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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
町全体がさわやかな香りに包まれる! マントンのレモン祭り
   南仏の海岸沿い。カンヌ、ニース、モナコなど有名な町、国が並ぶ中、モナコ公国の隣、ニースからは東に40km道を進めた所、イタリアとの国境近くに今回の目的地マントンはあります。
   そもそも、ここで、なぜレモン祭りが始まったのか? 時はさかのぼり1928年。とある1人のホテルマンがこう言います。「カーニバルに特産品のレモンを使ったらどうだろうか?」と。マントンには昔からカーニバルはありましたが、ただ大きいオブジェを引いて練り歩くものでした。そのアイデアが採用され、1928年にはホテルの庭をレモンで飾りました。翌年は町の広場を。そして1933年に現在の名前「フェット・デュ・シトロンFête du citron(レモン祭り)」が登場します。第1回は1934年。1935年にはレモンやオレンジで飾られた山車が出てきます。今のようにテーマが出来たのが1955年でした。毎年観光客も増え、現在では40万人以上の観光客が訪れます。
   会場は町の中心地ビオヴェス公園で行われます。入場料は9ユーロ。中にはたくさんのオブジェと出店が並んでいました。今回のテーマは世界の島々。さまざまなオブジェの特徴をレモンとオレンジの絶妙なコントラストで表現していました。

会場内のオブジェ    君は誰だ?

会場内のオブジェ

 

君は誰だ?


オブジェなどはこうやってゴムを使って固定しています

オブジェなどはこうやって
ゴムを使って固定しています

   1回の祭りで使うレモンの総量はなんと約150トン!! マントンだけのレモンでは足りないのでスペインからも買っています。祭りが終わった後のレモンやオレンジはジャムやアルコールに加工するので、果実を傷めることのないように、オブジェの見かけを考えて釘や針金は一切使用せず、金属製の土台にゴムを使って固定してあります。
   会場の中では、フレッシュのレモンジュースや、加工したジャムやアルコールを販売していました。ジャムはマーマレードに似ていますが、皮の部分をたくさん入れた少し苦味を残したものでした。アルコールはリモンチェッロと言ったほうがわかりやすいリキュールです。

フレッシュレモンジュース!! 酸っぱい!!   レモンジャム(中身はごろごろ)   レモン、オレンジ、ライムのアルコールの数々

フレッシュレモンジュース!! 酸っぱい!!

 

レモンジャム
(中身はごろごろ)

 

レモン、オレンジ、ライムのアルコールの数々


レモン祭り期間限定、レモンとオレンジを使った定食の中の1品

レモン祭り期間限定、レモンとオレンジを使った定食の中の1品

   また、近くのレストランではムニュ・ド・フェット・デュ・シトロンMenu de Fête du citron(レモン祭り定食)も登場!レモン、オレンジを使った料理が提供されていました。写真はその時の1品で、マントンのレモンを添えたホタテ貝の料理です。
ちなみにこんなメニューでした。
Huître pochée, sabayon au citron de Menton, sorbet oignon blanc
(ポーチド・オイスター、マントンのレモン入りサバイヨン、白玉ネギのシャーベット添え)
St.-jacques de la Côte d'Emeraude, mousseline de betterave et citron de Menton
(ノルマンディー地方エムロード海岸産帆立貝のソテ、ハーブソース、ビーツのピューレとマントンのレモン添え)
Cabillaud rôti, ragoût de légumes printaniers, jus de bouillabaisse à l'orange
(鱈のロースト、春野菜の煮込み添え、オレンジ風味ブイヤベース風ソース)
Poitrine de porc fermier cuite à basse température, sauce orange et endives caramélisées
(豚胸肉の低温調理、オレンジソースとカラメリゼしたアンディーヴ添え)
Crème de fenouil, salade d'agrumes à l'huile d'olive, sorbet fenouil et olives noires confites
(フェンネルのクリーム、オリーヴ油風味柑橘類のサラダ、フェンネルのシャーベットと黒オリーヴのコンフィ)

   マントンはフランスのレモンの生産量の7割を占める生産地です。マントンのレモン栽培の歴史は17世紀、マントンがまだモナコの領地だった頃にイタリア北部からレモンの栽培が伝わったことに始まります。温暖な気候、そして高い山があるおかげで強風、特に冬の北風の被害を受けずにすみ、栽培は盛んになりました。18〜19世紀にかけてマントンのレモンはモナコの主要財源であったのです。イタリアの国境の町であったこと、気候、土地、全てがうまく合わさり、ここまで生産量を誇る生産地になったのでしょう。2月には様々な柑橘類(レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、キンカン、セドラ)がたわわに実ります。この季節は太陽光もそれほど強くはないので果実が傷むこともありません。それでこの時期にレモン祭りが開かれるようになったそうです。
お化けレモン! 町で売られていました  左からセドラ(直径はなんと17cm)、マントンのレモン、普通のレモン

お化けレモン! 町で売られていました
左からセドラ(直径はなんと17cm)、
マントンのレモン、普通のレモン

   ちなみにセドラは、味、風味、形はレモンと似ています。しかし大きさは今回買ったものだと17cmもあり、別名お化けレモンとも言われています。和名はシトロンと言い、昔は中国語名からクエン(枸櫞)とも呼んでいました。この名前だと皆さん聞いたことがあるのでは。そう、クエン酸のクエンです。クエン酸とはレモンなどに含まれる酸のこと。その名前の由来もこのセドラから来ています。食べ方としては砂糖漬け、リキュールなどに加工、あとはそのまま薄切りにしてサラダとして食べることもできます。実際作って食べたのですが、皮の白い部分は爽やかな酸味と苦味があり、とても美味しく頂けました。
街路樹 町の人達はとらないのかな?

街路樹
町の人達はとらないのかな?

   マントンのレモンは普通のレモンより皮が厚く(セドラと同じようにサラダとして食べることもできる)、酸味、甘み、渋みのバランスが絶妙。また、果汁が多いのも特徴です。その味、特徴からかフランスではレストランやパティスリーでも重宝されています。料理にもお菓子にも合うんですね。
   柑橘類の栽培が昔から盛んだったマントンは街路樹としてレモンやオレンジの木が植えられ、町のいたるところにレモンやオレンジを使った製品が並びます。お菓子としてはタルト・オ・シトロン、フリュイ・コンフィ(フルーツの砂糖漬け)、オレンジピール、飴、ミモザ(レモン味のコンペイトウのようなもの)、パート・ド・フリュイ(ゼリー)など。また、柑橘類で香りをつけた石鹸なども売られていました。そのせいもあってか町の中はさわやかな柑橘系の匂いで覆われていました。

さまざまなお菓子達   出店のレモンとオレンジ

さまざまなお菓子達

 

出店のレモンとオレンジ


   毎年2月に行われるこの祭り。ぜひ1度訪れてみてはいかがですか? ちなみにヨーロッパ3大カーニバルの1つ、ニースのカーニバルも同時期に行われていますよ。


 

コラム担当

製菓部
人物 秋元 慎治
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