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【半歩プロの西洋料理】食に溢れる魅惑的なフランス・バスク地方
2011年06月24日

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<【半歩プロの西洋料理】ってどんなコラム?>

2010年の秋に帰国するまで、2年間フランス校に勤務していました。フランスは世界最高レベルの美食の宝庫。渡航前から「フランスに行ったら、星付きレストランを片端から食べ歩きするぞ!」と意気込んでおり、実際に赴任中は、ミシュランガイドを開いては各地のレストランをめぐっていました。
そんな中、夏休み旅行の計画を立てようとガイドブックを開いていると、ページの片隅にある「バスク地方」という文字が目に留まりました。“フランスとスペインに隣接する2つの文化が混ざり合う独特の場所”と書かれていましたが、それ以上の説明はなし。他の地方のページなら豊富に紹介されている土地の名物料理やワインについても詳しくは書かれておらず、辛うじて特産品として「バイヨンヌの生ハム」と「エスプレットの唐辛子」が紹介されていました。
フランス校のコアール教授は、「バスク地方は緑や花などの自然がとてもきれいで、食べ物が特においしい地方。」、「バイヨンヌの生ハムは絶品!」、「みんなが見たことのない唐辛子がエスプレット村にはある。」と話していました。
また、日本人の同僚たちからも「村が唐辛子だらけ・・・」という話を聞き、さらに興味がつのりました。
自分の目と舌でそれらの話を確かめてみようと、バスク地方に行くことを決めました。

バスク地方とは、太平洋に面したフランスからスペインの両国にまたがった地域。調べてみると古代ローマ時代から自治を許され、中世から近世にかけてはバスク王の末裔がイベリア王家を継承するほどの権威を持ち、現在は属している国は分かれても共通する歴史と言語を持ち、また食文化も非常に豊かな地域だそうです。※注1

肉加工品(生ハムやサラミ、塩漬けなど)はフランスの各地方でつくられていますが、フランス側バスクの地域の一つバイオナはフランス語で「バイヨンヌ」と呼ばれ、生ハムの特産地として有名です。


バイヨンヌの標識                             バイヨンヌの生ハム

この生ハム工場の一つを見学することができました。バイヨンヌの生ハムは、I.G.P.(地理的表示保護)※注2の基準によって、特定された地域の豚のもも肉を使わねばならないことや、塩漬け、乾燥、熟成と全ての段階に厳しい基準が設けられていることなどを、工場内を見学しながら説明を受けました。

工場を見学しただけでは物足りないので、実際に生ハムを食べ歩いてみる事に。バイヨンヌの町中にある生ハムのお店に立ち寄りました。


(左)生ハム屋さんにて。生ハム以外にもサラミなどが豊富に売られていました
(右)スペイン領バスクの大きな町サン・セバスチャンのバル(酒場)。
生ハムのサンドイッチやタパス(おつまみ)がたくさん

ここのマダムは日本のデパートに何回かプロモーションにも来たことがあるそうで、日本の事もよくご存知。遠路はるばるバイヨンヌまで生ハムを食べにきた私たちに感心し、熱心に生ハムの説明をして下さいました。きれいな自然の中で育まれた原料の豚の話や製法、食べ方…「バスクの豚は世界一」と言わんばかりの熱のこもりように、「自分もそう思う!」と意気投合したところ、バスク名物のベレー帽と赤いスカーフをくれました。試食する前に身につけたところ「これであなたもバスク人」と太鼓判を押されました。


ベレー帽とスカーフには「バスクの豚」のマーク入り

その後、試食で出していただいた生ハムは、確かに豚の甘み、塩味、香りと全てのうまみが凝縮している味でした。噛んでいく程に味が出てきて、更にもう一枚と食べ続けていたくなるような味。こういうものは地方から取り寄せるのではなく、直に足を運んで食べてこそ、本物の味が解ると実感しました。地元の人たちが誇らしげに自慢をするのも納得でした。
マダムによれば、生ハムはスライスして食べるほか料理に使う事も多く、たとえばこの地方で有名な料理「ピペラード(ピーマンのトマト煮込み)」にもコク出しで入れたり、厚く切ったものを焼いて添える事もあると教えてくれました。


(左)試食に出てきた生ハム。南西部の特産品フォア・グラのテリーヌ(画面左下)も出していただきました
(右)バスク料理のピペラード。焼いた厚切り生ハムでボリューム満点

また、売られていた生ハムの中には、表面がエスプレット唐辛子の粉末で覆われて真っ赤なものもありました。唐辛子をまぶしつけることで表面の乾燥を防ぐと共に、防腐効果も期待できるのだそうです。注3


