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連載コラム 半歩プロの西洋料理
「半歩プロ」をテーマに家庭でできる西洋料理を紹介するこのコラム。まずは個性豊かな担当シェフの声をどうぞ。「フレンチって難しくないよね」「語るで〜!」「対談がしたい!」「研修先のレストランではなー」。えー、お話し中すみません、それは「家庭でできる」料理なんですよね?みなさーん、聞いてますかー?だからテーマがあるんだってばっ!守って下さいよ〜っ!
アル・デンテのひとりごと(6)
アル・デンテ(以下A):前回は「日本人は日本のイタリア料理が好き」というところで話が終わりましたが、今回はその続きからお話を伺います。

辻(以下T):うちは支店がイタリアに・・・あっ、本店がイタリアにありますよね。支店やなんて言うたら怒られますね。

A:ふふふっ。

T:僕も最初の頃は、「これがイタリア料理や」と思って本店の味をそのまま再現して出してましたけど、でもこれ何か違うなあと思って・・・。アル・デンテの考え方もそうですよ。まったく同じに再現できてもお客さんがうまいと言わなかったら、何の意味も持たなくなってしまうんです。それで、自分の思ってるアル・デンテを他の人はどう思うかってことを聞いていくんですよ。そうすると必然とアル・デンテの平均値が出て来ますよね。そうは言っても、人によってほんまに違いますけど。

A:そうですよね。年齢によっても違うでしょうし。

T:うん、違う違う。オーナーが好きで賄いでよく作ってたメニューがあるんです。ある時、そのオーナーが「トシ、久しぶりにあのパスタ作ってくれ」って言うんですよ。何てことはないですよ、ほんのちょっとのトマトとエシャロット、オリーブオイルとバジリコで和えただけのパスタ・フレッダ(冷製パスタ)なんですけどね。ただパスタがほんまアルデンティッシモ(とてもアル・デンテ!)なんですわ。

A:そんなにかたいんですか?

T:でもそれをバクバクッと食べるんですよ。ちょっと生っぽいけど噛んでるうちにパスタのうま味が出てくるんで実は僕も大好きです。でも他の日本人にはかた過ぎるみたいで、社長に「俺にも作って」と頼まれて作ったんですけど、もう一口食っただけで「俺、だめだぁ・・・歯が・・・ごめん」と言われました。

A:ご飯のかたさに好みがあるみたいなもんですよね。

T:いやっそれよりももっと深いですよ。

A:ところで、お店で出されているアル・デンテは辻総料理長がお好みのアル・デンテなんですか?

T:そうですね。リゾットの場合は多少芯が残ってます。ただし基本的には、クルード(生)ではなくて、米の粒に均一に火が通ってるってことが大事です。

A:辻総料理長はリゾットを煮る時に塩を少しずつ入れていかれますが、何かこだわりがあるのですか?

T:一番最後に塩をしても表面にしか味がつかないし、お米の香りもしないでしょ。

A:少しずつ塩をして米にじわぁ〜と味を入れていくって事ですね? その他にも何か理由がありますか?

T:味や香りが出やすくなるっていうのもあるし、他には塩が入ってると火の通りを一定化してくれる働きもありますね。

A:お米を裸にしないように(ブロードに浸った状態を保つ)とよく言われていますが、それもやはり何か意味があるんですよね。

T:要するに炊きむらを出さなということです。うまみがしっかりのっていながら、お米の香りもして、粒のひとつひとつにちゃんと均一に火が通ってる。もちろん火通しはアル・デンテで。そして仕上げにマンテカーレをするとふぁ〜と香りが立つ。このマンテカーレも重要で、食べた時に一体感を出すんです。

A:こだわりがすごいんですね。

T:でも料理によってアル・デンテの状態は変わってきますよ。マージョラムを混ぜ込んだアーティチョークのリゾットなんかは非常に軽快感があるんで、米の固さは食べた時にツブツブツブッとした方がいいですね。ちょっと固いかなっていうくらい。

A:その方がおいしいんですね。

T:僕はね。でもやっぱり人によって違うし、大阪と東京でも違うやろうね。僕はどうしても、みんなに関西系って言われるんですよ。まあ関西出身ですから当たり前やねんけど。

A:他にもありますか?

T:シンプルにお米だけを楽しんでもらうリゾット、例えば、シャンパンとエルベ・ミステ(香草ミックス)だと、バターだけでマンテカーレして後はチーズもなしにして、ちょっと固めに仕上げようかとか。もしくはちょっと柔らかくしてすずきのグリルに添えるなら、この場合のリゾットはソースでもなく、他の素材を一体化させてくれるような感じのものに仕上げるので、あまりアル・デンテという言葉では表現しないです。

A:そういう時にはどんな表現をするんですか?

T:どんなって・・・「これくらい」とかやね。「まあ、アルデンティッシモでもないし・・・その間」とかね。

A:食べておいしいといった感じですね。

T:そうですね。その表現を言葉で理解しようとすると難しいんで、感覚で理解するほうがいいと思うんです。そういう意味で料理人で一番大事なのは味見だと思います。絶えず味見してキュイソン(火通し)も確認する。だから、パスタのセクション担当はもちろん、ギャルソンにまで「食べさせて、これくらい」の微妙な差が分かるようになるまで試作も何回もするんです。だからうちのやつらはリゾットだけなく、賄いのご飯にもものすごいうるさいですよ。

A:全員が辻先生の「これくらい」が分かるまでするんですか。

T:いや、さっきアル・デンテの固さをみんなに聞くって言ったのと同じで、どっちかっていうと僕が確認するんです。僕が思うことをみんなに確認する。「いや、ちょっと固いんじゃないですか」って言われたら「もうちょっと火を通してみよか」って僕が確認をして、それをみんなに理解してもらうんです。

A:話は少し変わりますが、辻総料理長のお店ではどのようなパスタを使われているんですか。

T:うちは乾麺は使ってないから、パスタ・フレスカ(手打ちパスタ)がほとんどですね。この場合のアル・デンテは乾麺と違って麺のコシです。それとパスタ・フレスカで大切なのは熟成させること、粉の風味をどうやって生かすかってことです。

A:パスタによって粉の配合とか変えたりされてるんですか。

T:まあ多少はしますけど、割合を多少変えたりぐらいでそんな大したことじゃないですよ。作り方はたいていは1回練って、1回熟成させて、成形してまた熟成させてですね。うちの場合は乾燥はさせません。

A:熟成させるとどうなるんですか?

T:粉の風味がよくなる。グルテンが増えるのを押さえるってことかな。

A:主に前日に作るんですか?

T:その日消費する分を前日に練って当日に成形って感じですね。まあ実際のところそれでは間に合ってないのが現実ですけど・・・でもストックはしません。

A:パスタ担当の人は大変ですね。

T:そうですね。ガルガネッリとか、トロッフィエとか、パスタ・リピエーノ(詰め物パスタ)とかね。必死でやってますわ。

A:そうやって追われながらも色んなパスタを成形していくから、極められるんでしょうね。あぁ…私ももっともっと修行しなければいけないと痛感しました。先生のお話を参考に私のアル・デンテをしっかりと極めていきたいと思います。本当にどうもありがとうございました。



このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ ストラッチ、鶏もも肉のミートソース和え

アル・デンテこと
人物 由本 牧
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