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連載コラム 今日は何飲む?
いろんな出会いがあります。意外な出会い、運命的な出会い。出会いからは何かが生まれます。このコラムはそんな“出会い”の話です。出会いを求めている主人公はワインや日本酒などのアルコール飲料。相手は料理、時としてフレンチ、イタリアンあるいは日本料理かも知れません。どんな巧妙な出会いが料理人の手で演出されるか。ぜひ楽しみにしてください。
ラヴェニール・チャイナ(後編)
お洒落な空間を演出する『ラヴェニール・チャイナ』。オーナーシェフ今村氏の作り出す新感覚中国料理と用意された3種のワイン。2品の料理とドイツ・ワインとの出会いは、余りにそれぞれの個性がぶつかり合ってしまったようです。料理はこれからが佳境です。ワインもあと2本待っています。長い出会いの果てに「これぞ!」という相性が待ち受けているのでしょうか?それともやはり中国料理には・・・ということになるのでしょうか?

料理3品目:鹿肉のソテー、山椒と唐辛子風味
鹿肉のソテー、山椒と唐辛子風味MH:これは四川料理ですね。(食べて)Yさんにお訊きしたいんですけれど、中国料理ってこういう感じのものが多いじゃないですか。こういった料理にはどういうワインを持ってくれば、お互いの風味が生きてくるのでしょうね?

Y:結構なんでも合うと思いますよ。ですからそんなに気にする必要はないかも知れません。火を通した素材の場合、結構なんでも合います。反対に生ものの場合が難しいですね。

MH:ただ、かなりスパイシーなので、どうかな?って。

Y:ゲヴュルツトラミネールなんか合うと思いますよ。ゲヴュルツというのがそもそもスパイシーって意味だから。

S:スパイシーな赤ワインだとどうですか。

Y:やる価値はあると思いますよ。ただ、スパイシー過ぎるものではなく、きちんとフルーティーさのあるものがいいでしょうね。


●2本目のワイン:ニコライホーフ・エリザベス95
ニコライホーフ・エリザベス MH:お洒落な壜ですね。

Y:これは昔ながらのドイツ圏のフルート型のボトルです。

MH:色がすごいですね。これは何年ものですか?

Y:1995年ですね。

MH:ということは飲み頃ですか?

Y:この銘柄だと少しぎりぎりのところかも知れませんね。

MH:(飲んで)すごいね。なんか古酒のような感じですね。

Y:なかなか不思議な香りですね。

S:セパージュは混合ですか?

Y:主なものはリースリングです。それ以外にグリューナー・フェルトリーナーなどを混ぜています。その年によって少し変わるので特定はできませんが・・・。

S:ワインというか薬草酒のような香りがします。

Y:熟成香ですね。本来はここまでこの香りは強くないんですが・・・。でも、面白いでしょ?

MH:初めての風味ですね。オーストリア・ワインっていうのはやはりドイツ・ワインに近いものなのでしょうか?

Y:いや、ドイツ・ワインのように甘みがあって、酸がキリッとしたさわやかなタイプよりは、こういう、少し落ち着いて、酸も際立っていないというタイプが多いですね。

S:この苦味はひとつの特徴でしょうか?

Y:いや、これは少し熟成が進み過ぎているためで、ここまでの苦味はふつう出ません。リースリングにしても熟成が進むと苦味が生まれます。要するにフルーティーな香りと苦味はセットなので、熟成が進んでフルーティーな香りが収まってくると苦味が感じられるようになってきます。

MH:少し渋味は残りますけれど嫌な酸味はないですね。

M:この料理を結構たくさん食べて、口の中がスパイスでカッとなったときにこのワインを飲むとおさまるような気がします。

S:このワインの作り方は実に変わっているんですよね?なんか月の満ち欠けなどさえも関係してくるって?

