販売されています
(右)アジャン近くの町のカフェで注文した、プリュノとアルマニャック風味のアイスクリーム

アジャン産のプリュンヌ、そしてプリュノは日本ではあまり知名度が高くないかもしれませんが、非常に魅力あふれた食材です。機会があればぜひアジャンを訪れ、プリュノを味わってみて下さい。



【取材協力】
Musée et Ferme du Pruneau
住所:Le Gabach,47320 Lafitte-sur-Lot
TEL:+33 (0)5.53.84.00.69
FAX:+33 (0)5.53.84.00.69

【参考文献】
『LES PRUNEAUX D'AGEN』(著)JEAN-MICHEL DELMAS

このコラムの担当者

針本 洋司

バックナンバー

2009年8月まではこちら
2009年9月からはこちら

カテゴリ

最近の投稿

過去の記事

ページの上部へ戻る