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【半歩プロの西洋料理】光る職人技 包丁ができるまで
2017年12月22日

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『半歩プロの西洋料理』ってどんなコラム?


私が初めて自分の包丁を手にしたのは、辻調理師専門学校に入学した時でした。
手にした包丁ケースを開き、キラキラした包丁を持ち上げたときの感動を今でも覚えています。
包丁ケースには、プロの料理人として仕事をするために必要な、様々な大きさの包丁や器具が詰まっていますが、これらを使いこなすには大分時間がかかりました。
今ではニンジンのジュリエンヌもトマトのコンカッセも学生に指導する毎日ではありますが、やはり料理技術において「切る」ことは、味や見た目に大きな効果を及ぼす重要な作業であると日々実感します。

今回は、私たちが手にするまでに包丁がどんな工程を経て作られているかを見学させていただきました。

お邪魔したのは、『堺石藤』さん。辻調グループの学生が使う包丁もこちらの会社で手掛けていただいています。
卒業しプロの料理人になってからもお世話になる人が多い、老舗の刃物メーカーです。
工場では一日に何種類もの包丁をさまざまな工程で製造しています。その製造工程を見せていただけることになりました。

今回見学させていただいた包丁に使われているのはスウェーデン鋼という材質です。
この材質は添加物が少なく固くて研ぎやすく錆びにくいというのが特徴です。

使う材質はそのままその包丁の特徴になります。
どのような包丁にしたいのかによって材質から配合など研究されて使用されています。

スウェーデン鋼の特徴は、研ぎやすく刃持ちがよく、さびにくいというのが特徴になります。
まずはスウェーデン鋼を型で200tもの力をかけてプレスをし、包丁の原型に抜きます。


牛刀用の型




この板から包丁の原型を抜き出していきます




火入れ工程の終わった包丁



次に『加熱』、『油焼入れ』、『焼き戻し』という工程に入ります。
包丁を高温に熱された炉の中に入れ、そのあとに高温の油の中に入れていきます。
職人さんは火の中に入っている鉄の色で温度を判断し、約1000℃近くの温度のものをプラスマイナス5℃も変わらない温度で仕上げていきます。
ここで火入れをすることによって包丁自体の硬度の調節や、粘りを生み切りやすい包丁になるのです。
(この工場ではこの工程を別の工場に委託して行っているそうなので、焼き入れ等の工程を実際に取材することはできませんでした。)


次に『歪取り(ひずみとり)』。
焼き入れで少し曲がってきた包丁を金槌で叩き、まっすぐに戻していく作業です。

 
ここで一日何百本もの包丁の歪みを直していきます    左:歪み取り前 右:歪み取り後



写真のように並べてみれば分かると思いますが、この微妙な曲がっている部分をまっすぐにしていくのです。
この『歪取り』の作業ができるようになるまでに、個人差はありますが3年はかかるそうです。

そしてここからが、包丁の刃をつけていく工程になります。
まずはこの機械にかけて刃をつけていきます。



包丁の形をした鉄の板だったものが機械にかけること片面わずか約50秒。
機械に入れた鉄の板が刃をつけて包丁になって帰ってくるのです。

この円盤の形をしたものが機械の中で回り、包丁に刃をつけていきます。


機械で回転させながら包丁に刃を付けていきます


かなりの速度で包丁を削っていくので、摩擦熱が発生します。
ここで高熱の摩擦熱が発生してしまうと焼き入れの工程で完成されていたスウェーデン鋼の状態がずれてしまいます。
そうならないために液体を常にかけ続けて温度が上がりすぎないように作業していきます。
この作業は、職人さんがとてもスムーズに機械にかけていくため、一見、簡単そうに見えますが、そんなことはないのです。
わずか0.5㎜単位での厚みの調整を、砥石を当てる角度など微調整を行いながら機械にかけていきます。

ここからさらに職人の手で包丁に刃をつけていきます。
次に口金と呼ばれる包丁の刃と柄の部分の境となる部品を溶接します。

そしてさらにサンドベルト、羽布かけと粗い砥石から徐々に細かくしていき、仕上げていきます。

 


この機械で柄と包丁をつけるビスを打っていきます



ここで一度刃付けの作業が終わり、次に『柄付け』をしていきます。
まず機械で包丁に柄を取り付けビス打ちをします。
そこから柄磨きの工程へ
ここでは粗い砥石、細粗砥石、細かい砥石、粗い布、細かい布と5段階に分けて磨き上げています。



この工程があるからこそ、包丁の柄を握った時のあのフィット感が生まれるわけですね。
まさに職人技です。



最後は布で手触りの良いものへ



最後に職人さんが1本1本仕上げの刃付けを行い、包丁が出来上がります。


ここまでの段階だけでも、包丁作りにはかなりの手間や技術が投じられている事が感じられたかと思いますが、実はここまでの工程で出来上がったものは、まだ完成品ではないのです。

プロ仕様の包丁には、ここからさらにもう一段階の仕上げが加わります。それは、『刃付け(はつけ)』と『羽布かけ(ばふかけ)』という作業です。

羽布かけという作業は柄磨きと同じように刃の部分を磨き上げます。

見てください、この包丁の輝きの違いを。


左:羽布あて後 右:羽布あて前


仕上げをする前と後では一目瞭然。
この機械で羽布かけを行うことにより、包丁に光沢が生まれるのです。





最後に職人さんの微調整



最後はやはり機械ではできない微調整を職人さんが手で研ぎ、完成となります。
私たちが日々使っている包丁は職人さんの技術の結晶なのだという事を改めて感じました。

長年料理技術を磨いてくるにあたり、美しく切る作業においては自分自身の鍛錬ももちろんですが、その道具である包丁についてもきちんと考える事の大切さを感じます。
職人技が詰まった包丁の切れ味を試しつつ、野菜の美しい断面が皿に映える料理を作ってみました。

<取材協力店>(株)堺石藤

ああ

このコラムの担当者

田畑 翼

このコラムのレシピ

彩りトマトのテリーヌ

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