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【とっておきのヨーロッパだより】知られざるマカロンを訪ねて
2017年12月20日

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<【とっておきのヨーロッパだより】ってどんなコラム?>


辻調フランス校への赴任は3回目となりますが、今回の勤務では「フランスの地方菓子」に焦点を当てて、インターネット等で情報を仕入れては、その土地の特色あるお菓子を探しに色々な街を訪れています。パティスリーpâtisserie(お菓子屋さん)、ブランジュリーboulangerie(パン屋さん)を問わず巡りに巡って、今では距離にしてなんと地球一周分に達しようとしています。

地域の特産品を使ったものがあるかと思えば、全く異なる地方に同じようなお菓子が売られていたりと、知れば知るほどに「フランス地方菓子の沼」にはまっていっています。

その中で、思っていた以上に多くの地域で見かけたのがマカロンmacaronです。
ほんの30年前まで日本ではほとんど知られていなかったのが嘘のように、今ではお菓子好きの中で知らない人がいないくらいポピュラーになりました。

地方菓子というのは、地方、地域、街の名前がついているお菓子が必ず「地方菓子」というわけではなく、たとえ一軒のお店でしか作られていなくてもその街の人に「この街のお菓子」として認知されているものもあれば、逆に、街の名前がついているのに「それは街ではなく、あのお店のスペシャリテだよ」と言われることもあったりします。マカロンにも、伝統的に作られてきたもの、歴史の浅いものなどいろいろありますが、今回は日本ではあまり知られていないフランス各地に数多くあるマカロンを、地域別に分けて紹介していきます。



グランテスト地方 Grand Est


■マカロン・ド・ブレ Macarons de Boulay

マカロン・ド・ブレ マカロン・ド・ブレ
(左)ブレのマカロン
(右)断面

モゼル県Moselleにあるブレ=モゼルBoulay-Moselleという街にあるマカロンです。
この街はロレーヌ地方のメスMetzという都市の東約30kmにあり、さらに20kmほど北東に走ればもうそこはドイツというくらい、フランスの端の方に位置しています。

一般的にマカロンといえば丸や星形の口金で絞り出して成形するのですが、このマカロンは皮をむいたアーモンド、砂糖、卵白の3つの材料をローラーで細かく引いたものを銀製のスプーンを使って成形しているので、楕円形でこんもりとした形をしています。表面はサクッとしていますが、厚みがある分、中はよりしっとり柔らかい食感でした。



イル=ド=フランス地方 Île-de-France

■マカロン・ド・レオ Macarons de Réau

レオのマカロン レオのマカロン
(左)レオのマカロン
(右)断面

セーヌ・エ・マルヌ県Seine-et-Marneにある、レオRéauという街のマカロンです。
パリの南東約35kmに位置するこの街で作られるマカロンは、直径4cmほどの大きさで、2つのマカロンをそのままくっつけた形をしています。クリームやガナッシュで味を変えているものは多くありますが、ここのマカロンはアーモンド、砂糖、卵白を基本とした生地そのものに直接味や香りをつけてある、ちょっと珍しいタイプのマカロンです。少しもちっとした感じはあるのですが、小麦粉等は使用していないそうです。



サントル=ヴァル・ド・ロワール地方 Centre-Val-de-Loire

■マカロン・ド・モンレゾー Macarons de Montrésor

モンレゾーのマカロン モンレゾーのマカロン
(左)モンレゾーのマカロン
(右)断面

トゥールToursの南東約50kmにある、アンドル=エ=ロワール県Indre-et-LoireのモンレゾーMontrésorという街のマカロンです。
この地のマカロンは少々大きめで直径6cm以上あり、2枚張り合わせて作られています。接着には何も使われておらず、アーモンドの風味が直接感じられるものでした。メレンゲを使って作られているようで、今まで食べてきたマカロンの中でも非常にやわらかいふんわりとした食感で、何よりアーモンドの甘さがちょうどいい具合に感じられます。甘さといっても、砂糖の甘さは抑えられているので軽く食べることができます。


