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【とっておきのヨーロッパだより】世界から認められるウィーンのカフェハウス
2019年12月23日

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<【とっておきのヨーロッパだより】ってどんなコラム?>


ウィーンと聞いて、みなさん何をイメージしますか?
オーストリアの首都であるウィーンは、芸術、音楽などで有名ですが、私にとって外せないのが、「カフェハウスKaffeehaus」の存在です。
カフェハウスとは、簡単に言えばコーヒーを提供する飲食店のことですが、ウィーンのカフェハウスはそのようなシンプルな説明では足りない豊かな魅力に満ちています。
今回のコラムでは、そんなウィーンのカフェハウスにまつわる話を紹介したいと思います。


-ウィーンに伝わったコーヒー文化-

コーヒーは、原産地であるアフリカのエチオピアから、イエメンの港町であるモカを経由して、イスラム諸国で広まりました。その後オスマン帝国のイスタンブールに伝わり、1554年にイスタンブールにて世界初のカフェハウスが誕生しました。
ウィーンにコーヒーがもたらされたのは、その後100年以上後のことです。
16世紀初頭の第一次ウィーン包囲(注1)後、オーストリア大公国とオスマン帝国は互いに戦争を望まなかったため、定期的に和平交渉を行いました。交渉が難航する中で、1665年にオスマン帝国側の使節団がウィーンへ出向き、持ち込んだコーヒーをふるまいました。
その後、ウィーン初のカフェハウスがオープンしたのは、第ニ次ウィーン包囲後の1685年です。アルメニア人の商人、ヨハネス・ディオダードが、東方交易商人の集まる場所として、コーヒーを提供する店を開きました。(注2)


-ユネスコ無形文化遺産登録-

ウィーンのカフェ文化は2011年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。
無形文化遺産とは、農林水産省のホームページによると「芸能や伝統工芸技術などの形のない文化であって、土地の歴史や生活風習などと密接に関わっているもののこと」と明記されており、日本でも、2013年に「和食」が登録されたことは、記憶に新しいのではないでしょうか。(注3)
ウィーンのカフェハウスが、無形文化遺産としてお店を宣伝したい場合、それを管理する団体「ウィーン・カフェハウス・オーナーズクラブ」から認定書を受け取り、掲示することができます。(注4)

ウィーン・カフェハウス・オーナーズクラブ発行の認定書
ウィーン・カフェハウス・オーナーズクラブ発行の認定書


-ウィーンのカフェハウスの構成要素-

世界無形文化遺産である、ウィーンのカフェハウスの特徴を紹介します。以下にあげる特徴全てを有していなくても、世界無形文化遺産として営業することができますが、いずれもウィーンのカフェハウスを構成する重要な要素です。


■ゲスト

観光客を含めて、あらゆる人の利用が可能ですが、サービスを受ける客側も、カフェハウスの雰囲気を担う重要な要素の一つです。カフェハウスの優雅な雰囲気を楽しむ上で、規則などはありませんが、他の客に迷惑をかけるような行為は慎む必要があります。


■曲木椅子とコート掛け

多くのカフェハウスでは、トーネット社製の曲木椅子やコート掛けが好まれて使用されます。
ト―ネット社はカフェハウスのオープンが相次いだ18~19世紀前半に人気を博した家具メーカーで、現在でも多くの愛好家がいます。当時、木を曲げて作られる椅子は画期的で、コンクールで受賞するなど注目を浴びていたようです。

椅子 コート掛け
(左)曲木椅子『カフェ・ムゼウム』にて
(右)コート掛け『カフェ・ツェントラル』にて


■石製の丸テーブル

主に大理石を利用することが多いです。

テーブル
『デーメル』にて


■シャニガルテン

カフェハウスの外に設けられるテラス席で、夏場は特に、陽の光を浴びることを好むヨーロッパ系の人々に好まれているようです。

シャニガルテン
シャニガルテン。冬は寒いためか利用者は少なめ(『カフェ・ムゼウム』にて)


