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【とっておきのヨーロッパだより】人・食・文化、すべてがうるわしのブルターニュ!~お祭り編(2)~
2017年07月21日

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<【とっておきのヨーロッパだより】ってどんなコラム?>


「人・食・文化、すべてがうるわしのブルターニュ!」シリーズ
第1回 お祭り編(1)|第2回 お祭り編(2)

フランスでありながら独自の文化を保ちつづけるブルターニュ。このシリーズでは、私自身がブルトン人との交流のなかで知ったブルターニュの魅力を、食文化を踏まえながら少しずつ紹介していきたいと思います。
前回のコラム ~お祭り編①~ では、ブルターニュの伝統を伝える祭典、カンペール Quimperの「フェスティバル・ド・コルヌアイユ Festival de Cornouaille」をご紹介しましたが、今回はもうひとつの更に大きな夏のイベントをご紹介します。

■ケルト文化にまつわる国々がブルターニュに集結!「フェスティバル・アンテルセルティック」
たびたびブルターニュとケルト文化の関係について触れてきましたが、世界にはケルト文化にまつわる国(地域)がどのくらいあるかご存知ですか?フランス語では「ペイ・セルティック Pays Celtiques」とか「ナシオン・セルト Nations Celtes」と呼んでいますが、言語的、文化的に共通点の多いブルターニュ、スコットランド、アイルランド、ウェールズ(注1)、コーンウォール(注2)、マン島(注3)の6つの地域を挙げるのが一般的です。そこに、スペインのガリシア(注4)とアストゥリアス(注5)、そのガリシアと隣接するポルトガルの一部地域がケルトのルーツを打ち出したことで、ケルト海を取り巻くヨーロッパの北西部一帯は一大ケルト文化圏として認識されるようになりました。
さらに、ケルトの祖先はヨーロッパから海を渡り、新たな大陸にもその遺伝子を残していました。なんと、遠く離れた別の大陸、カナダ、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、キューバ、メキシコ、チリ、アルゼンチンなどの国々でも、一部の地域で同様の文化の一端が確認されているのです。
これらの地域の人々が、毎年8月になるとモルビアン県の中心都市ロリアン Lorientに集結します。そしてそこで盛大に開かれるのが「フェスティバル・アンテルセルティック Festival Interceltique」です。ブルターニュにとどまらず、ケルトのルーツと文化を大切に守ろうとするすべての人のための国際フェスティバルです。

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(左)ブルターニュの旗を誇らしげに掲げる世代の異なる旗手たち。こうしてアイデンティティが引き継がれていく
(右)手前からコーンウォール、マン島、スコットランド、アイルランド、ウェールズ、アストゥリアスの旗

会期は8月上旬の10日間、世界中から訪れる来場者は毎年75万人にのぼります。世界中のケルト文化圏からやってくる4500名のミュージシャン、ダンサー、劇団員を含む有志が、地元の民族衣装を着て、連日さまざまなステージをこなすほか、町のいたるところで無料の音楽演奏やパフォーマンスが行われます。この期間、通りには屋台がぎっしりと立ち並び、港に設置された国別のブースでは、地域性を打ち出した様々なイベントが繰り広げられます。加えて、コンテスト、シンポジウム、スポーツ、体験講座、アート展などの参加型イベントも盛りだくさん。
これだけでも毎日通えるくらいの充実度ですが、なんといってもこのお祭りの最大の見所は、全参加国の全参加グループおよそ3500名のアーティストたちが1.4kmに渡り、ロリアンの町を大行進する「グランド・パラードGrande Parade」です。
それぞれの地域の民族衣装に身を包み、あるグループは地元に伝わるダンスを踊りながら、またあるグループは楽団を編成し伝統音楽を奏でながら、次から次へと通り過ぎて行くその光景は、ただただ圧巻!

