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【独逸見聞録】アイスクリームの種類と分類 ~アイスクリーム(其の壱)~

13<海外>独逸見聞録

2010.06.17

<【独逸見聞録】ってどんなコラム?>

ドイツの夏は大阪や東京と比べると涼しく、空気も乾燥しているので過ごし易い。とは言っても、日中は30℃を越えることもあるし、冷房の設備の無い所が殆どなので、アイスクリーム専門店は街中のオアシスの様な存在である。天気の良い日には、テラスや店の前の舗道にテーブルやイスを並べ、大きなパラソルを立てている光景を見掛ける。道行く人達を眺めながらアイスクリームを食べているのは、女性や子供ばかりとは限らない。男性やお年寄りの姿も多い。
今回は、「アイスクリーム(Speiseeis:シュパイゼアイス)」の種類と分類について紹介する。

春から夏にかけて、何処のアイスクリーム店も大賑わいである。アイスクリームカウンター(Eistheke:アイステーケ)の前には、いつも長い列ができている。
注文の方法は、先ず、ワッフル(Waffel:ヴァッフェル)またはコーン(Tüte:テューテ)にするか、カップ(Becher:ベッヒャー)にするかを決め、アイスクリームの種類と数を店員に告げる。
アイスクリームを数える単位は、球(Kugel:クーゲル)という。単数の場合は「eine Kugel:アイネ・クーゲル」、複数の場合は、「zwei Kugeln:ツヴァイ・クーゲルン」または「drei Kugeln:ドライ・クーゲルン」となる。

選択肢が多く、カラフルなアイスクリーム専門店のカウンター。コーンやカップの種類も多い。

アイスカフェ(Eiscafé)や、カフェ・コンディトライ(Café Konditorei)という喫茶店を併設した菓子屋では、持ち帰りのアイスクリーム以外に、パフェ等も楽しむことができる。
アイスクリーム専門店(Eisdiele:アイスディーレ)の経営者は、伝統的にイタリア人であることが多く、イタリア語の店名が非常に多い。従業員の間では、早口のイタリア語が交わされている。接客用語は勿論ドイツ語だが、イタリア訛りがある場合も少なくない。

★アイスクリームの種類(Eissorten:アイスゾルテン)
消費量が多いのは、ヴァニラ(Vanille:ヴァニレ)やチョコレート(Schokolade:ショコラーデ)、イチゴ(Erdbeere:エァトベーァレ)など、日本とほぼ同様である。
この他に、ヨーグルト(Joghurt:ヨーグルト)やキャラメル(Karamell:カラメル)、クルミ(Walnuss:ヴァルヌス)やココナッツ(Kokosnuss:ココスヌス)、コーヒー(Mokka/Mocca:モカ)などもある。
バナナ(Banane:バナーネ)やサクランボ(Kirsche:キルシェ)、メロン(Melone:メローネ)やパイナップル(Ananas:アナナス)など、果物を使用したアイスクリームは本当に多く、それこそ果物の数だけ存在すると断言しても過言ではないと思われる。
「Cappuccino:カプチーノ」や「Tiramisu:ティラミス」、チョコチップ入りの「Stracciatella:ストラツィァテラ」など、イタリア語の名前の付いたアイスクリームも多い。

天気が良くて暖かい日には、レモンシャーベット(Zitronensorbet:ツィトローネンゾルベ)やフルーツのアイスクリームなど、さっぱりとしたもの好まれ、曇り空で少々肌寒い日には、チョコレートやナッツなどの濃厚なタイプのアイスクリームが好まれる傾向にあるという。また、女性は気温に関係なく、ヨーグルトとフルーツの組み合わせを選ぶことが多いとも聞いた。


8リットルのアイスクリームを製造できるアイスクリーム製造機と、冷凍庫で出番を待つアイスクリーム。

★ドイツのアイスクリームの定義と分類
シュパイゼアイス(Speiseeis)は、製造の際の凍結攪拌過程によって、クリーム状に凍らせたものである。冷凍状態で流通、販売されている。
牛乳や乳製品、卵、砂糖や蜂蜜、飲料水、果物、バターや植物油、香料などを使用して製造される。それぞれのシュパイゼアイスの種類や風味に合わせて、これ以外の材料も使用される。フルーツソースやアルコール類、ワッフルなどと組み合わされ、サンドウィッチやアイスケーキなど、様々な形で流通している。