■ヘル・オーバー

「男性の給仕」を指す言葉。タキシードに身を包み、自らも無形文化遺産を構成する一部だと自覚し、プロ意識と誇りをもった仕事をしています。
これに対しお菓子メインで楽しむカフェ・コンディトライ(後述)では、女性の給仕が多くみられます。この違いは、カフェハウスが登場した当時、カフェハウスは紳士の集まる社交場として利用されており、それに対してカフェ・コンディトライは、淑女の集まる場として利用され、それぞれ利用する性別に合わせた給仕が配置された歴史的経緯によるものと言われています。

ヘルオーバー
『カフェ・ムゼウム』にて


■銀盆と水

コーヒーを注文すると、水と一緒に銀盆で提供されます。


(左)『カフェ・ハヴェルカ』にて
(右)『カフェ・ムゼウム』にて。きちんと並べられた銀盆とグラス

■新聞

昔からカフェハウスは貴重な情報収集の場であったため、ドイツ国内誌のみならず、英字新聞などの品ぞろえも豊富です。多いところでは30誌を超える新聞を置いています。


『カフェ・ラントマン』の特注の新聞立て


■ビリヤード台、ポーカーテーブルなどの遊技台

設置しているカフェハウスは多くないですが、大人の社交場として、設置しているところもあります。

ビリアード
『カフェ・シュペール』のビリヤード台。夜限定で楽しめる


■音楽の生演奏

ピアノやバイオリンなどの生演奏を、定期的に行うカフェハウスもあります。優雅な雰囲気を味わうことができます。

ピアニスト
『カフェ・シュペール』のピアノの生演奏。日曜の夕方に楽しむことができる



-チップ文化-

ウィーンでは、クレジットカードでの支払いができないお店が存在します。カフェハウスを回る中で不思議に思っていたのですが、その理由はすぐにわかりました。
先ほど述べたように、ウィーンのカフェハウスでは、とても心地よく、プロ意識の高い接客を受けることができます。そのため、受けた接客に値するチップを支払うという文化がありますが、クレジットカードを利用する場合、チップの支払いが少々しづらくなるのです。
チップを渡す場合、支払い金額の1割前後を上乗せし、切りの良い金額で支払うことが一般的です。お店によっては、クレジットカードでの支払いも可能ですが、その際には「チップはどうしたいですか?」と促され、渡す場合は、こちらも口頭でチップを加えた合計金額を伝えます。
記念撮影をしたい場合は、チップを支払うことで、気さくに対応してもらえます。


-コーヒーは1杯の水と共に-

コーヒーを頼むと、小さなグラスに入った水と一緒に提供されます。お店によっては、銀盆に乗せられ、コーヒー用のスプーンは裏返して、水のグラスに乗せられます。
なぜコーヒーに水が添えられるのでしょう。現地に住む人の話によると、コーヒーと水を一緒に飲むことで、胃への負担が和らげられるということや、ウィーンは古くから、アルプスより水道をひいていたため、水道水がとても美味しく飲めることが理由だそうです。
しかし、無料で提供されるからといって、何度もおかわりすることはマナー違反だそうで、2杯目以降は、支払いが必要なお店もあるそうです。
コーヒー用のスプーンを裏返してグラスの上に乗せるのは、給仕さん曰く、この方が銀盆を運ぶときにスプーンが動きづらく、音が出ないからだそうです。本当でしょうか...。


-コーヒーの種類-

ウィーンで日本のようなドリップコーヒーは一般的ではなく、エスプレッソコーヒー(深煎りして細かく挽いたコーヒー豆を用い、専用の器具で圧力をかけて抽出したコーヒー)が主流です。カフェハウスではこのエスプレッソコーヒーをベースに、そこに生クリームや牛乳の他、様々な風味を加えアレンジされたバリエーション豊かな飲み物が提供されます。
飲み物のラインナップや配合などはカフェハウスによって独自のものがあり、またその名称にはカフェ文化が先行して生まれたフランスやイタリアの影響を受けたと思われるもの、ウィーンの歴史に基づく響きを持つものなど実に多彩で、歴史の厚みを感じさせます。