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(左)行進しながらのダンスにも関わらず、どのチームも軽やかにステップを踏み、エレガントで美しい舞を見せる
(右)アイルランドのパイプ・バンド。コスチューム、音楽、ダンスとも、各国それぞれに個性があって目が離せない

前回のフェスティバル・ド・コルヌアイユで紹介した楽器奏者の大行進「ル・トリオンフ・デ・ソヌール Le Triomphe des Sonneurs(注6)」の国際版とも言うべきこのパレード、先頭の旗手に続いてパレードの最初に登場する楽団は、伝統的に「バガッド・ド・ラン=ビウエ Bagad de Lann-Bihoué」と決まっています。これは、ロリアン近郊の海軍航空隊を起源とする唯一のフランス海軍所属のプロのバガッド(注7)です。
3時間にも及ぶこの大行進の終着点は、ロリアンのサッカーチーム「エフ・セー・ロリアン FC LORIENT」のホームスタジアム、「スタッド・デュ・ムストワール Stade du Moustoir」。ここの有料観客席を予約しておけば、大画面の映像つきで、全チームのパフォーマンスをゆっくりと座って観賞することもできます。

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(左)パレードの先陣を切る海軍所属の楽団「バガッド・ド・ラン=ビウエ」。海軍コスチュームの白が日差しに映えて凛々しい
(右)この「グランド・パラード」の様子は、毎年フランスの公共テレビ放送局「Frace 3」で特別番組として放送される

もちろん、グランド・パラード以外の見所もたくさんあります。「マルシェ・アンテルセルティック Marché Interceltique(国際ケルト市場)」と呼ばれる一角では、民族衣装から装飾品、お土産物、書籍など、各国の様々な特産品を購入することができます。スコットランドのキルトと呼ばれるスカートを購入し、その場で身につけて祭りを楽しむ人の姿もたくさん見かけました。
広場では随時バガッドのコンクールや演奏が行われ、レストランやバー、カフェなどの各商店が企画するミニライブもそこら中で行われています。ブルターニュならではの地ビールやシードルを片手に、夏の晴天の下で聞く伝統音楽は最高です!

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(左)フェスティバルに関するあらゆる案内版はもちろん、町中の標識がフランス語とブルトン語の2言語表記
(右)コンクール会場だけでなく、町のいたるところでバガットの楽団員が音合わせや練習をしているのが聞こえてくる

そして食べ物の屋台も国際色豊かです。歩行者天国となる道路にはフード関連の屋台がたくさん立ち並ぶほか、特設のフードコート「ヴィラージュ・セルト Village Celte(ケルト村)」には各国のスペシャリテを提供するスタンドが用意されています。また、「ケ・デ・ペイ・セルト Quai des Pays Celtes(ケルト国の波止場)」に並ぶ国別のブースでも、それぞれの国で一般的に食されている料理をファストフードの形で提供しており、一日中食べる物には困りません。どこも大賑わいで、行列ができている屋台もあります。

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(左)スペイン屋台の「コスティーヤス ・デ・セルドCostillas de Cerdo(豚の骨付きあばら肉)」は大人気!
(右)白地に水色の対角線はスペイン・ガリシアの旗。赤ワインやビールとともにタパス料理を楽しむたくさんの人たち

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(左)オーストラリアブースでは「オージー・ビーフ Aussie Beef」がバーベキューやハンバーガーの形で提供される
(右)ウェールズのブースのフィッシュ・アンド・チップス。ほかに「ウェルシュ・カウル Welsh Cawl(野菜のシチュー)」も


■フェスティバルの幕開けは、みんなで食べる「コトリヤード」
このフェスティバルにおいて食の分野で忘れてはならないプログラムといえば、フェスティバルの初日を飾る「コトリヤード Cotriade」。ロリアンの漁港内の魚市場にセットされた特設会場で、大勢で長テーブルを囲み、ブルターニュの伝統料理「コトリヤード」を食べるという予約制の有料イベントです。
思えば、私が初めてこの料理の存在を知ったのは20年以上前の、やはりこのフェスティバルでした。その頃は伝統音楽にばかり興味を惹かれて、料理に対してそれほど注意を払っていなかったのですが、そのときの料理の印象は「魚の煮込みの炊き出し」でした。そして面白い名前の料理だな、と思ったのを覚えています。

