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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
「王様のチーズ・チーズの王様」1
   今回は王様のチーズ、チーズの王様と言われているブリ・ド・モーを紹介したいと思います。この白いチーズは日本でもかなり有名で、お店でもすぐ見つけることができるチーズです。そしてブリ・ド・モーをただ単に「ブリ」と呼んだりもします。
   ではなぜ王様のチーズ、チーズの王様と呼ばれているのでしょうか? いくつものエピソードの中で伝わる有名なエピソードは・・・
   8世紀のシャルルマーニュ大帝以来フランス歴代の国王に愛されてきました。中でもルイ16世はフランス革命後に馬車で国外に逃げたとき、捕えられ連行された市長宅で食べ物をきかれたところブリ・ド・モーを要求したという逸話があるほど。
   また、ナポレオンは敗戦後、1815年から16年までヨーロッパ諸国が参加したウィーン会議で余興として行われたチーズコンテストで見事ブリ・ド・モーがグランプリに選ばれました。こういったエピソードから「王様のチーズ・チーズの王様」と今でも謳われています。
   ではブリ・ド・モーの名前の由来ですが、「ブリ」とはパリから東部に広がるブリ地方の名前で、
昔はパリまで馬車で運んでいた

昔はパリまで馬車で運んでいた

同時にこの地方でつくる白カビチーズの名前でもあります。「モー」は今も現存する町の名前です。つまり日本語に訳すと「モー市のブリチーズ」ということになります。ですからモー以外にも地名のついたブリのチーズはたくさんあるのです。
   「ブリ」は、珍しく生産業者と熟成業者に分業されていて、それが昔からの伝統です。その理由としては消費地パリに近く、形の大きいブリは農家では場所もないこともあり、「ブリ」を馬車でパリの門周辺に軒をつらねる熟成業者まで運び、そこで熟成され出荷されていったという経緯があるからです。これは今でも分業が続いています。
   ブリ・ド・モーの製造業者と熟成業者で見学できる業者は2か所しかありません。それを博物館「ミュゼ・デ・ペイ・ド・セーヌ・エ・マルヌMusée des pays de Seine-et-Marne」のおばさんに紹介していただき、見学をすることができました。以下で紹介する作り方はソシエテ・フロマージェール・ド・ラ・ブリSociété Fromagére de la Brie の、熟成はフロマージュリー・ガノFromagerie Ganotの熟成所を取り上げています。なお、「ブリ」にはいろいろはチーズがありますが、基本的には製法は同じで、大きさ、形、熟成期間などが変わり、風味も変わってきます。

ソシエテ・フロマージェール・ド・ラ・ブリ   フロマージュリー・ガノの熟成室

ソシエテ・フロマージェール・
ド・ラ・ブリ

 

フロマージュリー・ガノの熟成室


きれいなまっ白いブリ・ド・モー

きれいなまっ白いブリ・ド・モー

  それでは長男の「ブリ・ド・モー brie de meaux」から紹介しましょう。
  1980年にAOC登録。(AOCは原産地管理呼称の意。ワインやチーズなどの食品を対象に、その製品がその地方で正しく作られた高品質なものであることを保証する制度)

産地:セーヌ・エ・マルヌ県の全地域と、オーブ、ロワレ、マルヌ、オート・マルヌ、ムーズ、ヨンヌ各県の一部の村落


地図:ブリAOC指定地区
足につけられるリング。とらえた日付と県名が分かるようになっている  

青色の部分:
ブリ・ド・モー指定地区
斜線の部分:
ブリ・ド・ムラン指定地区
緑色の部分:
ブリ・ド・モー熟成指定地区
1:セーヌ・エ・マルヌ県
2:マルヌ県  3:ムーズ県
4:オート・マルヌ県
5:オーブ県  6:ヨンヌ県
7:ロアレ県  8:パリ市
9:オー・ド・セーヌ県
10:セーヌ・サン・ドニ県
11:ヴァル・ド・マルヌ県


原乳:牛乳(無殺菌)
タイプ:白カビチーズ [フランス語ではフロマージュ・ア・パート・モール・エ・クルート・フルーリーfromage à pâte molle et à croûte fleurie(白カビ軟質チーズ)という。フルーリーは花フルールfleurからきている言葉で、表面は花が咲いたように白カビで覆われている様子から。中の生地は滑らかで柔らかい。]
固形分中乳脂肪分:45%
形状:直径36〜37cmの円盤状、重さ2.5〜3kg、高さ3〜3.5cm
熟成期間:最低4週間
熟成場所:産地の他に、オー・ド・セーヌ県、セーヌ・サン・ドニ県、ヴァル・ド・マルヌ県、パリ市が認められている。
特徴:熟成が進むと、中身がねっとりとして均一なクリーム色で、切り口から流れ出してくるほど柔らかくなる。