どれを頼めばよいか迷ってしまうほどですが、その一部を紹介します。

■モカ Mokka /シュヴァルツァー Schwarzer 《イタリア式のエスプレッソコーヒー
モカはイエメンの港町の名前ですが、ウィーンでモカと呼ばれるコーヒーは、港町モカから出荷された豆を指すのではなく、コーヒー豆全般を指します。シュヴァルツァーは「黒いもの」という意味。モカ、シュヴァルツァーともにエスプレッソコーヒーのことを指します。

■メランジェ Melange 《エスプレッソコーヒー + 泡立てたミルク(温) 》
フランス語で「混ぜたもの」という意味。エスプレッソコーヒーと泡立てたミルクが1対1の割合。ウィーンのコーヒーで一番ポピュラーなタイプです。あらかじめエスプレッソコーヒーと泡立てたミルクが混ぜられています。エスプレッソコーヒーに泡立てていないミルクを加え、後から泡立てたミルクを乗せるお店もあります。

■ブラウナー Brauner 《エスプレッソコーヒー + 泡立てたミルクまたはクリーム》
ブラウナーとは「茶色のもの」という意味。メランジェと同様の作り方ですが、加えるミルク又はクリームの量が少ないのが特徴で、泡立てたミルクやクリームを表面に乗せません。エスプレッソコーヒーに、別添えでミルクを提供するお店もあります。

■カプツィナー Kapuziner 《エスプレッソコーヒー + ミルク(温) + 泡立てたクリーム》
カプチン派修道士の、黒っぽい衣の色にちなんで名づけられました。エスプレッソコーヒーと泡立てたミルクが2対1の割合。メランジェ同様の作り方で、さらに泡立てたクリームを乗せます。エスプレッソコーヒーが多いため、メランジェより濃い味わいです。

■フランツィスカーナー Franziskaner 《エスプレッソコーヒー + 泡立てたミルクまたはクリーム》
フランシスコ会派修道士の衣の色にちなんで名づけられました。エスプレッソコーヒーと泡立てたミルクが1対2の割合。メランジェ同様の作り方で、さらに泡立てたクリームを乗せます。エスプレッソコーヒーが少ないため、メランジェより軽い味わいです。

■フェアケールトVerkehrt 《エスプレッソコーヒー + 泡立てたミルク》
フェアケールトとはドイツ語で「間違った」の意味。少量のエスプレッソコーヒーに対して、沢山の泡立てたミルクが加えられます。コーヒー本来の味わいを薄めてしまっているため、この名前がついたと言われています。日本のカフェラテに相当します。

■アインシュペナー Ein spänner 《エスプレッソコーヒー + 泡立てたクリーム》
「一頭立ての馬車」という意味。寒い夜に御者が、主人を待ちながら飲んでいたのが名前の由来。手綱を握りながら片手で飲めるように、背の高い取っ手のついたグラスを用いたと言われています。そのため温かいコーヒーですがグラスで提供され、表面には泡立てたクリームを浮かせます。日本で呼ばれるウィンナーコーヒーはアインシュペナーを指すことが多いです。

■トゥルキッシャー Türkischer  
名前の通り、トルコ式に淹れたコーヒー。小ぶりの銅製の手つき鍋でお湯を沸かし、細かく挽いたコーヒー豆を加えて作られます。コーヒー豆と一緒にカップに注ぎ、上澄みだけを飲みます。

■フィアーカー Fiaker 《エスプレッソコーヒー + ラム酒、またはブランデー + 泡立てた生クリーム》
「二頭立ての馬車」という意味。なぜウィーン市内を回る観光用の馬車と同じ名前がついたかは、定かでないようですが、その由来はアインシュペナーとの関りがあるのではないかと言われているようです。

■マリア・テレジア Maria Theresia 《エスプレッソコーヒー + オレンジリキュール + 泡立てた生クリーム》
マリア・テレジアが好んだオレンジリキュールを使ったコーヒー。

