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連載コラム 百人一首と和菓子
「『古典』と『和菓子』だって?もう、いや!」と逃げ出さないでください。想像とおいしさとちょっぴり恋の世界を味わって頂きたいだけですから。百人一首の和歌を読んで私たちなりに解釈し、イメージを膨らませて作ったのがここにご紹介するお菓子です。和菓子の世界には、和歌や物語を元にして想像力を働かせ、作品に表現するという楽しさや遊びがあるのです。このページを通して、日本の良さを見直して頂けたらうれしく思います。
春のお菓子花吹雪
花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり 入道前太政大臣
花吹雪
お菓子について
花さそふあらしの庭花を誘って散らせる嵐の吹く庭
桜の花
雪ならで雪ではない
ふりゆくものは花が雪のように降る
   人間が年老いて「古くなる」

風に吹き散られる落花で、庭が雪の降ったようになっているのを見てわが身の老いを嘆いた歌です。

その昔、山の桜の咲くさまを見てその年の稲のみのりを占ったそうです。桜は、稲の花の象徴でした。例年よりも早く散ると、その年の収穫にとっては悪い予兆でした。花が散るということは、人の心を不安にしたのです。美しいものが散るのを惜しむ気持ちの前に村人たちの禍福にかかわる切実な願望がこもっていたに違いありません。
普通、花といえば「栄え」「華やかさ」を象徴しますが、同時に「もろさ」「いつわり」「頼りなさ」あるいは、「不安」の象徴でもあります。この歌にも、そういう思いが込められているのでしょう。

今回は、菓銘を「花吹雪」とつけました。全体として桜の花が春の風に舞い散るところをイメージして作りました。

表面のギザギザの波春の風
染め分けた味甚羹の淡いピンク桜花
雪が降ったように見える花びら
表面に散らしたピンクと白のいら粉舞い散る花びら

を表わしています。

薯蕷羹を流し合わせ、山の芋の風味を生かして瑞々しく、口溶けのよいお菓子に仕上げました。

豆辞典
96 入道前太政大臣
承安元(1171)年〜寛元二(1244)年。入道前太政大臣というのは役職名のようなもの。前の太政大臣で出家(入道=道に入る。つまり出家のこと)された方くらいの意味です。本名は藤原〈西園寺〉公経(ふじわらの〈さいおんじ〉きんつね)。西園寺家の祖。この人物が京都北山に建てた邸を、のちに足利義満が譲り受け、別荘に改築したのが有名な金閣寺です。『百人一首』を編纂したといわれる藤原定家のいとこで、姉は定家の妻でした。
源頼朝の姪を妻としていたことが、彼の運命を左右しました。承久の乱で後鳥羽院が挙兵した時は、鎌倉側だとみなされて幽閉されつつも、スパイ的な存在であったとか。一時は命も危なかったようですが、乱が鎮まり幕府の勢力が強くなると、頼朝の血を引く子の父親だということで太政大臣(太政官制で最高の地位)にまでなり、栄華を極めました。
歌のほうですが、激しい人生の浮き沈みを体験した者が、我が身の老いに思いをはせたものです。
春の嵐が桜を誘い、庭一面に雪のように花びらを「ふり」散らすけれど、「ふる」くなっていくのは実は私なのです。
桜の花が散るのを見ると「ああもったいない」「もう少し咲いていてくれたらいいのに」などとその時期を少しでも遅らせたく思うものですが、自分の「老い」を少しでもおしとどめたく思う気持ちと、どこか共通するものがあるものなのでしょう。かなわぬ願いと知りながら……。



このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ 花吹雪

和菓子職人
人物 今成 宏
辻調の御言持(みことも)ち
人物 重松 麻希
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