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連載コラム 今日は何飲む?
いろんな出会いがあります。意外な出会い、運命的な出会い。出会いからは何かが生まれます。このコラムはそんな“出会い”の話です。出会いを求めている主人公はワインや日本酒などのアルコール飲料。相手は料理、時としてフレンチ、イタリアンあるいは日本料理かも知れません。どんな巧妙な出会いが料理人の手で演出されるか。ぜひ楽しみにしてください。
ゼフィーロ(前編)
イタリア料理店『ゼフィーロ』(東京・西麻布)東京・西麻布といえばこだわりのフランス料理店、イタリア料理店、それにワイン・バーなどが数多く点在するおしゃれなグルメ・スポット。六本木からも近く、きらびやかでシックなナイトライフが展開されます。車が行き交う大通りからひとつ入ると、表通りの喧騒がまるで嘘のように静かな路地があり、そこに『ゼフィーロ』があります。建物は3階建ての一軒屋。中に入るとオーナーの西部ご夫妻が穏やかな笑顔で迎えてくれ、レストランというより知人のお宅を訪れたような心地よさに包まれます。贅沢にスペースをとった客席、その奥のガラス張りの厨房にはてきぱきと立ち働く料理スタッフの姿を見ることができます。そして、鼻を刺激する美味しそうな香り、「期待感」に満たされて客は食卓につくのです。


主人公

白:コッリオ・ビアンコ“オスラヴィエ”'00 (スタニスラオ・ラディコン)
白:コッリオ・ビアンコ“オスラヴィエ”'00 (スタニスラオ・ラディコン)イタリア北東部フリウーリ=ヴェネツィア・ジューリア州ゴリツィア郊外に位置するワイナリーで造られた白ワイン。
収穫時期を限りなく遅くし、マセレーション(漬け込み)期間を長く設け、熟成樽はオーク樽を用いている。自然なままのワイン造りを目指しているワイナリー。このワインの特徴は、色が非常に濃く複雑な香りを持つこと。また、熟成にともなってまるでドライシェリーのような香りに変わってていく。葡萄品種はピノ・グリージョ40%、シャルドネ30%、ソーヴィニョン・ブラン30%。

赤:ドメーヌ・ガロン・コート・ロティ'00(ジャン・フランソワ・エ・カルメン・ガロン)
赤:ドメーヌ・ガロン・コート・ロティ'00(ジャン・フランソワ・エ・カルメン・ガロン)コート・ロティとしてはミディアム・ボディ。このドメーヌで産出されるワインはエレガントかつ繊細で、「濃縮感と豊潤さで迫力ある」と形容されるコート・ロティのプロトタイプとは少し異なる。この造り手は、収穫率を低くし、出来る限り健康な葡萄を得ることを心がけている。熟成は古樽に入れて18ヶ月間。結果、赤黒い色調で、ドライフルーツや赤いフルーツのアロマが生じる。葡萄品種はシラー100%。



出会いを演出する人

イタリア料理店『ゼフィーロ』(東京・西麻布)

オーナー 西部 一明・光代夫妻(辻調グループ校元職員)
シェフ 和田 康則(調理30期生、辻調グループ校元職員)


出会った料理

“フォワグラとリンゴのソテ カルヴァドス風味”
“海老と帆立貝のラヴィオリ アサリとブロッコリーのソース”
“蝦夷鹿のロースト プラム風味の赤ワインソース”



「今日は何飲む」野次馬隊
Y:本業は某広告制作会社のコピーライター。日本ペンクラブ協会会員。ワイン関係の著作も多く、クラッシック音楽への造詣も深い。著作に『今日からちょっとワイン通』『武満徹対談集』。
M:才能豊かな女性。辻調グループ校のスタッフのひとり。いろいろな仕掛けを企む人。食べることと飲むこととヴィオラを演奏することをこよなく愛する。とりわけ飲むことは・・・
S:男性。どちらかというと晩熟型(悪く言えば進化が遅い)。趣味はアイロンがけと靴磨き。このコラムの担当者。大の猫好き。
Ya:辻調グループ校料理教育研究所所長。コーヒーとクラッシック音楽のことを語らせればこの人の右に出る者はいない。もちろん食べることにもうるさく、信頼できる味覚を有している。


なぜ、この白ワインを?

Y:今日はなかなか個性的なチョイスをされたと思うのですが、このチョイスの理由はどのあたりなんですか?
西部:今回の取材の趣旨を考えまして、「これぞイタリア」というキャラを前面に出しつつも、ワインの味わいに集中できるものを選ぶとなると、ラディコンの白かな、と。それにこの個性的な白に合わせる料理に集中してみたい、ということもありました。赤に関してフランスワインを選んだのには特別な理由はありません。ふっと頭に浮かんだんです。このコート・ロティは一般的なイメージを覆すに十分な味わいを持っていると思います。
白:コッリオ・ビアンコ“オスラヴィエ”'00 (スタニスラオ・ラディコン)Y:楽しみですね。少し味見をさせてもらいます。(白ワインを飲んで)なるほど。これは個性的ですね。第一印象として厚みのある果実味が広がりますが、後味に独特のエグミとほのかな苦味が残ります。これは長いマセレーションをした白ワインの特徴です。

