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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
本場のガレットを食べにブルターニュへ
あつあつでパリッと焼き上げた生地の食感。香ばしいバターとそば粉の香り。そんなガレットが食べたくなった。代表的なところといえば、やっぱりブルターニュが本場かな。よし、ブルターニュ地方最西端の都カンペールへ行こう。
カンペール、私が初めてガレットに出会った町。学生だった頃、この町で研修をしていた友人と食べたのがきっかけで、今ではすっかり病みつきに。フランスのどこでも見かけるクレープの専門店クレプリーですが、ブルターニュ地方へ行くとカフェの数より多いんじゃない、と思うほど。そば粉(ble noir)で作るGalette(ガレット)と、小麦粉(froment)で作るCrepe(クレープ)の2種類があります。そば粉の方はハム、卵、チーズなどをのせて食事として、小麦粉の方はアイスクリームやジャム、チョコレートなどをのせてデザートとして食べるのが一般的。どちらも焼きたての生地にトッピングして食べます。
香ばしい香りと同時に懐かしい学生時代を思い浮かべながら、リヨンから夜行列車に揺られ、ようやくカンペールに到着したのは朝の9時。早速ホテルに荷物を預け、クレプリーの立ち並ぶ旧市街へ。中世の面影を残す木組みの家が残る石畳の道を登っていくと、リュー・ド・サレ(塩味通り)にプラス・オ・ブール(バター広場)、まさにガレットの道!ワクワクしながら歩くと、たくさんのクレプリーが並んでいる。片っ端からチェックしているとブルターニュ風のレースのカーテンがかけられているかわいらしいお店を発見。看板に大きく「FARINES BIO(有機栽培の粉)」「GROS LAIT MAISON(グロ・レ・メゾン)」、なんだろう? よしここに決めた。
「ボンジュール」と扉を押すと、お昼時もあって席はほぼ満席。活気あふれる店の奥から笑顔のマダムが案内してくれた。早速注文。ガレットは定番のコンプレ(ハム・卵・チーズ)にシャンピニョンを追加。飲み物はもちろんシードル(りんご果汁を自然発酵させた微発泡のお酒)。そして看板に出ていたグロ・レ(写真左)と、ブルターニュのクレプリーでよくみかけるレ・リボlait ribot(写真右)を注文。


レ・リボは元々はバターをつくるときにクリームを分離したあとの脱脂乳バターミルクを発酵させたもの、とか。甘みのない飲むヨーグルトのよう。ほどよい酸味がガレットにあう。そして気になるグロ・レ・メゾンはカフェ・オ・レ・ボールにたっぷりと入ってフルフルと揺れ、見かけは柔らかい杏仁豆腐のよう。酸味はなく牛乳の甘みを感じる。日本のゼリーのようなものが少ないフランスでは珍しい食感。なんだか懐かしい。これは殺菌していない全乳を発酵させたもので、メゾンつまりこの店の自家製。飲み物のメニューに載っていたけれど、そのままオードブルに、あるいはガレットといっしょに食べても、砂糖をかけてデザートにしてもいいようだ。

待ちに待ったガレットの登場。生地を四方から折りたたんだ中心に半熟の黄味が1つ。フォークをさしてトロリと流れ出したところにパリパリの生地をつけて食べる。ん〜っ、最高!そば粉とバターの香ばしさがたまらない。薄く焼き上げられていて軽いから生地のみの追加がメニューにあるのも納得。そしてシードルを一口。シードルは「ボレbolee」という陶器の小さなお椀で飲むのがお決まり。スッキリ。
次にせっかくなのでもう1枚。今度はホタテとポロねぎのクリームソース。大西洋に面するブルターニュに来たら魚介類もはずせない。こちらは四角にたたんだ生地に具を盛り付けている。ちょっぴりカレー風味なおかげで食欲増進。

そしてデザートへ。そば粉の生地でもOKというので迷わず2種類注文。そば粉にはバニラアイスとキャラメルソースをあわせ、小麦粉にはシュシャンchouchen(名産の蜂蜜酒)のジュレ(ジャムのようなもの)を。生地の塩味とマッチして甘みもほどよくペロリ。小麦粉の方がとっても薄くてパリパリとした食感。

どんな風に焼くんだろうと、お願いして見せてもらう。電器製のクレピエール(縁なしのホットプレート様)が4台。2台ずつで温度が違い、高温でまず生地にすばやく火を通し(写真左)、低温のものに移しかえ(写真中)、具をのせて火を通して(写真右)折りたたむ。生地を焼くのは片面だけ。なるほど卵が上手に半熟な理由も解決。


生地のタネはサラサラだろうと思っていたら以外にドロドロ(写真左)。クレピエールにのせてすばやく塗り広げ(写真右)、あまりはまた戻す。薄さの秘訣はこれ。生地の材料はそば粉、水、塩、焼くときに塗る有塩バターだけだそう。シンプルなのにとってもおいしいのは地元ならではだから?


かつては小麦が育たなかった貧しい土地に栽培されたのがそば。そして生まれたそば粉のガレット。ぶどうが育たないためワインができず、りんごから作るお酒シードルがつくられた。豊富な乳製品から作られるレ・リボやグロ・レ、そして有塩バター。飲み物を陶器で飲むのは陶器の町でもあるカンペールらしい。他の地方では出会うことのできない名脇役の存在もブルターニュに来て食べるガレットのおいしさを増してくれる。小さなガレットを通してブルターニュの食文化を少し覗くことができた。そんな気がします。


コラム担当

辻調グループ フランス校シャトー・エスコフィエ 製菓部
人物 浅丘 真優美
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