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【とっておきのヨーロッパだより】高級ホテルで過ごすパリの休日
2012年10月24日

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<【とっておきのヨーロッパだより】ってどんなコラム?>

 

昨年(2011年)の秋から職員としてフランス校に勤務しています。もちろん業務での赴任である訳なのですが、小さいころから『ヨーロッパに住む』事が憧れであったため、憧れが現実のものになった、という喜びも感じる毎日です。

この機会を活かして休みの度にフランス各地へ足を伸ばしていますが、フランスの中でも特に好きな場所を挙げるとすれば、迷うことなくパリを選びます。歴史を感じられる建物や素敵な街並み、洗練されたパティスリーやカフェ、オシャレな雑貨屋さん、高級感漂うブティック街、とてもシンプルでいながらセンス良くまとまったファッションで颯爽と歩いていく人たちの姿・・・

私自身が地方出身者であるせいなのか、パリの華やかでエレガントな雰囲気は、日常では味わえない、夢のような特別な気分にさせてくれます。

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(左)パリの顔“エッフェル塔”
(中)パリの街が見渡せる“サクレ・クール聖堂”
(右)夕暮れのセーヌ川

 

パリの魅力を語るにあたり、個人的に絶対に外すことのできないのが、一般に「パラス」といわれるような高級ホテルです。(注1)

この称号に選ばれたホテルはフランス国内に8軒あり、そのうち半数の4軒(ル・ムーリス『Le Meurice』/ル・ブリストル『Le Bristol』/パークハイアット・パリ・ヴァンドーム『Park Hyatt Paris-Vendôme』/ホテル・プラザ・アテネ『Hôtel Plaza Athénée Paris』)がパリにあります。

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(左・右)『ル・ブリストル』

 

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(左)『オテル・ド・クリヨン』
(右)『ル・ムーリス』のバーラウンジ 

 

 

ただパラス級のホテルがどんなに素敵でも、宿泊するとなれば一番低いランクのお部屋でも1泊800ユーロくらいは必要で、やはり敷居が高く感じられるかもしれません。しかし、宿泊しなくても朝食やランチをいただいたり、ティータイムをゆっくりと過ごせる所も実は多いのです。 豪華ホテルの意外な楽しみ方を、こっそりお伝えいたします。

 

最近は宿泊をしていなくても、前もって予約さえすればほとんどの高級ホテルで朝食を食べることができるようになりました。朝食だけの利用の場合でも、宿泊客と同じメインダイニングでいただくことができます。フランス人の朝食といえばいわゆる“コンチネンタル”と呼ばれる形式の、タルティーヌ(注2)やヴィエノワズリー(注3)といったパン類にコーヒー、紅茶、カフェオレのような温かい飲み物だけのシンプルなものが一般的です。これらの朝食はカフェなど家の外で取った場合でも価格は5ユーロ前後で、10ユーロを超えることはまれですが、パラス級のホテルの多くには、50ユーロ前後でいただける朝食のセットというものがあります。

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ホテルでの優雅な朝食
(左)『ル・ブリストル』  (右)『ル・ムーリス』 

 

朝食に5000円近い値段となると中々勇気が必要に思えますが、パンかごに盛られたクロワッサン、クグロフ、ブリオッシュ、パン・オ・ショコラ、デニッシュなどの豊富なヴィエノワズリーに、イチゴ、アプリコット、フランボワーズなど数種類のコンフィチュール(ジャム)、バターが添えられ、フレッシュジュース、コーヒー、紅茶などの飲み物がついてきます。さらに、多彩なフルーツの盛り合わせや、ポーチドエッグやスクランブルエッグ、ベーコンエッグ、オムレツなどの卵料理、シャルキュトリー(ハムやソーセージなどの豚肉加工品)やチーズ…シンプルでいながら上質なこれらの朝食を豪華なしつらえの空間でいただけば、朝から素晴らしい気分に浸ることができ、値段だけの価値はあると思わせられます。

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『ホテル・プラザ・アテネ』の朝食では、こんな豪華な卵料理も…
(左)キャビアが贅沢にのせてある“ゆで卵”(
右)エッグ・ベネディクト:トリュフのスライスがのせられていて、ソースはサーヴィスマンがお客の前で熱々のものをかけてくれます。

