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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
南フランス初夏の香り
   今は6月の半ば。フランスはリヨンに住む私の周りではあちこちに見え始めてきた色がある。それは紫色で、道端やお店の前、道路の交差点など至る所で目にすることができる、かすかに香り始めてきたラベンダーである。日本ではなかなか目にすることができなかったが、ここリヨンより南にはどこかしことラベンダーが咲き乱れている。

リヨン付近の町ヴィルフランシュの近くで群生していたラベンダー   モンテリマールの高速道路のサービスエリアにも沢山のラベンダー

リヨン付近の町
ヴィルフランシュの近くで
群生していたラベンダー

 

モンテリマールの高速道路の
サービスエリアにも
沢山のラベンダー


   さて、ラベンダーにどのような印象をお持ちでしょうか。香水や芳香剤、石鹸やポプリ、時には庭の植え込み生花やドライフラワーを想像されるのではないでしょうか。食材としての利用は皆様の想像外かと思われますが、今回はラベンダーの香りを生かした食材を中心に紹介していこうと思います。

   そもそもこのラベンダーは1種類の花を指す言葉ではなく、ラベンダー類の植物の総称です。フランスでは主に「ラヴァンド・フィーヌlavande fine(コモンラベンダーまたは単にラベンダー)」と「ラヴァンド・アスピックlavande aspic(スパイクラベンダー)」それに「ラヴァンダンlavindin(ラバンディン)」の3種が見られます。

コモンラベンダーは1枝にひとつの花穂   ラバンディンは3本に分枝

コモンラベンダーは
1枝に
ひとつの花穂

 

ラバンディンは
3本に分枝

   コモンラベンダーはひとつの枝にひとつの花穂をつけ、プロヴァンスの乾燥した山岳地帯に見ることができます。すっきりとした繊細な芳香を放ち、香水業者などからは「ロール・ブルー・ド・ラ・レジオンL’or bleu de la région(この地方の青い金)」と呼ばれています。
   スパイクラベンダーはコモンラベンダーより低地の石灰質乾燥地帯に生育し、大変に強い香りをもっています。この香りが強すぎるためにフランスではほぼ使用されることはなく、スペイン、ポルトガルで絵画や陶器の塗料に使用されています。

   ラバンディンは、上記2種の交配種で、不稔性のため挿し木や株分けで繁殖します。茎の途中から3本に枝分かれして、それぞれに花穂をつけます。こちらもコモンラベンダーより低地に生育する花で、フランスの町を彩っている大半はこれです。香りは大変に強いのですが、コモンラベンダーほど繊細な香りはなく、主に石鹸や洗剤の香料に使われています。

 

香りのタイプ

用途

1Lのエッセシャルオイル を取るのに
必要な花量

コモンラベンダー
(乾燥山岳地帯に生育)

繊細で上品

高品質の化粧品や香水など

130kg

ラバンディン
(低地の石灰質乾燥地帯に生育)

強い

石鹸・洗剤など

40kg

スパイクラベンダー
(低地で生育)

強烈

絵画や陶器の塗料など

(エッセンシャルオイルとは花を蒸留して抽出した精油のこと)

アーティチョーク 根セロリ 枝ごと乾燥させたコモンラベンダー。店の外まで香っていました

乾燥させた花の量り売り。やはりラバンディン(右)より
コモンラベンダー(左)の方が若干高値

枝ごと乾燥させた
コモンラベンダー。
店の外まで香っていました。


効能

   不眠症・頭痛・ストレス・切り傷・火傷・乾燥肌荒れ・日焼け・虫さされ・鼻づまり・喉の痛み・リューマチ・蚤・回虫・・・。すなわち沈静・消毒・傷の癒合・抗感染性・対寄生虫効果・筋肉弛緩などの効果が得られます。ということがお分りいただいたところで製品へ。

アンフュージョンInfusion
(コモンラベンダーのハーブティー)

