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まったく個人的な話ですが、生麩屋さんで働いている従弟に「生麩で何か西洋料理が出来ない?」と聞かれ、・・・ということから、この話は始まります。
安うけあいしたものの、麩については「麩=グルテン(?)」といった程度の知識しかない状態。この際しっかり勉強してみようと、その道のプロにお話を伺いました。
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伊藤 雅人さん |
ご説明頂いたのは、株式会社「いとふ」 専務取締役 伊藤 雅人さんです。
株式会社「いとふ」は、京都の老舗の麩屋(江戸期創業)で修業された伊藤禎雄社長が、1956年に創業された会社で、生麩、焼き麩の製造・販売を行っておられます。http://www.itofu.jp/
−まずは麩の歴史についてお伺いしたいのですが、日本人はいつ頃から麩を食べているのでしょうか?−
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梅麩 |
麩の伝来には諸説ありますが、室町時代(1392〜1493年)の初期という説が有力です。 当時は明との間で勘合貿易が行なわれていました。貿易により物だけではなく人の行き来もあったわけですが、その中には明に留学する多くの僧侶もいました。
当時の仏教は戒律が厳しく、僧侶達は殺生禁断、肉食を断っていました。そのため、肉に代わる栄養タンパク源を「大豆」や「小麦」に求め、それらの加工品として「大豆」は豆腐や湯葉、また、「小麦」は麩という形でも食されました。明で、そのような体験をした僧侶によって「麩」は日本にもたらされたのだと考えられています。
−室町時代の「麩」は、現在のものと同じものでしょうか?―
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花麩(焼き麩) |
実際に食べたわけではありませんが、現在のものとはずいぶん違うものだと思います。
現在、「麩」の原料には西洋系の小麦を機械挽きした「精白小麦粉」を使用しています。
この小麦粉は安政6年(1859年)以降に輸入されるようになったもので、それ以前、特に室町時代の頃は「精白小麦粉」より、色が黒く、粒子の粗い、「ひき割り小麦」が使われており、その「ひき割り小麦」から、「小麦デンプン」と「小麦タンパク」が分離されていました。そのため、「小麦タンパク(麩)」は、今のものより色が黒く、口当たりの悪いものだったと思います。
−当時は「小麦タンパク」は何と呼ばれていたのでしょうか?また、どのようにして食べていたのでしょうか?−
伝来当時、「小麦」は「麺(めん)」、「小麦タンパク」は「麺筋(めんちん)」と呼ばれていました。小麦の「すじ(筋)」という意味ですね。現在の中国には、まだ「麺筋」という言葉が残っているそうです。
当時の食べ方は、麺筋を玉にとり大きな釜でゆで上げて食べるのが主流だったようですが、他にも煎り麩や炙り麩にして食されていたことが古文書などから伺うことが出来ます。今の「麩」に比べると決して美味しいとは言えないもののように思いますが、当時「ひき割り小麦」は高価であったため、一般庶民では口にすることの出来ないものだったようです。
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いちょう麩 |
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もみじ麩 |
桃山時代に入ると、麺筋を焼いたもので「ふのやき」と呼ばれるお菓子がありました。天正年間に千利休が催した茶会にも用いられたことが文献に残っています。この頃から、特別な催しでの献立に麩を使ったものが度々見受けられるようになってきますが、これらはあくまで、生麩もしくは生麩を調理加熱したもので、現在の「焼き麩」のように鉄板の上で焼かれるものが生まれたのは、先ほどお話した「精白小麦粉」が手に入るようになった江戸時代末期以降だと言われています。
−現在、麩はどのように作られているのでしょうか?−
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ちくわ麩(焼き麩) |
麩の主材料は、現在でも小麦粉のタンパク質である「グルテン」です。 生麩は、グルテンに「もち粉」を加えて練り、ゆがいて作ります。 焼き麩は、グルテンに「小麦粉」を加えて練り、焼いて作ります。
−製麩のメーカーでは、グルテンも製造されるのですか?−
ほとんどのメーカーが、食品素材メーカーからグルテンを購入しています。販売されているグルテンには、「生グルテン」と「活性グルテン」があります。
−生グルテンと活性グルテンは、どのように違うのでしょうか?−
「生グルテン」は、小麦粉から取り出されたままの状態のもので、非加熱で水分が約70%含まれています。製品毎の水分量にバラつきがあるのと、保存性が低いことが欠点ですが、風味が良いのが特徴です。取り扱うには、状態を把握するための経験が必要になります。
「活性グルテン」は、生グルテンを粉末乾燥させたものです。品質が一定であるため、配合等が行いやすく、作業性は高いのですが、風味は生グルテンより劣ります。
当社では、創業以来、生グルテンを使っての製造を行っています。
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桜麩 |
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青もみじ麩 |
−先ほどのお話で、生麩にはもち粉、焼き麩には小麦粉を加えるとお聞きしましたが、製品によって加えるもの、例えば、小麦粉の種類などは変わるのでしょうか?−
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白玉麩(焼き麩) |
生麩の場合、加えるもち粉の種類によって食感が変わります。麩饅頭のように柔らかい食感のものには、羽二重粉を使ったりします。 焼き麩の場合、煮込み時間の短いものには薄力粉、長いものには強力粉を加えます。また、生麩と同じように食感の変化をつけるために薄力粉と強力粉の使い分けを行っています。
以下、製造過程等の紹介は、次回に続く。
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