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【とっておきのヨーロッパだより】待ってました!!モン・ドール!!
2010年01月06日

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<【とっておきのヨーロッパだより】ってどんなコラム?>

この原稿を書いているのは10月中旬、フランスは例年よりも少し遅くれて秋がやってきました。フランスでは毎年この時期になると、マルシェ(市場)やスーパーなどいたる所に「モン・ドール」という季節限定のチーズが並びます。レストランにもモン・ドール・ショ(mont d’or chaud)の文字が目につきます。日本では高級かつ季節限定チーズとして有名な「モン・ドール」。現地フランスでは、どのようなイメージのあるチーズなのでしょうか? さまざまな期待を胸に今回は、その季節限定のチーズ「モン・ドール」を取り上げたいと思います。

ということでモン・ドールを食べるためにフランシュ=コンテ地方を訪れました。そもそも、モン・ドールチーズはフランスとスイスの国境にあるモン・ドールという山の渓谷一帯で作られているチーズです。製造日が8月15日~3月15日と定められていて、製造元で4週間、その後チーズ業者で2~3週間熟成させるので、1番早く市場に出回るのが9月末頃で最終が4月頃です。


モン・ドール風景

そういった理由から日本では「季節限定!!」「幻の・・・」と呼ばれたりします。それに加え、日本では、「クリーミー、流れ出す、スプーンですくって・・・」といったイメージも定着しています。実は僕もその中の1人でした・・・この取材をするまでは。
10月中旬サンセー・リシャール工場(Sancey Richard)を訪れました。サンセー・リシャール工場はロンジュヴィル・モン・ドール(Les Longevilles Mont d’Or)にあります。工場とブティクを併設していて一般客も見学ができます。


チーズ工場サンセー・リシャールの案内看板

サンセー・リシャールのブティック
工場見学といえば、近くで様々な行程が見られると思い、期待を膨らませ向かいました。ところが、間近で見られるのかと思いきや、残念ながらガラス越しにしか見学ができませんでした。というのも、最近は衛生管理が厳しくなり、実際に作っているところに入ることが難しくなっているからだそうです。ということで、お店に飾ってあった写真を撮らしていただきました。写真は1975年のものですが、昔も今も作り方は変わりません。ただ、現在では作業の多くが機械化されています。写真にそって簡単に作り方を説明したいと思います。


1. まずタンクに生乳(殺菌していない牛乳)を入れ、続いて乳酸菌を入れ37度に温めます。そこに凝乳酵素(レンネット)を入れ、数分待つとミルクが固まります(これをカードと呼ぶ)。


2. 固まったミルク(カード)を切っていきます。


3. カードを集めます。


4. カードを型につめます。


5. プレスし、形を整え、エセピア(ドイツトウヒ)の薄板で側面を巻き、木串で留めていきます。


6. 次に熟成です。表面を塩水で洗い熟成させていきます。


7. その後、エセピア(ドイツトウヒ)で作られた木箱に入れ出荷されます。

<モン・ドールのAOC規定>
分類   ウォッシュタイプ
原料   牛乳(モンベリアルド種、ピ・ルージュ・ド・レスト種に限る)
産地   AOC(原産地管理呼称)が指定するドゥー県の一部
生産場所 酪農協同組合、酪農場
生産期間 8月15日~3月15日
形状   円盤状。チーズの大きさの指示はなく、通常は木箱の直径11~33cm、高さ6~7cm、重さ480g~3.2kg
周囲にエセピア(ドイツトウヒ)の樹皮が巻いてある
脂肪分  最低45%
表面   洗う。自然のカビ。黄色から明るい茶色
中身   白からアイボリー色。柔らかい
熟成   生産の日から最低3週間は上記の産地内で熟成させる
AOC   1981年3月24日取得


モン・ドールに使われるモンベリアルド牛

<日常的なチーズ>
今日の日本では「モン・ドール」と言えば、おいしいけれど値段も高く、チーズ専門店に行かないと手に入らないというのが現状です。しかしフランスでは違います。9~5月の期間であれば、どこにでもあるといっても過言ではないくらいどこにでもあります。チーズ店はもちろん、マルシェ(市場)やスーパーマーケット、そしてなんと空港ですら置いてあります。


