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食のコラム&レシピ

【独逸見聞録】 ブロートの名称と外観 ~大型パン(其の弐)~

13<海外>独逸見聞録

2011.11.04

【独逸見聞録】ってどんなコラム?

使用されている穀物製品の割合を中心に、「ブロート(Brot)」の種類が分類され、名付けられている。配合だけでもかなりの数に上るが、その同じパン生地から、円形や長円形、棒状や環状、角型などの「形状」、または焼成方法などの「製法」の違うブロートが作り出されている。ドイツの消費者にとって、選択肢の幅は非常に広い。
前回に引き続いて、ブロートの種類と名称、その外観や形状について紹介する。

★パンの種類と名称
◆使用されている穀物製品によるブロートの種類

食品指導原則では、ブロートの種類は、使用されている「穀物製品(Getreidemahlerzeugnis:ゲトライデマールエァツォイクニス)」によって名付けられ、分類されている。

Brot.jpg

Weizenbrot
ヴァイツェンブロート
90%以上の小麦粉を使用

Roggenbrot
ロッゲンブロート
90%以上のライ麦粉を使用

Weizenmischbrot
ヴァイツェンミッシュブロート
51~89%の小麦粉を使用

Roggenmischbrot
ロッゲンミッシュブロート
51~89%のライ麦粉を使用

Weizenvollkornbrot
ヴァイツェンフォルコルンブロート
90%以上の小麦全粒製品を使用

Roggenvollkornbrot
ロッゲンフォルコルンブロート
90%以上のライ麦全粒製品を使用

Vollkornbrot
フォルコルンブロート
90%以上のライ麦全粒製品と小麦全粒製品を任意の比率で合わせたものを使用

Hafervollkornbrot
ハーファーフォルコルンブロート
20%以上のカラス麦全粒製品、合計で90%以上の全粒製品を使用
他の穀物の名称を用いたフォルコルンブロートにも該当

Weizenschrotbrot
ヴァイツェンシュロートブロート
50%以上の粗挽き小麦を使用

Roggenschrotbrot
ロッゲンシュロートブロート
50%以上の粗挽きライ麦を使用

Schrotbrot
シュロートブロート
90%以上の粗挽きライ麦と粗挽き小麦を任意の比率で合わせたものを使用

Dinkelbrot, Dinkelvollkornbrot
ディンケルブロート、ディンケルフォルコルンブロート
90%以上のディンケル(スペルト小麦)、ディンケル全粒製品を使用

◆地名の付いたブロートの名称
ドイツ製パン職人組合の「指導要綱(Richtlinie:リヒトリーニエ)」によると、地名の付いたブロートの名称は、「属名(Gattungsbezeichnung:ガットゥングスベツァイヒヌング)」であり、何処ででも製造や販売をすることができる。
販売の際には、穀物製品によるブロートの種類名を伴わずに、単独で表示をすることが可能である。但しこの場合は、下記の表の様に、全国的に知名度の高いものに限られる。

地名の付いたパンの名称

穀物製品によるパンの種類

Schwarzwälder Brot
シュヴァルツヴェルダー・ブロート

Weizenmischbrot〈ヴァイツェンミッシュブロート〉
シュヴァルツヴァルト(黒い森)地方のパン

Berliner Landbrot
ベルリーナー・ラントブロート

Roggenbrot〈ロッゲンブロート〉
ベルリンの田舎パン

Hamburger Schwarzbrot:
ハンブルガー・シュヴァルツブロート

Roggenvollkornbrot 〈ロッゲンフォルコルンブロート〉
ハンブルクの黒パン

「真の・本物の(echt:エヒト)」または「本物の・独自の(original:オリギナル)」という記述を用いる場合には、「生産地名称(Herkunftsbezeichnung :ヘーァクンフツベツァイヒヌング)」、即ち、この地名を持つ地域内で製造されなければならない。


創造・創作されたブロートの名称
穀物製品によるパンの種類や、地名の付いたパンの名前に当てはまらない、「発案」されたパンの名前は、それだけでは、販売の際の表示としては充分ではない。
これらの名称を用いる場合には、公に流通しているパンの種類を併記する必要がある。

