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【とっておきのヨーロッパだより】これがおいしい!バルセロナ 〜ドリンク編②〜
2013年04月17日

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 <【とっておきのヨーロッパだより】ってどんなコラム?>

 

「これがおいしい!バルセロナ」シリーズ
第1回 ドリンク編①|第2回 ドリンク編②|第3回 米編第4回 市場&野菜編第5回 魚介類編

 


 

スペインでありながら独自のアイデンティティを守り続けるカタルーニャ地方。この「これが美味しい!バルセロナ」シリーズでは、そんなカタルーニャの中心都市バルセロナをクローズアップし、私自身がカタルーニャ人との交流のなかで知ったバルセロナならではの食文化の魅力と、おいしくて少し珍しいお店を紹介しています。今回は前回に続き、ドリンク編の第2弾です!
なお、カタルーニャ人に密着したレポートということで、本文中のアルファベット表記はすべて普段彼らが話しているときの呼び方、カタルーニャ語になっていますので、ぜひ皆さんの知っている言語と比較してみてください。

 

■シャンパンより日常的なカバCava
スペインはヨーロッパにおける一大ワイン生産国のひとつですが、バルセロナでワインといえば、その代表格にあがるのは「カバCava」かもしれません。ここ数年、日本でも販売され知られるようになったコドルニウ社Codrniuやフレシャネッ社Freixenet(日本ではフレシネ)などの発泡酒は、なにを隠そう、カタルーニャ発のカバなのです。
瓶のなかで2次発酵させるフランスのシャンパーニュと同じ製法でつくられるのですが、シャンパーニュが高級な嗜好品とされることが多いのに対し、カバは非常に日常的で、スーパーから百貨店、専門店に至るまでドリンクコーナーには必ず多数のカバが並んでいます。なかには、サッカーチームFCバルセロナ「バルサBarça」の公式応援カバまであり、どれにしようかとつい目移りしてしまうほど。安いものは2ユーロ程度のものからあり、特別なもの以外は10ユーロを超えるものはほとんどありません。
カバに使用されるブドウ品種は「マカベウ種Macabeu(注1)」、パレリャダ種Parellada(注2)」、そして「チャレリョ種Xarello(注3)」がほとんどで、シャンパーニュとはもちろん風味は違いますが、アペリティフとしてだけでなく食事中にも十分楽しめる飲み物だと言えます。

 

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(左)スーパーマーケットの棚にも、ものすごい種類のカバが並ぶ
(右)FCバルセロナ公式応援カバ

 

カバといえば、バルセロナには通称「ラ・チャンパネリアLa Xampaneria」と呼ばれているお店があります。注文できるドリンクは白かロゼの発泡酒(カバ)だけ。それらを飲みながら、おつまみのチーズをはじめ、さまざまな肉系のタパス、またそれらと野菜を挟んだ「アントラパEntrepà(サンドイッチ)」を立ち食いスタイルで楽しむ、ちょっと珍しい店です。
人気の秘密は、とにかく安いこと!グラス1杯が1ユーロ、なんとボトルは3ユーロからあるという価格設定。タパスやサンドイッチも、2〜3ユーロで楽しめるとくれば、このお店が毎日観光客だけでなく、地元の人たちで賑わっていることもうなずけます。
スペインの一般的な昼食時間(14時ごろ)には、店内に入りきれないほどの混雑になるので、少し早い時間に行くことをおすすめします。

 

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(左)看板もないラ・チャンパネリアは人だかりとこの吊り下げられた生ハムの肉が目印
(右)カバのボトルはなんと3ユーロから

 

ところで、「チャンパイニXampany」というのはカタルーニャ語で「シャンパーニュ」のことですが、フランスからこの地方にシャンパーニュが伝わったのは1823年。時の王フェラン7世の要請で派兵されたオーストリア、プルシア(現在のドイツ)、フランス、ロシアの混成部隊「セン・ミル・フィス・ダ・サン・リュイスCent Mil Fills de Sant Lluís(聖リュイスの10万人の息子たち)」によって持ち込まれたとされています。以来、この地方では発泡酒を広く「チャンパイニXampany」と呼んでいましたが、1972年、フランスのスパークリングワイン協議会によって、フランスのシャンパーニュ保護のため、スペインの発泡酒を「チャンパイニ」と呼ぶことが禁止されたそうです。
そこで、登場したのが「カバCava」という名称。もともと、地下のワインカーヴで発酵・熟成させていたことから発泡ワインのことを「ビ・ダ・カバVi de cava(洞窟のワイン)」とも呼んでいて、そこから「カバ」という名称が生まれたのだそうです。

