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中国料理TOPへ好吃(ハオチー)!中国料理! コラム一覧へ
連載コラム 好吃(ハオチー)!中国料理!
北京料理、上海料理、四川料理、広東料理、点心と5つのジャンルを、それぞれ担当の厨師(料理人)、点心師(点心専門家)が、中国での体験を交えながら料理の作り方とそれにまつわる話を紹介します。まずは、基本的な料理から始めましょう。
杏仁豆腐


杏仁豆腐

 香港で一世を風靡した名料理人、梁敬さんのお店「敬賓酒家」で研修したのですが、この店は香港によくある斜面の階段に沿っているので、入り口が1階と2階にあります。1階がレストランの入り口、2階がチャーシューや焼き鴨など焼き物のテイクアウトもできる入り口になっていました。おまけに1階には郵便局が同居しているのです。1階は入り口だけで、2階に上がると、円卓が8卓おいてあるレストラン、3階が宴会場、4階が厨房で、料理はエレベータで下りていきます。向かいは月餅で有名な「蓮香楼」でした。入り口には、これも香港ではあたり前のように、がっしりとした体格で立派なカイゼルひげを蓄え、銃まで持っているインド人のガードマンが店を守っていました。「Good morning, シン」。ミスターシンに僕は毎朝挨拶していましたよ。

「敬賓酒家」の調理場にて 「敬賓酒家」に点心を勉強しに行ったのです。点心の仕込みは朝が早いため、地下鉄も路面電車も動いていません。ミニバスは24時間走っていて、これに乗って約30分の場所にある店に通っていました。下りる時は「敬賓落車」といえば店の前で止めてくれます。5時くらいから焼売、蝦餃(エビギョウザ)、腸粉、お粥、叉焼飽など早点(朝食用点心)を準備し、6時になるとお客さんが来られ、8時に一段落すると、昼の準備です。飲茶が「売り」だったので、大根餅、里芋餅、ハスの葉ご飯、チマキ、甘くないパイやら、スペアリブ、鶏手羽先などの蒸し物やらで大忙し。午後3時からは翌日の仕込みで、老麺(中国独特の発酵種)を練ったり、もみじ(鶏の足)の爪を切ったり、焼売や蝦餃の餡を作ったりと慌しく過ごし、掃除をして夕方5時で終了。点心部はここで帰ってもよいのですが、皆が帰った後に1人で細かい部分の掃除をし、6時からは厨房部に合流して夜の料理の準備を手伝い、10時まで働いていました。無我夢中だったんですね。お陰で料理長に可愛がってもらい、味付けの基本を教えてもらいました。

 始めの半月は小籠(小型セイロ)に笹を敷いて油を塗るというのがメインの仕事でしたが、かん水チマキ、蛋撻(エッグタルト)・・・とだんだん任される仕事が増えていき、焼売や蝦餃などの味付けもさせてもらいました。
 点心の餡を作るのは直径70センチもある大きな鍋なのですが、驚いたことに、小柄で見るからに非力な人がこの鍋を振っているのです。鍋振りは力ではない、コツなんだとこの時はっきり思いました。
 また、燃料に重油を使っていて、送り出す空気の量を加減して火力を調節するのです。空気の量が上手くいかないとススがでたり、炎が天井にまで達したりするのですが、なんと足の指を使って空気の量を調節する栓を動かすのです。料理人は手先だけでなく足の指も器用でないといけない!今はこんなことはないでしょうけど。
 僕にとって珍しい食材としては、果子狸(ハクビシン)。檻に入って生きたまま納品されます。大きな寸胴鍋に湯を沸かして、檻に入れたまま放り込んでいました。取り出した果子狸の毛と内臓を除いてぶつ切りにし、煮込み料理にしていました。腹を切って内臓を出すのですが、果実を好むためか内臓がきれいだったのが印象に残っています。

「福臨門海鮮酒家」で料理長と市川(左) 香港の超有名店「福臨門海鮮酒家」の調理場にも1週間ほど通いました。日本ではなかなか食べられませんが、あの大きなホラ貝をハンマーでたたき割るのも僕の仕事でした。料理長は鍋を振るよりは、アワビやフカヒレなどの高級乾燥材料を戻すのに忙しそうでした。乾燥材料は戻しがいかに重要かということでしょうか。当時は六頭(1個100g)の大きなアワビがふんだんにありましたね。

 さて、「北杏南梅」といわれているように杏仁豆腐は中国でも北方のものが有名です。「敬賓酒家」のデザートといえば、「タピオカ入りココナッツジュース」。上等になるとツバメの巣や角切りにしたメロンを加えるのです。「杏仁豆腐」は出してなかったですね。杏の仁、水、米をミキサーにかけて沸かして砂糖を加え、中にゴマ餡の白玉団子を浮かべた「杏仁茶」はメニューにありましたが。

 あれから18年、流行り廃りの激しい香港にあって「敬賓酒家」の建物はそのまま残っています。主は代わってしまったけれど・・・



このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ 杏仁豆腐

阿倍野の点心師
人物 市川 友茂
中文之星
人物 福冨 奈津子
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