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(左)会場である漁港「ポール・ド・ペッシュ Port de Pêche」への案内板。中心部からは徒歩で30分ほど離れている
(右)席は自由。家族総出のグループ、地元の友人のグループ、観光客のグループなど、知らない人たちとの相席も楽しい

実はこの料理、ブルターニュ風の魚のスープだという人も入れば、魚の煮込み料理だと言う人もいます。フィニステール県の南部からモルビアン県にかけての海沿いが発祥だと言われていますが、もともとは漁から戻った漁師たちがその日の収獲の一部や、売り物にならない傷んだ魚を仲間内で分けてつくっていた漁師料理なのだそうです。
その由来も構成も、まさにマルセイユ名物の「ブイヤベース」(注8)と同じなのですが、ブイヤベースのように統一された規格や定義はなく、使用する魚の種類もさまざまで、多くの場合、ジャガイモや玉ねぎと一緒に煮込みます。
コトリヤードという名称の由来には諸説ありますが、ブルトン語表記では「コテリアッド Kaoteriad」となり、ココットなどの鍋を意味する「コテール Kaoter」という言葉から派生したという説が一般的です。

このイベントでは、「ムニュ・コトリヤード Menu Cotriade」として、スープと具を分けてサーヴィスされます。メニュー表では、1品目が「魚のスープSoupe de Poisson」、2品目は「白身魚の盛り合わせ、ジャガイモ添え Panaché de Poissons Blancs, Accompagnés de Pommes de Terre」となっていました。スープは、各テーブルの6~8名に対し、サーヴィスマンが大きなボールをひとつ運んで来るので、それをテーブルで各自取り分けて食べ、具のほうは一皿に盛られた状態で運ばれてきます。
スープはものすごく濃度がついていて、魚の出汁のコクとともにカレーのような風味も感じられました。お好みでクルトンとグリュイエールチーズを加えて食べます。具には玉ねぎと白ワインがベースの甘みのあるソースがかかっていて、かすかに酢の風味もありました。

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(左)おかわりは自由。飲み物は会場の両サイドにあるドリンクブースで購入する。購入したグラスは会期中どこでも使える
(右)コトリヤードは、実際はスープとしては扱われておらず、必ずパンやクルトンが付き、それだけで1食となるのが一般的

厨房の前で盛りつけをしていたスタッフに聞いたところ、この会場の収容人数は1000~1300人、これらの参加者を満足させるために、毎年400~500kgの魚とジャガイモをそれぞれ消費するそうです。
魚はその年によって違うようですが、この時の魚はグロンダン Grondin(ホウボウの一種)とジュリエンヌ Julienne(クロジマナガダラの一種)だとのことでした。後でロリアンの市場の鮮魚類コーナーで確認したところ、グロンダンはそのままの状態で、ジュリエンヌは切り身でたくさん並んでいました。

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1000人前以上の料理を用意するスタッフの手際のよさは感動的。たくさんのボランティアスタッフが協力している

ところで、このイベント、ただ食べるだけではないんです。客席の隣にはステージが組まれており、そこで地元のコーラスグループによる「シャン・ド・マラン Chants de Marins(海の男の労働歌)」のコンサートが行われます。かつて漁師や海兵をはじめ船の船員たちが、作業するときに歌っていたという伴奏のない伝承歌なのですが、ブルターニュではこうした音楽がいまも数多く継承されています。そんな海の歌を聞き、大勢の人とわいわい語りながらコトリヤードを食べるこの親密な雰囲気は、ほかでは味わえない貴重な体験です。そして、気がつくと、さっきまで食事をしていた人たちがおもむろにステージの前に集まり、歌に合わせて踊り始めていました。やっぱりここでも踊るんですね!

