Column&Recipe
コラム&レシピTOP
西洋料理
日本料理
中国料理
世界の料理
洋菓子
和菓子
パンとドリンク
日欧食べ物だより
こだわりレシピ検索
日欧食べ物だよりTOPへ今日は何飲む? コラム一覧へ
連載コラム 今日は何飲む?
いろんな出会いがあります。意外な出会い、運命的な出会い。出会いからは何かが生まれます。このコラムはそんな“出会い”の話です。出会いを求めている主人公はワインや日本酒などのアルコール飲料。相手は料理、時としてフレンチ、イタリアンあるいは日本料理かも知れません。どんな巧妙な出会いが料理人の手で演出されるか。ぜひ楽しみにしてください。
みな都(後編)
「食いだおれ」大阪、心斎橋筋からすぐ近くにある話題の日本料理店
『和食と器 みな都』で日本酒と日本料理の出会いを探り始めました。まずは選んでいただいた三種の日本酒を料理なしで、それぞれ試飲し、その元々の風味を確認しました。これがどう化けるのかが楽しみでした。やはり先付けとともにそれぞれの日本酒が化け始めましたが、中でも加賀美人喜楽長がしっかりと変化してくれました。料理はこれからです。絶妙の出会いが生まれるのでしょうか。


●造り: よこわ平造り
  鯛そぎ造り
  関鯖そぎ造り おろし生姜 洗い葱
  より胡瓜 山葵
  土佐醤油 土佐酢

造りY:「よこわ」って何ですか?

K:本まぐろの若魚です。「めじまぐろ」のことです。

Y:この土佐酢と土佐醤油はどういう風に?

K:鯖を土佐酢に、鯛を土佐醤油で召し上がってください。

Y:これは加賀美人がすごく合いますね。

M:加賀美人、なんでも合うって感じですね。
甘口の醤油Y:これは醤油の質の問題かも知れませんね。この醤油は少し甘味が強いじゃないですか。ですからこれが関東風の醤油だったらここまで酒の甘味が引き立つかどうかは...。

S:醤油の風味で酒の甘味が引き立つってことですね。

M:そうです。そうです。


●焼き物:白甘鯛塩焼き 酢だち

焼き物K:ぐじ(甘鯛)の塩焼きですね。ご主人はこれには滝水流を薦めていらっしゃるんです。

S:甘鯛っていうのは、赤と白とで質が違うのですか?

K:一応、赤、白、黄色と三種類あるんです。黄色が一番安くて、高級なのは白といわれています。

Y:確かにうまいですね。

滝水流を飲んで)

Y:うん、先程おっしゃった通り滝水流が甘くなりますね。でも、個人的にはこの料理には喜楽長がいいですね。酒らしい味になって、ぴしっとします。
S:日本料理を食べるときはやはりお酒を飲むほうがいいのですか?たとえばお茶では?
K:やはりちょっと口をうるおすぐらいでも飲んで欲しいですね。お茶ではちょっときつい料理がありますよ。たとえばこのお造りなんかはいくら鮮度がよくてもお茶だと臭みが残ってしまいますから。それにお茶のタンニンと結びつくと苦く感じてしまうものもありますし。
S:なるほど、やはりお酒の役割というのはきちんとあるんですね。
Y:こういった焼き物に滝水流を薦めるというのはよく理解できますね。加賀美人のほうはまた元の砂糖水っぽい風味に戻ってしまいましたね。


●凌ぎ: にぎりすし 3種
  鰻蒲焼き 穴子白煮 あおり烏賊

凌ぎY:鰻は公式どおり。加賀美人が合います。

M:烏賊にも加賀美人のような気がします。喜楽長は少しきついような。

S:滝水流もいけるかな。

Y:滝水流、おいしいですね。滝水流はやはり優等生ですね。

K:どんな料理にでも合います。

S:こういった日本料理のコースに一種類だけ選ぶとしたら、やはり滝水流でしょうね。

Y:そうですね。もし、加賀美人だけでいくとしたら、その旨を前もって言っておくほうがいいでしょうね。喜楽長はただ単に辛いだけではなくて、吟醸のもつ風味の狭さのようなものがあるから難しいですね。


●油物: 白魚天婦羅 銀杏素揚げ
  ミルク塩
  叩き牡蠣 パン挟み揚げ タルタルソース

油物(白魚天婦羅 銀杏素揚げ)K:(塩をなめて)これ、塩と何が入っているの?