<原料の検査、準備、選別過程>

ソシエテ・フロマージェール・ド・ラ・ブリのラボ

ソシエテ・フロマージェール・ド・
ラ・ブリのラボ

牛乳に乳酸菌を加えて24時間熟成させるタンク

牛乳に乳酸菌を加えて
24時間熟成させるタンク

1、まず原料の牛乳は、必ず無殺菌乳を使用すること。
大きな工場では牛乳業者の牛乳をまず残留抗生物質の有無などの検査にかける。もし問題が発見された場合、その牛乳業者にはすぐさま連絡し、できるだけ早くその原因究明しなければならない。もし改善できないと牛乳業者は信用を失い、もう使用されることはなくなる。
2、温度などを測って問題がなければ荷下ろしが許可される。
3、牛乳は7万リットルも容量のあるタンクに保管され、この工場では少量の乳酸菌を加え、24時間牛乳を熟成させ、より風味のよい牛乳にしている。
4、その後、牛乳は遠心分離器にかけられ、クリームを取り出し、そこに再び牛乳を加えて混ぜ合わせることで、チーズの出来上がりに必要な脂肪分に合わせていく。
5、次に、クリームと牛乳を均一にさせるため攪拌機にかける。翌朝使用するまで攪拌機のタンクの中で温度を14℃に保って保管されるが、この攪拌機は夜に一旦停止する。その後、早朝再び起動し、温度も34℃に上げていく。(温度を上げる理由は、次に凝乳酵素を入れる際、牛の体温に牛乳を温めることで凝固が促進されるため。)
6、この過程が終われば、配管を通りチーズ製造部署に届けられ、製造が始まる。
※ちなみにブリ・ド・モー1個に必要な牛乳は25Lです。

<凝固、型詰め、脱水>
1、牛乳が型詰めする部屋に届けられると、今度は大きなバケツに入れられ、牛乳のタンパク質を凝固させる凝乳酵素が加えられる。この固まったヨーグルトのようなものがチーズの基「凝乳」と呼ばれるもの。
2、だいたい10分ほどで牛乳が固まってくる。凝固してからから40分後に「凝乳」を軽くカットする。
3、2つ重ねた37cmのセルクル型に凝乳を「ペル・ア・ブリpelle à brie(モー専用のお玉)」を使って型に入れていく。型の下にはプラスティックのすのこがひいてあり、余分な水分「乳清」が逃げていく。3時間たてば1個目の型を取り除き、さらに3時間後に2つ目の型が取り外す。再び3時間たてばチーズをひっくり返し、水分が抜けていくことにより、少しずつチーズの高さ、直径が縮んで固くなっていく。


「ペル・ア・ブリ」というブリ・ド・モー専用のお玉。これは昔のもの。現在は穴が全体にあいている   凝乳を型に詰める

「ペル・ア・ブリ」という
ブリ・ド・モー専用のお玉。
これは昔のもの。
現在は穴が全体にあいている

 

凝乳を型に詰める


※この部屋の温度は30℃より高めの気温に調温されており、湿度は100%に近い湿度に保たれています。これは、チーズが乾燥しないようになどの理由からです。

<塩漬け>
1、隣の部屋に移り、そこで表面、側面に乾塩をまぶしていく。これは雑菌の繁殖を抑え、風味をよくするため。
2、チーズを保管する棚は少し斜めにしてあり、「乳清」が出やすいように工夫されている。

<熟成>
1、ここからは熟成に入る。熟成させるということはタンパク質が分解され、アミノ酸(旨味成分)に変わり、旨味や香りが得られるということ。現在は白カビを吹き付けてチーズに菌を繁殖させるが、昔は部屋の中にいる天然のカビで繁殖させていた。 熟成する部屋は8℃に保たれていて湿度は約90%に設定してある。ブリ・ド・モーは最低でも4週間は寝かさなければいけないことになっていて、通常は8週間といわれている。部屋の中はキノコの香りがし、これは白カビ特有の香りと言える。
2、均一に熟成をさせるため、チーズを毎日ひっくり返し、これが仕上がりを決めることとなる。形、色、香りなど細心の注意を払いながら丁寧に行われていく。
3、最終的に「ブリ」の全面に白カビが覆われる状態になっていき、あのきれいなまっ白い花を咲かせてくれるのである。


熟成期間の違うブリ・ド・モー 左から2か月、3か月、6か月、1年、2年

熟成期間の違うブリ・ド・モー
左から2か月、3か月、6か月、
1年、2年

  今回ブリ地方のマルシェ(市場)に行き、手に入ったブリがこちら!特に2年ものの「ブリ・ノワール」と言われる長期熟成のブリはここでしか見られないもの。私も出会えてびっくりです。地元の人は朝食のカフェ・オ・レにつけたり、サラダの上に振りかけたり、トーストに少しのせて軽くオーブンで温めたものを食べるとのこと。1年のものはコンテのような圧縮タイプの味がしました。おもしろいものではモー市のもう一つの名産品「ムータルド・モー」というマスタードと合わさったまさにモーの黄金コンビのチーズです。

2年もの セップの戻し汁のような味で、少しぴりっとする   1年もの コンテチーズのような味で、コクがあっておいしい!

2年もの セップの戻し汁のような味で、
少しぴりっとする

 

1年もの コンテチーズのような味で、
コクがあっておいしい!

粒マスタードの「ムータルド・モー」を挟んだブリ・ド・モー

粒マスタードの「ムータルド・モー」を挟んだブリ・ド・モー


   ブリに限らず、フランスのチーズは原料乳の生産者とチーズ製造(生産)者の関係によって以下のように「製造場所」の呼び名が規定されています。同じ名称のチーズでも形や風味等に個性が生まれ、一般に昔ながらの手作業で行うことが多い農家製はおいしいといわれています。

製造場所 生産状況 生産量 主な販売
フェルミエ
(農家)
個人が、自分の所有する家畜のミルクで伝統的な方法で作る。生乳使用 少量 その土地のマルシェ
酪農場 個人が自分の所有する家畜のミルクと他から購入したミルクで作る。 少〜中 土地のマルシェ
都市のチーズ店
酪農協同組合 組合員のミルクを持ち寄り、共同作業場で作る。 中〜大量 全国
酪農工場 広範囲にわたるミルク生産者から購入し、工場で生産する。 大量 全国、海外

 

コラム担当

西洋料理担当
人物 西村 雅恵
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