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【半歩プロの西洋料理】フランス人はビールがお好き?
2011年02月22日

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<【半歩プロの西洋料理】ってどんなコラム?>

「ムッシュN、何を飲みますか?」

約束の時間に少し遅れてやって来て、既に集まっていた我々と一通り握手を交わして席に着くやいなや「今日の学生はとてもやる気があって質問も多く授業のやりがいがあった」と、いつものように早口でまくし立てる彼に、幹事の職員が飲み物を聞いた。

「ビェル」

改めて聞くまでもない、いつも通りの決まりきった答えが彼の口から出た。


陽気なN氏と共に…
 
年に一度、フランス校に勤務するフランス人シェフによる特別授業が、2週間にわたって大阪と東京のグループ校で行われる。授業の後は職員と共にテーブルを囲み、その日の授業の感想や、各々の職員のフランス校時代の思い出話に花が咲く。

こういった食事の際に彼らが口にするのは決まってビールである。

「ワインもありますよ」フランス校での勤務経験のない幹事の言葉に彼は手のひらを軽く広げて上に向け、「何故そんなことを確認するのか?」とでも言いたげな表情をする。

そう、彼はビールを飲みたいからビールを飲むのである。今夜の会食の場が、居酒屋だからとか、中国料理店だからといって、店によって飲み物を選ぶのではないのである。

私の知る数少ないフランス人たちは一様に気楽な会食の際にはビールを飲むことが多い。ワインを飲むのは改まった食事やレストランでの食事、打ち解けた少人数での集まりの際ぐらいである。大勢を家に招いてのパーティーの際にも、シャンパンで乾杯をした後はワインの用意はあるものの、ほとんどの手はサイドテーブルに積まれている生ぬるい小さなビール瓶に伸びる。「フランス人は食事の時にはワインを飲む」、そんなイメージを抱いてフランスにいった私も、最初は不思議に思ったものであった。

彼らの多くは、ビールを少しずつちびちび飲む。ビールという酒を、飲むという感じではなく、食事の合間、会話の合間に口を湿らすように口に含むのだ。もっとぐいぐい飲むことはないのかと聞くと、帰ってきた答えは「ビヤホールなどへ行ったときはそういう飲み方もするが、食事や会話が中心のときはこういう飲み方をするのが普通だ」というものであった。こういう場合のビールは、彼らにとってお酒ではなく会話の潤滑剤なのかも知れない。会話や人との付き合いを楽しむためにワインではなくビールを選んでいるのだろうか?


日本でもおなじみ、フランスのビールといえば先ずこれ!「クローネンブルグ1664」

 
日本では、他者とのコミュニケーションを嫌い、自分だけの時間を大切にする若者がアルコール離れし、「ノミニケーション」という言葉すら死語になりかけているが、フランスでは、ビールが新たなコミュニケーションツールとなっているようだ。

以前から、私はビールというものを好まなかった。含まれているガスによってお腹が膨れる気がして、何を食べても美味しく感じられないからである。そんな私がビールを口にするようになったのはフランスでの生活を経験してからであった。

「フランスでは水よりワインが安い」などといわれて日本を発った私は、フランスに着いた最初の日に身の回りのものをそろえるためにスーパーへ行った。早速、ワインと水の値段を見てみるとワインは確かに安い。日本円にするとボトルで300~400円程度のものが多く見られた。水は500mlのものを1本だけ買うと150~200円ぐらいで、確かに日本と比べると割高な感じがしたが、大きなペットボトルをケース買いすると日本よりかなり安く買えた。ワインのほうが水より安いというのは眉唾ものだと感じたものであった。しかし、ビールは違った。300ml前後の小さな瓶に入ったビールが25本入ったケースが470円ほどで買えるのである。1本20円でおつりが来る。ジュースや水より確かに安い。安いものはほとんどがアルザス地方の工場で作られた、やや酸味のある、風味に乏しいものであり、炭酸の具合も日本のものと比べて弱く、食事と共に飲むにはうってつけのものであった。当時の私たちは「1フランビール」と呼び、休みの日には遅い朝食と共に栓を抜くことも多かった。ビールを飲む習慣が定着すると徐々に美味しいものに手を出すようになり、フランス産のものでもより美味しいものを、やがてはお隣のベルギーの高級なビールを飲むようになったが、それらも日本に比べると驚くほど安く、200円台のものがほとんどであった。


日本の半額までは行かないが…十分安かったベルギーのビール(写真は「シメイ」と「デュベル」)

そうこうするうちに気づいたことがある。「フランスのビールはぬるい」のである。瓶や缶のビールを氷水で冷やすというような習慣はなく、せいぜいワインより少し低い程度の温度(10℃前後)のものが多く、暑い午後にカフェテリアで生ビールを飲むときは氷をもらって入れて飲むこともあった。何故冷やさないのかと聞くと「冷たいと身体が冷えるから」という答えが返ってきた。確かにビヤホールでもホテルでも駅でも冷たい生ビールに出会うことは少なかった。

フランスの生活の中で、めったに出会えない冷たいビールが飲める場所を見つけたのは、郊外のスーパーにいったついでに、日本ではついぞ行く機会のなかった○○ド○○ドのハンバーガーショップに立ち寄った時だった。そこでは、日本でも本国アメリカでもありえないことだが、ドリンクメニューに生ビールがあり、アメリカ人好みにキリリと冷えていたのである。以後、買い物のついでに誰かを伴って立ち寄り、ハンバーガーセットに私の分のフライドポテトと生ビールを一緒に注文してもらうようになった。そう、ハンバーガーはいらない。冷たい生ビールと共にフライドポテトがあればいいのである。そんな迷惑な客が出没したのは私がフランスで生活していた今から16~17年前のことであったろうか?

フランス人はビールが好きなのだろうか?それともおしゃべりを邪魔しない飲み物としてビールを選んでいるのだろうか?

なんにしても・・・私は心地よいほろ酔い気分を楽しみたい。フランス人はぬるいビールがいいのかもしれない。でも、日本人はやっぱり冷たいビールが恋しいのである。

 
<コラム担当者>
17年前の夏の日々に思いをはせる・・・老人ライダー候補生
 此上 潤

<このコラムのレシピ>
 牛肉のビール煮

 <バックナンバー>
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