■マカロン・ド・コルムリー Macarons de Cormery

コルムリーのマカロン 別の店のもの
(左)コルムリーのマカロン
(右)別の店のもの

モンレゾーの東南約30kmの所にコルムリーCormeryの街はあります。
丸く絞り出して成形されてはいるのですが、真ん中に穴の開いたドーナッツ状に絞られているのが特徴のマカロンです。
2軒のパティスリーで購入したものを食べ比べたのですが、一方は星の口金で絞り出してあり、ローラーで挽くときに生地をあまり細かくせず、砂糖やアーモンドの粒のシャリシャリとした感じが残っていて、更にオレンジピールやビターアーモンドの風味が強く感じられました。もう一方のものは皮付きのアーモンドを使用しており、アーモンドの甘さと風味が前面に押し出されているなど、同じ街のマカロンでもそれぞれ全くと言っていいほど違っていて、非常に興味深かったです。


■マカロン・ド・シャルトル Macarons de Chartre

シャルトルのマカロン シャルトルのマカロン
(左)シャルトルのマカロン
(右)断面

ユール=エ=ロワール県Eure-et-Loirにある大聖堂で有名なシャルトルChartresのマカロンです。
こちらのマカロンは一般的に知られているクリームやガナッシュをサンドしてあるものです。生地は甘すぎず軽くサクッとしていたので、ムラング・フランセーズ(メレンゲ)を使ったタイプのマカロンだと思われます。間に挟んでいるクリームやガナッシュ、コンフィチュール(ジャム)などもあっさりめのものが多かったです。



ペイ・ド・ラ・ロワール地方 Pays de la Loire


■マカロン・ド・フォントヴロー=ラベ Macarons de Fontevraud-l'abbaye

フォントヴロー=ラベのマカロン フォントヴロー=ラベのマカロン
(左)フォントヴロー=ラベのマカロン
(右)断面

メーヌ=エ=ロワール県Maine-et-Loireの街、フォントヴロー・ラベFontevraud-l'abbayeは、トゥール、アンジェ、ポワチエの三都市のちょうど真ん中あたりに位置しています。
ちなみに日本人で観光案内所を訪れたのは私で2人目、というぐらいほとんど知られていない穴場の街です。
外はカリッと、中はしっとりといったマカロンが多い中、ここのマカロンはメレンゲを使用したタイプですが、水分が残らないくらいしっかり焼いてあり、アーモンドだけではなく、ノワゼットも使っているので香ばしく、また、ダイス状のナッツが入っているので歯触りがとても楽しいものです。



ヌーヴェル=アキテーヌ地方 Nouvelle-Aquitaine

■マカロン・ド・リュジニャン Macarons de Lusignan

リュジニャンのマカロン リュジニャンのマカロン
(左)リュジニャンのマカロン
(右)断面

ポワチエの南西約25kmにあるヴィエンヌ県Vienneの、リュジニャンLusignanという街のマカロンです。
アーモンド、砂糖、卵白のみで作られており、しっかりとしていますが、軽さもあり、メレンゲタイプのようです。大きめの星口金でロザス状に絞り出されていて、ごく薄く表面はカリッとしていて、中はしっとりとしています。何の変哲もないマカロンなのですが、皮ごとアーモンドが使用されており、香りと風味のバランス、アーモンドの甘さが引き立っており今まで食べた中でも一番おいしいと感じられました。


■マカロン・ドゥ・ドラ Macarons du Dorat

ル・ドラのマカロン ル・ドラのマカロン
(左)ル・ドラのマカロン
(右)断面

オート=ヴィエンヌ県Haute-Vienneにある、ル・ドラLe Doratという街のマカロンです。リモージュLimogeの北約50kmに位置するこの街のマカロンは星口金でどしっと絞り出されています。口径が大きめの目が粗い口金で絞られているのでカリッとした場所が多く、中のしっとりとしたところとの対比が心地よい噛み応えを生み出しています。
マカロンが普通売られているのはパティスリーやブランジュリーですが、このマカロンはトレトゥールtraiteur(お惣菜屋)で売られています。


