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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
マルシェ!(朝市)
リヨン、クロワ・ルースの朝市
フランスを中心としたヨーロッパから、食に関わるコラムをお届けします。初回は食の原点、朝市から始めることにします。


「リヨン、クロワ・ルースの朝市」

7月の日曜日の早朝、今日は雲ひとつない青空。南フランスからの爽やかな乾いた夏風を体一杯に感じながら、ここフランスはリヨン、クロワ・ルースと呼ばれる丘のマルシェ(朝市)で、このコラムを書き始めている。

パリ、マルセイユに次ぐ、フランス第3の都市リヨンは、パリと地中海のほぼ中間にあり、ガロ=ロマン時代から交通の要衝であった。「絹の街」とも呼ばれ、絹織物の世界的な中心地だったが、今は食文化の発信地「美食の都」として広く知られている。かのポール・ボキューズ氏のレストランは、リヨン中心地から車で15分程のところにある。

リヨンには昔も今も、ローヌとソーヌの2本の川が流れている。この2本の川に挟まれた部分の南はリヨンの繁華街で、クロワ・ルースはその北部に位置し、京都の西陣のような織物の中心地で、昔から職人さんたちが暮らしている。歴史ある古い街並みが保存されていて、リヨン旧市街地区とともに、1998年にユネスコの世界文化遺産にも登録された観光ポイントでもある。

リヨンの周辺には、素晴らしい食材の産地がある。北はブレスの鶏で有名なブレス地方、日本でもブームを巻き起こしたボージョレワインの産地であるボージョレ地域。南はワインのみならず野菜や果物の大産地であるローヌ河流域。ローヌ河・ソーヌ河の豊富な淡水魚、地元の特産品にも数え上げられるハムやソーセージ等、あげればきりがないほどある。

こういった産物の集散地リヨンを代表する市場は、常設の屋内卸売市場であるアル・ド・リヨンと、露天のクロワ・ルースのマルシェがある。

リヨン、クロワ・ルースの朝市クロワ・ルースには、火曜日から日曜日の朝7時頃から正午頃までマルシェが立ち、特に日曜日は、早朝から賑わいを見せる。いまは天気のよい夏の日曜日だけに、各店のカラフルなパラソルが光に映え、緑樹と木漏れ日を背景に、マルシェに華を添えている。メインストリートの歩道に沿って、各種の出店が数百メートルにわたり軒を並べている。果物屋、八百屋、魚屋、ソーセージを軒先に下げた肉屋、チーズ屋はもちろんのこと、ラベンダーやカモミール等を扱う乾燥ハーブ屋、ハチミツ屋、薪窯で焼き上げたというパン屋の出店も見かけられ、さまざまな地元の食材が、ところ狭しと並べられている。通りには、威勢のいい店主の掛け声が交錯し、籐かごを抱えた人たちで混みあう。行き交う人の何人かが、小脇にバゲットを抱えているのが、いかにもフランスらしい。

どの店も、食材を無造作に並べているように見えるのだが、微妙に異なる色合いのフルーツや野菜達に鮮やかな存在感を与えている。マルシェの至るところ、芳しい香りに包まれて、季節感にあふれている。

リヨン、クロワ・ルースの朝市今の季節であれば、白桃、黄桃、ネクタリンの香りが際立っている。どの種類の桃も、色や形が揃っていることは少なく、小ぶりでも、一つ一つが天恵を一身に纏い、五感を強く刺激する香りを放ち、毅然と自己主張しているように感じられる。

プロの料理人や製菓職人であっても、家庭の主婦であっても、にわか日曜料理人であっても、マルシェは、それぞれに食べる楽しみと料理を作る刺激を与えてくれる。店主の呼び声に立ち止まっては、挨拶を交わし、食べ物談義を始め、知り合いとすれ違っては、握手をして、食べ物話に花を咲かせる。

料理やお菓子がレストランや家庭の食卓、テレビや雑誌などのメディアといった表舞台で華やかな脚光を浴び、食文化の優れた国と言われる所以は、至るところで長らくこうした日常を維持してきたからこそのような気がする。ここに、フランスの食文化の原点を感じる。

マルシェの通りから、路地に入り、視界の広がる広場まで出ると、リヨンの街が一望できる。


コラム担当

辻調グループ フランス校
教務部マネージャー
人物 久保 昌弘
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