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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
豚肉だけで作るリヨン名物のドライソーセージ
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  ソーセージの歴史は古く、紀元前700年、ギリシャの詩人ホメロスが記した『オデュッセイア』の一節に「敵を負かした勇者よ、一番よく焼けたソーセージを選び給え!」と出てくるのが一番古い文献だと言われています。ソーセージには生ソーセージとドライソーセージがあり、生ソーセージはボイルかソテーで火を通してから食べますが、ドライソーセージはそのまま薄く切って食べることが出来ます。ドライソーセージは長い間乾燥熟成させて作り、長期間の保存がきくのが特徴で、昔から保存食として重要な食品でした。
  リヨンで有名なドライソーセージには「ロゼット」というのと「ソーシソン・ド・リヨン」というのがあります。どちらも使用する肉は豚肉だけで、牛肉と豚肉の両方を使って作る「サラミ」とは異なります。
  「ロゼット」はリヨンを含むボージョレ地区の名物ソーセージですが、いつからかフランス全土で作られるようになったため、他と区別するために「ロゼット・ド・リヨン」ということもあります。「ソーシソン・ド・リヨン」は文字通りリヨンのソーセージという意味で、作られているのはリヨンとリヨン近郊が多いようです(ちなみに、ロゼットはこの地域で「腸」を指す言葉)。この2つの外観はほとんど同じで(写真1)、肉の挽き加減、中に加える背脂の大きさや、ラードを加えるか加えないかの違いがありますが、それ以外は作り方もよく似ています。肉の挽き加減は「ロゼット」の方が粗く、背脂は「ロゼット」が約5mm角、「ソーシソン・ド・リヨン」が約8mm角とやや大きくなります。昔はどちらも同じように売れていましたが、最近は低脂肪嗜好のお客さんが多く、食べた時に脂っぽく感じる「ソーシソン・ド・リヨン」はあまり売れなくなったので、「ロゼット」の1/5の量しか作らなくなったそうです。
写真2 写真3 写真4

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  今回取材させてもらったのはC.REYNON(レイノン)というお店で(写真2,3,4)、場所はリヨン市内のど真ん中、ベルクール広場とジャコバン広場の中間にあります。ここの責任者は、ジョルジュ・レイノンM.Georges Reynonさん、年齢は60歳、69年前の1937年にお祖父さんが築き上げた店を引き継ぐ3代目のご主人(写真15)。とても優しい方で、親切に教えていただきました。初めに2階の事務所で説明を受けてから、実際に作っているところを見学させてもらいました。店内の奥に調理場があり、ここではトレトゥールtraiteur(持ち帰り用のお惣菜)(写真4は店内に陳列されているお総菜)を作っています。調理場のさらに奥にある、ラボラトワールと呼ばれる部屋(室内は18℃)でソーセージの仕込みが行われていました(写真5)。ソーセージ作りは一週間単位で行われ、多い時にはロゼットだけで200kgの肉を使って仕込むことがあるそうです。他の工場製ドライソーセージには、たいがい酸化防止剤が入っていますが、「豚肉本来の味を損ないたくないので使用しないんだ」とレイノンさんはおっしゃっていました。
写真5 写真6 写真7

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<ロゼットの基本分量>
    豚肉(肩肉ともも肉) 10kg
    塩 270g
    こしょう 20g
    背脂(5mmの角切り) 2.5kg
    ミニョネット 5g
    にんにくのみじん切り 7.5g
    水 200ml
    硝酸ナトリウム 5g
    水あめ 25g
    ブドウ糖 15g
ソーシソン・ド・リヨンは、背脂2.5kgのかわりに8mm角に切った背脂2kgとラード500gを使う(写真6は豚肉と塩、こしょう)。
<作り方>
  1. アッシャージュ(粉砕):半凍りの豚肉をサイレントカッターにかけ、ある程度細かくする。塩、こしょうを加えてさらに細かくする(写真7)。(ソーシソン・ド・リヨンは、ここでラードを加える。)
  2. メランジュールのボールに移し、背脂、ミニョネット(黒粒こしょうを粗砕きにしたもの)、にんにくのみじん切り、水に硝酸ナトリウムと水あめとブドウ糖を混ぜ合わせたものを加え、混ぜ合わせる。(写真8)
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  1. 冷蔵庫(2〜3℃)の中で一晩マリネする。
  2. プサージュ(充填):翌日、スタッファー(写真9)と呼ばれる機械を使って、塩水に漬けてよく洗った豚の直腸(写真10)に3のファルスを詰めて端をくくり、伸縮性のあるネットを被せて、形を整える(取材に行った日はこの作業を行っていなかたので、残念ながら見れませんでした)。
  3. エテュヴァージュ(予備乾燥):木の棒に吊るし、エテューブと呼ばれる乾燥機(湿度50%)の中に3日間入れる(写真11)。1日目は24℃、2日目は20℃、3日目は16℃に温度を下げる。
  4. セサージュ(乾燥熟成):乾燥室と呼ばれる部屋(12〜14℃、湿度は78〜82%)に移し変える。乾燥熟成させる期間はソーセージの大きさによって異なり、小さいものであれば約4週間、大きいものになると約8週間乾燥させる。エアコンの風が直接当たらないように手前にビニールを垂らしている(写真12)。
  5. 乾燥熟成が終われば、出来上がり(写真1の白い紐がロゼットで、赤い紐がソーシソン・ド・リヨン)。冷蔵庫(4℃)で出荷まで保管しておく。大きさや重さに規定はなく、20〜60cmくらいのものが多い。断面を比べてみると「ロゼット」の方は、濃赤色で白い背脂が散らばっている(写真13)。「ソーシソン・ド・リヨン」の方は、くすんだ赤色で少し大きめの白い背脂が散らばっている(写真14)。
写真12 写真13 写真14

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  外側の硬い豚腸をはがして、薄くスライスしてから食べてみると、肉質はほんの少し柔らかく、肉の旨味と中に入っている背脂のまったり感がうまく混ざり合っていて、すごくおいしい。「ソーシソン・ド・リヨン」の方は背脂の塊が大きいこともあり、若干しつこいように感じますが、個人の好みの差程度で、どちらも負けず劣らずの味だと思います。サラダやピクルスなどを添えて食べたり、他のソーセージと一緒に盛り合わせにしたり、カスクルートの中に挟んで食べたりと、いろんな食べ方ができます。
  レイノンさんのお店では全て手作りなので、「ロゼット」30,95ユーロ/ kg、「ソーシソン・ド・リヨン」33,5ユーロ/ kgと少々高い値段で売られています。ほかのシャルキュトリ(豚肉加品販売店)やマルシェでも売っているので(20ユーロ/ kg前後)、リヨンに行く機会があれば、ぜひ買って食べてみてください。切るのが面倒だとおっしゃる方は、リヨン市内のビストロ街に行くと食べる事ができます。
C. REYNON

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  【取材協力】
  C. REYNON
  13 rue des Archers 69002 Lyon
  Tel : 04.78.37.39.08
  営業時間8:30〜13:30 / 15:00〜19:30
  定休日:日曜日・月曜日


コラム担当

辻調グループ校 西洋料理助教授
人物 城塚 良彦
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