 

パンひとつとっても、さすが!!と思わせるような味わい。フレッシュジュースも贅沢に搾りたてのものが出てきます。 とても優雅で華やかなのに、落ち着いてゆったりと過ごせるパラス・ホテルの空間で最上級のもてなしをうけながら始める一日は、パリの滞在をより素敵なものにしてくれるはずです。



朝食は軽めに済ませ、ランチを堪能するというのもいいでしょう。ミシュラン3つ星クラスのレストランで食事をしようと思うと、だいたいコースのお料理で200~300ユーロ、アラカルトで前菜1品40~80ユーロ、メインディッシュ1品で80~150ユーロくらいが目安になり、挑戦に勇気が必要な価格帯が多いものですが、近頃はディナーの半分くらいの値段設定でランチメニューをしているホテルレストランもたくさんあります。ランチ に足を運ぶレストランのあるパリのホテルの中で、私が個人的に特に気に入っているのが『ル・ブリストル』(注4)と『ル・ムーリス』(注5)です。

例えば『ル・ブリストル』のメインダイニングで、ミシュラン3つ星に輝く『エピキュール』。ランチのコースですと、アミューズ(付きだし)1~2品、オードブル(前菜)2~3品、メイン料理1品、チーズ、デザート2品といった内容で、100ユーロ前後でいただくことができます。 

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(左)付き出し。見た目も華やかで、非常に上品な味わい。皿右端の塩味のクグロフは型ごと登場した後、それぞれの皿に温かい状態でサーヴされます。
(右)温かい前菜。トマトをテーマとした一皿。ローストしたトマトに“再構築した卵”(この場合は、卵黄がメレンゲに包まれて火通しされたもの)がのせられています。

 

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(左)メインディッシュ。料理の低温調理されたサーモン。上にのっているシトロンキャビア(キャビアのような形状、そしてプチプチとした食感で、レモンとライムを掛け合わせたような味のする野菜)が絶妙なバランスをとっています。
(右)デザート。リュバーブのコンポートとフロマージュブランのムース。

 

お昼のメニューは夜のメニューと全く同じというわけではありませんが、食事をいただく空間はもちろんのこと、使用されているカトラリーや皿などの食器、そしてサーヴィスはもちろん夜と同じです。また、3つ星レストランの名前を背負っているだけあり、調理テクニックは言うまでもなく、素材もすべて一級品です。超有名レストランのフルコースのお料理を、ヨーロッパの高級ホテルならではの雰囲気の中でリーズナブルにいただけるということ・・・それだけでも充分な価値があるように思えます。太陽の光も程よく差し込んでいて、緑いっぱいの中庭にあるテラスの席は、とても清潔感があり、私も大好きな場所です。

レストランの内装は、ほとんどがオーダーメイドで、ルイ16世様式の天井、大理石の暖炉、可愛くて温かみのあるチェック柄の椅子とそれに合わせたテーブル、華やかな柄のカーテンと、どれをとってもセンスのあるものばかりです。もちろんテーブルの上も、レイノー(注6)のお皿、バカラのグラスと置物、クリストフルのカトラリー…と最上級のものがそろえられており、全てにこだわりを感じられます。気持ちよく差し込んでくる自然光や親しみやすく気持ちの良いサーヴィスも見事です。パラス・ホテルという空間をしっかりと感じさせる中にも、堅苦しくなりすぎない心配りが非常に心地良さを感じさせます。

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(左)『ル・ブリストル』
(右)『エピキュール』内装

 

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(左)『エピキュール』のテラス。コーヒーやデザートだけの利用もできます
(右)左から、キャラメル、パイ菓子、マカロン、マシュマロ、チョコレート

 

もう1つの私のお気に入りのホテル『ル・ムーリス』はパリのパラス・ホテルの中で最も歴史のあるホテルで、チュイルリー公園の目の前に位置しています。周辺にはルーブル美術館、ヴァンドーム広場、マドレーヌ広場などがあり、非常に便利な立地になります。

