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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
フランスで闘牛祭り−闘う牛はおいしいですか?
   私がアルルで闘牛が行われていることを知ったのは、フランス校生時代にヴァカンスでアルルを訪れたときでした。スペインのイメージが強かったので、フランスで行われていることに驚きました。
   今回職員としてフランスに来て、アルルのレストランを訪れた時、TAUREAU(トロー)の文字を見つけ、辞書を引くと雄牛その下には闘牛の文字・・・それが、私とトロー(カマルグ牛)との出会いでした。いったいどんな牛なのだろう? 戦う姿も、その味もみたいと再度のアルル行きを決定。
   春風を感じながら、いざアルルへ!!
   しかし、近づくにつれての悪天候、
町に張られている「闘牛祭り」のポスター

町に張られている
「闘牛祭り」のポスター

アルルに着くや否や雨雨雨。町中の飾りも泣いているよう。町の広場ではTシャツ、バンダナ、傘など牛のモチーフがついたグッズが数々販売され、大通りには様々な屋台が立ちならんでいます。カフェでは、PENA(ペナ)と呼ばれるスペイン調の音楽を奏でる楽隊が威勢良くフェリア(祭り)の音楽を奏でています。
   アルルには年に2回大きな祭りがあります。秋の「米(カマルグ米)の祭り」とこの「復活祭の祭り」です。二つを合わせて「アルルの祭り」と呼んでいます。
   復活祭に行われるこの祭りでは、闘牛の他にも様々な催しがあちらこちらで開かれています。牛をモチーフにした美術展、闘牛学校の紹介などの文化的なもの。町の通りに牛を放ち、それを馬に乗ったガーディアン(カウボーイ)が統率する「アブリヴァッド」や、鈴をつけた牛に他の牛を先導させて、決めた場所につれていく「カベストリア」など、闘牛やカマルグ競技に付随した見世物が行われています。大通りに牛を放つため、道路わきには牛除けのバリケードが張られています。
   そんな様々な催しの中で、
マナードでとらせてもらったカマルグ競技の写真

マナードでとらせてもらった
カマルグ競技の写真

私が一番見たかったのがカマルグ競技というものです。カマルグ競技は1975年にスポーツとして認められたカマルグの伝統競技で、トローの角に着けられたアトリビュと呼ばれる飾りをラズトゥール(闘牛士)がフックを使ってはずし、はずすと賞金がもらえるというもの。試合時間は15分。人だけでなく、牛も競技の中で勇気を証明する(15分の間に誰にもアトリビュを取らせない)と表彰され、賞金が出ます。闘牛とは違い、この競技では牛を殺しません。この祭りからアルルに闘牛やカマルグ競技の季節が始まります。

   闘牛をみてみたい!!そんな私の願いを全くかなえる気のない雨模様。沈みかけた心を励ますために、ひとまずトローを食べに行くことに。
    さすがに闘牛祭り、どのレストランもトローを調理したメニューがあります。お店に入ってガーディアン・ド・トローを注文。直訳すると「トローのカウボーイ風」。カマルグの地域の象徴とされている料理です。伝統的な作り方では、肉を香味野菜、プロヴァンスの赤ワイン、プロヴァンスのマールまたはコニャック、オリーブ油でマリネし、その後、ゆっくり煮込んだもの。シェフによってオリーブやトマトなどを加えることもあります。付け合せにカマルグの名産である米が添えてあることが多いようです。このときの付け合せはヌイユでした。トマトの味が強く、日本のシチューのような感じを受けました。
   トローは、もともとガーディアン(カウボーイ)が闘牛用に去勢せずに育てた牛ですが、1997年に牛肉として初めてAOCに認定されました。トロー・ド・カマルグAOCを名のれるものは、ニーム、アルルを含むカマルグ湿原で自由に草を食べ、育っていること、忍耐力、闘争力が闘牛に向いている黒毛のビオウBIOU種かブラーヴBRAVE種であることが定められています。また、脂肪分が14パーセント以下の肉質であることも特徴です。
    シャルキュトリ(肉、加工肉販売店)ではソシソン・セック(サラミ)、ロゼット(太めのサラミ)、テリーヌなどが売られていました。脂肪分を補うため、豚肉を混ぜて加工しています。しっかりした肉の味がし、きかせてある黒こしょうがよく合います。