チーズ店のモン・ドール


スーパーのモン・ドール

もちろんレストランにもさまざまなモン・ドール料理が置いてあると思い、レストランを訪れました。しかし、モン・ドール近郊のレストランにはあまり置いてありませんでした。特にモン・ドール・ショ(mont d’or chaud)はほとんど置いていませんでした。レストランの方に理由を聞くと、「モン・ドール近郊でモン・ドールを買うと500gで5~6ユーロ。でも、それをオーブンで焼きレストランで食べると10~15ユーロ。あなたならどっちを選ぶ?」と言われました。それだけモン・ドールは日常的で、ここフランスでは、「わざわざレストランで食べるものではないのかな」と思いました。もちろんないわけではありません。ちゃんとあるのですが、全てのお店に置いてあるかというとそうではないということです。

モン・ドール・ショ(大きな鍋で仕込みをして、小鍋に分けている。皮も全て溶けてしまっている)


仕上げにモン・ドールを加えた鶏のクリーム煮


モン・ドールとカルドンのグラタン(カルドンはアーティチョークの仲間。棘のある葉柄をゆでてから料理に使う。やや苦味がある)

<モン・ドール? ヴァシュラン・モン・ドール?>
モン・ドールのことをヴァシュランといったり、ヴァシュラン・モン・ドールといったりしますがどうしてでしょう?
「モン・ドール」は上記のようにフランスの定める地域で作られたものを指します(ヴァシュラン・デュ・オー=ドゥーvacherin du haut-Doubsという言い方もあり、略してヴァシュランといわれたりもします)。それ以外の地域で昔から作られ続けているモン・ドールにはヴァシュラン・フェルミエ(農家)という名前がつくものもあります。
「ヴァシュラン・モン・ドール」はスイスのAOCで、スイスの指定地域で作られるチーズです。フランスのモン・ドールと起源、製法がほとんど同じです。つまりほとんど同じチーズなのですが、フランスが無殺菌乳を使うのに対して、スイスでは殺菌乳が使われています。昔からモン・ドールは「スイスのチーズだ!」という人もいれば「フランスのものだ!」という人もいるそうです。

モン・ドールは好みの固さに熟成させて食べます

<モン・ドール=トロトロ?>
日本ではモン・ドールはトロトロだとか、スプーンですくって食べないといけないくらいの柔いというイメージがあると思います。僕自身もそのイメージを持っていました。しかし、フランスでは少し違うようです。何件かチーズ店に行きましたが、どこのお店を見ても日本でいうトロトロの状態のものは置いていませんでした。なぜなら、モン・ドールはチーズなので熟成します。しかし、お客全員がしっかり熟成したものが好きかどうかはわかりません。そのため少し熟成したものを店頭に置き、お客が好みに応じて各家庭で熟成させるそうです。つまり、モン・ドールは必ずしもトロトロというわけではなく、熟成具合によりさまざまな味が楽しめるチーズなのです。私の個人的な好みとしては、少し熟成が若く弾力があるくらいがいいと思います。熟成するにつれ香りも増してきますが、私はミルクの香りとほのかに熟成した香りが楽しめる少し若い状態がいいと思いました。焼いたものは、チーズ・フォンデュをイメージしていただけると分かりやすいと思いますが、とても滑らかで、香りもよく、お店では、付け合せにゆでたじゃがいもが添えられることが多いです。


モン・ドール・ショ(木箱ごとオーブンで焼いたもの)

<モン・ドールの波>
モン・ドールをよく見ると、表面が波打っていることに気付きます。そしてその波も一つひとつ違います。ではなぜあのような波が出来るのでしょうか? それは製造工程の最後に箱詰めを行うからです。上記の作り方の中の5でチーズの大まかな大きさは決まります。そこから熟成に入るわけですが、その熟成によって多少形が変わってきます。そして熟成がある程度進めば、箱詰めをします。その時に全て同じ大きさの木箱の中に入れるので、大きいものは必然的に押し込まれ波が多く出来るというわけです。一概には言えませんが、波が多いほど元は大きなモン・ドールだったということです。

今回の旅の中で様々なモン・ドールに出会いましたが、「同じモン・ドールでも同じものはない」と思いました。農家で丁寧に作られているのもと、スーパーのバーゲンで売られているものでは同じモン・ドールでも味、香りが全く違います。バーゲンなどで作られているものは大量生産されているのでしょう。しかしこういったものにもAOC(原産地管理呼称)がつけられていたことに驚かされました。もし次回があれば、そういった工場にも足を運び調査してきたいと思い、現地を後にしました。

ちなみに・・・今回訪れたチーズ店で「日本ではこのモン・ドールが500g3000~5000円で売られているんですよ」と言うと、信じられない・・・と一言!! それもそのはず、ここフランスでは500g5~8ユーロ、そして幻ではなく、コンテやブリー同様に日常的にあるチーズですから。

<コラム担当者>
西洋料理
松井 剛志 

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