■アドヴォカート Advokaat 《エスプレッソコーヒー + 卵黄リキュール + 泡立てた生クリーム》
オランダ産の卵黄リキュール「Advokaat」を使ったコーヒー。卵黄のまろやかさとコクが加わった味わい。

■カイザー・メランジェ Kaisermelange 《エスプレッソコーヒー + 卵黄 + ハチミツ + コニャック + 泡立てた生クリーム》
オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ(注5)が好んだことからこの名前がつきました。

■マザグラン Mazagran 《エスプレッソコーヒー + 氷 + チェリーブランデー》
「マザグラン」とはアルジェリアの都市名で、フランス語ではグラス入りの冷たいコーヒーを指しますが、ウィーンのカフェでも同じものがあります。濃く淹れたエスプレッソコーヒーを足つきのグラスに入れ、氷とチェリーブランデーを加えたコーヒーで、ストローと一緒に提供されます。


-人の行き交う交差点に「エック・カフェ」あり-

エックとはドイツ語で「角」の意味。多くのカフェハウスは、大きな交差点の角地にあります。大きな交差点の角地にカフェハウス立てることで、窓が多くなり、日の光が差し込む明るい店内になります。90度を下回る鋭角な角地に立つエック・カフェでは、その角に扉が設けられ、扉を抜け店内に足を運ぶと、座席が左右対称に広がります。

エック・カフェ
エック・カフェの例


-カフェ・コンディトライ-

「コンディトライ」とは「お菓子屋」を意味し、文字通り主にお菓子を提供するカフェハウスです。
有名な店には、『カフェ・ザッハ』『デーメル』『エル・ハイナー』、『ゲルストナー』などがあります。
カフェ・コンディトライにエック・カフェは少なく、商店の並ぶ通りにあることが多いです。そのため扉は建物の角ではなく、通り沿いにショーウィンドーと並んで配置されます。

エル・ハイナー
『エル・ハイナー』外観


上記のカフェ・コンディトライは、「カー・ウント・カー k.u.k.」(注6)と呼ばれる帝室御用達の店として認められています。



(左)『カフェ・ザッハ』店内のロゴ
(右)『ゲルストナー』看板


-ハウストルテ(お店のスペシャリテ)-

多くのカフェハウスでは、ハウストルテと呼ばれる名物のお菓子を提供しています。(注7)
ウィーンでも名高いカフェハウスと、その店のハウストルテを一部ご紹介しましょう。


■カフェ・ザッハ Cafe Sacher



ウィーンを代表するお菓子であるザッハ・トルテ Sachertorteです。チョコレートのスポンジ生地をスライスし、アプリコットジャムをサンドします。表面にもアプリコットジャムを塗り、煮詰めたチョコレートシロップをかけて再結晶化させます。仕上げにお店のシンボルとなる丸いチョコレートを乗せます。イートインの場合は、たっぷりの泡立てた生クリームが添えられて提供されます。


■デーメル DEMEL

デーメルからは2品紹介します。1品目は、カフェ・ザッハ同様にザッハ・トルテです。



『カフェ・ザッハ』との違いは、アプリコットジャムをチョコレート生地にサンドせず、生地の表面のみコーティングします。お店のシンボルとなる三角形のチョコレートの飾りが載せられます。


2品目は、アンナ・トルテ Annatorte です。



チョコレートの生地に、チョコレートガナッシュクリーム、ジャンデュジャ(ヘーゼルナッツを多く配合したミルクチョコレート)の組み合わせ。表面が分厚いジャンデュジャで覆われており、ナッツの風味が効いた食べ応えのあるお菓子です。


■ゲルストナー Gerstner

ゲルストナーからも2品紹介します。1品目は、ゲルストナー・トルテGerstner torteです。



チョコレート生地、チョコレートのガナッシュクリームを何層にも重ね、コーティング用チョコレートで覆います。


2品目は、ゲルストナー・ハウストルテ Gerstner Haustorteです。



メレンゲとナッツを多く使用した生地とチョコレートクリームを何3層ずつ重ねます。表面いっぱいに薄く削ったチョコレートをまぶしています。


■エル・ハイナー L.Heiner



多くの辻調グループ製菓職員が研修を行ったこの店のハウストルテであるハイナー・ハウストルテHeiner Haustorte(上記写真)は、日本の辻調グループ校の製菓授業でも披露されることが多く、私にとって身近なお菓子です。構成は、チョコレートのスポンジとミルクチョコレートのクリームを交互に重ね、表面はココアパウダーで仕上げます。


