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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
「王様のチーズ・チーズの王様」2
   前回のブリ・ド・モーに続き、今回は次男のブリ・ド・ムランと、日曜日のマルシェが有名なかわいらしい町、クロミエのチーズ、クロミエを紹介します。
   まずはブリ・ド・ムランですが、この「ムラン」も町の名前が由来となっています。じつはあのブリ・ド・モーよりもおいしいとされているのですが、なぜか「モー」のように有名ではなく、生産量も少ないのです。「モー」に比べると雲泥の差で、「モー」が7647トンに対し「ムラン」は278トン(1991年)。日本でもあまり見られないかもしれません。この理由は2つ挙げられています。一つは、「モー」より手間暇がかかる割にそれに見合う価格をつけることができないということ。
   そしてもう一つの理由は形が都会的な「モー」に比べて「ムラン」は田舎くさいといったイメージの問題だというのです。それを少しでも打開するために毎年6月にムラン市はコンクールを行っています。このコンクールでは製造と熟成とに分けて品評をして、それぞれにメダルが授与されます。というのは、「ムラン」も「モー」同様に製造と熟成が分業されていることが多いからです。ムランのほかにも6月はいろんな地域でチーズのコンクールが行われています。モー市やヤギのチーズで有名なAOCチーズ「サント・モール・ド・トゥーレーヌ」のトゥーレーヌ村などでも行われ、6月はチーズの月といっても過言ではないかもしれませんね。

ブリ・ド・ムラン brie de melun
1980年にAOC登録

産地:セーヌ・エ・マルヌ県全域と、オーブ及びヨンヌ県の一部
原乳:牛乳(無殺菌)
タイプ:白カビチーズ
固形分中乳脂肪分:45%
形状:直径27〜28cmの円盤状、重さ1.5〜1.8kg、高さ3.5〜4cm
熟成期間:最低4週間、通常は7〜10週間
特徴:同じブリでもモーに比べて凝固時間や熟成時間が長いため、香りや味わいは濃く、表皮の色は少し赤茶けた感じ。熟成したカビの匂い、黄色い中身と少し塩分が強い。モーが優雅で女性的に対し、ムランはコク、強さ、塩分があり男性的といえる。通はこちらをより好むといわれ、一度は食べてみてほしいチーズ。
作り方:ブリ・ド・モーとほとんど同じ。ムランの方がモーより若干小さめなので、1個作るのに牛乳は約14L必要。モーとは異なるムラン特有の製造法は以下の通り。
1、牛乳を温める回数は1度のみ、温度は一気に30℃まで上げること。
2、自然の乳酸菌を使って乳を凝固させること。ただし、助力としてなら凝乳酵素を使ってもかまわない。
3、凝固は少なくとも18時間はかけなければならない。
4、水分を切る作業はゆっくりと行う。
5、型詰めは「ペル・ア・ムランpelle à melun」を使い、手作業で行う。形はモーが平べったいのに対して、ムランは半球形(お玉のような形)です。
6、塩漬けは常に乾燥塩で行う(ムランは片面ずつ1日おきに行われる)。


あこがれの「ムラン」にやっと出会えました!
あこがれの「ムラン」にやっと出会えました!

あこがれの「ムラン」に
やっと出会えました!

 
ムラン型(フロマージュリー・ガノの展示物)

ムラン型
(フロマージュリー・ガノの展示物)


クロミエ coulommier
産地:セーヌ・エ・マルヌ県
原乳:牛乳
タイプ:白カビチーズ
固形分中乳脂肪分:45%〜50%
形状:直径12.5〜15cmの円盤状、重さ400〜500g、高さ3〜4cm
熟成期間:生乳は8週間 殺菌乳は4週間
特徴:カマンベールチーズより一回り大きいくらいで、見た目もカマンベールのよう。あまり身が流れるまで熟成させず、少し芯が残っている方が好まれるとのこと。AOCは未登録。
   伝統的なクロミエを製造しているところはもうごく僅かになってしまっているとのこと。今出回っているクロミエはほとんどがノルマンディで作られているものが多いとチーズ屋のおばさんが言っていました。工場製のものは殺菌乳などが多いそうですが、生乳で作られたものは軽やかな芳香とクリーミィで蜂蜜とハシバミの実のような風味があります。
  このクロミエ村で有名なのが毎週日曜日の朝市です。この朝市に集まるチーズ屋さんはクロミエ以外にもいろんな種類のブリチーズを見ることができます。

その他の「ブリ」チーズ
   前回記しましたようにブリチーズは、セーヌ川とマルヌ川に挟まれたパリ盆地の東に位置するブリ地方各地で作られています。それぞれが異なった風味、大きさなど個性豊かで、ブリ・ド・何々とそれぞれの地名が名前につきます。昔は30〜40種類あったといわれていますが、現在も生産されている比較的知られているブリチーズを最後に紹介します。


製造を見学したソシエテ・フロマジェール・ド・ラ・ブリのクロミエ
製造を見学したソシエテ・フロマジェール・ド・ラ・ブリのクロミエ

製造を見学した
ソシエテ・フロマジェール・ド・
ラ・ブリのクロミエ

 
クロミエのマルシェ。いろいろなブリがいっぱい

クロミエのマルシェ。
いろいろなブリがいっぱい


チーズの名前 地域 形状 乳脂肪分 熟成期間
ブリ・ド・ナンジ
brie de nangis
ナンジ 直径20〜30cm
高さ4cm
重さ1〜1.2kg
45% 4〜5週間
ブリ・ド・モントロー
brie de montereau
モントロー 直径18〜20cm
高さ3cm
重さ0.8〜1kg
40〜45% 5〜6週間
ブリ・ド・プロヴァン
brie de provins
プロヴァン 直径27cm
高さ4cm
重さ1.5〜1.8kg
45% 4〜5週間
フージェリュfougerus
(チーズの上にのせる
シダ=フジェールfougèreにちなんだ名称)
セーヌ・エ・マルヌ県 直径16cm
高さ4cm
重さ650g
40〜45% 約1か月


ブリ・ド・ナンジ   ブリ・ド・モントロー

ブリ・ド・ナンジ

 

ブリ・ド・モントロー


  今回ブリ地方に行って感じたことは、こんなに有名なブリ・ド・モーなのにモーの町に行っても全くチーズに出会えなかったことです。モーの町は大きく発展していて、普通の町と変わらず、残念に感じました。パリに近く、王様のチーズで栄えたブリ地方でも、都市化の波によって変わらずにはいられなかったのかもしれません。
   ムランも同様に発展とげていましたが、唯一変わっていなかったのが、クロミエです。クロミエから20分ほど車を走らせた所にある博物館「ミュゼ・デ・ペイ・ド・セーヌ・エ・マルヌMusée des pays de Seine-et-Marne」のおばさんが教えてくれたのですが、この辺りはブリ地方でも「ブリ・レティエールBrie laitière」と言われるまさしくブリチーズ本場の地域にあたるとのこと (laitièreは牛乳に関する、乳牛という意味)。この博物館ではブリ地方の特産物や歴史などが展示してあり、一部ブリの古い道具なども展示してあります。今回の旅はブリ追跡の旅だと感じました。



 

コラム担当

西洋料理担当
人物 西村 雅恵
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