 

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(左)午前中から賑わう店内。ランチタイムにはすし詰め状態になる
(右)奥には生ハムや缶詰などのオリジナル商品販売コーナーも


■ビールもやっぱりバルセロナブランド
そして、スペイン人は「サルベサCervesa(ビール)」が大好き。ビール専門の居酒屋「サルベサリアCervesaria」は、おいしいタパスをつまみながらビールを飲む地元の人々でいつも賑わっています。バルセロナで特によく見かけるのはダム社Dammeとモリッツ社Morizのもの。いずれも地元の人がこよなく愛す、バルセロナブランドのビールです。実際飲んでみると、ほかのヨーロッパのものよりも風味がはっきりしている気がします。

 

ダム社の代表的なものは次の3つ。

 

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カンだけでなく、ビンでも販売されている

 

「チベカXibeca」(写真上左)
通常1リットルの大ボトルで、「安いビール」として販売されているラガービールでしたが、今は缶でも販売しています。色は淡くアルコール度も4.6度と低め。1960年代にテーブルワインの価格が大幅に上昇した際、テーブル赤ワインに代わる安価な飲み物としてつくられました。1970年代にはカタルーニャの低中流階級の人々の間で非常に人気があったそうです。80年以上の歴史をもつ商品です。

 

「エストレリャ・ダムEstrella Damm」(写真上中)
カタルーニャで最も飲まれているラガービール。1992年バルセロナオリンピックの公式ビールでもありました。アルコール度は5.4度。原料の100%が天然成分で、麦芽、ホップ、水、酵母とエブラの米が風味の調整に使われています。『アル・ブイEl Bulli』のソムリエ、ダヴィッ・セィヤスDavid Seijasとフェラン・センテイェスFerran Centellesは「色は金色、琥珀色のニュアンスと緑色の反射がある。輝きがあり、白い泡もしっかりと存在している。勢いよく立ち上る炭酸も豊富で、非常にきめ細かである。口に含んだときの酸味はすぐに丸くなり、口当たりはなめらか。穀物のローストされた香りが鼻に残り、このビールの個性を強調している」と評したそうです。

 

「ボイ・ダムVoll-Damm」(写真上右)
Vollとは「完全な、いっぱいの」という意味のドイツ語。アルコール7.2度。このビールの製法はもともとはドイツから持ち込まれたものだそうです。現代のような冷却システムのなかった時代、暑い夏の発酵に耐えられるよう、醸造工程において2度モルトを入れていたことからこの力強い風味と高いアルコール度が生まれました。様々な世界のビールコンテストで「力強いビール」として、数々の賞を受賞しています。

 

以上の主力3種のほか、近年では、飲み口の軽いタイプの黒ビール「ボック・ダムBock-Damm」(写真下左) や、レモネードとブレンドした「ダム・レモンDamm Lemon」(写真下中央)、ノンアルコールの「フリー・ダムFree Damm」(写真下右)なども開発され、市場を賑わせています。

 

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新商品のパッケージはポップな色が目立つが上品

 

そして、こちらがモリッツ社の2枚看板。

 

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(左)モリッツ社のビールはビンで売られているものがほとんど
(右)左が「モリッツ」右が「モリッツ・エピドール」の生ビール。色にもそれぞれ個性がある(『バル・ベロドロモ』にて)

 

「モリッツMoritz」
モリッツビールの秘密はその水にあります。このビールはカタルーニャ北西部「マシッス・デル・ムンセニィ・ギヤリアスMassís del Montseny-Guilleries(ムンセニィ・ギヤリアス山塊)」に本社を構え、バルセロナでもポピュラーなミネラルウォーター生産会社、ビチー・カタラ社Vichy Catalàの所有する「フォン・ドールFont d’Or(黄金の泉)」と呼ばれる泉から出る天然水を使用してつくられています。良質な水が繊細な口当たりを生み出しているというわけです。また、ホップの苦みのある抽出液でなく、チェコ産の「サース種Saaz」と呼ばれるホップの花を大量に煎じて製造するために、非常に香り高く苦みの押さえられた、ほのかに甘みのある風味となるそうです。発酵樽も背の低いものを使用するなど、あらゆる面で伝統的製法でつくられたビールです。

 

