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ニュースリリース

「第2回辻静雄食文化賞」受賞作・受賞者決定

プレスリリース
辻静雄食文化財団

2011.05.12

辻静雄食文化賞選定委員会(委員長・辻芳樹/大阪市阿倍野区松崎町3-16-11 辻静雄料理教育研究所内)は、第2回辻静雄食文化賞に、『茶懐石に学ぶ日日の料理』(後藤加寿子・著/文化出版局・刊)と『家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇』(岩村暢子・著/新潮社・刊)の書籍2作品を選出しました。

今回、2回目を迎える辻静雄食文化賞の選考対象は2009年12月から2010年11月までの作品および活動が対象となります。
辻調グループ校創設者の辻静雄(1933〜1993)の食文化普及の活動を記念して、毎年1 回、我が国の食文化の幅広い領域の活動に注目し、より良い「食」を目指して目覚ましい活躍をし、新しい世界を築き上げた作品、もしくは個人・団体の活動を対象に選考し、決定。選考方法は、まず全国の報道機関と「食」に関心と見識をお持ちの方々より候補作品(人物)を推薦いただきました(本賞の公式サイトより)。さらに、事務局と食分野のジャーナリストの方々による中間選考を経て、去る4月28日、「第2回 辻静雄食文化賞選考委員会(委員長・石毛直道氏)」を開催。全会一致で贈賞作品2作を決定。

今回の受賞作2作品ともに、現代の家庭の食に視点を据えたふたつの書籍が受賞しました。
それぞれの贈賞理由と著者紹介は下記の通りです。


『茶懐石に学ぶ日日の料理』 (後藤加寿子・著/文化出版局・刊)

【贈賞理由】
家庭でできる心づくしのもてなしが懐石の本質に通じることを静かに訴え、伝統的な料理美学を体現しながらも現代性を帯びた作品の完成度の高さに対して。
家庭でできる心づくしのもてなしこそが、懐石料理の本来の姿だというメッセージを静かに強く打ち出した茶懐石の入門料理書。武者小路千家の長女に生まれた著者が、プロの包丁技がなくても美しく盛りつけられる向付、毎月味噌の合わせ加減を変えていくみそ汁と、四季の献立の調え方を余すことなく伝える。手順写真で塩のふりかたなど勘所をていねいに見せたり、茶室と同じ料理をテーブルに並べるよう盛りつけを変えて見せたり。どうひとりで段取りするか、日常の生活に取り入れるかという視点は、料理屋の発想にはないもの。ビジュアル面での挑戦としては、茶室の暗さそのままを料理写真に取り入れている。その陰影は、料理がはっきり見えないという点で意見がわかれるところだが、茶室の空間や空気まで感じさせる。魯山人や柿右衛門から現代作家まで、器づかいも見所のひとつ。

家庭料理が簡単・スピードという方向に走ったまま、なかなか戻ってこないなか、出版の意義は大きいと考えられる。付け加えると、著者の料理はレシピ通りおいしくできることでも定評がある。

<著者略歴>
後藤 加寿子(ごとう かずこ)

武者小路千家(官休庵)十三世家元有隣斎と千澄子の長女として京都に生まれる。懐石料理の第一人者であった母の影響から日本料理への造詣を深める。また、同志社大学文学部在学中は美術史を専攻し陶磁器を研究。結婚後は料理研究家として活躍する。本格茶懐石と家庭料理、対極にあるように見えて本質は同じであるとの考えから、和食の入門クラスと、懐石料理を味わうクラスを主宰。

古きよき日本料理の伝統を、現代のライフスタイルに生かし、若い世代に伝えることに意欲的。著書に『和のきほん、いつもの味をおいしく、手早く。』(文化出版局)、『「ストウブ」でつくる和ごはん』(マーブルトロン)、「京都生まれの和のおかず」(世界文化社)などがある。


『家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇』 岩村暢子・著/新潮社・刊

【贈賞理由】
長期間の調査に基づき、家庭の食卓の今を鮮烈な写真とともにあぶり出した意欲作。当事者家族のインタビューを含む丁寧な調査記録の社会学的価値に対して。
『家族の勝手でしょ!』は、首都圏の子供のいる家庭の食卓を徹底的に調査すること10数年。その集大成。10,000枚以上の写真データから274枚をピックアップ。そこから浮かび上がる、今どきの家族像。お菓子で朝食、味噌汁回し飲み、夫と妻の昼飯格差、赤ちゃんの一人食べ、家庭のネットカフェ化。「信じられない!」と叫ぶか、「他人事じゃない...」とため息をつくか。食卓は、家族という社会の映し鏡。家族の変貌をあますところなく伝える、類書のない問題作。著者は、広告代理店アサツー ディ・ケイ 200Xファミリーデザイン室長。食卓を通して現代の家族や社会を見つめ続け、著書に『変わる家族 変わる食卓』『「親の顔が見てみたい!」調査―家族を変えた昭和の生活史』(←2010年刊)などがある。

<著者略歴>
岩村 暢子(いわむら のぶこ)

1953年北海道生まれ。法政大学卒。広告会社アサツー ディ・ケイ 200Xファミリーデザイン室長。食と家族の研究を続け、『変わる家族 変わる食卓』(勁草書房、中公文庫刊) 『<現代家族>の誕生 幻想系家族論の死』(勁草書房刊)、『普通の家族がいちばん怖い』(新潮社刊)を著す。


■ 第2回辻静雄食文化賞選考委員会:
委員長・石毛直道(国立民族学博物館名誉教授)/鹿島茂(明治大学教授)、阿川佐和子(作家)、福田和也(慶應義塾大学教授)、西山嘉樹(文藝春秋・ライツ管理部部長)、辻芳樹(辻調グループ代表 辻調理師専門学校理事長・校長)、山内秀文(辻静雄料理教育研究所・研究顧問)

■贈賞式 
2011年6月15日(水) 大阪あべの辻調理師専門学校にて。

■主 催 
辻静雄食文化賞選定委員会(辻静雄料理教育研究所 内) 委員長:辻芳樹

■後 援 
学校法人辻料理学館 辻調理師専門学校
(事務局:辻静雄料理教育研究所)


<本賞の取材に関するお問い合わせ>
辻調グループ 企画部東京事務所
電話03-6426-1101 
fax03-6426-1102