■オバーラー OBERLAA

ウィーン菓子の枠にとらわれない、新進気鋭のカフェ・コンディトライです。商品ラインナップも、エクレアやマカロンなど、フランス菓子の要素を積極的に取り入れています。
ウィーン菓子は、お菓子を構成する生地部分の割合が多いことや、生地の配合にも香辛料やナッツが多く使用されるのが特徴で、重厚感のあるお菓子が多く見られます。
『オバーラー』では、そういった本来のウィーン菓子に比べクリームやムースを多く使ったものが多く、軽いお菓子を求める人たちから好まれています。
同店のハウストルテは、オバーラー・クルバド・トルテOberlaa Kurbad Torteです。



同店の名前である『オバーラー』は、工房のある地名から名づけられ、「クルバド」とは、この工房のある通りの名前です。
同店のお菓子は軽いものが多いと紹介しましたが、ハウストルテはしっかりと生地感のある食べ応えのある構成になっています。ナッツの生地と、ミルクチョコレートクリームを幾層に重ね、表面をジャンデュジャで覆い、矢羽根模様に仕上げます。


■カフェ・ディグラス Café Diglas

料理のクオリティーが高く、ウィーンで人気のカフェハウスです。外観が薄いピンク色、店内の電飾がフリルスカートの様なデザインと、とても可愛らしいです。



このお店のハウストルテであるディグラス・トルテDiglas Torte(上記写真)は、生地、クリーム共にクルミを使用したドーム状のお菓子です。食べ口は軽く、細かく刻まれたクルミの食感が心地良いお菓子です。


■カフェ・ラントマン CAFÉ LANDTMANN

カフェハウスのスタイルであるものの、お菓子のレパートリーが非常に豊富で、他のカフェハウスのお菓子製造も手掛けているお店です。



このお店のハウストルテはラントマンズ・ファイネ・トルテLandtmann's Feine Torte です。ファイネとは細いという意味で、何層にも重ねられた形を示しています。柔らかいヘーゼルナッツの生地、オレンジ風味のアーモンドペースト、ヘーゼルナッツのジャンデュジャが繰り返し層状になっています。


■カフェ・モーツァルト Café Mozart

モーツァルトという名前は、カフェの前の広場にモーツァルトの像が立っていたことから名づけられたようです。こちらで提供されるお菓子は、『カフェ・ラントマン』で製造されています。



ハウストルテのモーツァルト・トルテMozart Torte (上記写真)は、チョコレートのスポンジ生地に軽いピスタチオのクリーム、そしてチョコレートムースの組み合わせです。凸凹とした表面が印象的なお菓子です。


■カフェ・インペリアル Café Imperial

ウィーンの5つ星ホテル、ホテル・インペリアル内にあるカフェです。宿泊しなくても利用できるため、カフェ利用でもラグジュアリーな雰囲気を味わうことができます。



こちらのハウストルテであるインペリアル・トルテImperial Torte(上記写真)は、ビターアーモンドの香りが効いた生地と、重めのチョコレートクリームを交互に重ね、アーモンドペーストで覆います。最後にチョコレートでコーティングし、インペリアル・トルテのロゴのチョコレートを飾ります。紹介したベーシックなアーモンドのものの他に、オレンジ風味とラズベリー風味の3種類があります。


