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連載コラム 和のおいしいことば玉手箱
日本には、昔から言い伝えられてきた「おばあちゃんの知恵袋」のような、食に関する言葉がたくさんあります。これらの言葉は、科学的にもきちんとした根拠があり、道理にかなっているということがほとんどです。ここでは、これらの食に関すること わざや格言などからおいしさを再発見してみます。
鰯 七度洗えば 鯛の味
鰯七度洗えば 鯛の味 鰯七度洗えば 鯛の味
解説

「鰯七度洗えば鯛の味」
鰯のような生臭い魚も、よく氷水で洗って造りで食べると、鯛のように生臭さもなく食べられる。
 「鰯(いわし)」は魚偏に弱いと書き、うろこがはがれやすく、背骨が弱いので「よわし」と呼んだのが、「いわし」に転じたといわれている。実際に、水揚げされてからはどんどん鮮度が落ちる。特に脂がのっていておいしいくなる時期ほど、鮮度が落ちるのが早くなる。鮮度さえよければ刺身にしても美味しい魚であるが、すぐに鮮度が落ちるため、生臭いと悪評が立つのである。しかし、最近は鮮魚の保管技術の進歩や流通経路の確立により、かなり新鮮な鰯が手に入るようになってきた。生で刺身や酢締めにして寿司にするもよし、脂分が多く火を通してもしっとり仕上がるので塩焼きや蒲焼き、しょうが煮、つみれ鍋、そして今回のような変わり揚げなどいろいろな調理法で楽しむことができる。

 栄養面でいえば、中性脂肪を下げる効果があるといわれるEPA(エイコサペンタエン酸)や、学習や記憶などの機能に関与するDHA(ドコサヘキサエン酸)などが多く含まれており、生活習慣病予防の切り札としても見直されてきている。

 鰯は海で活動しているときには、まぐろやかつおなどの大型回遊魚のえさとなる、いわば「海の牧草」のような存在である。また、漁船に捕獲されても、生鮮食品として使われるのはたった5%で、缶詰などの加工食品としても25%しか我々の口には入らない。残りの70%は養殖魚のえさか家畜の飼料、畑の肥料として使われている。なんと1kgのはまちを育てるのに7kgの鰯が必要になるらしい。昨今は、漁獲量がぐんと減っているとはいえ、大量に獲れる魚である。大量に獲れるが故に、昔から卑しい魚といわれ続けてきた。

 江戸時代に書かれた書物の中に、平安時代の『源氏物語』で有名な紫式部が鰯を好んで食べていたとの記述がある。彼女が夫の留守中に鰯を焼いて食べていたところへ、夫が帰ってきた。夫が「そんな卑しいものを食べて…」と叱ると、「日のもとに はやらせ給ふ いはし水 まいらぬ人は あらじとぞ思ふ」と歌で抗議したという。この歌は、「日本中で流行している岩清水八幡宮に、参拝しない人はいないと思います。」と解釈できるが、「岩清水八幡宮」と「鰯」を掛けて、「日本中のほとんどの人々は、鰯を美味しいと食べているのに、これを食べないのは口惜しいと思います。」という裏に隠された意味があるともとれる。紫式部は何が本当に美味しいのかがわかっていたのであろう。
 ちなみに、鰯を女房言葉では「むらさき」と言うが、この語源は紫式部とはまったく関係がない。背面が青色でこれが紫色にも見えることからの呼び名とか、朝廷の冠位制度では上から紫、藍、赤、黄、白、黒の冠をつけていたが、鰯の味覚が鮎(藍)にまさるから紫であるという説や、また、千葉県の銚子沖などに鰯が集まってくると海面が紫に見えるからという説などがある。

 広島市の住吉神社では、鰯の頭を使った平安時代の節分祭「焼嗅(やいか)がし神事」というユニークな神事が執り行われている。節分の日に、なんと鰯1000匹の頭を焼くことにより、臭気の強いものを発して厄をはらうという神事である。同様の神事が他の地方でも行われており、地方によっては「やきこがし」、「やっこがし」とも呼ばれている。余談だが、雀(すずめ)おどしの「案山子(かかし、かがし)」も、同じ「嗅(か)がし」が語源であり、古くは臭気によって雀など害鳥を追い払っていたことからこの名がついたようだ。

 鰯は手開きという手法で、包丁を使わずに簡単に腹開きにすることができる。今回は、まず鰯を酒と醤油のたれに漬け込んで、下味をつけつつ臭みも取り、香りのよい青じそとともに巻き込み、そして砕いたおかきと道明寺粉を衣にして、油で揚げてある。おかきはおろし金ですりおろすか、ミキサーで砕く。湿気ってしまったおかきを利用しても構わない。道明寺粉とは、もち米を蒸した後に乾かして砕いたもので、関西では桜餅の材料としても使われている。これらを衣にすることで、冷めても香ばしくて、サクサク感が残る、ひと味違った揚げ物になる。


このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ 鰯しそ巻き揚げ

タイ語の話せる日カレのおとうちゃん
人物 小谷 良孝
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