Y:月だけじゃなくて星も。要するに天体の運行に合わせてワインを作っているのです。

MH:陰陽師ですね(笑)。

Y&MHY:確かに。このワイン作りの基礎となっているルドルフ・シュタイナーという人の「人智学」というやつはなんていうか陰陽師といいますか、陰陽の世界で考えるとわかりやすいです。陰の気とか、陽の気とか、そういう風に言い換えてみると日本人にはわかりやすい。
たとえば方位とか。それに彼らのやっている月のカレンダーなんかも私たちには身近な暦ですよ。


(料理を食べ続けながら)

Y:鹿肉とはなんの問題もなく合いますね。

M:この香辛料は?

MH:山椒と唐辛子。山椒も数種類あって、それぞれが香りと強さが違う。これは青山椒が混ざっているのでさわやかですけれど、本来の山椒を用いるとグヮーって頭に来るのです。が、これは来ないですね。その代わり、酒で言えばまだ発酵途中なので悪酔いしそうな感じがしますね。

M:(笑い)

S:香りが変わりました。

MH:(ワインの)風味がマイルドになったね。

Y:熟成した酒は変化も激しいです。グラスの中でもどんどん変化しますから。

MH:グラスの中のワインの風味がどんどん変わっていくのも楽しみですよね。次は魚料理だったかな?

Y:もう赤ワインも開けませんか?白と赤をぶつけてしまったほうが面白いかも知れません。

MH:中国人的嗜好からみるとブルゴーニュよりボルドーじゃないかなって僕らは思っているんですよね。

S:それはどうしてですか?

MH:ブルゴーニュのようにある種スキッとした単一品目的な、原材料のぶどうの品種がよくわかるワインよりは、何種類かが混ざり合った結果生まれてくる、ボルドーのような深い風味のほうが中国人の好みでしょうね。ま、これが正確な理由かどうかはわかりませんけれど、僕らの友人の中国人なんかもたいがい注文するのはボルドーですね。マルゴーとか。

Y:有名だからではないですか?

MH:それもあるかも知れません(笑)。


料理4品目:季節野菜の炒め物、セロリ風味
●3本目のワイン:赤ワイン ジャン・ボワイヨのボーヌ・レ・ゼプノット
季節野菜の炒め物、セロリ風味(味わって)

Y:なかなかしっかりしていますね。ここはものすごく学者タイプの方がワイン作りをやっていて、20年前のワインなどはいかにも学者的な四角四面のものでしたけれど、この年あたりから少しリラックスしてきました。

MH:この料理は赤ワインには合わないような気がします。

Y:野菜の種類によって異なりますね。

S:中国でのワインの消費はどうなのでしょうか?

ボーヌ・レ・ゼプノットMH:確実に消費が増えているでしょう。今、中国ではワインの展示場と配送センターなどを建設していますから、やはりワインに力を入れている部分がありますね。ただ、聞くところによるとフランスワインよりスペインワインのほうが好まれているらしい。

Y:それを聞くとボルドーよりブルゴーニュのほうが好まれる気がするのですけれどね。

MH:価格の問題が大きいのかも知れません。関税が65%ですから。いずれにしろ中国料理には決していいワインは合わないと思います。と言って1本¥500や¥600のワインじゃ上質の中国料理などに合わせるには少しかわいそうかなとも思います。

Y:僕は今日の料理は少し考え過ぎていると思いますよ。もう少し力を抜いていただいたほうがよかったかも知れない。


料理5品目:活け鱧と季節野菜のミルフィーユ仕立て
活け鱧と季節野菜のミルフィーユ仕立てM:おいしい。

MH:これはワインと合うね。

Y:これは赤でもいけますね。魚料理には“白”で、肉料理には“赤”というのがそもそも間違いですよ。

S:この料理は本当にワインと合う。特にソースが合います。

MH:八角とか、シナモンとかを醤油の中に入れて作っている。溜り醤油の中華版みたいなものです。

M:バルサミコ酢のような風味ですね。

Y:鱧の脂質ととてもよく合いますね。白も赤もよく合います。

MH:この料理に関してはシェフも強調していました。

Y:あっ、そうですか。でも、わかります。これはおいしい。料理も美味しいし、ワインもすごく光りますね。


料理6品目:鮑、フカヒレ、衣笠茸、揚げ豆腐のエビの卵の香り煮
伊勢海老のホイル包み揚げ、葱としょうが風味のソース添えMH:こういった醤油、味醂系の風味も赤ワインと合いますよね。