■カフェ・ツェントラル Café Central



開店と同時に訪れてもすぐ満席になってしまうほどの人気店です。
ハウストルテであるカフェ・ツェントラル・トルテ Café Central Torte(上記写真)は、チョコレートとオレンジ、アーモンドペーストの組み合わせです。生地はチョコレートとオレンジの2種類を使用して重ね、表面をアーモンドペーストとコーティングチョコレートで覆います。
生クリームを使用したクリームを使用していないため、焼き菓子のような構成になっています。オレンジの風味が豊かで、コーヒーとの相性が良いお菓子です。
ケーキに飾るお店のロゴですが、フランスや日本で多く見られる紙製のものは少なく、チョコレート製のものがほとんどです。オーストリアでは、エコに対する取り組みが進んでおり、ゴミを出さない工夫の一つだそうです。


ケーキに飾るチョコレート製のロゴ



-華麗な職人技を実感!シュトゥルーデル・ショー!-

どのカフェハウスでも、必ずと言っていいほど目にするお菓子があります。文字が透けるほど薄く伸ばした生地に、リンゴを幾層にも包んで焼くお菓子、アプフェル・シュトゥルーデル Apfelsturdelです。(注8)


アプフェル・シュトルーデルとメランジェ

このお菓子は、ウィーンの観光地として人気のシェーンブルン宮殿内にあるカフェで作る様子を観覧できます。


(左)透けるほど薄く伸ばしたシュトゥルーデル生地
(右)リンゴの詰め物を巻いていく

アプフェル・シュトゥルーデルを作る様子には独特のアトラクション的要素があり、見る者の目を楽しませています。


-カフェ・コンディトライの厨房から-

ウィーンのカフェ文化を調べる上で、ある日本人女性に協力いただきました。2014年度、辻製菓マネジメント学科卒業の淡路敦子さんです。彼女は卒業後、同校の職員として勤務したのち、2018年よりウィーンに滞在され、現在は『オバーラー』に勤められています。

淡路敦子さん
現在、『オバーラー』で研修を行っている卒業生の淡路敦子さん(写真左)とシェフ

彼女に、日本とウィーンのカフェ文化の違いをお聞きしました。

「日本でカフェといえば、コンセプトが若者向けで、食事やデザートが共に楽しめるところが多いと思います。日本人の生活は、ウィーンの人たちに比べて慌ただしく、ゆっくりとした時間を取れることも少ないので、大人向けのカフェは少ないように感じます。
一方ウィーンでは食後多くの人々がカフェハウスに入り、デザートやティータイムを楽しむ光景がごく一般的に見られます。
カフェハウスでは友人との会話、共通の趣味を持つ人同士のコミュニケーションを楽しむ人、一人で立ち寄り、静かに新聞や読書を楽しむ人など、様々な光景が見られます。
ウィーンの人々のゆとりのある暮らしぶりが、カフェハウスの文化がウィーンで根付いている要因となっている様に思います。」

現在ではウィーンにも、海外からの大手コーヒーチェーン店が多く出店しています。しかし現地の人の反応は様々で、カフェハウスにこだわりを持つ人の中にはそういった店を好まない人もいるようです。

ウィーンのカフェハウスでは、コーヒー1杯で、まるで自宅のリビングルームのように何時間でもくつろぐことができます。普段の海外旅行であれば、慌ただしく行動することが多いかと思います。世界中から愛されるウィーンのカフェハウスで、のんびりと過ごすことを目的とした旅行に、出かけてみてはいかがでしょうか。





注1:1529年、オスマン帝国軍が、2ヶ月近くにわたり神聖ローマ帝国の皇帝であり、オーストリア大公でもあるカール5世の本拠地ウィーンを取り囲んだ包囲戦。オーストリア軍の抵抗によりウィーンの陥落は免れた。

注2:ウィーンのカフェハウスの起源としてもう一つ長い間信じられていたものに、アルメニア人ゲオルグ・フランツ・コルシツキーによるものという説がある。オスマン帝国がヨーロッパ侵攻を進めていた17世紀後半、神聖ローマ皇帝の居城があるウィーンをオスマン帝国が包囲したが、ヨーロッパ連合軍の攻撃により包囲解除となり、オスマン軍は撤退した(1683年「第2次ウィーン包囲」)。敗走するオスマン軍がウィーンに残していった物品の中に大量のコーヒー豆があり、オスマン軍駆逐にあたり伝令として功績を残したコルシツキーの所望に従い、時の神聖ローマ帝国皇帝レオポルト1世が褒美として与え、コルシツキーはそれをもとにウィーン最初のカフェハウスを開いたという説である。しかし近年になり、この説には根拠がなく事実ではなかった事が証明されたという。