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知らない人同士で手をつなぎ、輪になってステップを踏む伝統的なダンス。ブルターニュではおなじみの光景


■ブルターニュでコトリヤードを探せ!
ブルターニュの伝統料理のはずのこのコトリヤードですが、実は私自身、このフェスティバル以外では、これまでどのレストランでも出会ったことがありませんでした。
今回、ロリアンの市場内の惣菜屋で偶然見かけたものがありましたが、自分の知っているものとは全く違うそのイメージに非常に驚きました。魚介たっぷりのクリームシチューのような見た目だったからです。

「コトリヤード」というキーワードでインターネット検索をすると、たくさんのレシピがヒットします。また様々な料理書でも地方料理として紹介されていますが、いずれも基本的なつくり方は「玉ねぎとジャガイモをラードで炒め、香草を加えて少し煮込み、魚を加えて仕上げる」というもので、あとはつくり手の好み次第で、野菜を入れたり、貝類を入れたり、カニやエビなどの甲殻類を入れたり、スープにクリームを入れたり、カレー風味を付けたり、無限のバリエーションがある料理のようです。

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(左)ロリアンの屋内市場「アール・ド・メルヴィル Halles de Merville」で見かけたコトリヤード。量り売りで買うことが可能
(右)コトリヤードの表示。具材はスコットランド産のサーモン、エグルファン(コダラ)、タラの薫製、エビ、ムール貝

なかには、軽くゆでたイワシだけでつくられるコンカルノー Concarneau風、サバだけでつくるドゥアルヌネ Douarnenez風、サーモン、タイなどの魚のほか、ムール貝やザル貝など、たくさんの具を入れるフエナン Fouesnant風、ラードの代わりにバターを使用するベル=イル=アン=メール Belle-Île-en-Mer風など、地域色の強いコトリヤードも存在することがわかりました。
いずれも食べ方には、具とスープを分けて出すスタイルと、分けずに一皿で出すスタイルのどちらもあるようです。
また、フランスの料理大辞典「ラルース・ガストロノミック LAROUSSE GASTRONOMIQUE」やいくつかの古い料理書には、コトリヤードの作り方の項に「ソース入れにヴィネグレットを入れて添える」と書かれています。
一説によると、昔は漁の後に、その場で海水で調理していたため、塩味を和らげるためにヴィネグレットを加えたり、地元で取れる香草類を入れるようになったのだとか。ただ、コルヌアイユ地方(現在のフィニステール県南部)では、ヴィネグレットを入れる習慣はもはやなくなってしまったとも言われています。

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どの料理書のコトリヤードも少しずつ違っているのが面白い

そこで実際に、常にメニューにコトリヤードがある数少ないお店を探し出し、フィニステール県のコンカルノー、モルビアン県のロリアンとオレー Auray、これら3つの港町でコトリヤードの食べくらべをしてみました。
まずはコンカルノーのレストラン『ランクル L'Ancre』へ。この店のコトリヤードにはコンカルノー風に謳われるように、確かにイワシが入っていましたが、それ以外にも皿の底にドラッド Dorade(タイ)、エスパドン Espadon(メカジキ)、トン Thon(マグロ)の3つの魚の大きな切り身も並んで入っていました。さらにムール貝とホタテ、事前に炭火で炙った香ばしいエビの串焼きまでついていて、なんとも豪華な一皿。

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注文は2人前から。4人で分けても十分満足できるボリューム

何度もテーブルに来て親切に話してくれたこの店のシェフによれば、コトリヤードの内容は本当に自由で、家庭ごとに違ったレシピがあるとのこと。魚はその日の仕入れ状況によって変わるそうですが、常にスープを用意しているわけではないので、前日までに予約が必要とのことでした。
スープはブルターニュ産の「ランビッグ Lambig」と呼ばれるシードル(リンゴの発泡酒)の蒸留酒で香りづけし、魚の出汁に若干クリームを入れてマイルドに仕上げてあるそうです。また、シェフは個人的にジャガイモを一緒に煮てスープに溶け出すのが好きではないそうで、ローストした皮付きのジャガイモが別添えで出て来ました。このジャガイモが驚くほどホクホクで甘く、コトリヤードに負けないくらいおいしかったです。

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とても親切なこのお店のシェフ。家庭的な雰囲気の店内は家族連れのお客様でいっぱい