エスプレット唐辛子を擦り付けた加工品(生ハム工場にて)

次に向かったのは、エスプレット唐辛子の生産地の村「エスプレットEspelette」です。唐辛子といっても、日本でおなじみの鷹の爪のような小さくて赤いものではなく、大きいものは手の平ぐらいのものもあり、色は赤褐色をしています。
エスプレット村の入り口には、村名の看板と伴に「A.O.C.のエスプレット唐辛子の村」という看板が掲げられていました。

生ハムのバイヨンヌとこのエスプレット村はもちろん、バスク地方一帯では、地域名の看板や道路標識にフランス語とバスク語、またはスペイン語とバスク語が併記されています。
バスク語は近隣ヨーロッパ諸国語のどの言語とも共通点がない孤立した言語らしく、見慣れない独特のつづりには不思議な印象を受けました。


(左)一目瞭然、「A.O.C.エスプレット唐辛子の村」としっかり書かれている看板
(右)バスク語で書かれたエスプレット村の看板

村の近くは広大な自然の絶景。きれいな山並みと緑色の草原が広がり、空気が澄み切っているようでした。いざ、村の中に入ってみるとすぐに目に飛び込んできました、エスプレット唐辛子。市場や露店で売っているのではなく、建物に吊るされているんです。「これがみんなが言ってたやつかぁ…。」と少しの感動を覚えました。この唐辛子はA.O.C.(原産地呼称統制)にも認定されています。(注4)


(左)郵便局にもエスプレット唐辛子が
(右)そして、ホテルにも。村全体が「エスプレット唐辛子」一色でした

唐辛子そのものを味見した所、ピリッとした辛みの中に少しの甘みを感じました。粉末、ペーストも味見をしましたが、同じくただ辛いだけではなく、どことなく甘いうまみのような味わいを感じました。確かにこの味であれば、生ハムにまぶしつけたり、料理に使ったりと幅広い活躍ができる調味料だなと考えました。「エスプレット村」はとにかく村自体が「唐辛子」と言った印象でした。


(左)A.O.C.認定のマーク。お土産屋さんの前でよく見かけました
(右)エスプレット村で買ったお土産。唐辛子だらけです

帰り際、お土産屋さんで「マグロのソテー、バスク風」の料理写真のポストカードを買いました。骨ごと輪切りのマグロのソテーにピーマンの入ったソース。無骨な感じですが、港町のおいしそうな料理の感じが伝わってきました。

今回ご紹介する料理はバスク地方の美味しい食材が詰まった郷土料理の一つ、「マグロのソテー、バスク風」です。
バスク地方の沿岸部では昔から漁業が盛んで、タラやクジラなどともにマグロ漁も盛んに行われてきました。トマトや魚介と一緒に煮込んだり、グリルやステーキにしたりと、料理のレパートリーも様々です。

メインのマグロはシンプルにソテーし、ソースに「生ハム」を使って味にコクを出します。ピーマン、たまねぎ、トマトで野菜のうまみをふんだんに出し、ソースの仕上げに「エスプレット唐辛子」を加えて味にアクセントを加えます。バスクの特産品がうまく絡み合う「マグロのソテー、バスク風」をぜひ、お試しあれ!

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注1:バスク地方は7つの地域からなり、南バスク、北バスクと区分される。南バスク(スペイン領バスク)には4つの地域(アラバ、ビスカイア、ギプスコア、ナファロア)があり、主な言語はスペイン語。北バスク(フランス領バスク)には3つの地域(ナファロア、バイオナ、スベロア)があり、フランス語を主な言語としている。


スペイン語、フランス語が同時に表記された道案内

注2:I.G.P.(Indication Géographique Protegèe地理的表示保護):定められた地域の原産品を定められた製法で生産または加工、または調整されているものに与えられる品質保証の一つ。バイヨンヌの生ハムは、1998年10月より認定を受けている。

注3:エスプレット唐辛子の生まれ故郷は南アメリカ。バスク地方に唐辛子がもたらされたのは16から17世紀ごろといわれている。栽培が始まってからしばらくは医薬品として使われていたが、その後香辛料として、また肉や生ハムの保存に使われるようになった。

注4:A.O.C.(Appellation d'Origine Contrôlée原産地呼称統制) :I.G.P.よりもさらに限定された条件が必要とされる品質保証で、フランスの農産物(ワインやチーズなど)の製造過程や品質評価において、特定の条件を満たしたものにのみ付与される品質保証のこと。「エスプレット唐辛子」は2000年6月1日からA.O.C.を取得。

<コラムの担当者>
吉田 貴

<このコラムのレシピ>
マグロのソテー、バスク風

<バックナンバー>
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