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【とっておきのヨーロッパだより】ガトー・バスクを巡る旅~誰もが愛する素朴な地方菓子の魅力2~
2012年02月17日

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【とっておきのヨーロッパだより】ってどんなコラム??

フランスとスペインにまたがり、7つの地域からなるバスク地方。そのうち、北バスクとよばれる3つの地域がフランスにあります。今回はそのフランス側バスクを訪れました。

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白壁に赤い屋根と窓枠がバスクらしいエスプレットEspelette村

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「フランスの最も美しい村」に選ばれているアイノアAinhoa村

バスク地方は、今なお独自の文化や言語が守られています。そして海と山に囲まれ、豊富な産物の影響を受け、また、かつてスペインからの移民や貿易によって得た多くの食材や技術により育まれた独特の食文化を持つ地方として注目されています。その中で今回ご紹介するのは、ガトー・バスクGâteau Basqueです。

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ガトー・バスク

ガトー・バスクとは北バスクで見られる地方菓子で、厚めにのばしたクッキー生地に、カスタードクリームやサクランボ(ブラックチェリー)のジャムを挟んで焼き上げたシンプルで素朴なお菓子です。バスク語では『ビスコッチャBiskotxa(またはBixkotxa)』といい、フランス語の『ビスキュイBiscuit』、"Bis"2度、"Cuit"焼く、と同じ意味です。バスク地方カンボ=レ=バンCambo-Les-Bainという村で17世紀頃から作られているといわれています。発祥の理由は定かではありませんが、当時、遠洋漁業に出かける漁師のために家族が準備した日持ちするお菓子がその起源ではないかといわれています。日持ちさせる為のお菓子だったため、もともとは何も挟まれていないビスケットのようなものだったそうです。
表面には格子状に模様を付けたものや、『ローブリューLauburu』*注1というバスクの十字架を描いたものなどがあり、その大きさは大小さまざまです。ローブリューを表面に描くことによって、この土地のお菓子である、ということを強調しているのだそうです。
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表面にローブリュー形の生地が貼り付けられたもの             表面に格子模様が描かれたもの

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お菓子の名前もバスク語で表示されています。                  レストランのデザートでも出てきます
これはガトー・バスクのチョコレート味のもの

見た目も味も素朴ですが、バスクでは『エグスキアEguzkia』というガトー・バスク保存・普及のための団体*注2が活動しているほど、バスクの人々に愛されているお菓子なのです。
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エグスキアが主催しているガトー・バスク祭りの広告。2011年は10月1日に行われました

ガトー・バスクを巡る旅のスタートは、ビアリッツBiarritzから南へ20km、フランスの最も美しい村『Les Plus Beaux Villages De France』*注3にも選ばれているサールSare村です。
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サール村の標識、「最も美しい村」の看板が立てられています

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ガトー・バスク博物館の看板

なぜ最初にこの村を訪れたかというと、この村の一角にはガトー・バスク博物館Le Musée du Gâteau Basqueがあるからなのです。こちらの博物館では様々な展示によりガトー・バスクの歴史や文化を学べるだけでなく、ガトー・バスク作りのデモンストレーションを見ることができます!!
バスク地方で作られている多くのガトー・バスクの生地の特徴はシュークル・クリスタルSucre Cristal(粗めのグラニュー糖)を使用しているところです。これにより、サクサクとした食感が生まれるのだそうです。以下が教えていただいたレシピです。

【ガトー・バスク】直径18cm(8人分)
バター 200g
シュークル・クリスタル 200g
塩 5g
卵黄 4個
全卵 1個
薄力粉 200g
強力粉 200g
ベーキングパウダー 5g
カスタードクリーム、サクランボのジャム 適量

準備:バターはあらかじめ冷蔵庫から出して常温に戻しておく。薄力粉、強力粉、ベーキングパウダーはあわせてふるっておく。

デモンストレーション用の生地はすでに用意されており、作り方は口頭で教えていただきました。
① バターにシュークル・クリスタル、塩を加え、しっかり混ぜ合わせる。
② ①に卵黄、全卵を合わせたものを少しずつ分離しないように加えていく。
③ 卵がすべて入ったら合わせてふるっておいた粉類を加え、粉っぽさがなくなるまで混ぜる。
④ 麺棒でのばせるくらいの固さになるまで冷蔵庫で休ませる。
ここまでできたら次の成形の作業です。

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厚めにのばした生地を抜き型で抜いていきます。1台につき2枚必要です。

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バターを塗った専用の型に底となる生地をしき込みます。

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1台はカスタードクリームを、もう1台にはサクランボのジャムを広げます。

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上の生地をかぶせ、周りを指で押さえます。

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表面に溶き卵を塗ります。

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フォークで格子状、またはローブリューの模様をつけます。もう1台は、余り生地を棒状にのばし、ローブリューの模様を作ります。このあと160℃のオーブンで35分焼成します。

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焼き上がり(フォークで模様を入れたもの)