ザウァータイクブロート(Sauerteigbrot)
自然のサワー種(Natursauerteig:ナトゥーァザアータイク)でのみ、酸味を付けることが許されている。人工的に酸味を付ける方法は、許可されていない。

バウァーンブロート、またはラントブロート(Bauern- oder Landbrot)
大抵の場合、田舎風の外観で、表面に粉が掛けられ、しっかりとした厚い外皮を持つ。穀物粉の割合や配合については、特に規定はない。ヴァイツェンミッシュブロート、ロッゲンミッシュブロート、またはロッゲンブロートの何れでも構わない。ライ麦の割合が20%以上の場合には、サワー種を使用する。その際に添加される酸の量は、最低でも2/3自然のサワー種に由来すること。

エコブロート、またはビオブロート(Öko- oder Biobrot)
最低でも95%の材料が、有機農法によるものでなければならない。
穀物粉の割合や配合については、特に規定はない。

★ブロートの形状とその名称

ブロートの形状名

ブロートの形状

Rundbrot
ルントブロート


丸、円形。

Langbrot
ラングブロート


楕円、長円形。

Kastenbrot
カステンブロート


型に入れて焼成する。側面の外皮は薄い。

Stangenbrot
シュタンゲンブロート

長い棒状。
表面に数箇所、斜めに切り込みが入っている。

Ringbrot
リングブロート


リング状、環状。

Fladenbrot
フラーデンブロート


平らな円形。

Angeschobenes Brot
アンゲショーベネス・ブロート

接合した状態で窯に入れる。
接合部分には外皮がない。

Frei geschobenes Brot
フライ・ゲショーベネス・ブロート

個々のパンを隣のパンと間隔を空けて焼成する。
外皮は一つに繋がっていて、表面全体を取り囲む。

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左は、長円形と角型で焼いたヴァイスブロート(Weißbrot)。
右は、棒状のバゲット(Baguette)とバウァーンシュタンゲ(Bauernstange)。

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角型に入れて焼成したカステンブロート(Kastenbrot)の集合写真。

Brot IMG_7154.jpg
接合した状態で窯入れし、焼成した
アンゲショーベネス・ブロート(Angeschobenes Brot)の集合写真。

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個々のパンを隣のパンと間隔を空けて焼成した

フライ・ゲショーベネス・ブロート(Frei geschobenes Brot)の集合写真。

★ブロートの表皮の外観
◆表皮上の粉模様
ライ麦粉を振った発酵用のカゴ(Backkorb:バックコルプ)の中で、パン生地を発酵させると、カゴの畝に沿って、粉の筋模様が付く。成形後、滑らかな面を下、とじ目を上にしてカゴに入れ、発酵させる。焼成時には、発酵カゴを裏返し、滑らかな面を上にして窯に入れる。

滑らかで光沢のある表皮
成形したパン生地が発酵した後、焼成前に、粉を払い落として表面に水を塗る。
ピケローラー(Stipprolle:シュティップロレ)を転がして、パンの上面に小さな空気穴を開ける。これによって、焼成初期に過剰なガスが抜ける。均一な焼き上がりになり、パンの表皮下に空洞が発生するのを防ぐ効果がある。焼成直後に、水を塗るか、噴き掛けて、表皮に光沢を与える。

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左は、粉模様を残したものと、水を塗って光沢を出したロッゲンミッシュブロート(Roggenmischbrot)。
は、ライ麦粉を振った発酵用のカゴと、パンの表面に穴を開けるためのピケローラー。

◆表皮上の木目模様
成形したパン生地の表面を、ライ麦粉の中に沈め、しっかりと粉をまぶし付ける。
低めの湿度で発酵させることによって、パン生地が膨らむ際に、粉の付いた表皮に亀裂が生じる。それが「木目模様(Maserung:マーザルング)」となる。

◆表皮上の切り込み
焼成前に、パンの表面に切り込み(Einschnitt:アインシュニット)を入れる。切り込み箇所には、軽い裂け目ができ、焼き色にコントラストをもたらす。
例えば、丸いパンには十字、長円形のパンには、斜めに数回切り込みを入れる。

