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【ラ・ミーア・マンマ!イターリア!! 】ご存知ですか?ナターレの伝統菓子「ストゥルッフォリ」

02<西洋>ラ・ミーア・マンマ!イターリア!!

2013.12.20

<【ラ・ミーア・マンマ!イターリア!!】ってどんなコラム?>

2013年も残りわずか、お正月への準備と忙しい時期ですが、日本ではお正月の前に大きなイベントがありますね。そう、「クリスマス」です。街頭の華やかなイルミネーションにクリスマスソング、クリスマス料理を考えたりプレゼントを選んだりと楽しいことが目白押しです。地でクリスマスの祝い方には様々ありますが、今回はイタリアのクリスマスにスポットを当てていきます。

キリスト教で「キリストが降誕した日」とされている祝日であるクリスマスを、イタリア語ではナターレNataleといいます。

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この時期、キリストの誕生を模したジオラマ「プレゼピオPresepio」が教会や街中に設置されます。

ナターレは、カトリック信徒にとっては、身を清める潔斎日という伝統的な考えから、断食をしたり、肉を使わない料理を供したりする伝統があるそうです。その流れを汲んで、今でもナターレの料理としてウナギや乾しダラなどの魚料理、リコッタチーズを詰めたラヴィオリといった肉を使わない料理も定番ですが、同時にハレの日のご馳走として豪華な肉料理が食卓に並ぶ場合も多いようです。

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冬の市場には旬の魚や果物(オレンジ、ザクロ、カキなど)が売られ、食卓に登場します。

豚の脚を丸ごと使ったソーセージのザンポーネなどはイタリアのクリスマスの時期の代表的な料理の一つですが、必ずといってよいほど、レンズ豆の煮込みと共に供されます。ザンポーネの輪切りとレンズ豆、どちらも丸い形が小さな金貨を連想させるため、年末に来年の縁起をかついで食べるともいわれています。

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(左)クリスマス時期の食肉加工店(右)ザンポーネとコテキーノ。パッケージにもレンズ豆が一緒にのっています。

クリスマスならではのお菓子としてイタリアで有名なものでは、主に2つのものが上げられます。まずはパネットーネ。

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語源は「大きなパン」。「パーネ」とはイタリア語で「パン」を意味します。

皆さん一度は耳にしたことはありませんか?最近ではクリスマスが近づくとスーパーでも売られているあのお菓子。実はイタリア、ロンバルディーア州ミラノのクリスマスの伝統菓子なのです。ブリオッシュ生地の中にレーズン等のドライフルーツが入ったリッチな菓子パンです。

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街中のお菓子屋さんのウインドウにはパネットーネをマジパンでデコレーションしたかわいらしいクリスマスケーキもありました。

もう一つはパンドーロ(黄金色のパン)。

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「オーロ」とはイタリア語で「黄金」を意味します。

ヴェネト州ヴェローナのクリスマスの伝統菓子です。星形の特徴的なフォルム、切り分けた断面は黄金を思わせる濃い黄色。バニラ風味の粉砂糖をまぶして食べますが、シンプルで飽きのこない味わいです。

パネットーネとパンドーロ、誕生した場所は違いますがどちらとも今はイタリアのクリスマスを代表するお菓子たちと言えます。

そして、今回レシピでご紹介させて頂くのが、南イタリアカンパーニア州ナポリのクリスマス伝統菓子ストゥルッフォリです

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語源は古代ギリシャ語の「ストロングロスStrongulos」に由来します。イタリア語で「ピッコラ・スフェーラPiccola sfera(小さな丸いもの)」という意味から来ているそうです。

レモン風味の生地を小さく切って丸めて揚げ、はちみつのソースをからめて仕上げ、お皿に円形に盛りつけます。家庭でも手軽に作れる、シンプルなお菓子です。 揚げ菓子の風味とはちみつの甘味がかりんとうを連想させるところがありますが食感はそれよりもソフトで、つまんでは口に運んでいると、ポリポリといつまでも食べ続けられそうです。

油で揚げた生地にハチミツを絡めるお菓子のバリエーションはイタリア南部各地にさまざまなものがありますが、それらの地域に共通しているのは、かつて「マーニャ・グレチャ」と呼ばれた広大な古代ギリシア帝国の植民地であったという点。大変古い歴史を持つお菓子といえます。 

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生地を揚げて作る南イタリアの地方菓子。

(左)シチリア州のカンノーリ(右)カンパーニア州ナポリのゼッポレ・ディ・サンジュゼッペ

イタリアのクリスマス菓子の中で有名なものをいくつかご紹介しましたが、他にも各地方に様々な伝統的なクリスマス菓子があります。その多くは、小麦粉の生地に甘味をつけたものや、ドライフルーツを用いた素朴なものが多いようです。

現代では食生活が豊かになり、さまざまなお菓子がハレの日の食卓に登場するようになりましたが、その昔お菓子の原料の砂糖、小麦粉、卵や果物は貴重品であり、お菓子は万人が気軽に食べられるものではありませんでした。多くの人にとってお菓子は年に数回、祝祭日にのみ口にできる特別な美味であり、とりわけクリスマスのそれは、今の私たちからは素朴なものに見えても、当時の人々には至高の味であったことでしょう。

今年はパネットーネやパンドーロとともに手作りのクリスマス菓子「ストゥルッフォリ」を食卓に用意し、往年のイタリアのクリスマスに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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担当者情報

このコラムの担当者

吉田貴

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ストゥルッフォリ

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