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【半歩プロの西洋料理】ビストロ!びすとろ!bistrot!①
2011年04月20日

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<【半歩プロの西洋料理】ってどんなコラム?>

手元に2冊の料理書がある。



「ビストロブック」と「決定版ビストロレシピ」
どちらも2010年夏、柴田書店から刊行
特に前者は近頃の私のお気に入りの一冊、日によっては何度と無く私の心が頁を彷徨う。

「ビストロブック」には、フランスのいろいろなお店の様子が紹介されていて、フランスで生活した経験がさほど長いわけでもない私ですら、郷愁を誘われる。また取り上げられている料理を見ているだけで、「あれも食べた、これも食べた」「これは誰と食べに行った」「この料理をテラスで食べている時、突然雨が降ってきて・・・」などと懐かしい思い出がよみがえってくる。フランスに行ったことがない方でも、「あれも食べてみたい」「ここで飲んでみたいな~ぁ」と思うような、酒飲みの食いしん坊を誘ってくれる料理が並んでいる。最後の数十頁では「決定版ビストロレシピ」と同じく、日本の料理人たちがフランスへの憧れや思い入れ、ビストロという言葉への一人一人のこだわりを、あふれんばかりに語っている。ビストロへの愛に満ちたこの本は、まさに「ビストロへのオマージュ」と言えよう。

私が「ビストロ」という言葉を知ったのは、今から30数年前、辻調理師専門学校に通っていたころに出会った一冊の本からである。


「パリの居酒屋(びすとろ)」辻静雄著、柴田書店刊1971年刊行
すでに絶版
ネットオークションで探すと見つかることもあるし、大阪市内の古書店でもたまに見かける。
○○○円均一コーナーにあることもあるので、興味のある方は足しげく通ってみては(見つけるとお得!)。

1960~70年にかけて、パリの人々が日常生活の中で訪れる身近なレストランを紹介した本だ。当時は、今のように日本語のフランスのレストランのガイドブックがあるわけでもなく、最新のフランス料理事情を知る機会が少なかった。そんな時代に出版されたこの本は、店の場所や雰囲気、客層、名物料理やお勧め料理、その作り方や客席での取り分け方、印象深い店員や店の主人、ドレスコードに至るまでなどなど・・・が細かく記されていて、フランスの土を踏むことの難しかった時代に、私たちにフランスの息吹を感じさせてくれる一冊であった。出版当時から30年以上経っているため、現在はガイドブックとして役に立つものではない。しかし、そこに並ぶ料理の紹介文や行間からは、フランスで生きる人々の息遣いや生活の様子がにじみ出ていると思う。私はかつてこの本を読んでいて、あたかも、巧みに日本語を操るフランス人が「フランスはいいよ~」と誘いかけているかのように感じたものである。

「ビストロ」とは何か?という問いに対する答えは様々である。単純に「食堂」であると答えてもいいだろう。「大衆食堂」「居酒屋」「飯屋」などという言葉に置き換えることもあるかもしれない。高級感があり、やや敷居の高い食堂がレストランで、それに比べて気軽に足を運べそうな食堂をビストロと呼ぶ、このように対比して区別することも可能かもしれない。ワインをはじめとしたお酒を楽しむ場所で、更に十分にお腹を満たすような料理を提供できる店をビストロと呼ぶ、そういう解釈もあるかもしれない。


クリュディテ
数種類の野菜のサラダの取り合わせ。日本人の感覚では野菜だけでもお腹一杯だが・・・

ビストロでの定番の前菜といえば、クリュディテや海の幸、食肉加工品などの盛り合わせのような、バラエティあふれる大皿のものや、ソシソン・ブリオシュ(太いソーセージを芯にして焼き上げた、バターたっぷりのパン)やタルタルステーキなどの食べ応えのあるもの、挽き肉やほぐしたソーセージを詰めた野菜や、チーズたっぷりの野菜のグラタン、ローストした野菜をドレッシングに漬け込んだものなどであるが、近年コマーシャルで一躍名前の広まったウフ・マヨネーズのように単純明快で、本来どこで食べてもはずれようの無いメニューを美味しく作れる店にこそ足を運びたいものである。


ウフ・マヨネーズ
単純明快、ゆで卵、マヨネーズ、柔らかくゆでたじゃがいもの黄金の三角形。
この1皿で、白ワインのボトルは一気に半分になるのがいつものパターン。

この料理は店によって実に様々で、1週間前にゆでたのかと思わせるようなカチカチのゆで卵と、表面に油がにじんだようになって、何時作ったのかもわからないマヨネーズを皿に載せて出すところもあれば、ゆでたての卵を新鮮な卵黄の風味の残る作ったばかりのマヨネーズと共に出すところもある。また、生野菜やゆで野菜を添えるところもあるし、キャビア、いくら、生ハムなどを添えた高価なものもある。


ムール貝の白ワイン蒸し
鍋一杯が1人前、いくら美味しくても飽きる?付け合わせのじゃがいものフライのボリュームも半端ではない


こうやって殻で摘んで食べるのが「作法」だと教わったのだが・・・

中には魚料理、肉料理と2皿頼む強者もいるが、オードブルの他にはメインディッシュのみか、メインディッシュと山盛りの野菜料理を頼むのが常である。20cm四方はあろうかという牛胃のパン粉焼きや、直径20cm以上ある鍋にぎっしりと詰まった内臓のトマト煮込み、舌平目のムニエルなどでも400gはあろうかとう巨大なものであったりするので、値段と但し書き(何人分なのか)をしっかりとみて注文することが必要になることもある。また、ムール貝の白ワイン蒸しなどを注文すると、1人分でも小さなバケツに一杯の貝殻がテーブルに積み上がることを覚悟しなければならない。


ソル・ムニエール(舌平目のムニエル)
でかい、ひたすらでかい舌平目。メニューをよく見るとお二人様でと書いてあった。

そんなメインディッシュの中で私が大好きな食材が「豚」。それも正肉の部分ではなく副生物と呼ばれる部位、中でもいわゆる豚足、そして耳、舌をはじめとした頭の部分である。丁寧に下処理して柔らかくゆであげてから様々に加工された品々は、豚という食材がフランス庶民の中に広く親しまれているのだろうと感じさせてくれるものばかりである。

ピエ・ド・ポール・ファルシ(豚足のファルシ)
・・・思わず「爆弾?」と言いかけるほど巨大な物体。グレープフルーツ大のかたまりだった。

私なりのビストロへのオマージュは豚足を使った一皿から幕を開けてみたい。

この項続く・・・

<コラム担当者>
30数年前の一冊の本との出会いを思いかえして・・・老人ライダー候補生
此上 潤

<このコラムのレシピ>
豚足のファルシ、赤ワインソース

<バックナンバー>
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