1. 総合情報サイトTOP
  2. 食のコラム&レシピ
  3. 01<西洋>半歩プロの西洋料理
  4. 【半歩プロの西洋料理】猪は冬のごちそう

【半歩プロの西洋料理】猪は冬のごちそう
2016年11月30日

  • mixiチェック

<【半歩プロの西洋料理】ってどんなコラム?>



皆さん、「ジビエgibier」ってご存知ですか?
フランス語で狩猟によって得られた動物の肉のことを指します。最近耳にすることが増えてきた言葉だと思います。
鹿や熊、猪などの大型の獣から野兎などの小型獣、また雉や鴨などの鳥類まで、対象は広い範囲に及びます。

元々人類は食料調達のため、身を守るために狩りをしてきましたが、家畜の飼育や農業が始まり、現代では狩猟は楽しみの一つ、レジャーとして親しまれてきました。
食糧が少なくなる季節を乗り切るため、冬になると体に脂肪を蓄える性質を持つ生き物は多くいますが、そのことが動物の肉に美味しさを与えるため、秋から冬はジビエの旬と言われます。
繁殖時期への考慮、また安全面などから動物の種類によってさまざまに狩猟期間が定められています。野生鳥獣の獲り過ぎを避けつつ、脂がのって美味しくなった肉の旬を楽しむための伝統と言えるでしょう。

ジビエの一つである猪は、日本でも昔から親しまれてきた食材です。
仏教の伝搬によって肉食が禁止されていた時代にも「薬食い」などの名目で食されてきたと言います。
猪肉の特徴は、野生の強い風味とうまみがあり、さらりとした脂が醍醐味です。
赤身肉と白くて分厚い脂身が鮮明に分かれていて、その色合いが花の牡丹に似ていることから、日本では猪肉の鍋のことを牡丹鍋なんていったりします。

実は私の出身地である丹波篠山は「国産天然猪肉」の三大狩場の一つといわれています。
丹波地方から丹後・山陰に繋がる山々は、丹波同様の気候風土と起伏に富み山の恵が豊かな地域で、猪の生育にも適した猟場だからです。

丹波篠山では、猪の時期にしか営業をしていない猪肉専門のお店や、猪料理のお店があったり、毎年1月ごろには観光と猪肉普及のために「いのしし祭」があったりします。

 


いのしし祭では、うりぼう(子猪)たちのレースがあったり、猪の丸焼きが振る舞われたりします。
(写真提供:篠山市商工会)


とはいえ地元民だからといって日常的に猪肉を食べているわけではなく、初めて猪の肉を意識して食べたのは地元のバーベキューででした。
それはただ焼いて塩を振っただけの猪肉でしたが、野生の強い風味が初めて食べる私には美味しいと思えず、豚肉のほうがいいなというのが正直な感想でした。

その後外食で「牡丹鍋」を食べる機会がありました。これも、地元の有名な猪肉を使った料理です。
私が食べた牡丹鍋は赤味噌ベースで味付けされていて、キノコやゴボウなど野菜もたっぷりでした。以前焼いた猪肉を美味しく思えなかった私は「本当に美味しいのかな?脂っぽいだけなのでは?」と警戒していました。
しかし、牡丹鍋をひとくち口にした瞬間、そんな思いはかき消えました。
ゴボウの味、赤味噌ベースの出汁と猪の風味がマッチしていてすごく美味しい。私の猪へのイメージが変わった瞬間でした。

この経験以来、大好きになった猪肉。さらに美味しく食べるには、やはり旬に食べてみたいと思い色々調べてみたところ、実は猪肉にはオス、メスによって異なる旬がある事が分かりました。

11月の解禁日あたりから、12月の中旬までは冬を越すために丸々と肥えており、脂がのって野性味が強くなるとてもおいしい時期。しかし、猪は12月中旬を超えたころから発情期に入り始めます。
発情期に入ったオスはメスへのアピールのために体のにおいがきつくなり、そのにおいがお肉にもうつってしまうのだそうです。
さらに時期が遅くなるにつれ、雄同士の争いに備えて身を守るために柔らかかった脂身たっぷりのお肉が癖の強い固いお肉に変わっていってしまいます。

つまり、猪のオスの旬は狩猟が解禁されてから約1か月ということです。
逆にメスの猪は、出産のために餌をひたすら食べ、やわらかくて脂身のたくさんついた状態になっていくのです。

そんな猪肉は多くの国で古くから食用とされていて、イタリアも例外ではなく、古代ローマ時代の料理書にも猪の料理法が書かれているほどです。
猪肉を使ったイタリア料理には、ローストなどの豚肉をつかったレシピと同様の料理の他、赤ワインで煮込んで血で濃度をつけたシヴェなど、猪肉の野性味を活かしたものも多くあります。

中でも今回ご紹介するのは、猪肉を煮込んだ冬にぴったりの料理「猪肉のアグロドルチェ」(写真)。


「アグロドルチェ」とは、イタリア語で"甘酸っぱい"という意味の言葉ですが、その名の通り甘酸っぱい味付けの料理名につけられます。
猪肉の力強い風味とドライフルーツの甘味、バルサミコ酢の酸味があいまって味わい深い仕上がりになっています。

寒くなり猪が美味しくなる季節、特別な日のご馳走に、ぜひお試しください。


〈参考文献〉
『アピーキウス・古代ローマの料理書』(三省堂刊)
『専門料理2005年1月号』(柴田書店刊)

このコラムの担当者

田畑 翼

このコラムのレシピ

猪肉のアグロドルチェ

バックナンバー

2009年8月まではこちら
2009年9月からはこちら

カテゴリ

最近の投稿

過去の記事

ページの上部へ戻る