 

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『ル・ムーリス』内観

 

こちらのホテルは、華やかさの中にも家庭的な温かみのある要素が含まれている『ル・ブリストル』とはまた異なり、高級感に溢れた洗練された雰囲気が味わえます。ホテルと同名のメインダイニング『ル・ムーリス』(ミシュラン3つ星) も、ディナーでのコースは300ユーロ前後とやはり少々気後れする価格帯ですが、ランチの時間には、パリのミシュラン3つ星の味をかなり気軽に楽しむことができます。

先日(2012年9月初旬)訪れた際にいただいたランチのメニューも素晴らしいものでした。トマトをテーマに様々な調理法や温度に仕上げられた3皿の料理、カエルのもも肉のスープのカプチーノ仕立て、その後に、ゼリー固めにしたソースが添えられたサバの一皿と続く、繊細な仕立ての前菜の数々。丸ごとのセップ茸のローストに続き、メインディッシュはフランスでも高級魚とされるヒラメを低温で調理したものでした。サクランボをテーマに4皿ものデザートで締めくくられるこのランチのコースメニューは、一皿一皿のクオリティの高さは言うまでもなく、セップ茸のローストやデザートの一部などをお客の目の前で仕上げや盛り付けをするなど、お客の満足感を高める演出も申し分ありません。これで105ユーロという価格は驚くべきであり、わざわざ味わいに訪れる価値のあるランチだと感じます。

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掲載許可をいただけなかったため、ランチの料理を写真でご紹介できないのが残念です。これは『ル・ムーリス』シェフ、アレノ氏の料理。(写真提供『ル・ムーリス』)

 

レストラン『ル・ムーリス』のシェフはヤニック・アレノ氏。2007年にわずか30代前半にしてムーリスをミシュランの3つ星へと導いたこと、そして食の専門雑誌『ル・シェフ』(注7)から2008年度ベスト・シェフに選ばれるなど、世界で最も注目されるスターシェフの一人です。彼の料理を目当てに世界中から訪れる人々も少なくありません。

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ヤニック・アレノ氏

 

景気があまり思わしくない昨今に、このようなパラスと呼ばれるクラスのホテルが実際に集客できている現状。世界中の人たちを魅了し続け、それを維持するためにどのように考え、何を心掛けているのかというのは、私の素朴な疑問でもあり、興味のあるところでした。多忙でなかなかお会いすることが難しいと言われているアレノ氏なのですが、幸運にもお目にかかる機会を得、アレノ氏のレストランに対するお考えを伺うことができました。

 

問:「貴店でお昼と夜にそれぞれメインダイニングを利用する客層に、違いはみとめられますか?そしてまた提供する側としての姿勢の違いはありますか?」

アレノ氏:「大半が富裕層であるディナータイムとは少し異なり、ランチの間は、ビジネスマン以外は各国からの観光客が多くなります。もちろん、ランチは客単価としては下がってしまうのですが、色々な人にホテルのことのみならず、自分自身の存在も知ってもらえる機会になるので、興味をもって食べに来てくださるお客様には、昼・夜関係なく、最高のおもてなしをし、満足して帰っていただきたいと考えています。」

問:「お客様はホテルに何を求めて来られると思いますか?」
アレノ氏:「昼でも夜でもお客様は贅沢で華やかで特別な時間を求めていらっしゃるので、お料理はもちろん、カトラリーも器も内装も、常に新しいものを探し求めています。つまり《究極の理想美の追求》に尽きるのではないでしょうか。」

迷うことなく、力強く答えてくださいました。『ル・ムーリス』に世界中から人々が集まる理由、そしてアレノ氏の世界に通用する強さや魅力を垣間見ることができたひと時でした。

 

『エピキュール』のシェフ、エリック・フレッション氏にも、直接お話を伺う機会は持てませんでしたが、知人を介して同様の質問をさせていただきました。エリック・フレッション氏もアレノ氏同様『ル・シェフ』誌で2009年度のベスト・シェフに選ばれるなど、今をときめく料理人の一人です。サルコジ大統領から国家功労勲章、レジオン・ドヌール勲章(注8)を贈られたことでも世界中から注目を集めています。

