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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
この季節におひとついかがでしょうか
   この原稿を書いているのは6月の上旬、2009年春コース生が到着してからはや2ヶ月が経ちました。
   毎年春コースの学生たちを迎え入れるとレクレール校周辺にあるブドウ畑の成長が気になり始めます。そして学生たちがシャトーを巣立っていく頃がちょうど収穫のタイミング、なんだかブドウとともに学生たちも成長しているような気がしています。
   ブドウに限らず春夏になると野菜や果物が豊かになります。
レクレール校にあるスリーズの木も4月上旬には満開に

レクレール校にあるスリーズの木も
4月上旬には満開に

フランス校両校の敷地内にはサクランボの木があり、まさに今が収穫のタイミング。今回はこのサクランボ(スリーズ:Cerise)を取り上げてみたいと思います。
   フランスではスリーズは春のフルーツの代表格です。日本ではスリーズの花は春に咲き、初夏に実がつくと言われていますが、フランスは冬から春にかけての期間が長く夏の期間が短いため春のフルーツと考えているフランス人がほとんどです。今冬は寒さが厳しく、寒い期間が長かったため、春以降に実るフルーツの生育が心配されていましたが、なんとか平年並みに回復し、ちょうど学生たちが渡航してきた4月上旬にスリーズの花が満開になっていました。


スリーズの花は白い花びらで梅のような形   4月21日 まだ青いですがスリーズの原形が

スリーズの花は
白い花びらで梅のような形

 

4月21日
まだ青いですがスリーズの原形が


   日本では別名「桜桃(おうとう)」とも言われるスリーズ、花の形を見ると「桜と梅」のようで、花びらは白。満開であった期間はわずか1週間程度で、花が散ると緑色のスリーズの実の原型が姿を見せ始めていました。5月初めには本来のスリーズの大きさにまで成長し、ちらほらと赤みを帯びてきているスリーズも見え始めていました。

5月4日 ようやくスリーズにも赤みがさしてきました   5月18日 こんなに赤くなりましたが・・・

5月4日 ようやくスリーズにも
赤みがさしてきました

 

5月18日
こんなに赤くなりましたが・・・


   5月の中旬すぎにはおいしそうな赤色へと色づき、イメージとしては日本のスリーズのような赤色となり、とても美味しそう。しかし、このときに収穫しても生食用としてはまだ酸味が強いと感じる段階で、5月末から6月上旬にかけてが理想です。ひとつの枝から何十粒ものスリーズが実をつけ、レクレール校ではパティシエの学生たちが中心となって収穫していましたが、いくら採っても採りきれないほど1本の木からスリーズが採れます。採った後しばらく放置しておくと色が赤黒くなり、もぎたてよりも少し時間を置いたほうが追熟されより甘さを感じます。

5月31日 赤黒くなってきた頃がちょうど食べごろのサイン   収穫して30分も放置しておくとこんなに黒さが増してきました

5月31日 赤黒くなってきた頃が
ちょうど食べごろのサイン

 

収穫して30分も放置しておくと
こんなに黒さが増してきました


   フランスのスリーズ、見た目は日本のスリーズとは異なりますが味は保証つき。フリュイ・ルージュ(Fruit rouge:赤いフルーツの総称)と呼ばれるものには甘さよりも酸味が強いものが多いのですが、サクランボは肉厚で甘みと酸味のバランスがとてもいいフルーツです。
   生食用のスリーズと同様、この時期からコンフィチュールやフルーツヨーグルトなどもスリーズのものが出回ります。レストランでもスリーズをつかったデセールがメニューに載り、ビストロタイプのレストランから3つ星のレストランまで、旬の素材を重視するレストランであればさらにその傾向が強く、フォワグラのソースにもスリーズを使っていることもしばしば。
外来講師ギィ・ラソゼ氏が披露したスリーズのデセール