◆クルステンブロート
円形または長円形に、パン生地を成形する際に、軽くライ麦粉を付けて、とじ目の部分が完全にくっ付いてしまうのを防ぐ。とじ目を下にして発酵させ、焼成時には、とじ目を上に向け窯入れする。気泡内のガスが膨張することによって、とじ目部分が力強く裂ける。
外皮(Kruste:クルステ)の占める割合が特に高く、風味が濃厚である。

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左は、表面に切り込みを入れたヴァイツェンミッシュブロート(Weizenmischbrot)。
右は、とじ目の部分を上にして焼いた、厚めの外皮を持つバウァーンブロート(Bauernbrot)。


★特別な焼成方法のブロート
この項目のブロートは、特別な焼成方法、または特別なオーブンで焼かれている。
これらの名称を用いる場合には、公に流通しているパンの種類を併記する必要がある。

◆ホルツオーフェンブロート(Holzofenbrot)
ホルツオーフェンブロートは、薪窯の中で「薪(Holz:ホルツ)」を燃やした熱で、直焼きされなければならない。大抵の場合、大きな丸いパンで、ライ麦の割合が高く、サワー種を利用して作られる。しっかりとした厚めの外皮と、薪の香りや濃い風味を持つ。
薪窯の内部は石で囲まれていて、窯床の上で、加工されていない天然の薪を、直接燃やす。
先ず、窯の内部を薪で満たして、点火する。希望の温度に達したら、熾きや灰、燃え殻を取り除き、窯床を掃除する。長柄の木製パン焼きベラ(Brotschießer:ブロートシーサー)を使って、熱い石製の窯床にパンを入れる。焼成中に、熱が少しずつ弱まっていくため、焼成時間は長い。
「薪窯風」の様に、ホルツオーフェンブロートを推量させる、紛らわしい名称や表現は、認められていない。

◆シュタインオーフェンブロート(Steinofenbrot)
天然石(Naturstein:ナトゥーァシュタイン)か、人工石(Kunststein:クンストシュタイン)、または耐火粘土(Schamotte:シャモッテ)製の窯床の上で直焼きされる。シュタインオーフェンブロートは、しっかりとした厚めの外皮と、濃い風味を持つ。
この石窯の熱源は「薪」、または「ガス(Gas:ガース)」である。ガスの場合には、窯の温度が下がり過ぎた場合に、再燃させて温度を上げることも可能である。

◆プンパーニッケル(Pumpernickel)
プンパーニッケルは、蒸気焼成室(Dampfbackkammer:ダムプフバックカマー)内で、蒸し焼きにされる。焼成時間は長く、最低でも16時間掛かる。焼成温度が低いため、外皮が形成されない。
褐色で仄かな甘みがある内層は、しっとりとしていて、長期間新鮮さが保たれる。
低温焼成することによって、パンの中の温度がゆっくりと上昇し、酵素の活動が強化される。澱粉が、麦芽糖(マルトース)とブドウ糖(グルコース)に分解され、アミノ酸と化合することによって、褐色で、風味のあるメラノイジンになる。所謂「メイラード反応」である。
プンパーニッケルや、ダンプフバックカマーブロートは、包装されたスライスパン(Schnittbrot:シュニットブロート)として販売されることが多い。

◆クネッケブロート(Knäckebrot)
クネッケブロートは、乾燥させた平らなパン(Flachbrot:フラッハブロート)である。水分含有量が10%以下と非常に低いので、長期保存が可能である。

◆ゲァスターブロート(Gersterbrot)
ゲァステルブロート(Gerstelbrot)とも呼ばれる。窯入れ前に、パン生地の表面を裸火で炙ることがこのパンの特徴である。外皮に焦げ目が付き、独特な斑模様と風味を与えている。この作業工程は、「ゲァスターン」または「ゲァステルン」と呼ばれ、それが名前の由来にもなっている。
主に、ドイツ北部の都市ハノーファー(Hannover)とその近郊で焼かれている。

担当者情報

このコラムの担当者

Kimiko Kochs

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