| 旅館やホテル、そしてレストランのオープンに際し、単にメニュー開発だけでなく、調理オペレーション全般 にわたってサポートするケースも多くあります。この「あえの風」のプロジェクトもその一例で、経営母体は、日本でも指折りの一流旅館として知られる加賀屋。総額85億円を投じて建設する「あえの風」は、北陸の巨人が21世紀に向けた戦略として業界に大きな話題を呼びました。そして、この新しいタイプの旅館は料理とサーヴィスの面 で、今までになかった難しいテーマを抱えていたのです。 ![]() 新しいくつろぎ旅館を提案する「あえの風」 加賀屋本店の接客は、接待さんがつきっきりでお世話をする、きめ細かな接遇が特徴。このサーヴィスが日本一という評判を取り、ファンである常連客の獲得に結びついています。しかし、時代の流れの中で、より軽いサーヴィスを求めるお客さまが主流になることも、日々の接客で実感。そうした層を取り込む狙いで、本店とはまったく異なった「くつろぎ体験」の創造をめざし、パーソナルで軽めのサーヴィスというコンセプトが生まれました。 このサーヴィスの発想は、日本旅館の情緒とホテルの機能性を現代的にミックスしたもの、ともいえるでしょう。ホテル的機能とは、お客さまの自由裁量 の部分が大きいこと。いわば「旅館のお仕着せからの脱皮」は、料理にも求められたのです。メニューは、四季感を演出した新和風創作料理。しかも、メインディッシュを5品から1つ選択できるように、という条件が課せられました。 |
![]() 革新的な料理システムが可能にした 「脱旅館料理」 このプロジェクトの中心となったのは日本料理主任教授の畑耕一郎。「おいしいには、2種類ある。ひとつは素材自体がもともとおいしいこと。もうひとつは、熱いものは熱いからおいしい。前者は食材のコストがかかりすぎる。だから第一に熱いものは熱く出せる体制をつくろう。旅館料理の弱点は、何といっても温度管理だから」と考えた畑は、まず調理機器と調理システムの設計から手をつけたのです。 一度に大量加熱ができ、しかも再加熱しても味が落ちない調理機器はないだろうか・・・。パッとひらめいたのは、スチームコンベクションオーブン(略称スチコン)でした。「確か西洋料理の授業では使っていたは ず」とさっそく試作を開始。使ってみると、焼く、蒸す、煮る、ゆでると万能で、驚くほどの性能です。このスチコンで加熱処理を行い、ブラストチラー(急速冷却器)で急速冷凍し、短い時間ストック。それをサブのスチコンで再加熱して、お客さまにお出しする。こうした調理システムの構築により、難しいテーマをクリアしたのです。メニューの組み立ては、畑のお手のもの。この「魔法の箱」のおかげで、季節ごとに見事な12品目の構成を完成させ、さらに、当初は予定のなかった朝食ビュッフェのメニューも、スチコンを使って開発しました。しかもこの調理システムは、誰でも再加熱することで作業の平準化を実現。料理人の手作りが、ファミリーレストランのプロセスで再現可能と、「あえの風」と同様に旅館業界に大きな革新を起こしたのです。 |
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![]() 加賀屋料理長・川嶋忍氏(右)とメニュー開発の打ち合わせをする畑耕一郎 |
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