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連載コラム 半歩プロの西洋料理
「半歩プロ」をテーマに家庭でできる西洋料理を紹介するこのコラム。まずは個性豊かな担当シェフの声をどうぞ。「フレンチって難しくないよね」「語るで〜!」「対談がしたい!」「研修先のレストランではなー」。えー、お話し中すみません、それは「家庭でできる」料理なんですよね?みなさーん、聞いてますかー?だからテーマがあるんだってばっ!守って下さいよ〜っ!
探究「西洋料理に日本料理食材を使ってみたら…?」<湯葉の段>
八木幸子社長

八木幸子社長

  「湯葉を毎日お召し上がりの方は、どれくらいいらっしゃいますか?」今回、“湯葉”についてお話を伺った「株式会社比叡ゆば本舗ゆば八」の八木幸子社長は、講演を依頼されると、いつも聴衆にそう語りかけるところから話を始められるそうだ。なんとも大胆な問いかけだが、それほど“湯葉”を愛しておられる証しかもしれない。

ゆば八本店

ゆば八本店

  「株式会社比叡ゆば本舗ゆば八(以下、ゆば八)」は、1940年に「ゆば八商店」として創業された湯葉専門店で、69年に株式会社を設立、八木憲一氏が代表取締役に就任。94年より憲一氏夫人の幸子さんが社長に就任され、現在に至っています。
(詳しくはhttp://www.hieiyuba.jp/




 −よろしくお願い致します。まずは湯葉の歴史についてお伺いしたいのですが、湯葉は日本にいつ頃伝わって来たのでしょうか?−

   伝来について正確な年代はわかりませんが、今からおよそ千二百年前、伝教大師(最澄)が仏教やお茶とともに中国から持ち帰ったと伝わっています。伝教大師は在家の人たちに作り方を教え、地域の産業育成に貢献しようとしたようです。また寺内では精進料理の食材として、無くてはならないものとなっていったようです。

 −“ゆば”は、京都では「京湯葉」、日光では「日光湯波」などと書きます。呼び名や書き方は、他にもあるのでしょうか?−

   古く宮家では、「湯藻(ゆも)」と呼ばれていたと聞いています。江戸時代の書物『和漢三才図会』(18世紀)には、「ゆばは「宇波」と書き・・」と書かれており、またその約百年後に書かれた『骨董集』には、「本名は“うば”なり、その色黄にて皺あるが、“姥”の面皮に似たるゆえの名なりといへるは、みだりごとなり(間違いだ)。『異制庭訓往来』に「豆腐上物」とあるこそ本名なるべけれ(本当である)。」と書かれています。豆乳の上にできるという意味で、「上波」「油波」「油皮」という文字を使った時代もあったようです。

 −ここからは実際に湯葉の製造工程を見学させていただきます。まずは材料についてご説明をお願いします。−

   湯葉の原料は「大豆」と「水」。いたってシンプルな食材です。それだけに素材と工程を吟味する卓越した目が、作り手に要求されます。当社では、大豆は、近江産のものと、カナダ産のものを、単独もしくは混合し、それぞれの製品に適した状態で使用しています。いずれは大豆の品種を改良し、真に湯葉にあった品種を作り出すことが私の夢です。

 −作業は「豆乳作り」からはじまるのですね。−

湯葉釜

湯葉釜

   大豆を洗い、一晩水につけ、翌朝すりつぶします。そのくだいた大豆を湯釜に入れて、熱して、漉すと、汁(豆乳)と粕(おから)に分かれます。豆のすりつぶし方や、豆乳のしぼり加減は、湯葉の風味を左右する大切な作業で経験を必要とするところです。
   こうしてできた豆乳を湯葉釜で90℃ほどに熱します。湯葉釜は縦3m、横2m弱の大きさで、32の升目に仕切られています。


 

それぞれの升の表面にできた皮膜を2本の竹串ですくい上げます。
1本は湯葉をすくって乗せるため、もう1本は湯葉が内巻きになるのを防ぐために添えます


すくい上げた湯葉は、竹串に乗せたまま干します   湯葉釜の湯気がスチームとなり、ハンカチにアイロンをあてたようにしなやかに乾きます

すくい上げた湯葉は、竹串に乗せたまま干します

 

湯葉釜の湯気がスチームとなり、ハンカチにアイロンをあてたようにしなやかに乾きます


 −ひとつの湯葉釜で作られる湯葉は、すべて同じ商品となるのでしょうか?−

   豆乳は湯葉をすくい上げる度に、色も味も変わります。そのため、出来上がる湯葉も時間と共に変化してきます。
   最初にとれる湯葉は破れやすく「さくい」と表現されるものが出来ます。2枚目以降、すくい上げられる湯葉が製品となってゆきます。何枚かすくい上げると、豆乳が煮詰まり、糖度も上がり、色も黄色みを帯びてきます。このときできる湯葉を「甘湯葉」と呼びます。大豆の持つ風味が強く感じられるのが特徴です。揚げ物にしたり、火であぶるだけで美味しく食べられます。

   この湯葉釜の湯葉も、そろそろすくい頃になりました。直接すくって、どうぞ召し上がってください。本当に美味しいですよ。


<あとがき>
   夫である先代社長が急逝され、その職を引き継がれた幸子社長は、一湯葉会社の社長であるにとどまらず、「湯葉の伝道師」となった。伝道師が神の声を人々に伝えるが如く、湯葉の今日を守り、湯葉の明日を語る。大学での講義、各地での講演など、彼女の行動が出会いを生み、波打つ豆乳のように湯葉の波が世界に広がっていく。インドネシア、韓国、フランス、アメリカでの「湯葉を使った料理のデモンストレーション」の成功、レストラン「NOBU」オーナーの松久信幸氏との出会い、「念ずれば夢かなう」が彼女のモットーだが、その“想念(イメージ力)”は相当に強いようである。

   「食品偽装」を生み出す下地のある国の中にあって、こだわりを持って作られている食材がまだまだあることに喜びを感じる。(徐々に当初のテーマからずれてきたようにも思うが・・)新たな喜びを見つけるために、これからも取材に励みたいと思う今日この頃である。

   なお、湯葉作りに関心がある方には、ゆば八の「ゆば揚げ体験ツアー」をお勧めする。 社長の言われる通り美味です。(詳しくは、ゆば八のHPをご覧ください。)



このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ 湯葉の湯葉による湯葉のためのカネロニ

近江の守護代
人物 木幡久也
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