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中国料理TOPへ好吃(ハオチー)!中国料理! コラム一覧へ
連載コラム 好吃(ハオチー)!中国料理!
北京料理、上海料理、四川料理、広東料理、点心と5つのジャンルを、それぞれ担当の厨師(料理人)、点心師(点心専門家)が、中国での体験を交えながら料理の作り方とそれにまつわる話を紹介します。まずは、基本的な料理から始めましょう。
豚肉のそぼろ風シャオピン包み
豚肉のそぼろ風シャオピン包み


豚肉のそぼろ風シャオピン包み

   
北京の味 〜その1〜
 中国大陸の土を初めて踏んだのは、文化大革命が終結して間もないころで、確か1980年だったと思う。イギリスの植民地であった香港には、以前より度々出かけていたので、正確にいうと中国という国の大地である。

食堂車

食堂車

  最初の旅は一週間の予定で、北京を起点にして鉄道で洛陽、西安まで行き、空路で再び北京に戻るというルートであった。関西の詩吟研究会が主催する旅行に参加した経緯から、黄河流域の古都である洛陽と西安まで足を運んだが、漢詩を吟ずる趣味は未だに持ち合わせていない。因みに当時、中国へ入るためには中国政府からの招待状によるビザが必要であり、申請には日中の文化交流など公的な名目があると問題なく取得できたので、団体の一員に加えてもらったわけである。
  そのときの洛陽でのエピソードを披露したい。洛陽で外賓が泊まれた唯一のホテル、「友誼賓館」での夕食が早めに終わり、数名の団員を誘って街の散策も兼ね、夜食に出かけた。途中、一人の青年が自転車を押しながら近づき、流暢な日本語で話しかけてきたので、渡りに船だと思って近くに料理店はないかと尋ねると、そこまで案内しましょうと気さくに応えてくれた。
当時の洛陽の人々

当時の洛陽の人々

槐(えんじゅ)の街路樹が連なる薄暗い通りを一緒に話しながら15分ほど歩くと、「広州酒家」という看板が目に映った。場所柄、その屋号に意外性を感じたが、名前からは期待できそうだし、ほかに適当なところもなさそうなので、店の前で青年と別れ、階段を上った。店内は殺風景で、その上に客の姿もなく、閑散としていた。清潔な感じの若い女性の服務員(当時、「小姐」は禁句だった)は、少し驚いた様子でテーブルまでメニューを持ってきたが、日本の観光客だと告げると興味深そうに対応してくれた。
洛陽「広州酒家」

洛陽「広州酒家」

  簡単な料理を二、三品、それに餃子、春巻き、炒麺と地ビールを注文した。餃子のほかは期待したほどの味ではなかったが、食事をしながら彼女に厨房の見学は可能かどうか聞くと、閉店間際もあったのだろう、厨房に打診すると快く案内してくれた。すでに厨房は整理されていたが、写真も撮らせてもらい、自由な時間を過ごして我々は上機嫌でホテルに戻った。

  翌朝、団長に呼び出され、「昨夜、団体のメンバーで勝手な行動をしたものがいる。公安からスパイ容疑が掛けられている」と聞かされた。昨日のことを振り返ると、確かに人通りの少ない時間に、日本語が話せる青年と偶然に会うのも妙なことだ。そう、実は彼によって我々はホテルから監視されていたのである。当局には料理研究家だと伝え、事情を説明して始末書で済んだが、そういえば鉄道での移動中も車両の連結部分には公安官が座っていて、途中の駅に止まると車内のトイレ(下は線路が見える)は鍵がかけられていた。
瑠璃厰の骨董店「韻古斎」

瑠璃厰の骨董店「韻古斎」

  閑話休題。北京では、北京大学に留学中だった現、東京大学大学院教授の木村英樹氏と会う機会を得て、北京の街を案内していただいた。天安門広場、頤和園、天壇公園、瑠璃厰、王府井と歩き、3月というのに真冬並みの寒さの中で北京を満喫したが、やはり料理の感覚と味の違いに関してはカルチャーショックを感じた。

  王府井にある「全聚徳」の北京J鴨、山東料理「同和居飯荘」の三不粘(箸、皿、歯にくっつかないというウイロウに似た卵料理)、「四川飯店」の什 錦鍋巴などで数々の名菜を味わうことができた。
「同和居飯荘」の三不粘

「同和居飯荘」の三不粘

どの店にも 歴史があり、地方料理の特徴的な味わいと中国料理の現状を 捉えるには充分なものであったが、北海公園の中にある「倣膳」の肉末焼餅(豚肉のそぼ ろ風シャオピン包み)は秀逸であり、印象に残った。
   「倣膳」は清朝崩壊後、1925年に宮廷料理人を雇い入れ、 「倣膳」の調理法を模倣した料理、点心を作ってきた。蛤蟆鮑魚(アワビの蛙の形に似せた蒸しもの)、金魚鴨掌(アヒルの水掻きを金魚形に蒸したもの)、烏龍吐珠(ナマコとハトの卵の煮込み)、囀、捲(インゲンのアズキ餡巻き)、豌豆黄(大豆のゼリー寄せ)、小窩頭(トウモロコシの粉の焼き菓子)のほか多くの名菜、名点が知られている。現在は清宮風味の「満漢全席」もメインの売り物である。
「倣膳」の肉末焼餅

「倣膳」の肉末焼餅

   さて、今回ご紹介する肉末焼餅は、清末期の西太后が好んだという有名な点心で、炒肉末(豚肉のそぼろ風)を空心餅(焼餅のひとつで、中が空洞になるように焼いたもの)に詰めて食べる、いわば元祖ハンバーガーのようなものである。焼餅の歯応えとゴマの香ばしさ、炒肉末の旨みが一体となり、独特の食感があって特別の風味を醸し出している。素朴だが、代表的な北京の味のひとつである。家庭用にアレンジしているので、宮廷点心に是非チャレンジをしてください。

 

このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ 豚肉のそぼろ風シャオピン包み

中華の伝道師
人物 松本秀夫
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