COLUMN

食のコラム&レシピ

【半歩プロの西洋料理】ややこしい名前の野菜

01<西洋>半歩プロの西洋料理

2010.09.02

<【半歩プロの西洋料理】ってどんなコラム?>

今回のテーマ・・・「ややこしい名前の野菜」

  
 シコレ(左の緑色のもの)         チコリ

私たちは授業で配布するレシピを作ったり、材料を注文したりするのですが、
野菜の呼び名がいろいろあって困ることがあるんです。
別の野菜なのに名前が似ていたり、フランス語名で先に覚えても、
一般に流通している名前が英語名だったりしてさっぱりわからなくて、
「ん???」というときがよくあります。
その中でもよく間違えるのが「シコレ」と「チコリ」。フランス語?英語?何語???
注文する時は「チリチリのほうですね?」「細長いやつですね」と確認を怠りません。
シコレ」はサラダによく使われる野菜で、英語で endive 「エンダイブ」。
右の白菜のような形のものが「チコリ」。
チコリ chicory は英語で、仏語だと「アンディーヴ」 endive 。
でも同じフランス語圏のベルギーではchicon「シコン」……ますますわからない!
わからなくなってきたので表にしてみました。↓↓↓


















フランス語 英語 日本語
シコレ chicorée エンダイヴ endive 菊ちしゃ
アンディーヴ endive           (ベルギー:シコン chicon ) チコリ chicory 菊苦菜         (きくにがな)

 

「シコレ」も「チコリ」もキク科の植物で、原産はヨーロッパから中央アジアにかけての地域。
同種の野菜には紅白の赤キャベツのような「トレヴィス」。
(イタリア料理店では、「トレヴィーゾ」「ラディッキオ」などの名前でよく見かけます)
特徴はいずれも苦味があり、シャキッとした食感があることで、サラダとしての用途はもちろん、肉や乳製品との相性がいいと言われています。


トレヴィス 
 
また、根を肥大させ、乾燥させて細かく砕き、焙煎してから煎じて飲むとコーヒーのような味になる
チコリコーヒーの存在も忘れてはいけません。
コーヒーの代用品として、特に戦時中やコーヒーが高価で手が出ないところなどに登場してきます。
100%チコリならカフェインは含まないので、現在はノンカフェインの飲み物を求める人向けに売られています。

チコリコーヒー
見た目はコーヒーとほとんど変わらない「チコリコーヒー」

「シコレ」はチリチリした葉が特徴で、種子から発芽する一年草、または二年草。
中の黄緑色の部分が上質とされていますが、外側まで十分食べることができ、
魚料理や肉料理の付け合わせのサラダなど、
単品でも、他の野菜とあわせても十分に際立つ活躍をします。
価格はサニーレタスなど100円台の他のサラダ菜に比べて400~500円とやや高価です。
季節はずれだとさらに倍近くの価格になる時もあります。

次に、「アンディーヴ」にスポットを当ててみましょう。
アンディーヴはフランスやイタリア料理などで使用される西洋の高級野菜。
価格は1個約300円。こちらも少し高めでしょうか?

フランスの市場でのアンディーヴ
フランスの市場でのアンディーヴ

『料理材料大図鑑 マルシェ』(講談社)に、アンディーヴの栽培方法が記されています。
「太く育った根株をいったん掘り起こして貯蔵したのち、
土寄せして軟白栽培すると結球の堅い若芽が得られる」(p.455)。
アンディーヴは一年草でその茎の太さは本体と同じくらいでとてもしっかりしています。
葉の緑だけが紫色をしたバイトレアンという種類も出回っています。


バイトレアン

どちらも長さは12cmくらいで直径は5cmほど。切った部分から変色してくるので、
使用する直前にカットしたり、切り口にレモン汁を塗ったりします。
選ぶ際には産毛があり、中身がしっかりと詰まったものがよいでしょう。
フランスではベルギーとの国境あたりのピカルディー地方が有名な産地です。
日本ではベルギー産やニュージーランド産のものが輸入されていますが、
北海道でもごくわずかですが栽培されています。
いずれも日本でも高級スーパーやデパートの食料品売り場で見かけます。

さて、このアンディーヴはどのようにして食べるのでしょう?
シャキシャキとしてみずみずしい食感はサラダに向きます。
一枚一枚をはがし、スプーンがわりに葉を器にして、前菜になるような料理をのせてみたり、
アンディーヴを刻んでチーズ(グリュイエールやロックフォール)とくるみとドレッシングと和えた
サラダにすることもできます。
肉料理の付け合わせとして、ブイヨンなどで火を通したものの表面を焼き、
砂糖でキャラメル状に焼くものもあります。

余談ですが、フランスで働いていた時に、和食が恋しくなって、
アンディーヴの浅漬けを作ってくれたスタッフがいました。
最初は「えっ?」と思ったのですが、食べてみると意外においしくて、
気がついたらみんなで食べきっていたことがありました。

さて、今回紹介するのは、ベルギー料理のEndive au jambonという、
アンディーヴとハムのグラタンです。
なかなかない組み合わせですが、どちらが欠けても成り立たない料理。
ホワイトソースがお互いを引き立てます。
先日試作した際、初めて食べるスタッフの反応を見ようとしたら、
「もうなくなってた!」・・・・・というリアクションでした。

<コラムの担当者>

もうそろそろ・・・
高橋晶子

<このコラムのレシピ>
アンディーヴとハムのグラタン

<バックナンバー>
2009年8月まではこちら
2009年9月からはこちら