Y:そうですね。このブルゴーニュは少しだけ若過ぎますけれど、もう少し熟成してくるとさらに合いますね。

S:確かに“赤”が合いますね。

Y:2本目のニコライホーフのワインとも合いますよ。

MH:確かにどちらかというとこの料理のほうが合いますよね。この料理はいわゆる“肉系”ではないからでしょうね。

Y:香りがたつし、エッジが一番きれいに出ますね。これだけ出汁をたくさん使っているからぶつかるかと思ったのですが、意外にそうではないですね。しかし、贅沢な料理ですね。


料理7品目:発酵豆腐の冷麺
発酵豆腐の冷麺MH:質問ばかりで申し訳ないのですが、安いワインはどのようにチョイスすればいいのですか(笑)。

Y:作り手を見るしかないです。信頼できる作り手を知ることです。

MH:私の好きなワインで“シャトーヌフ=デュ=パープ”というのがあります。

Y:いいワインですね。

MH:スパイシーな風味で、なおかつそれほど重くないワインですよね。あれこそ中国料理に合うのではないかなと時々思ったりするんです。

Y:すごいセパージュの混合ですから、さまざまな風味が混ざっていますね。

MH:中国料理と合わせることのできるワインではありえるのですか?

Y:充分ありえますね。


シェフ今村氏登場
MH:どう?難しかった?

今村 浩之氏今村氏:ええ、少し。

Y:すごく色々考えて料理を作られたなって感じがしました。たとえば最初のドイツ・ワインだと岩ガキはそのままのほうがよかったかも知れないですね。ただ、2品目と3品目にはドイツ・ワインがよく合っていました。ただ、ワインに合わせて料理を作るということにそもそも無理があるので、料理にワインを合わせるのが正道だって話していました。ブルゴーニュのワインにあの最後の鮑の料理はとてもよく合いました。

今村氏:料理人の側からすれば、ワインの風味が強いとそれに負けてはだめだ、と思ってしまってつい風味を強くしていまいますね。

Y:風味の強いワインというのは意外と包容力が大きいので、風味の競争は必要ないかも知れません。

MH:中国料理って平均的に風味が強くて、常になんらかの風味が強調されていると思います。だからさらに風味を強めてしまうとその部分が強調されすぎて、ワインとぶつかるのでしょう。

今村氏:むしろ逆の方向で考えたほうがいいのでしょうか?

MH:たとえばワインがおとなしめだったら料理の風味は強く、反対にワインの風味が強ければ、こちらは少々控えめにというような感じかな。ま、ひとつの実験としてはとても面白かった。

S:どうもありがとうございました。

Y:今日のような場合は、まず、料理があってそれにワインを合わせてみるという、いつもと反対のアプローチでもよかったかも知れませんね。

MH:それのほうが自然ですよね。

Y:ま、この企画はその自然な流れを逆にしているところの面白さがあるのだとは思いますけれどね(笑)。


今回の出会いを振り返って
新感覚の中国料理と厳選された3本のワインの出会い。中国料理にはこのタイプのワインがもっとも合うだろう、というものではなく、何種類かのワインを同時に飲みながら「あれも合う、これも合う」と食べるのが中国料理の楽しみかたではないだろうか、との結論めいたものは出されたように思います。何より「饒舌」な出会いでした。興味深い話が数多く出ました。紙面に限りがあり、そのすべてを再現できなかったのが残念です。料理もワインも、そしてそれらの根本にある「文化」も実に面白く、奥深いものであるとの認識を強めた今回の「今日は何飲む?」でした。

ラヴェニール・チャイナ出会いの舞台

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