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【半歩プロの西洋料理】 時を越えて、おいしいと愛されるもの
2012年02月29日

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<【半歩プロの西洋料理】ってどんなコラム?>

 

卒業を目前に控え、調理実習の内容も高度化してきました。

 

今回のフランス料理の実習で扱う料理の中には、フランスはリヨン近郊にある、レストラン「ポール・ボキューズ」のスペシャリテをアレンジした料理が入っています。魚にうろこに見立てたじゃがいもを貼り付けて、フライパンで焼く料理です。

 

レストラン「ポール・ボキューズ」の代表的な魚料理には「すずきのパイ包み焼き」、「舌平目のフェルナン・ポワン風」、そして今回ご紹介する、「じゃがいもをうろこに見立てたルジェ」などがあります。「ルジェ」はヒメジ科の海水魚で、日本で「ひめじ」(または「おじさん」)と言われるものに近いです。関西では、たまに小さなひめじが売られていることはありますが、目にする機会は少ないです。実習では、見た目が似ているイトヨリを使いました。

 

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フランス産ルジェ

 

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イトヨリ

 

実はこの料理、ボキューズで研修していた私にとっては、学生に作ってもらいたい、食べてもらいたい、思い入れのある一品なのです。

 

若かりし頃、ボキューズで研修していた時は、「日本人だから魚がうまくおろせる」というイメージがあったのか、主に魚部門の仕事を任されていました。朝の仕込みの時間(3時間)で魚をおろし、じゃがいものうろこを貼らなければなりません。毎朝、魚部門のシェフに仕込みの量を聞きます。予約人数によって、どの料理を何人分作るのかを指示されるのです。

 

大量の魚をおろし終えると、じゃがいものうろこ作りにとりかかります。日本製の桂むき器でじゃがいもを薄くし、丸い抜き型で抜きます。これをまた大量に作らなければなりません。

 

フランスのじゃがいもは30kgで麻袋に入っています。むいたじゃがいもが冷蔵庫にある場合はいいのですが、在庫が少ないときは、もちろん皮むきから始めます。体格の良い男性ならともかく、私はじゃがいもを運ぶだけでも大変でしたので、よく同僚に手伝いを頼んでいました…といっても彼らも忙しいので、プロンジュ(洗い場)の人に頼むこともありました。手伝いを頼まなくても、私が大量のじゃがいもをむいていると、手伝ってくれることもありました。ジャンティ(親切)な方々です。

 

じゃがいもむきのメドが立ったところで、今度はおろした魚にじゃがいものうろこを貼る仕事を進めます。そして、じゃがいものうろこを貼り付けた魚を冷蔵庫にずらりと並べます。

 

朝の3時間で、だいたい30~40人分を仕込んでいたので、この作業のスピードと美しさでは、誰にも負けないと自負しています。

 

間に合わなそうなときは、同僚が私の横で作業を始めます。しかし、彼はじゃがいもを魚の頭のほうから貼りだしました…すかさず、「なんで頭からやってるの?魚のうろこってこうじゃない?!それだと逆になる…」というと、少し間を置き、「どっちからでもいい」と言われました。フランス人は、うろこの向きにはこだわりがあまりないようです。

 

実はこの方、今ではM.O.F. の受章者で、レストラン「ポール・ボキューズ」のシェフでもあるクリストフ・ミュラー氏なのです。辻調グループ、フランス校の外来講習の講師でもある彼は、この料理を講習でも扱いました。最近フランス校勤務を終えて帰ってきた青木先生が、「ボキューズのルジェ、うろこを頭から貼るんですよね!」と言っていました。

 

「えっ、クリストフ、相変わらず頭からやってるのね!」少し苦笑したとともに、若い時の言い合った思い出がよみがえりました…。

 

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クリストフ・ミュラー氏 M.Christophe MULLER

 

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学生と一緒の講習の様子

 

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フランス校講習で作った「じゃがいもをうろこに見立てたルジェ」

 

じゃがいものカリカリとした食感と、ルジェのうまみ。魚は片面からしか焼かないために、身がふっくらしています。ソースは白ワイン系のものをメインに、赤ワイン系のソースで模様をあしらい、アクセントをつけます。実にクラシックな料理ですが、おいしいと感じさせる一品です。

 

レストラン「ポール・ボキューズ」には最近はやりの泡を使った料理などはありませんが、いつの時代も人々に美味しいと感じさせる料理が多いです。その料理を食べたいがために、今も世界中の人々がレストラン「ポール・ボキューズ」を訪れます。

 

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レストラン「ポール・ボキューズ」

 

実習でも、学生たちは自分で魚にうろこを貼ります。個性豊か?

 

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実習風景(黙々とウロコ貼り)

 

学生にとっては手の込んだ作業のようでしたが、興味津々な様子で、コツコツやっていました。思い入れがある料理だけに、学生にやり直しを命じることもありました。彼らの努力が実ったからでしょうか、試食タイムでは「おいしい」という声の連発!

 

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試食

 

実習で扱った料理で、学生が感動したというものは他にもあります。

 

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舌平目のデュグレレ風

 

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舌平目のボンヌ・ファム風

 

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すずきのパイ包み焼き

 

などです。どれもクラシックな料理ですが、現代人にも感動を与えられるもので、まさにフランス料理のエスプリを感じさせます。

 

今回紹介する料理には本格的な部分も多いのですが、ぜひ挑戦してみてください。

 

深い味わいがありますよ。

このコラムの担当者

吉川 喜美子

このコラムのレシピ

イトヨリのポワレ じゃがいものうろこ見立て ソース・ヴェルモット

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