次は、オレーにある『ル・プティ・グスタン Le P'tit Goustan』のコトリヤード。
店の黒板にも大きく「この店のスペシャリテ」と書かれていました。魚の切り身が非常に大きく、エビ、ザル貝のほか、イカのぶつ切りもあって食べ応え満点。
魚はエグルファン Aiglefin(コダラ)、ジュリエンヌ Julienne(クロジマナガダラの一種)、リウ・ノワール Lieu Noir(シロイトダラ)で、なんと全部タラでした!スープはトマトの風味が強かったためか、南仏風に感じました。サーヴィスマンに、コトリヤードとブイヤベースの違いについて聞いてみると「基本的には同じものだが、うちの店ではブイヤベースに使われるようなポワソン・ド・ロッシュ Poisson de Roche(岩礁の魚)を入れることはない。近くの港に届くタラなどの海洋の魚を使うのが特徴だ」と話していました。ここもジャガイモは別添えで、付け合わせのルイユ Rouille(注9)とクルトンがますますブイヤベースを彷彿とさせました。

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とにかく魚の身が大きいため、入りきらなかったスープが別に添えられている

そして最後は、「フェスティバル・アンテルセルティック」が行われるロリアンのレストラン『アントル・テール・エ・メール Entre Terre et Mer』へ。ここのコトリヤードは見た目はまさにブイヤベースそのものですが、トマトの風味はほとんどなく、魚の味がしっかりとする「具だくさんのスープ・ド・ポワソン、ジャガイモ入り」という感じでした。
付け合わせは『ル・プティ・グスタン』と同じくルイユとクルトンでしたが、さらにグリュイエールチーズも付いていました。
魚はモリュ Morue(タラ)、Julienne(クロジマナガダラの一種)、そしてメルリュ Merlu(メルルーサ)の3点。なんとここもすべてタラ! この辺りでよく水揚げされる魚で、ボリュームの割に比較的安価で手に入りやすいというのが理由なのだと思いますが、思いがけずタラ目の魚の食べくらべにもなりました。

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具が多く見えないが、3種類の魚の切り身が皿の底に並んで入っている

公式な定義はないと思っていたコトリヤードですが、どの店のものにも必ず3種類の魚の切り身が入っているという共通点がありました。注文の際に必ず店員がその魚を紹介するということにも驚きました。
また、今回感じたのは、どのレストランも地元で取れる魚をアピールして「地域色を出す」というよりは、コトリヤード自体を豪華に仕上げ「魚介たっぷりのブルターニュの料理」として打ち出しているということ。
レストランにおいては、料理に付加価値をつける必要があるため、自然とそのスタイルを変化させていったのだと想像します。そう思うと、各家庭でつくられるものも含め、現代で言う「コトリヤード」は、その名の由来通り「コテール Kaoter(鍋)でつくる料理」の総称と言ってもいいのかもしれません。
そして、もしかするとこのフェスティバルで食べる素朴なコトリヤードこそが、実は本来の漁師たちのスタイルに一番近いのかも知れないと感じました。

さて、話はそれましたが、こうしてコトリヤードで始まったフェスティバルは、10日間に渡り毎晩遅くまで続きます。夜のサッカースタジアムでは参加国の音楽グループによるパフォーマンスやコンサートが行われ、連日盛大に花火が上がります。また、民族衣装のままのミュージシャンたちが町中のいたるところで観光客と一緒に普通にビールを飲んでいる姿は、なんだか不思議な感じですが、これもこのフェスティバルの楽しみのひとつです。

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(左)各国の複数のアーティストやダンサーが出演するコンサート「ニュイ・セルティック Nuit Celtique(ケルトの夜)」
(右)スコットランドのバグパイプ・バンドのメンバーと遭遇。リクエストに応えてパイプを吹いたり、写真撮影に応じていた

ブルターニュにはこのほかにももっと宗教色の強いお祭りや、各地で行われる小さなお祭りがたくさんありますが、まずはこの夏の2つの祭典を通じて、ぜひブルターニュ文化のルーツを感じて欲しいと思います。



フェスィバル・アンテルセルティック Festival Interceltique 公式サイト
http://www.festival-interceltique.bzh/

(注1)グレートブリテン島の南西に位置するイギリスの4つのカントリーのひとつ。アングロ・サクソン民族の勢力が及ぶまではブリトン系住民の住む地域だった。「アーサー王伝説」はアングロ・サクソンに抵抗したブリトン人の王を題とした物語だと言われている。

