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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
シャンパーニュ地方を訪ねて
学校から車で走ること約5時間、モエ・テ・シャンドン社に到着。いうまでもなく「ドン・ペリニョン」銘柄で有名な会社です。ここのカーヴは、エペルネの街の地下をまるで迷路のように張り巡らされていて、全長25km 程になるそうで、ガイドの方に思わず「迷子になりませんか?」と質問をしてしまいました。特別授業の始まりです。

シャンパーニュ地方はパリの北東に位置し、ワイン産地ではフランス最北部に当たります。ローマ時代にブドウ栽培とワインづくりが始まった歴史の古い土地です。ローマ時代よりといっても、当時から現在のようなきれいに泡立つシャンパーニュを作っていたわけではありません。何世紀もの間、ほかの地域と同様の赤ワインを生産していました。その昔は、限られた上流階級の人々が主に飲み、ランスで執り行われたフランス歴代王の戴冠式にも振舞われたそうです。
現在のような発泡性ワインを本格的に生産するようになったのは、17世紀中頃と言われています。詳しいことは不明ですが、「修道院」が関わっていたことは確かです。そしてシャンパーニュ生産に名を残す修道士ドン・ペリニョンの登場です。非常に研究熱心で「積極的にワインのブレンドを試み」ました。ふつうは品種の異なるブドウから作ったワインをブレンドしますが、異なる収穫年のワインも用い、これによってブドウの収穫年による差をなくし、毎年の品質を一定に保つことを目指しました。現在でもブレンドは重要な工程で、通常のワインと違い、シャンパーニュのラベルに年号がないのはこのためです。ただし、ブドウの品質が良い年には、特別にその年のワインのみでヴィンテージ物を生産しています。
このほか、ドン・ペリニョンは「耐久性のあるガラス瓶を利用した」り、「栓としてコルクを利用した」りして、現在のシャンパーニュ生産における技術的手法の確立に向けて、貢献しました。

ドン・ペリニョン*ドン・ペリニョンDom Perignon(1639-1715)
エペルネ近郊の町、サントムヌーに生まれる。その後、オーヴィレール修道院にて出納係として仕事に従事しつつ、ワイン作りの仕事にも特に力を注いだ。

よく耳にする「シャンパン」という言葉、正式には「シャンパーニュ」です。これは、フランスのシャンパーニュ地方で基準を満たして生産した発泡性ワインのみが名乗ることを許される名称です(原産地管理呼称。その他のシャンパーニュ地方以外で生産される発泡性ワインは「ヴァン・ムス(発泡性ワインの意)」といいます)。
シャンパーニュの主なブドウ栽培地域は、エペルネを中心にマルヌ川に沿って東西に続くヴァレ・ドゥ・ラ・マルヌ地区、その北側に位置するモンターニュ・ドゥ・ランス地区、南側に位置するコート・デ・ブラン地区の3つです。
シャンパーニュ用のブドウ品種は以下の3品種です。

@ピノ・ノワール(黒系)→コクがあって、力強い印象の品種。主にモンターニュ・ドゥ・ランスで栽培。
Aピノ・ムニエ(黒系)→白い果肉、フルーツの香りを持つ品種。主にヴァレ・ドゥ・ラ・マルヌで栽培。
Bシャルドネ(白系)→繊細でエレガントな印象。柑橘系フルーツの香りをもつ品種。コート・デ・ブランで栽培。

ふつう、白ワインを作る場合、主に白系ブドウを利用しますが、シャンパーニュの場合、黒系ブドウも利用し、ほとんどが上記の3種をブレンドしてつくります。その中でシャルドネのみで作ったものを「ブラン・ド・ブラン(白ブドウからつくった白ワインの意)」と呼び、黒系のブドウのみで作ったものを「ブラン・ド・ノワール(黒ブドウからつくった白ワインの意)と呼びます。

ブドウの木(シャルドネ)/:コート・デ・ブランの標識/2月と6月のブドウ畑の風景

これらのブドウを使ってのシャンパーニュの生産方法は以下のようになっています。 収穫したブドウを圧搾し、発酵させて白ワインを作る。完成した白ワインをブレンド(アソンブラージュ。シャンパーニュの最終仕上がりを決定づける非常に重要な工程)し、ショ糖と酵母を加えて瓶に詰めて水平状態にしておき、第二次発酵を行う(このとき発生する炭酸ガスがワインに吸収されて、開栓したときに発泡する)。第二次発酵が終了後、熟成させる。その後、瓶に発生した澱を除くため、瓶口まで澱を集め(ルミュアージュ)、集まった澱を取り除く(デゴルジュモン)。最後に味を調整(ドザージュ。元の白ワインと糖液の混合物を添加)することにより、brut(辛口)、sec(中辛)、demi-sec(甘口)など、製品の内容が決定します。

さて、いよいよ試飲です。カーヴ見学の後なので、力(緊張?)が入ります。今回試飲したのは2種類。1本目は「BRUT IMPERIAL」。試飲に適した温度は6〜8℃とのこと。グラスに注がれたシャンパーニュからは非常に細やかな気泡が継続的に発生しています。色は非常に透明感のある金色です。味は辛口ですが、後口がさわやかで、とってもフルーティ。いつもより美味しい気がするのは何故でしょうか。試飲なのに、ついつい飲みすぎてしまいます。次は「BRUT IMPERIAL ROSE」。シャンパーニュ・ロゼですが、赤系のフルーツの香りとさわやかな味、お酒が苦手な人でも心地よく喉を通る味わいです。いずれも、グラスに注がれたときのゴージャスで華やかな泡立ちと、飲んだときの清涼感が、祝いの席で特に好まれる要因かも知れません。

フランスでは(フランス人全員とは言いませんが)、誕生祝いに、本人がシャンパーニュを用意して、来客の人達に振舞う習慣があります。主役が客1人ずつにサーヴィスし、客は「bon anniversaire !」と祝福します。気心のしれた仲間と楽しい時を過ごすときにも、強力なアシストをしてくれる飲み物です。
また、日本では高価なイメージがあるシャンパーニュも、フランスでは(もちろん高価なものもありますが)、スーパーマーケットで気軽に買えますし、レストランなどでは、一瓶を頼まなくとも、食前酒としてグラス一杯のシャンパーニュを飲んだりします。とても身近な存在なんです。

エペルネを歩くと、ここがシャンパーニュの街であることを実感します。観光案内所がある場所は、その名も「シャンパーニュ通り」というのを初め、街中のあちこちでシャンパーニュを販売しています。ワイン屋に入ると、眼に飛び込んでくるのはもちろんワインではなくシャンパーニュ。きちんとディスプレイされているものもあれば、木箱に無造作に置かれて売られているものもあります。
以前、エペルネの製菓店で働いていた研修生が、「店が休みの前日は、従業員全員で「bon weekend」とシャンパーニュで乾杯して、一週間の仕事納めをするんですよ」と言っていたことを思い出しながら街を離れました。


コラム担当

辻調グループ フランス校 教務部
人物 上曽山 信次
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