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連載コラム 和のおいしいことば玉手箱
日本には、昔から言い伝えられてきた「おばあちゃんの知恵袋」のような、食に関する言葉がたくさんあります。これらの言葉は、科学的にもきちんとした根拠があり、道理にかなっているということがほとんどです。ここでは、これらの食に関すること わざや格言などからおいしさを再発見してみます。
山椒(さんしょう)は小粒(こつぶ)でもぴりりと辛い
山椒(さんしょう)は小粒(こつぶ)でもぴりりと辛い 山椒(さんしょう)は小粒(こつぶ)でもぴりりと辛い
解説

「山椒(さんしょう)は小粒(こつぶ)でもぴりりと辛い」
山椒の実は小さいが非常に辛いところから、身体は小さくても、気性や才能がひじょうに鋭くてすぐれていることのたとえ。
 山椒は小粒(こつぶ)でもぴりりと辛い」。このフレーズを聞くと、幼い頃に祖父母と聞いた浪花節の一節を思い出してしまう。我が家は、祖父の代から花街の一角で寿司と仕出しを生業としていて、店には蓄音機が置かれ、昔のいわゆるSP盤と呼ばれる直径30cm位の落とせば割れるレコード盤が専用のボストンバック2つ3つに収納されていたと覚えている。主に民謡や当時の歌謡曲、浪花節が中心で、子供用にと4〜5枚の童謡も含まれていた。私はもっぱらこの童謡を聞いていたが、祖父母は浪花節が好きだった。祖父母がよく聞いていた中に二代目広沢虎造の「清水次郎長伝、石松三十石船」があり、そこに「山椒は小粒(こつぶ)でもぴりりと辛い」というフレーズが出てくる。

 「清水次郎長伝、石松三十石船」という浪花節は、だれもが浪花節といえばこれ、という具合に聞いたことのある「旅ゆけばー 、駿河の国に茶の香り…」で始まる。森の石松が次郎長親分に金比羅代参を頼まれ、無事に讃岐の金毘羅様へ刀と奉納金を納めた帰りのことである。大阪に戻り、八軒家(今の天満橋あたり)から船に乗って京都伏見までの船旅となる。当時の川船が、いわゆる三十石船で、これが題名になっている。船の中で乗客たちは話しに花が咲き、やがて渡世人の世界が話題となる。東海道一の大親分である清水次郎長の子分の話になると、居ても立っても居られなくなった森の石松は、酒と鮨を持って話の中に入ってくる。

石松 「呑みねえ。呑みねえ。鮨を食いねえ。鮨を食いねえ。江戸っ子だってねえ。」
乗客 「神田の生まれよ。」
石松 「そうだってね、そんなに次郎長にゃいい子分がいるかい。」
乗客 「いるかいどころの話じゃないよ。千人近く子分がいる。そのなかで代貸元をつとめて、他人に親分兄貴と言われるような人が二十八人、これをとなえて清水の二十八人衆。この二十八人衆のなかに、次郎長ぐらい偉いのが、まだ五〜六人いるからねえ。」
石松 「ほう、呑みねえ。呑みねえ。」
石松 「お前さん、ばかにくわしいようだから聞くんだけれども、どうだい。その次郎長の子分のなかで、兄弟の貫禄を問わないが、一番強いのをだれだか知っているかい。」
乗客 「そりゃ、知ってらい。」
石松 「だれが一番強い。」
乗客 「清水一家で一番強いのは大政…」
石松 「二番目はだれが強い。」
乗客 「『山椒は小粒でぴりりと辛い』。大きい喧嘩は大政だか、小さい喧嘩は小政に限るって、小政が二番だ。」
 次郎長一家で一番強いのは、遠州森の石松だと言って欲しいばっかりに、鮨食いねえと勧めているのに、待てど暮らせど、この乗客、意地が悪いのか、本当に知らないのか、その肝心の名が出てこない。結局十七番まで行っても出てこない。
石松 「もう一度胸に手を当てて、考えてくれ。」
乗客 「いくら胸に手を当て考えても、大政、小政、大瀬の半五郎、遠州森の・・・、そうだ!一番強いのは森の石松だ!でも彼奴は馬鹿だ!馬鹿は死ななきゃー治らない。」
 という話である。

 山椒は、山野に自生するミカン科の潅木で、葉や実に特有の香りを持つため、昔はこれを摘み取って使っていたが、明治時代になって栽培が始まった。漢方では、乾燥した果皮に消化系に効能があるとして用いられている。

木の芽 山椒は芽が出てから実になるまで、さまざまな形で利用される。
 3〜5月頃の山椒の若芽を摘み取ったものが「木の芽」で、吸口と言って吸物に浮かべて香り付けにしたり、天盛りと言って煮物や和え物の上にのせる。ほかに、刻んで料理にふりかけたり、すりつぶして味噌和えなどにも用いる。吸物に使う場合は熱が加わるのでそのまま使っても風味がよいが、和え物のように冷たい料理に添えるときは、手のひらで軽くたたいてから使うと風味が増す。
 4〜5月頃のごく短い間に、黄色い小さな花がつく。これを「花山椒」と言って、やはり吸口にしたり、薄味で煮て焼き物のあしらいに用いる。

花山椒 6月下旬には青い未熟な実がつき始める。これは「青山椒」と呼ばれ、吸口やあしらいに用いる。この実が完熟して大きくなったものは、「実山椒」とか「粒山椒」と呼ばれ、香りや辛みも強くなり、吸口やあしらいのほかに佃煮のように煮たり、酢漬けにして焼き物などのあしらいなどにも利用される。
 さらに、この「実山椒」を乾燥させ、はじけたものを「割り山椒」という。これを弱火で煎って、すり鉢ですり、ふるいで漉すと「粉山椒(こざんしょう)」である。献立中では「祝い粉(いわいこ)」といい、吸口のほか鰻の蒲焼きなどの照り焼きの上にふりかけたりして使われる。また、「割り山椒」の器器の一種に、実山椒がはじけた形をイメージした「割り山椒」と呼ばれる小鉢があり、祝儀事などによく使われる(写真)。この器は、三箇所の切り込みの部分が深いものほどよいとされている。山椒が実をつける秋をイメージさせる器だが、器の色や釉薬、中に盛る料理の合わせ方によって季節を合わせる事が多いようである。この器は、手前正面に切り込みの部分が来るように置く。
 また山椒の木は、すりこ木としても、堅く減りが少ないので重宝されている。

 山椒を使った料理に「鞍馬(くらま)」や「有馬(ありま)」という名前を付ける事が多い。これらはどちらも、山椒の産地として有名な土地である。鞍馬は、京都の北部に位置する鞍馬山のことで、今年の大河ドラマの主人公である義経が、遮那王と呼ばれていた幼少期を過ごし、天狗から武術を習ったと言われる場所である。また、有馬は神戸の北部、阪神タイガースの応援歌「六甲おろし」で有名な六甲山の北側に位置し、豊臣秀吉がこよなく愛した有馬温泉で有名な町。実山椒を酒、砂糖、醤油で辛煮にしたものを、この土地の名を取って「有馬山椒」と呼び、この有馬山椒を使った煮物には一般に「有馬煮」と言う名前をつける。

参考レシピ:鮎茶漬け (コラム「にほんの四季便り」の「梅雨」)


このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ じゃこ有馬煮

タイ語の話せる日本料理のおとうちゃん
人物 小谷 良孝
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