1軒目のガーディアン・ド・トロー トマト風味ヌイユ添え   トローのソシソン

1軒目のガーディアン・ド・トロー
トマト風味ヌイユ添え

 

トローのソシソン


カマルグ料理保存協会の看板

カマルグ料理保存協会の看板

    しかし、闘牛への思いはかなわず、レストランを出てもまだ小雨がぱらついています。とにかくトローに会いたいと思いマナード(MANADE)を訪ねることにしました。トローの群れを扱うところをカマルグではMANADE○○(何々さんの群れ)と呼んでいるようです。
    アルルの町から車で15分、目的の村に着いてもマナードの文字が見当たりません。道行く人に尋ねようとしたとき、とあるレストランに目が行きました。入り口にコンセルヴァトワール・デ・キュイジーヌ・ド・カマルグ(CONSERVATOIRE DES CUISINES DE CAMARGUES(カマルグ料理保存協会))の表示があります。先ほど食べたばかりとはいえ美味しそうな気配。時間が遅いので断られるのも覚悟して中に入るとあっさり席に案内してくれました。ここでもガーディアン・ド・トローを頼むと、ここは見た目も味も、牛肉のブルゴーニュ風に近いものでした。付け合せはカマルグの米。こちらのほうが伝統的な作り方にのっとっている感じがしました。カマルグ米はパラパラとしていて少しもちっとした感じでした。


2軒目のガーディアン・ド・トロー カマルグ米添え   3軒目(!)のガーディアン・ド・トロー オリーブ風味でパエリア添え

2軒目のガーディアン・ド・トロー
カマルグ米添え

 

3軒目(!)のガーディアン・ド・トロー
オリーブ風味でパエリア添え


    このレストランに表示してあった「カマルグ料理保存協会」は2001年にアルルにできたコンセルヴァトワール・グラン・シュッド・デ・キュイジーヌ・ド・テロワール(CONSERVATOIRE GRAND SUD DES CUISINES DE TERROIR(南仏地域料理保存協会))に所属する組織です。一般大衆や旅行者にカマルグの特産物や料理を紹介するため、料理教室やコンクールなど様々な活動をしています。協会の発行している冊子にはその土地らしさが感じられる店などが掲載されているので、旅行の際にはガイドに使えます。
   さて、レストランで目的のマナードを尋ねると、ここから約3km先とのこと。再び車に乗り平原の中を走っていくとカマルグの白い馬。そしてその向こうにはトローらしき黒いものが・・・。あぜ道を進んでいくと牧場らしきところに到着。少し近くで写真を撮らせてもらおうと牧場の中に入り、あいさつをすると「今からトローに牧草を上げに行くところだから一緒に行きましょう。」と思ってもみない言葉が返ってきます。


カマルグの白い馬   トラクターに牧草を積み上げる

カマルグの白い馬

 

トラクターに牧草を積み上げる


   驚く私達の前で、彼らは次々にトラクターに牧草を積み上げていきます。5分もしないうちに、トラクターの後ろに牧草とともに乗っている私達がいました。ぬかるむ湿原の中を進んでいくと遠くに見えていたトローが目の前にいます。肉用牛シャロレーが1トン以上なのに対してこのトローは約300〜450キロ。半分以下の大きさです。
トラクターの後には干し草を食べに来た牛の行列