■マカロン・ド・サン=ジャン=ピエ=ド=ポール Macarons de Saint-Jean-Pied-de-Port

サン=ジャン=ピエ=ド=ポールのマカロン サン=ジャン=ピエ=ド=ポールのマカロン
(左)サン=ジャン=ピエ=ド=ポールのマカロン
(右)チョコチップが入っています

ピレネー=アトランティーク県Pyrénées-Atlantiquesにあるサン=ジャン=ピエ=ド=ポールSaint-Jean-Pied-de-Portという街のマカロンです。バイヨンヌの南東約50kmに位置し、あと5km程南に走ればスペインとの国境という街です。
ここにはガトーバスクを探しに訪れたのですが、バスク地方のマカロンということ興味がわき、購入してみました。アーモンド、砂糖、卵白を使用したどっしりタイプのものがベースで、チョコレートやノワゼット、ココナッツを使ったものなど6種類ありました。
その中でも珍しかったのがエスプレットespeletteという、街の特産品であるピマンpiment(唐辛子)を使ったマカロンでしたが、思っていたような辛さはなく、アクセントになっていてより甘さが強調されていました。



オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地方 Auvergne-Rhône-Alpes

■マカロン・ド・ジョワイユーズ Macarons de Joyeuses

ジョワイユーズのマカロン ジョワイユーズのマカロン
(左)ジョワイユーズのマカロン
(右)断面

アルデシュ県Ardèche、モンテリマールMontélimarの西約40km、ジョワイユーズJoyeusesの街のマカロンです
この地方で採れるアーモンドやノワゼットを使ってしっかりと乾燥するまで焼きあげたメレンゲベースのマカロンです。小麦粉も入っているのでしっかり気泡が保持されていて目が粗く、イタリアのアマレッティ amaretti(アマレッティは、メレンゲにアーモンドパウダーを加えたイタリアのビスケット)のようにザクザクっとした食感で、砂糖が香ばしいキャラメルになっていて、アーモンドやノワゼットの香ばしさが特徴的なマカロンです。


■マカロン・ド・マシアック Macarons de Massiac

マシアックのマカロン マシアックのマカロン
(左)マシアックのマカロン
(右)断面

カンタル県Cantal、マシアックMassiacという街で、クレルモン=フェランClermont-Ferrandの南約60kmに位置しています。
ここのマカロンは表面がつるっとしていて、モンレゾーのものと同様接着には何も使わずに2つ重ね合わせて作られています。基本的にマカロンにはアーモンド、砂糖、卵白というものが使われるという固定観念がありましたが、アーモンドは使われておらずノワゼットパウダーのみで作られています。ムラング・フランセーズを使ったタイプなので軽い食感ですが、ノワゼットと蜂蜜の香りがしっかりとあり、病みつきになるようなおいしさでした。



プロヴァンス=アルプ=コート=ダジュール地方 Provence-Alpes-Côte d'Azur

■マカロン・ド・ソー Macarons de Sault

ソーのマカロン ソーのマカロン
(左)ソーのマカロン 大・小
(右)断面

古代遺跡で有名なオランジュOrangeの東50km弱の所にあるヴォークリューズ県VaucluseのソーSaultという街のマカロンです
この街もモンテリマール同様、ヌガーで有名な街で、私もヌガーを求めに訪れたのですが、プロヴァンス地方特産のアーモンドを使って作られているマカロンもスペシャリテだと伺ったので購入してみました。大小2種類あり、小さいものは袋に入れて売られていました。
小さいものはおそらく砂糖の配合割合が多いのか、ねっちりとした食感で皮付きアーモンドの風味がしっかりと感じられましたが、大きいものも、端の方は同じような食感なのですが、中心部は焼成加減が違うためか、さっくりとした食感でビターアーモンドが強く感じられ、同じ生地でも大きさの違いだけでこんなにも違うものに感じられることに驚きました。


