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連載コラム 和のおいしいことば玉手箱
日本には、昔から言い伝えられてきた「おばあちゃんの知恵袋」のような、食に関する言葉がたくさんあります。これらの言葉は、科学的にもきちんとした根拠があり、道理にかなっているということがほとんどです。ここでは、これらの食に関すること わざや格言などからおいしさを再発見してみます。
雨後の筍
雨後の筍 雨後の筍
解説

「雨後の筍」
〔雨がやんだあとに筍が続々と生えることから〕似たような物事が次々と現れ出ることのたとえ。
竹の語源は丈(たけ)、高(たか)であるとされていて、筍は竹の地下茎から伸びた若い茎で「竹の子供」という意味である。
 筍という漢字は竹冠に旬と書く。では旬と言うのはどれくらいの期間なのであろうか。ヒントは、一ヶ月を三つに分けるとそれぞれ上旬、中旬、下旬と呼ぶ。そう、旬の期間は十日間なのである。筍は土から顔を出して十日もすれば竹になってしまうので、この漢字が当てられたと言われている。

 我々日本料理の料理人は、この旬を大切にして献立を考える。食材の旬は、その食材が一番美味しく、栄養もたっぷりな時期。しかも市場にたくさん出回っているため安価である。料理店は料理をお客様に食べていただいてお金を頂く商売なので、お昼のサービスタイムなどは原価をよく考えながら献立を立てることが大切なことなのである。

 ところが、家庭の奥様方も家計を考えて安価な旬の材料で料理を作る。これではお父さんにとっては、昼食で食べた料理屋の料理と、家に帰ってお母さんが愛情たっぷりに作ってくれた夕食の料理が重なることがしばしばありうる。そこで料理屋では、時期をわずかにずらし、食材の旬を先取りして「はしり」と称したり、遅くして「なごり」と称することで、高級感を出したりする。筍などは、鹿児島で竹林の地表に熱線を敷きつめて、年末のまだ寒い時期に筍に春が来たと錯覚を起こさせ芽生えさせる、詐欺のような収穫なのである。 しかも、紙コップ大の筍が1本3千円もする高級材料になってしまう。また、京都の筍は、12月に「敷きわら」といってわらを竹林一面に敷きつめる。わらは冬に向かって保湿と保温の役目をすると同時に、有機肥料にもなる。さらに、「客土(きゃくど)」といって、休ませている竹林の土を切りくずしてわらの上に厚くおく。「客土」によって土が深くなり、筍はじっくりと育ち、5月の中旬まで「なごり」として高級料亭などに出荷される。

 さて、日本で食用される筍の多くは孟宗竹(もうそうちく)である。この竹の名前の語源になった孟宗という人は、中国の「二十四孝」(※)の一人である。孟宗は幼くして父親を亡くし、病弱な母親の世話をしていた。その母親が、病気でもはや先が見えるような状態の中、「筍が食べたい。」と言った。季節は真冬で筍が生えているわけもないが、孟宗は雪の中を竹林で筍を捜し求め、鍬で地面を掘りつづけたが、なかなか筍は見つからない。疲れ果て、最後の力で鍬を入れると、小さな筍の穂先が目についた。この筍を丁寧に掘り出して母親に食べさせたところ、奇跡的に母親の病気が快復したと言い伝えられている。もし孟宗が「はしり」や「なごり」の筍の話を聞いたら、 びっくりして倒れてしまったかもしれない。

 全国的にも良質の筍の産地として認知されている京都の筍の中でも、「白子(しろこ)」と呼ばれる、1kg5千円もする高級筍がある。「白子」は皮が白っぽい黄金色で、穂先は黄色く柔らかで、中身はやや透明感のある白色、肉質は柔らかく甘みがある。同じ竹林で採れても、一般的な黒っぽい皮の「黒子(くろこ)」と呼ばれる筍が1kg千円ぐらいで売られているから、その品質の違いは想像がつくだろう。「白子」と「黒子」には明確な基準はないが、同じ竹林でもより粘質でほどよく湿った土に、より白い筍ができるようだ。

 筍は、地上に出るとあくがまわるので、「掘り鍬」という掘る部分が長いL字型をした専用の鍬を使い、地中にあるときに掘り出す。掘りたてのものは生で造りのように食べられるが、少し時間がたつと固くなり、あくが出てくるので、通常はできるだけ早くゆでる。皮の色が淡く大きい筍のほうが、えぐみも少なく、繊維も柔らかい。

 筍をゆでる時は米糠と鷹の爪を加える。筍のあくの正体はホモゲンチジン酸と呼ばれる物質で、米糠を水に加えてゆでると、このホモゲンチジン酸が糠のでんぷん質に吸着される。また、糠の酵素が筍の組織を軟化し、でんぷん質が筍を覆って内部の成分を保護する働きもある。鷹の爪もえぐみを取る働きがあるとされる。なお、皮のままゆでるのは、皮に含まれる亜硫酸塩という物質が、繊維を柔らかくするためといわれている。

 筍は香りが強いが味わいに乏しいので、かつお節の風味を十分きかせただしで煮る。さらに「追いがつお」といって、かつお節をひとにぎりガーゼに包んで、落し蓋のように材料の上にのせてこくを補ってやるとよい。また、酒を多めにきかせて、えぐみを和らげるとともにほのかな甘味を付けるようにするのもよい。

※二十四孝(にじゅうし‐こう)
中国の古今の孝子(孝行者)24人を選定したもの。


このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ たけのこ土佐煮

タイ語の話せる日本料理のおとうちゃん
人物 小谷 良孝
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