スタッフ:焼き塩と粉ミルクです。

Y:えっ、そんな技があるんですか?

K:ええ、この前行った店では米を粉にしたものを混ぜてありましたね。要はたくさんつけた時に少しマイルドになるようにとの配慮です。でも、粉ミルクは始めてです。

S:わっ、これは軽めの赤ワインが欲しくなりますね。

Y:いや、軽めっていうより熟成した赤ワインが合うでしょうね。

M:おいしい!
Y:どの酒でも合いますね。すべて引き立ちますよ。たぶんワインでもすべて合いますよ。熟成した白ワインでも絶妙でしょうね。
S:揚げ物の強みですか?
Y:う〜ん、この塩の作用もあると思いますね。
S:いや、おいしい!
M:おいしい!
Y:これはもうほとんど単なる酒飲みの会話(笑)。
M:いや、それでいいんです(笑)。

油物(叩き牡蠣 パン挟み揚げ)スタッフ:牡蠣のパン挟み揚げです。

Y:これはまたすごく香りが強いですね。

S:ちょっと僕は…。

K:これまたすべての酒が合いますね。

Y:何かが特別に引き立つって感じではなくて、普通にバランスよく合います。先程の白魚の天婦羅は酒も料理も引き立ちましたけれどね。


●煮物: 合鴨ハリハリ煮
  柚子胡椒

煮物K:合鴨のハリハリですね。柚子胡椒を少しつけて食べてください。

S:これもおいしい。

M:柚子胡椒ってなんか麻痺させるようなものがありますよね。

Y:この料理は柚子胡椒があるとないのとではえらい違いですね。これはワインですね。日本酒だと負けちゃいます。

M:どれもだめでした?

Y:料理に力がありすぎる。生もととかだったらいけるかも知れない。

S:この出しはおいしいですね。
K:一番出しと鴨の旨味ですね。
Y:やはりワインと食べたいですね。赤ワインかドイツの白ワインと、ね(笑)。この料理は最後まで「ワインが欲しい」ですね。日本酒と料理の相性では「イヤだ!」ってことは起こりませんよね。これが日本酒のいいところでもあり、食中酒としての限界だとも思いますね。「イヤだ!」ってことが起こるということは逆に言うと「すごく好きだ!」ってことも起こる可能性があるということですよね。要するに日本酒の場合、味の幅が狭いってことなんでしょうね。一度、ワインと日本酒ってやってみましょうか?
M:やってくれる店がありますかね?
K:面白いですね。
S:日本酒に話を戻しますと、やはり料理によって確実に味が変わるのですね。
Y:そうですね。変わりますね。喜楽長を選んでよかったですね。吟醸香が抑えられていますから。
S:吟醸酒は料理と飲むには向いていないんですか?
Y:あまりよくないと思いますよ。あれは蔵の趣味ですから、趣味の酒を一般の人が普通に食事の時に飲むのはどうかなって。


●食事: くらまご飯 青紫蘇
  香の物 胡瓜 白菜
  赤だし 湯葉
●菓子: モカアイスクリーム

食事Y:日本酒のこの20年での進化ってすごいですよね。本当に質が上がりましたよね。

K:一時期、若い人たちの間で日本酒ブームが起こりそうになったんですけれど、そこにワイン・ブームが来たものだから…。

Y:結局、今の日本酒がやっていることは、ワインが科学の力を使ってきれいなバランスのとれたワインを作ろうとした頃のことをやっている。モカアイスクリーム今、ワインはそこからもう一回伝統に戻ろうとしているんですよね。日本酒はまだそこまで行っていない。一度、“文明”の洗礼を受けて、再度“文化”に帰ってくる。そうなれば本物ですよ。