「モリッツ・エピドールMoritz Epidor」
アルコール度数7.2%の濃厚な味わいのモリッツ・エピドールは「マルタ・カラメルMalta Caramel(カラメル・モルト)」を材料としています。カラメル・モルトとは、麦芽を水分を残したまま蒸らし、デンプンの糖化とカラメル化を進めた後に乾燥させたもの。それがこのビールに濃厚な色とコクを与えています。チーズや生ハム、チョリソーなどの濃い味のおつまみにぴったり。

 

ところでモリッツ社は、フランスのアルザス地方から来たビール製造技術者ルイ・モリッツLouis Moritzが1856年に起業したビール会社。1800年代初頭からビール製造はカタルーニャの至る所で行われていましたが、このモリッツ社がスペインで最初にビール会社として認可されたと言われています。かつては万国博や品評会で数々の賞を勝ち取るほどの人気で、カタルーニャ州では約34%のシェアを誇っていたそうですが、1970年代のオイルショックの余波によって経営状況が悪化し、休業に追い込まれました。その後2004年に、モリッツ氏の5代目と6代目が会社の再興に成功し、以来、バルセロナ発のこの地ビールは高級レストランが好んで仕入れるなど、ダム社と並んでバルセロナで最も人気のあるビールとなっています。

 

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(左)モリッツ販売コーナーのディスプレイ。宣伝にも力を入れていることがよくわかる
(右)ポップなパッケージが売り場でもひときわ目をひく

 

また、モリッツ社は、長らくバルセロナの歴史的シンボルとして愛され2000年にオーナーの引退でやむなく閉店した『バル・ベロドロモBar Velódromo』を当時のそのままの姿で復活させたことでも知られています。『バル・ベロドロモ』は市民戦争時代の1933年ごろには政治家たちの会合の場所として、また、それ以降もバルセロナの思想家、文学者、アーティスト等の文化人が足しげく通い、常にバルセロナの歴史に関わってきた老舗バルです。モリッツ社はこの店を単なるバルでなく、あらゆる時間帯や顧客層に対応した“バル‐カフェ‐レストランBar-café-restaurant”というパワーアップした店舗形態で復活させ、往年の賑わいを取り戻すことに成功しました。

 

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(左)『バル・ベロドロモ』の客層は若者から家族連れまで幅広い
(右)ゆったりした空間とモダンな内装。中2階のフロアもある

 

ここではモリッツ社の生ビールはもちろんのこと、とてもおいしいカタルーニャ料理が楽しめます。料理は『アル・ブイEl Bulli』でシェフを経験し、現在は『クメルス・ビンティ・クアトラComerç 24』というミシュラン1ツ星レストランの主任シェフを務めるカルレス・アベヤンCarles Abellánが監修しています。カタルーニャの食材にこだわり、伝統をベースにした洗練されたメニューを手軽な値段で楽しむことができるので、おすすめです。

 

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取材協力店:

Can Paixano (La Xampanyeria)

Carrer de la Reina Christina 7, Barcelona, Spain

 

Bar Velódromo

Carrer de Muntaner, 213, Barcelona 08036, Spain

 

注1: アラゴンかカタルーニャが原産と言われる白のブドウ品種。かびや病菌には非常に敏感ですが、霜に強く、スペインでは最も広域で栽培され、地域によって呼び名も味わいも異なります。リオハでは白ワインの基本品種として、酸味のある早飲みの若いワインに使われますが、カタルーニャのものは主にパレリャダParellada種、チャレリョXarello種と混ぜてカバをつくるために使用されています。

 

注2: カタルーニャ地方の白の固有品種。熟成が遅く、病菌や霜に敏感で栽培しにくい品種であるにもかかわらず、カバに欠かせない品種として広く栽培されています。果皮は緑色をしていて、酸度が豊富。花のような香りを有し、アルコールは低めの軽い早飲みのワインを生み出します。また、カタルーニャではこの品種をつかったブランデーもつくられています。

 

注3: チャレリョは中粒で甘く房もコンパクトな白の外来品種。その名はイタリア語が語源とされています。果実は小ぶりで黄金色にも見える黄色を帯びており、新鮮でフルーティーな芳香を生み出します。酸味とアルコールの豊かな、しっかりしたワインに仕上がります。カタルーニャでは、マカベウ種、パレリャダ種とともにカバの3大品種とされています。


スペインに関するコラム「風土Foodエスパーニャ」
https://www.tsujicho.com/oishii/recipe/w_food/espana/index.html

このコラムの担当者

佐藤重文

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