中に詰めるものは基本的にはカスタードクリームかサクランボのジャムですが、講師の方は「好きなものを入れたらよいです」とおっしゃっていました。カスタードクリームには、1kgに対して40gのラム酒を入れるのがポイントだそうです。
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カットされた状態で試食します

試食してみると確かに生地がサクサクとしており、今まで食べたことのないおいしさ。シュークル・クリスタル以外の砂糖を使ったのではこの食感は出ないだろうと思わせます。
こちらの博物館にはブティックが併設されていて、大小のガトー・バスクが売られているのはもちろんのこと、ガトー・バスクの中に入れるカスタードクリームに使うための、ヴァニラのさやを漬け込んだラム酒などの商品(下の写真)が並んでいます。
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さて、次に訪れたのはサール村から北東へ20kmほどのイッツァスItxassou村。とても小さなこの村の特産品は、ガトー・バスクにはかかせないサクランボです。

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イッツァス村の看板

この地で収穫されるサクランボの種類は多くありますが、その代表的なものは、ペロアPeloa、シャパタXapata、ベルチャBeltxaの3種類です。それぞれに特徴があり、ペロアは実が柔らかくてとても甘く、シャパタは適度な酸味があり、どちらも生の状態で食べても大変おいしく、もちろんジャムにしても最高!!そして、ベルチャは小粒で実が固く、酸味がきついので、ジャムにぴったりだそうです。
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3種のサクランボの説明書き

サクランボで有名なこの村ですが、1930年には約300トンあった収穫量が、今日では15~20トンに減少しています。この地の在来種は食べてみれば抜群の味なのですが、見た目に美しくないことや、日持ちがしないことから一時その需要が減ったことが原因だそうです。
しかし、現在はその味が見直され、イッツァス村のサクランボジャムの需要が増えているのだとか。ところが収穫量が少ない為、イッツァス産のサクランボジャムとして売られているもののうち、99%が輸入したサクランボで作られているものなのだそうです。イッツァス村の人々はそのことを嘆き、1994年から、新たにサクランボの木を植え始めました。
イッツァス村産のサクランボを使用している製品には、『イッツァス村のサクランボ』と書かれたラベルが貼られています。イッツァス村の限られた店舗でしか作られておらず、大変貴重なものなのです。
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"イッツァス村のサクランボ"このマークが本物の証

この村のパティスリー『クラカダKRAKADA』では、村で収穫されたサクランボを使用して、ジャムやリキュール、そしてそのジャムを使ったガトー・バスクを作っています。私が訪ねた日も、たっぷりのサクランボが入った大きな鍋が火にかけられていました。
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お店の中はサクランボジャムのいい香りでいっぱいです         ホワイトボードには配合が書かれています

こちらのお店で「ガトー・バスクに一番適しているサクランボのジャムは3種類のうちどれですか」とたずねたところ、ご主人のエミル・アリスプゥルゥさんは、「もちろん3種類ともガトー・バスクにぴったりですよ。」と笑顔で答えて下さいました。
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『クラカダ』の3種類のサクランボジャム

私が訪れたのは9月だったのであいにくサクランボの季節ではなかったのですが、3月の終わりから4月にはサクラの花が満開になり、収穫時期である5月末から6月にかけては、サクランボ祭りが行われます。サクランボの販売や楽器の演奏などで村はとても賑わうそうです。
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イッツァス村で見かけた素朴なガトー・バスク                     高い丘に植えられたサクランボの木々.

今回訪れた北バスクでは、どんなに小さな町や村の、どんなに小さなパティスリーにも
必ずガトー・バスクは置いてありました。それぞれのお店にこだわりや特徴はありますが、どのお店でも共通して感じたことは、バスクの人々の古くからある伝統を大切にしている点や、地元文化を愛する心でした。そして現地で食べるその地のお菓子のおいしさを知りました。それこそが、長く受け継がれる地方菓子の魅力なのだな、と強く感じました。

フランス地方菓子の魅力をもっと知りたい方は、『クグロフを巡る旅へ~誰もが愛する素朴な地方菓子の魅力~』を、バスク地方の魅力をもっと知りたい!という方は『【半歩プロの西洋料理】食に溢れる魅惑的なフランスバスク地方』もぜひご覧下さい。
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注1:ローブリューの4つの羽は火、大地、空気、水を表しており、その4つが交わることは、"永遠""愛""平和"の象徴とされています。また、"Lau=4つ""Buru=頭"を意味し、バスク地方の4つの主要地域、サン・セバスティアン、ビルバオ、ビトリア、パンプロナを表しているとも言われています。
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注2:正当なガトー・バスクを後世に受け継いでいく為に、団体に加盟している店舗での材料の指定や、品評会などを行っている団体。エグスキアとは、バスク語で『太陽』の意味。
注3:1982年に設立された協会で、その目的は質のよい遺産を持つ田舎の小さな村の観光を促進することにあります。写真でご紹介したアイノア村もそのひとつです。

このコラムの担当者

上元 望

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