箱の色までラベンダー色のラベンダーのハーブティー

箱の色までラベンダー色の
ラベンダーのハーブティー

   90〜95℃のお湯を注ぎ10分おいて飲む。紫色を想像してしまいますが抽出液は緑色。味はすっきりとしており、ベルベンヌのハーブティーと似通っていてとても飲みやすく、香りはしっかりとラベンダー。心地よいほっとする飲み物です。1日に1杯か2杯飲み続けていればお医者さん不要と書かれておりました。



リクール・ド・ラヴァンドLiqueur de LAVANDE
(ラベンダーのリキュール)

ラベンダーのリキュール。本来の色がこれ   売店にて説明してくださったマダム

ラベンダーの
リキュール。
本来の色がこれ

 

売店にて説明して
くださったマダム

   アルコールにコモンラベンダーの花だけを入れて香りを抽出したもの。冷やしてストレートで飲むと、鼻に抜けるとてもすっきりとした香りの強いお酒です。アペリティフ(食前酒)として好まれているようです。
   本来の作り方をすると写真のようにわずかに薄茶色になり、紫色に出来上がっているものは、色素や、場合によっては後入れの香料が添加されているそうです。



ミエル・ド・ラヴァンドMiel de LAVANDE
(ラベンダーの蜂蜜)

ラベンダーの蜂蜜。香りには癖があるので好きずきかも・・・

ラベンダーの蜂蜜。
香りには癖があるので
好きずきかも・・・

   養蜂場によってラベンダーの種類は変わります。また、年によって味が若干変わり、それもまた楽しみとして受け入れられています。
   蜂蜜は蜜源になる花によってかなり味と香りが変わりますが、僕はこのラベンダーが一番好きです。甘みがくどくなく、さわやかな香りとすっきりとした後味が気に入っています。
   お菓子づくりでは、パン・デピスPain d’épice、ヌガーNougat、グラスGlace(アイスクリーム)などに、「ミル・フルールMille fleurs(千の花)」と呼ばれる花の指定のない蜂蜜やくせのない「アカシアAcacia」の蜂蜜と並んでラベンダーの蜂蜜はよく使われています。ラベンダーの香りはお菓子にとても向いているように思います。

ユイル・エッセンシャル・ラヴァンドHuile Essentialle LAVANDE
(ラベンダーのエッセンシャルオイル)

ラベンダーのエッセンシャルオイル。少量でも強烈な香り

ラベンダーの
エッセンシャルオイル
少量でも強烈な香り

   食料香料としてそのまま使用することが可能なので、お菓子づくりにも使えます。先述した効能を期待した際に、直接塗ったり、お風呂に入れたりなど、いろいろ使える優れものです。

観賞用

   日本では北海道富良野のラベンダー畑が有名ですが、ここフランスではプロヴァンスの町ソーや、観光名所として有名なゴルドから程近いところにあるセナンク修道院が特に有名な場所です。今回訪れたセナンク修道院は、紫色一面のラベンダー畑の中にあり、俗世とは切り離された特別な世界を見せてくれます。

セナンク修道院をバックにラベンダー畑   セナンク修道院の看板

セナンク修道院をバックにラベンダー畑

 

セナンク修道院の看板


   花として見るだけではなく、香りも味も楽しめるラベンダーを知ることができましたか? ラベンダーの場合、味といっても香りと切り離せない風味。風味は味の中でも大事な要素のひとつ。ラベンダーは食材としても大きな力を秘めているものだと確信しています。そうそう、ラベンダーの生花や乾燥させたものを煮出して作ったクレーム・ブリュレなども最近では巷をにぎわせ始めているようで、今後の商品開発にも期待をしています。ラベンダーを使ったメインの料理には未だ出会ったことがまだありません・・・。見かけられた方、是非ご一報を!

シャトー・デュ・ボワのラベンダー畑

シャトー・デュ・ボワのラベンダー畑

   今回訪問したプロヴァンスにあるラベンダー博物館で所有している「シャトー・デュ・ボワChâteau du bois(林の城)」で生産しているラベンダーのエッセンシャルオイルはA.O.C.(Huile essentielle de lavande de Haute-Provence)に認定されています。


 

コラム担当

フランス校製菓
人物 伊藤 直樹
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