(注2)グレートブリテン島の南西部にあるコーンウォール半島に位置するイギリスの単一自治体でコーンウォール州とも呼ばれる。かつてこの地方で話されていたコーンウォール語は、ウェールズ語やブルトン語(ブレイス語)に近いケルト系の言語だが、18世紀末までにネイティヴスピーカーはいなくなったとされている。

(注3)グレートブリテン島とアイルランド島に囲まれたアイリッシュ海の中央に位置する島。イギリス王室がマン島の支配権を購入し、マン島領主を世襲しているため、自治権を持ったイギリスの王室属領となっている。鉄器時代はから文化の影響が強く、5世紀頃にアイルランドと移住者との融合によってマンクス語が生まれた。

(注4)スペイン北西に位置し、南はポルトガル、東はアストゥリアス州に接するスペインの自治州の1つ。5世紀から6世紀にかけて、アングロ=サクソン人のグレートブリテン島侵攻から逃れてやってきた人々が住み着き、ブリトニアと呼ばれている地域を形成した。ス語はガリシア語と同様にケルト語ではなくラテン語から派生した言語だが、文化的にはガリシアの影響でケルト色が深まった。

(注5)ガリシアの東に隣接するスペインの自治州の1つ。アストゥリアス州の固有の言語、アストゥリエス語はガリシア語と同様にケルト語ではなくラテン語から派生した言語だが、文化的にはガリシアの影響でケルト色が深まった。

(注6)Le Triomphe des Sonneurs:フェスティバルに参加するすべてのバガット楽団の大行進。伝統舞踊のダンサーを伴い、500人以上の楽団員が様々な伝統音楽を演奏しながらカンペールの町中を行進する、このフェスティバルのクロージングイベント。1951年に公式プログラムとなって以来、このフェスティバルだけでなく、様々な伝統音楽の祭典で行われるようになった。

(注7)Bagad:バガッドと呼ばれるブルターニュのオーケストラ楽団の呼称。スコットランドのパイプ・バンドと同様、主にボンバルド、バグパイプ、パーカッションの3つの楽器パートで構成される。1946年ごろに最初の楽団が発足して以来、いまでは各区地域にプロの楽団が存在し、毎年バガッドの全国大会「シャンピオナ・ナシオナル・デ・バガドゥChampionnat National des Bagadoù」が行われるほか、ブルターニュの伝統音楽のコンサートやダンスパーティ「フェスト・ノズ」などで活躍している。

(注8)ブイヤベースについては、とっておきのヨーロッパだより
『南仏の伝統料理、「ブイヤベース」の古典と現代』 http://www.tsujicho.com/column/cat/post-476.html もご覧ください。

(注9)赤唐辛子、にんにく、魚のスープ、オリーブ油などでつないだソース

取材協力店
Restaurant L'Ancre
22 rue dumont d'urville, 29900 Concarneau TEL 02 98 50 56 58

Restaurant Le P'tit Goustan
9, place Saint Sauveur - Saint Goustan, Auray TEL 02 97 56 37 30

Restaurant Entre Terre et Mer
20, cours de la Bove 56100 Lorient TEL 02 97 64 25 85

■ブルトン語の読みの表記について
本コラムでは Mouladurioù Hor Yezh社発行の辞書「GERIADUR BIHAN BREZHONEG-GALLEG GALLEG-BREZHONEG」の発音記号に基づいてカタカナ表記にしています。

ブルターニュに関するコラム
ガレットについて http://www.tsujicho.com/oishii/recipe/letter/totteoki/galette.html
カンカルの牡蠣について http://www.tsujicho.com/oishii/recipe/letter/totteoki/oyster.html
有塩バターについて http://www.tsujicho.com/oishii/recipe/letter/totteoki/butter.html
ブルターニュのカレー(香辛料)について http://www.tsujicho.com/oishii/recipe/letter/totteoki/karigosse.html
カンペール焼きについて http://www.tsujicho.com/column/cat/post-392.html
もご参照ください。

このコラムの担当者

佐藤 重文

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