「アイスクリームの指導原則(Leitsätze für Speiseeis:ライトゼッツェ・フュァ・シュパイゼアイス)」では、各々のシュパイゼアイスの種類によって、製造時に励行されなければならない、基準や指導要綱が厳格に定められている。

尚、下記のパーセント表示は、全て重量に基づいている。

◆クレームアイス、アイァークレームアイス(Kremeis, Cremeeis, Eierkremeis, Eiercremeeis)
50,0%以上の牛乳、そして1リットルの牛乳に対して最低270gの全卵、または90gの卵黄を含有する。水は添加されない。

◆ラームアイス、ザーネアイス(Rahmeis, Sahneeis)
ラーム(Rahm)とザーネ(Sahne)は、共に生クリームのことである。
製造時に使用した生クリームの乳脂肪分が、18,0%以上含まれていなければならない。

◆ミルヒアイス(Milcheis)
最低でも70,0%の牛乳(Milch)を含有する。

◆アイスクレーム(Eiskrem, Eiscreme)
最低でも10,0%の乳脂肪分を含んでいる。

◆フルフトアイス(Fruchteis)
フルフト(Frucht)とは、果物のことである。
フルフトアイス中の果物の割合は、20,0%以上でなければならない。
果汁中の酸含有量が、クエン酸に換算した時に2,5%を超える酸味の強い果物や、柑橘類から作られたフルフトアイスの場合には、含まれる果物の割合が10,0%以上でなければならない。

◆フルフトアイスクレーム(Fruchteiskrem, Fruchteiscreme)
最低8,0%の乳脂肪分を含み、明確に知覚できる果物の風味を持つ。

◆フルフトゾルベ(Fruchtsorbet)
Sorbet(ゾルベまたはゾルベット)、Sorbett(ゾルベット)、Scherbett(シャーベット)などと表記される。
含まれる果物の割合は、25,0%以上でなければならない。
果汁中の酸含有量が、クエン酸に換算した時に2,5%を超える酸味の強い果物や、柑橘類から作られたフルフトゾルベの場合には、含まれる果物の割合が15,0%以上でなければならない。
牛乳または牛乳の構成成分を含む材料は、使用されない。

◆ヴァッサーアイス(Wassereis)
ヴァッサー(Wasser)とは、水のことである。
ヴァッサーアイスは、上記の「ミルヒアイス」、「フルフトアイス」または「フルフトゾルベ」の規定に当てはまらず、脂肪分が3,0%以下で、風味や甘みを添加するための材料中の固形分が12,0%以上のシュパイゼアイスである。

*ゾフトアイス(Softeis)
ゾフトアイスは、滑らかで柔らかな「ソフトクリーム」のことであるが、独立したシュパイゼアイスの分類項目としては認められていない。
祭りや催し物、観光地以外で、ソフトクリームを見掛ける機会は、日本と比べると少なく感じられる。


ボーデン湖岸の港町(観光地)で見掛けたソフトクリームのスタンド。

★日本のアイスクリームの定義と分類
アイスクリーム類の定義と成分規格は、食品衛生法の規定に基づく「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(略して乳等省令)によって、次の様に定められている。
アイスクリーム類とは、乳・乳製品を主要原料として凍結させたもので、乳固形分(乳の水分以外の成分)を3,0%以上含むものの総称である。含まれる乳固形分と乳脂肪分の量によって、「アイスクリーム」、「アイスミルク」及び「ラクトアイス」に分類されている(発酵乳を除く)。

◆アイスクリーム
「アイスクリーム」とは、重量百分率で乳固形分15,0%以上、うち乳脂肪分8,0%以上のもの。

◆アイスミルク
「アイスミルク」とは、重量百分率で乳固形分10,0%以上、うち乳脂肪分3,0%以上のもの(アイスクリームに該当するものを除く)。

◆ラクトアイス
「ラクトアイス」とは、重量百分率で乳固形分3,0%以上のもの(アイスクリーム及びアイスミルクに該当するものを除く)。

*氷菓
乳固形分3,0%未満のものは、「氷菓」として規定されていて、上記のアイスクリーム類とは別に扱われる。


【撮影協力(アイスカフェ):
Eiscafé Zampolli
(Hauptstraße 61 Offenburg)】

<コラムの担当者>
Kimiko Kochs

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