■マカロン・ド・ニース Macarons de Nice

ニースのマカロン スミレの花の砂糖漬けが見えます ニースのマカロン
(左)ニースのマカロン スミレの花の砂糖漬けが見えます
(右)断面

アルプ=マリティム県Alpes-Maritimesにある、説明の必要がないくらい有名なニースNiceのマカロンです。
こちらのマカロンは旧市街のマルシェmarché(青空朝市)で見つけたものです。
小ぶりでムラング・フランセーズが入ったタイプの軽い食感のマカロンですが、表面にオレンジやレモンの香りのする粒状のものやアニスシード、スミレの花の砂糖漬けなどを散らして焼いてありユニークなマカロンです。


オクシタニー地方 Occitanie

■マカロン・カタラン Macarons Catalans

アメリー=レ=バン=パラルダのマカロン アメリー=レ=バン=パラルダのマカロン
(左)アメリー=レ=バン=パラルダのマカロン
(右)断面

ピレネー=オリアンタル県Pyrénées-Orientales、ペルピニャンの南西約30km、スペインとの国境にあるアメリー=レ=バン=パラルダAmélie-les-Bains-Palaldaのマカロン。
この地方はその昔カタロニア地域圏に属していたこともありカタロニア文化が根付いています。そのためこちらのマカロンにはカタランという名前がついています。もっちりした食感の中に香り高いアーモンドの風味が感じられます。カタロニア地方ではアーモンドの栽培が盛んで、良質のアーモンドが取れるため、こちらのマカロンもこの地方のアーモンドを使用しているそうです。



コルス地方 Corse

コルテで見つけたマカロン コルテで見つけたマカロン
(左)コルテで見つけたマカロン
(右)断面

フランス本土を離れ、コルシカ島で見つけたマカロンです。
オート=コルス県Haute-CorseのコルテCorteは、コルシカ島中央部北側にある街です。
ここで見つけたマカロンは茶色くてどっしりと重く、しなやかでしっとりした印象のマカロンです。コルシカ島らしく栗の粉を使っているのが特徴です。

また、スーパーマーケットでもコルシカ島のマカロンを見つけました。

スーパーで見つけたアマレッティ スーパーで見つけたアマレッティ
(左)スーパーで見つけた「アマレッティ」
(右)断面

こちらはベーキングパウダーを使ってふくらませていて、小麦粉も使用しているのでふんわりとした感じがします。こちらのマカロンも栗のパウダーを使用しているようです。
このマカロンの袋にはイタリア語で「Amaretti(アマレッティ)」とも書いてあり、イタリアとの近さを感じました。

マカロンは、16世紀にイタリアからフランスのアンリ2世のもとに嫁いだカトリーヌ・ド・メディシスによって、その輿入れの道中で立ち寄った様々な街に伝えられたという説や、その結婚以前にすでにコルムリーの修道院で作られていたという説など、諸説あって真実は定かではありません。ただ、フランス各地には今も愛され続けているマカロンがたくさんあるのは事実です。今後も出会ったことのないマカロンを探し続けて行きたいと思います。


余談ですが、マカロンを探している時に、マスパンmassepainというものに出会い、それがあるというサン=レオナール=ド=ノブラSaint-Léonard-de-Noblatという村にも出かけました。
その村は、ヌーヴェル=アキテーヌ地方のオート=ヴィエンヌ県にあります。同県内ではリモージュの街が有名ですが、その約15km東側にあるとても小さな村です。マスパンはお店によって形が違い、小判形のものや円形のものがありましたが、使用されている材料も同様で、食べてみてもふんわりタイプのマカロンとどこが違うのかわからないくらい同じような食感でした。

マスパン マスパン
(左)マスパン
(右)断面

小判形のマスパン 小判形のマスパン
(左)小判形のマスパン
(右)断面


マスパンも調べてみるとマカロンのようなタイプだけでなく、ジェノワーズ(スポンジケーキ)タイプのもの、マジパンタイプのもの(プロヴァンスのカリソン・デクスcalisson d'Aixもマスパンと呼ぶそうです)があります。

調べれば調べるほど色々な地域独自の色々なお菓子が見つかり、ますますフランスの奥深さに引き込まれ、まだ知らないお菓子に出会うため、また今週末も出かけようと思っています。

このコラムの担当者

淺野 義明

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