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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
トリュフ、黒いダイヤモンドの魅力(1)
ラルバンクの看板 フランス料理で冬の代表的な味覚のひとつにトリュフがあります。12月から3月初旬にかけてフランスのトリュフ産地ではマルシェ・オ・トリュフ(トリュフ市)が開かれます。トリュフといえばペリゴール地方が有名ですが、隣のケルシー地方、ラルバンクで行われた市を見物に行ってきました。市といっしょに開催されたトリュフ教室にも参加したので、今回はそこで学んだトリュフについてのあれこれをご紹介し、次回は市の様子を中心にお伝えいたします。

トリュフはとてもミステリアスなきのこで、一生を地中で送る。強い芳香、黒くてごつごつした形、なかなか採れない希少価値から、黒いダイヤモンドといわれているが、現在流通しているトリュフはトリュフ園で栽培したものが大半である。トリュフ発生のメカニズムはまだ完全には解明されていないが、昔からトリュフが採れるところでドングリから発芽した苗木を移植するとトリュフが採れることが知られていた。そのようにして出来たトリュフ園から採集しているのだ。

(1)トリュフの生態
菌根(ミコリザ)松茸が松の木の根元に生えるようにトリュフは楢、樫、はしばみなどの木の根に胞子が付き菌根(ミコリザ)を作る。木から栄養分をもらって菌糸を成長させ、木に地中から吸収する水分やリンなどを供給する。こうして持ちつ持たれつの関係で成長する。ここまでは松茸と同じだが、菌糸が成長してきのこの「基」が出来た時点で、共生した木から独立して、菌糸束で直接栄養分を吸収して成長するようになる。夏にトリュフは成長して、寒くなると熟成し始め、熟成とともにあの強烈な芳香を出すようになる(1月〜2月は収穫のピークになる)。 そして2月の下旬には次世代を生むために胞子を放つ。

掘り立てのトリュフ	ラルバンクのトリュフ市のトリュフ	ごつごつしていない南仏産のトリュフ

(2)トリュフの生育環境
フランスのトリュフの産地分布は、ぶどうの産地とよく似ている。石灰質土壌で、小石まじりで通気性と水はけがよく、やせた土地を好む。これに加え、トリュフの成長する夏に1,2度のにわか雨が必要で、比較的乾いたところを好む。

(3)トリュフの種類
トリュフの断面世界にはトリュフの仲間は約30種類ある。市場に出回るのは約10種類。主なものはイタリアのピエモンテ地方が有名な白トリュフ(Tuber magunatum)、最近日本にも出回っている中国トリュフ(T. himalayense)、夏に採れる夏トリュフ(T. aestivum)、秋トリュフともいわれるブルゴーニュ・トリュフ(T. uncinatum)、ケルシー、ペリゴール、南仏を中心に採れ、ペリゴール・トリュフとも呼ばれる黒トリュフ(T. melanosporum)などがある。 白トリュフ以外は外見はあまり変わらないが、切った断面や、芳香にはかなりの違いがあり、値段を比べれば明らかである。

(4)トリュフ栽培の歴史
先にも書いたように苗木を植えて栽培することはだいぶ前から知られていたが、19世紀にフロキセラ(ブドウネアブラムシ)でブドウ園がひどい打撃を受けたあとに広まり、カオールに近いこの村でも、1870年代にブドウに変わり楢を植えトリュフ園にしたという。 これをきっかけにトリュフ園は急速に増え、1892年のフランス全体での収穫量は2000トンに上がった。第2次世界大戦時には食糧難からトリュフ園は農作地に変えられ1958年には130トンになる。その後も減り続け、現在はというと2001年で9.3トンにすぎない。

ちなみにラルバンクのある地域(ロット県)では、1.5トンぐらいである。トリュフのなぞが解明されつつある現代でも、収穫量が増えないのはトリュフ栽培には時間がかかり、人間のコントロールできないよう要因がまだかなりあるためである。 トリュフが共生する木はトリュフの種類によっても違う。ここではヨーロッパナラ、セイヨウヒイラギガシ、セイヨウハシバミの苗木の根にトリュフの胞子がついて菌根が出来るのを待ち、トリュフの好む環境の土地に移植する。これがトリュフ園なのだが、ハシバミで4〜5年、ヒイラギガシで10年、ナラで14〜15年たたないとトリュフは収穫できないという。また、移植しても土地に適合できなければ、トリュフは採れない。長い年月と、自然の力に任せる部分が多く、トリュフ園だけで生計を立てる人はいない。

(5)トリュフと料理(写真はトリュフのスープ)
トリュフのスープ トリュフは古代から知られ、エジプト人は鵞鳥の脂で包んで食べていたという。しかしトリュフのミステリアスさは料理にも及び、中世には悪魔の現れと忌避され、ルネッサンス期には大流行し、その後再び食卓から姿を消した。フランス料理に欠かせないものになったのはルイ14世時代以降で、当時はペルドリという野鳥との組み合わせが典型的であったが、19世紀には、フォワグラとの組み合わせに変わり、今日に至っている。しかし19世紀当時、トリュフは嵩増やしに使っていたというから驚いてしまう。以下次号。


コラム担当

現在、フランス校レクレール勤務
人物 吉川 喜美子
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