S:さて、そろそろ本日のまとめをお願いします。
Y:面白かったです。先程もお話しましたように、普通日本酒と料理の関係の中で日本酒の味がこんなに変わるってあまり意識しないじゃないですか。意識しないぐらい微妙なところを今夜は見られたってことかも知れないですね。そういう意味でも日本酒っていうのは包容力がある。甘口でも辛口でもそれなりにいける。甘口を好きな人が甘口だけで通しても大丈夫だし、辛口を好む人は辛口で通しても問題ない。だから日本酒はとてもいい食中酒だということが確認できたと言えるでしょうね。
S:じゃあ、ワインのように真っ向からぶつかり合ってお互いをつぶしてしまうという可能性は少ないってことですね?
Y:それは難しいでしょうね。今夜頂いた料理の中で「まずくなっちゃったね」というのはわずかだし、それも「つまらなくなった」というレベルですよ。
S:それはきっと日本料理の風味のあり方にも関係あるような気がします。ある種の風味を際立たせるという料理ではなく、全体的に淡く仕上げますからね。
Y:今日の料理なども典型で、全体的に穏やかにまとめた料理で、ガツンと際立った風味ではなかったですから。日本料理の中でもたまにガツンというのがありますけれどそういう風味はなかったですから。今日の料理はどれも素晴らしくおいしかったですね。全体のトーンのやさしさの中にすごく微妙ないい味を出してくれていました。そういう意味ではこの店で提供されているお酒だからということもあると思います。
K:私は甘口の酒は日本料理には合わないという観念がありましたが、食べながら飲んでいるとそれが甘く感じられなかった。そして、辛口は改めてすごいなと思いました。極辛口でも、ある料理と一緒に飲んでみるとその辛さが邪魔にならなくなってしまう。大変いい勉強になりました。
S:じゃあ、ご主人のお話を少し伺ってみることにします。


●ご主人兼料理長 湊谷芳弘氏

一同:おいしかったです。
S:『みな都』さんの日本酒のチョイスの基準はどのあたりにあるのですか?
湊谷:そうですね。地酒を売りにされているお店などではどうしても、もっと個性の際立った銘柄を置いてらっしゃるんですけれど、うちの料理はそのような日本酒に合うものでもありません。先程召し上がっていただいたおすしでお出しした鰻のような風味の料理が複数含まれていればよいのでしょうが、そういう料理が少ないものですから。個性の強い酒は料理の風味の邪魔になるし、そういった酒はどちらかというと食事が終わってから飲んでいただくものなので、うちはあまり癖のある重いものではなく、軽くて、何にでも合わせやすい日本酒を選んでいます。
S:白魚の天婦羅の時のつけ塩には驚いたのですが、粉ミルクを混ぜるというのはどこから思いつかれたのですか。
湊谷:なめていて、です。私も赤ちゃんがいますので、昔ですけれど、今はもう大きいですが(笑)。最初はクリープとかでやってみましたけれど味が強かったんです。でも、赤ちゃん用の粉ミルクはそんなに味がきつくないのでちょうどよかったんです。昔は元塩って言って味の素と混ぜたものが主流でしたけれど、今の時代の流れでは味の素を使うのが難しくなってきているので。
S:塩がマイルドになって美味しかったです。
Y:衣は普通のものですか?
湊谷:ええ、ただ少し片栗粉を混ぜているんです。お出ししてからお話をされたりしているとその間にべちゃっとなってしまって「なんや、これえらいべちゃっとしてるな」って言われたりしないようにです。
全員:本当にありがとうございました。
S:満足でした。


今回の出会いを振り返って

今回は日本酒と日本料理との“出会い”を求めて出かけてみました。三種類の日本酒をそれぞれのお猪口に入れ、ひとつの料理が出てくる度に三種類を飲み比べてみるということを行いました。日本酒の風味が料理の風味と出会うことによってこれほど繊細に変わるものであるということは実に新たな発見でした。しかし、最後にY氏がおっしゃっているように、ワインと料理のようにふたつの強烈な個性がぶつかり合うことで、新たな風味が生まれ出てくるというような出会い、相性は、確かにないのかも知れません。日本酒と料理の相性は「そこはかとなく」とか「淡く」というような形容のほうが似合うような気がします。そして、これもまたひとつの“個性”には違いありません。穏やかな料理と穏やかな日本酒、そして、穏やかな“出会い”でした。

『和食と器 みな都』出会いの舞台

日本料理『和食と器 みな都』

〒542-0083
大阪市中央区東心斎橋1-15-20
リッツビル1F
Tel:06-6253-2633
定休日:日曜(月曜祝日の場合は日曜営業)
営業時間:午後5時30分〜午後11時(止)


*姉妹店:日本料理『みなとや』

〒542-0083
大阪市中央区東心斎橋1-13-20 カネコマビル2F
Tel:06-6253-6336
営業時間:午前11時30分〜午後1時30分(止)
営業時間:午後5時30分〜9時(止)


コラム担当

野次馬隊
人物 須山 泰秀
このページのTOPへ
 
辻調グループ校 Copyright(C) 2003 TSUJI Group