西部:おっしゃる通りだと思います。で、この熟したリンゴ臭が熟成とともにまるでシェリー酒のような香りになっていくんです。
Y:それがさらに進むと、いったん、完全な酸化臭になって、果実味が後退し、エグミと苦味だけしか感じられない、まるで劣化ワインのような味になる。で、さらに1年ほどたつとその酸化臭が不思議と消えて、深みのある熟成した果実の風味が戻ってくる、というように先の読みにくいワインではないでしょうか。


アンティパスト“フォワグラとリンゴのソテ、カルヴァドス風味”

Y:ラディコンとの相性はどうだろう。確かにこのワインのすごく熟した感じは貴腐ワインのイメージですからそのあたりが発想の源でしょうか。(ワインを飲んで)あれ?なんだかエグミが立っちゃいますね。
S:僕は苦味が強くなった気がします。
西部:あ、やっぱりエグミが立っちゃいますか?
Y:ええ。これは、ちょっと難しいかもしれない。ただ、なんて言うんだろう。フォワグラの方はものすごくおいしくなりますね。
Ya:それ、そこなんですね。ワインと料理の相性を考える時に、ワインがおいしくなる料理を選ぶのか、料理がおいしくなるワインを選ぶのかって。フォワグラとの相性はそんなに悪いとは思わないです。ワインにもう少しでも甘味があればもっとよかった。それならリンゴの風味ともっと合ったような気がする。
Y:僕の場合は根っからの酒飲みなんで、どうしてもワインがおいしくなるほうを選んじゃうんですけどね。ま、理想は両方おいしくなれば一番なんでしょうけど、なかなかそういう訳にはいかないし。
S:僕はフォワグラのソテってどちらかと言うと・・・。
Ya:嫌いなんですか?
S:好きではなかったですね。でも、これはおいしい。火の通りが完璧ですね。今まで食べたのはもう少し生っぽいというか・・・
Ya:レバー臭が強くなるんですよね。
Y:これは完璧でしょう。
西部:実は最初はソースの甘味をもっと抑えていたんです。そうしたらものすごくワインのエグミが立ってしまったので、甘味を強くしたんです。で、これならいけるかなと思ったんですけれどまだダメでしたか?
Y:いや、ダメってほどじゃないんですけれど、このワインにもう少し甘味があればって。ところで付け合わせのリンゴのソテとの相性は抜群ですね。これだけ甘いのに、反対にエグミが消えますよね。ま、リンゴの香りが共通にあるってことなんでしょうが。珍しいことですよね。こういう相性はやってみないと絶対にわからない。ところで今のお話を聞くと相当テストされたんですね?
西部:ええ、しました。それぞれ2本ずつ開けて、いろいろな料理、いろいろな味付けで試してみて、今日お出しする料理を決めたんです。
Ya:若い料理人の方はそれぐらい冒険するほうがいいですよね。僕らみたいに年とっちゃうと、あ、このワインならこういう料理でいけるな、って感じでいきなり正解をもってきてしまうようなところがあるけれど、そういう道を選ばなかったのは大いに好感が持てますよ(笑)。


プリモ・ピアット“海老と帆立貝のラヴィオリ アサリとブロッコリーのソース”

プリモ・ピアット“海老と帆立貝のラヴィオリ アサリとブロッコリーのソース”(香ばしい香りが皿から立ち上る料理が供されると皆が黙って食べ始める)

Y:これはすばらしい。見事にぴったり合いますね。この香ばしい油・・・

西部:海老と帆立貝の甘さを包み込んだラヴィオリを、香り高い海老油とアサリの旨みを合わせて食べていただこうと思いました。これらの素材とラディコンの独特な香りや味わいが、互いにうまく引き立て合うことを確信してお出ししています。

Y:ワインの深みも果実味もいっそう魅力的に深まるし、帆立貝や海老のなかに隠されている旨みがいきなり際立ってきて、これほど見事に合うというのも珍しい。似たもの同士を合わせるという無難な方法ではなく、むしろ対照的な、色でいったら補色関係みたいなぶつけ方でこういうことをすると、しばしばお互いの変なところが強調されて悪趣味な結果になりやすいんですが、今回は見事に成功しています。こういう冒険ができるのは若さの特権かも知れません。成功の秘密はやはり海老油なんですかね。
Y:後でシェフに尋ねてみましょうよ。


前編終了です。むずかしい、でも素晴らしい白ワインでした。オーナーのこだわりがはっきりと伝わってきました。アンティパストは料理そのものは完璧な仕上がりでしたが、ワインとの相性は今ひとつ、といったところでした。しかし、プリモ・ピアットではワインと料理が個性をぶつけ合うことでそれぞれの素晴らしい風味をさらに引き出し、“相性のマジック”を味わうことができました。後編で登場するのは、イタリア料理店のオーナーがあえて選んだフランスの赤ワインです。さて、その“出会い”は…。

レストラン『ゼフィーロ』出会いの舞台

レストラン『ゼフィーロ』

〒106-0031
東京都港区西麻布2丁目25番32号
Tel:03-5464-5412
Fax:03-5464-5413
定休日:日曜日、祝日
営業時間:11:30〜14:00/ 18:00〜22:30


コラム担当

野次馬隊
人物 須山 泰秀
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