フレッション氏の回答によれば、『エピキュール』の昼と夜の客層の違いに関しては『ル・ムーリス』同様、夜に比べて昼間はより気軽に楽しまれる各国の方々の利用が多いそうです。また、かしこまらずに開放的な気分で食事を楽しんでいただけるよう、暖かい気候の日は、お昼はアペリティフ(食前酒)だけではなく、お食事もそのままテラスで取っていただいたり、さらに食事が終わってもお茶を楽しみながらゆっくりとくつろいでいただくことも多いそうです。

 

フレッション氏:「お客様はもちろん“特別“を求めて来られるわけですが、”特別“な時間のなかで、その幸せを感じられる”余裕“が大切になると思うのです。だからこそ空間、お料理、サーヴィスなど、すべてにおいて心配りや温かみは非常に重要ですし、尊重しています。」

お客様に対するおもてなしをするという気持ちの伝え方はホテルごとに様々で、パラス・ホテルにはそれぞれに様々な特別な魅力があること、それぞれの特別な魅力に惹かれた訪問客はそれぞれの“特別”を求めてホテルを選択するのだと感じました。

 

いくつかホテルの楽しみ方の提案をさせていただきましたが、百聞は一見に如かず…機会がありましたら、まず始めはコーヒー1杯飲みに行ってみるだけでも、ぜひ経験してみてください。気持ちが華やかになり、麗しい時間になること間違いなしです。その時間と雰囲気に魅了されて、パリ、そしてフランスの虜になっていただければ、とても嬉しく思います。

 

パリにはまだまだ紹介しきれないくらい素敵な場所がたくさんあります。私も、まだまだ見つけきれていない素敵なパリを求めて、残りのフランス生活をより良いものにできればと思いますし、また何かの機会にみなさんにもお伝えできればと思っています。

※2012年10月現在 1ユーロ=102円

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注1:フランスのホテルは政府観光局の設定した基準により、星なしから4つ星デラックス、更にその上の”5つ星”まで7段階に分けられています。いわゆる高級ホテルは4つ星~5つ星、中級ホテルは2つ星~4つ星に分類されます。

5つ星を上回る称号“パラス(Palace)”が2011年に正式認定されるようになりました。この称号を得るためには、ハード面(規模や設備、歴史、格式など)、ソフト面(スタッフやサーヴィスなど)の両方に対してあらゆる角度から審査があり、すべてにおいて超越していないといけません。

注2:バゲットにジャムやバターを塗ったもの。

注3:クロワッサンやパン・オ・ショコラなど、バターがたっぷりと使われた様々な種類のパン。

注4:シャンゼリゼ大通り、大統領官邸であるエリゼ宮の近くにあるフォーブル・サントノレ通りに位置し、1925年の開業以来、諸外国の王室、各界の著名人に愛されてきたホテル。

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(写真上)2010年より『ル・ブリストル』内で飼われている猫。家族での利用客も多いブリストルにおいて、豪華なパラス・ホテルの雰囲気の中にも温かみを加え、マスコット的存在となっています。



注5:170年ほど前の開業以来、ファッションブランド「シャネル」の創始者ココ・シャネルや、芸術家のサルヴァトール・ダリなど様々な著名人が利用していたことでも有名なホテル。

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(写真上)ダリの作品からヒントを得て改装されたホテル内のティールーム『ル・ダリ』

 

注6:フランス陶磁器の代表ともいえるリモージュ焼きの中でも上質とされている名門ブランド。

 

注7:毎年度のベスト・シェフは、フランス国内の6000人の料理人、パティシエ、ソムリエの投票によって選ばれます。フランスでは、ベスト・シェフに選ばれることは、オリンピックの金メダルと同じくらい名誉なこととも言われるそうです。

 

注8:フランスの最高勲章。軍事や文化、科学、産業、商業、クリエーションなどの分野において、フランスのために卓越した功績を残した人に表彰されます。国家功労勲章とともに、フランス大統領の決定のもと、フランス政府から授与される名誉ある称号。

このコラムの担当者

市谷沙織

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