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食のコラム&レシピ

【日本料理一年生】 39時間目 親子丼

04<日本>日本料理一年生

2011.05.27

<【日本料理一年生】ってどんなコラム?>


●親子丼●

本年度は、日本人の主食である「ご飯」にスポットを当ててお話しています。最近流行の「草食系男子」には、ちょっと似合いませんが、我々の若いころには「体育会系男子」をはじめ、多くの男性が「丼物」を好んで食べたものです。

最近の若い男性は、ご飯自体をあまり食べなくなっています。我が辻調理師専門学校の学生の割合は、女子1:男子3です。普段の日本料理の実習では、1テーブル5名で3カップの米を炊きますが、1/3ほどを残すところが多く見受けられます。ところが、「丼物」の実習では、4カップの米を炊いても、ほとんどのテーブルが完食します。時代が移り変わっても、やはり若者は「丼物」が好きなようです。

今回は、「丼物」の中でも人気のある「親子丼」のお話です。「親子丼」は言わずと知れた、鶏肉と玉ねぎなどを煮汁で煮て卵でとじ、丼鉢のご飯にのせた料理です。

「親子丼」の「丼(どんぶり)」の語源を小学館の『日本語源大辞典』で調べると、語源説は2つ載っています。「水中に物を投げ入れる音から」というのと、「江戸の慳貪屋(けんどんや)で使った盛り切りの鉢をケンドンブリ(慳貪振)といい、上略してドンブリとなった」という説です。
さらに参考というところには「名詞ドンブリに『丼』があてられたのは、井戸に物を投げいれたときの音をさす副詞ドンブリに対応する漢語が『丼』であったことによるか。」と書かれています。

「慳貪屋」とは、一杯盛りきりの飲食物を商う店のことです。元々は、大阪城築城のときの資材置き場で、工事人夫を相手に、盛りきりの蕎麦やうどん、飯などを売った屋台のことですが、江戸城築城のときに、工事人夫とともに江戸に移ったとされています。東京の蕎麦屋さんに「砂場」という屋号が多いのは、大阪城築城のときの資材置き場のひとつ「砂場」を屋号にしたためだといわれています。


●これぞ、実習で初めて作った親子丼!●

「親子丼」は、鶏肉と鶏卵を親子関係に見立てて名づけられた名称ですが、最近は鮭のフレークや刺身などと、イクラを使った「海鮮親子丼」も人気丼のひとつだそうです。さらに、鶏肉の代わりに牛肉を使って卵でとじると、関西では「他人丼」と呼ばれますが、関東では、牛肉を食べることが明治時代の文明開化の象徴ということで「開化丼(かいかどん)」と呼ばれることもあるようです。

辻調理師専門学校では、日本料理の最初の実習が「親子丼」です。ちょうどゴールデンウイーク前に、包丁砥ぎ、野菜のむき方と刻み方などの基礎実習が終わり、料理を作って食べる実習として学生が最初に作るのが「親子丼」です。


●初めての親子丼を試食している学生たち●

留学生の多いクラスでは、「ウミャー」(名古屋)とか、「マシッソヨ」(韓国)、「ハォツー」(台湾)、「アロイ・マー」(タイ)といった言葉が飛び交います。大抵の学生たちが、ゴールデン・ウイークに実家に戻って、両親や家族に初めて作る料理がこの「親子丼」のようです。

皆さんも松島先生の作り方を参考にして「親子丼」に挑戦してみてください。「親子丼」ができれば、「他人丼」や「カツ丼」といった卵でとじる「丼物」ができるようになりますよ。

<このコラムの担当者>
タイ語の話せる日本料理のおとうちゃん
小谷良孝

辻調の御言持(みことも)ち
重松麻希

<このコラムのレシピ>
親子丼

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