トラクターの後には
干し草を食べに来た牛の行列

小さい分動きが敏捷なため、カマルグ競技にむいているのかもしれません。角は鋭く大きいけれど、闘うイメージに反して、顔はかわいい。毛並みも普通の牛に比べるとフサフサとしてます。
   牧場のお兄さんの「ウェル、ウェル・・・・」の声に牛が反応します。進む間に少しずつ干し草を落としていくと、トラクターの後ろには牛の行列があっという間にできていました。時には、干し草をめぐって角を絡めての喧嘩が起き、そういう喧嘩を防ぐためにも点々とまいているのだと彼は教えてくれました。ここには約300頭のトローがいて、冬場や春先は天然の草が少ないため、こうやって干し草を1日に1回与えるそうです。

   来るまでに聞いていたのとは違っていたのが、去勢せずに育てるという点。冬場限られた範囲で育てる牛は去勢しないと雄同士の争いが激しくなるので1頭を除いて今では去勢して育てているそうです。
   ここのトローはビオウ種とよばれるもので、主に食用や役用として育てられています。頭が大きく、走るのにバランスが悪いために闘牛には不向きだそうです。役用のトローは、荷物を運ぶ等、力仕事のための牛なので、食用のトローとは柵を隔てて育てられ、与える餌も替えているとのこと。
   これら300頭の牛を冬場は2人で、夏場はボランティアのガーディアンに来てもらい、育てているそうです。夏場には、観光客に向けての講習会や自然観察会を行うので、馬に乗ったカウボーイが牛をまとめている姿をみることができるそうです。 闘牛に使う牛はこのビオウ種ではなく、スペイン種を交配したブラーヴ種やその他のスペイン種の牛を使い、カマルグ競技をする時にビオウ種を使うそうです。すべてが闘牛用兼食用と思っていた私には驚きでした。私が食べたのはカマルグ競技に使うビオウ種のトローということ。カマルグ競技は闘牛と違い牛を殺さないのですが、3週間に1度しか同じ牛は使わないそうです。昔は、カマルグの若い人は誰もがカマルグ競技に参加していたのだけれど、今は他の様々なスポーツが盛んで、小さい頃に参加するだけになっているそうです。
   突然の訪問にもかかわらず、笑顔でとても親切にしていただいた牧場 マナード・チボー・フレール(MANADE THIBAUD FRERES(チボー兄弟の群れ))に、名残惜しい気持ちをふりきって牧場をあとにしました。
   トローの実物を見た感動とともにアルルの町に戻ると、なんと雨は止んでいます。ローマ時代の遺跡である闘牛場には長蛇の人の列。安い席は完売です。幸い私達は、昼の試合のチケットを持っていたので受付で席を交換してもらい、いざ観戦。席に着くや開会の音楽が流れ、色とりどりのコスチュームに身を包んだ闘牛士が行進します。開会式が終了すると、闘牛士はピンクの布を持ち牛が登場するのを待ちます。登場する牛の体重、持ち主の紹介を終え、入り口が開き、怒り狂った牛が走り出ます。布で幾度か牛を交わしていく闘牛士は格好良く、場内は拍手で沸きます。さらに闘牛は続き、最後には止めを刺されて動かなくなった牛がいました。闘牛とはこういうものなのだと思いつつも、徐々に弱る牛を見ていると少し残酷に感じました。


ローマ時代の遺跡である闘牛場に長蛇の人の列   色とりどりのコスチュームに身を包んだ闘牛士が行進

ローマ時代の遺跡である
闘牛場に長蛇の人の列

 

色とりどりのコスチュームに
身を包んだ闘牛士が行進


迫力のあるカマルグ競技

迫力のあるカマルグ競技

   今度こそカマルグ競技を見にアルルに来ようという思いを抱き、帰路に着きました。
   季節を存分に感じる広い平原で自由に群れ、牧草を食べながら育つ黒牛、そして白い馬に乗りその牛を統率するカウボーイの姿が夏にはきっと見ることができるはずです。自分の土地を愛して生きていく人の心を感じるひと時でした。


追記
   私は見れなかったカマルグ競技でしたが、他の方がたまたまアルルの辺りに行くとやっていたそうです。迫力ある写真をいただいて・・・悔しさとともにますます行かなければと思うのでした。

 

コラム担当

西洋料理担当
人物 三林 千鶴
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