注3:この他、日本では能楽、人形浄瑠璃文楽、歌舞伎など、計21の分野で無形文化遺産の認定を受けている。(2019年現在)

注4:ただ、十分に来客が見込める店では同団体からの認定を受けない場合もあるという。

注5 : フランツ・ヨーゼフ1世(生1848年~没1916年)
1848年から1916年の68年間、オーストリア皇帝を務めた。その在位期間中にはハンガリー国王も兼ねた。皇后は美貌で知られるエリザベート。

注6 : Kaiserlicher und Königlicher Hoflieferant(帝国と王国の御用達)の略称。Kaiserlichはオーストリア帝国、Königlichはハンガリー王国のこと表し、オーストリア=ハンガリー二重帝国が発足した1867年から第一次世界大戦終わりまでに、様々な業種の店がこの称号を得た。帝国が崩壊した後も、この称号を掲げることが許され、現在も多くの店がk.u.k.を掲げている。

注7 :店によっては、ハウストルテの前に店名がつかないことがあるが、今回は区別するために、ハウストルテと名の付くお菓子には店名を入れている。

注8 : シュトゥルーデルとは薄く伸ばした生地に様々な詰め物を巻き込んで作るお菓子のことで、カスタードソースなど一緒に食べられる。ハプスブルグ家統治時代のオーストリア=ハンガリー二重帝国で生まれたお菓子と言われている。


■取材協力店■

Cafe Sacher
住所 : Philharmoniker Str. 4, 1010 Wien,
電話 : 1 51456661
https://www.sacher.com/de/restaurants/cafe-sacher-wien/

DEMEL
住所 : Kohlmarkt 14, 1010 Wien
電話 : 1 53517170
https://www.demel.com/de

Gerstner
住所 : Kärntner Straße 51, 1010 Wien
電話 : 1 5261361
https://www.gerstner-konditorei.at/index.html

L.Heiner
住所 : Kaerntner Strasse 21-23, 1010 Wien
電話 : 1 5122343
http://heiner.co.at/

OBERLAA
住所 : Kurbadstraße 12, 1100 Wien
電話 : 1 68925890
https://www.oberlaa-wien.at/

Café Diglas
住所 : Wollzeile 10, 1010 Wien
電話 : 1 5125765
https://www.diglas.at

CAFÉ LANDTMANN
住所 : Universitätsring 4, A-1010 Wien
電話 : 1 24100120
https://www.landtmann.at/en/cafe-landtmann.html

Café Mozart
住所 : Albertinaplatz 2, A-1010 Wien
電話 : 1 24100200
https://www.cafe-mozart.at/

Café Imperial
住所 : Kärntner Ring 16, 1015 Wien
電話 : 1 50110389
https://www.cafe-imperial.at/

Café Central
住所 : Ecke Herrengasse / Strauchgasse, 1010 Wien
電話 : 1 533376361
https://www.cafecentral.wien/

Café Sperl
住所 :Gumpendolferstrasse 11 A-1060 Wien
電話 : 1 5864158
http://www.cafesperl.at

Original Viennese Strudel Show
Hofbackstube Schönbrunn
住所 : Schloss Schönbrunn/Ehrenhof im Café Restaurant Residenz, 1130 Wien
電話 : 1 24 100 310
http://www.strudelshow.at

■参考文献
『無形文化遺産 ウィーンのカフェハウス~その魅力のすべて~』 沖島博美著

■参考サイト■
農林水産省HP http://www.maff.go.jp/index.html
クラブ・デア・カフェジーダーHP https://www.kaffeesieder.at/
このコラムの担当者
佐々木雄市

佐々木 雄市 SASAKI YUICHI


■現職(肩書き)

辻調グループ フランス校(レクレール校)洋菓子担当

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