外来講師ギィ・ラソゼ氏が披露した
スリーズのデセール

先日も外来講習で2つ星レストランのシェフ、ギィ・ラソゼ(Guy LASSAUSAIE)氏が来られた際も今レストランで出しているデセールとしてPoêlée de cerises au Cherry Marnier sorbet et palet croustillant à la fleur de thym(グリオットが原料のリキュール「チェリー・マルニエ」でポワレされたスリーズとタイムのソルベとサブレ)を披露していただきました。ラソゼ氏も「8月くらいまでは食べられるけど今が一番おいしい季節だよ」と言っており、レストランでも人気のデセールなのだそうです。
   レストランのみならず、フランスの家庭でもスリーズを使ったお菓子をよく作ります。最もポピュラーなお菓子が「クラフティ(Clafoutis)」、リムーザン地方発祥と言われていますが、いまやフランス人家庭では地方を問わず親しまれています。卵、牛乳、生クリーム、砂糖をベースにしたアパレイユ(液状の生地)をスリーズと一緒に型に入れ、オーブンで焼き上げるお菓子です。家庭でよくつくられるお菓子ですのでレシピもさまざま。その家々によって違いがあるお菓子ですが、スリーズの種を取る、取らないは大きく分かれます。種つきのほうが独特な香りがつきジューシーさも保てるというフランス人もいれば、種なしのほうが食べやすいとするフランス人もいます。(個人的には種なしのほうが好きです。)


スリーズの上にアパレイユが被っているタイプのクラフティ   アパレイユがスリーズの下にあるタイプのクラフティ

スリーズの上にアパレイユが
被っているタイプのクラフティ

 

アパレイユがスリーズの
下にあるタイプのクラフティ


   フランスのスリーズ、収穫高は世界トップ10に入るほどよくスリーズがとれる国です。 日本でも各地でスリーズがとれるようですが、東北を中心とした北日本が有名な産地、
最もポピュラーなビュルラ、直径24mmのサイズで3ユーロ/kg

最もポピュラーなビュルラ、
直径24mmのサイズで3ユーロ/kg

フランスのスリーズは南フランスが産地、特にフランス校のあるリヨン地方より南の地域が産地で、ここローヌ(Rhone)県は有名な産地のひとつだそうです。(北のほうでもスリーズはとれますが、いいものがなく市場では受け入れられないようです)
   ヨーロッパには200を超える品種があるといわれていますが、フランスの市場で見かける生食用の品種は3〜4品種、そのなかでもよく見かける品種はビュルラ(BURLAT)と呼ばれるもので、日本のスリーズというよりアメリカンチェリーに近い形状。色も赤黒く「赤い宝石」と呼ばれる日本のスリーズのイメージとはちょっと違います。
    また、生食用には不向きと言われているスリーズもあります。(フランスでは生食用のものをスリーズと呼び、不向きなものはスリーズとは呼ばないそうです)お菓子やソルベによく使用されるgriotte(グリオット)は甘みが少なく、酸味が強かったり、あと味に苦味が残ったりで生食用としては不向きなものとされ、
ムリーズ、実は渋くて生食には不向き。木は家具用木材としては高級

ムリーズ、実は渋くて生食には不向き。
木は家具用木材としては高級

レクレール校の敷地にあるmerise(ムリーズ)も同じく生食用ではなくブランデーなどに漬け食後酒として利用します。スリーズに比べ粒が小さく茎が長いのが特徴です。
   日本のスリーズは高級フルーツのイメージ、特に佐藤錦のようなブランド品種となれば卸値でも100gで300円前後、さらに上等なものなら1000円を超えたりします。対してフランスのスリーズは庶民のフルーツ、日本のように「秀」「優」といった品質を区別する表示はありませんが、粒の大きさでカテゴリー1、2の区別があります。先日マルシェで見たときは、粒の小さい(標準的?)カテゴリー2で3ユーロ/kg、パリのマルシェでも3〜5ユーロ台で売られていましたので、日本円に換算しても1kgで数百円という価格。木箱に入って売られることもありませんし、
「100ユーロもしない」と言われたカゴいっぱいのスリーズ

「100ユーロもしない」と言われた
カゴいっぱいのスリーズ

カテゴリー分けはあるもののすべての形や大きさが揃っているとも限りません。
    マルシェの方に「日本ではスリーズを買ったことがない」と言うと、その方も「私の子供の頃もスリーズなんて買ったことがなかったよ」と答えていました。それは「子供の頃には家の近くにスリーズの木があり、そこから採っては口に入れていた」そうです。「日本のスリーズはフランスのスリーズより高い、なかには20倍以上の値がするスリーズもある」「高価なものだと木箱に30粒ほど入って100ユーロくらい」と話すと「木箱じゃないけどこのカゴごと買っても100ユーロはしないよ」とも言っていました。マルシェでうずたかく積まれているスリーズを見ると「宝石」というイメージは想像もつきません。



 

コラム担当

辻調グループ校フランス校教務部
人物 田中 誠
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