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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
かわいい、おいしいエスカルゴ!!
 エスカルゴ、私がフランスに来て好きになった食べ物の1つです。日本では食べ物として知られてはいるものの、雨の日に葉っぱや塀にくっついているかわいい生き物のイメージの方が強いと思います。が、ヨーロッパでは“生き物”というより“食べ物”でしょう。
 なにしろエスカルゴを食用とした歴史は古い。先史時代の遺跡に殻が残っていたことから、人間が最初に食べた動物の1つだろうと言われています。料理をして食べるようになったのは古代ローマ時代からで、同じ頃から養殖も始まり、中世にはカトリック教徒にとって「肉食絶ち」の日に食べてよいごちそうでした。17世紀になると消費量が減少しますが、19世紀初頭にタレーラン(フランスの政治家であり司教、そして何よりも美食家だった)がロシア皇帝のためにエスカルゴ料理を出すよう料理人に命じたことから、再び広まっていったそうです。
 
 ところで、エスカルゴってどんな風に養殖してるの?どんな種類がいるの?さまざまな疑問が沸いてきました。これはもう探るしかない!というわけで、エスカルゴ探検出発です。
訪れた先はリヨンから南南西へ車で2時間程行ったイッサンジョーという村のエスカルゴ養殖をしているアランさん宅。養殖と聞いて、薄暗いジメジメした部屋で育てられているイメージだったのですが、見てみると大違い! まるっきりの野外で、地面から高さ50cm程のブロックの枠があり、そこから1.5m位上までを網で覆っている。その中には餌となる草が茂っており、長い板を支えとして短い板がいくつも立てかけてある。その板をめくると・・・
「ギャー!!」エスカルゴがびっしり。ブロックの内側には脱走防止用にゆるい電流を通してはいるものの、作りとしてはいたって簡単。彼らは適度な湿り気を必要とするので乾燥が続く時にはスプリンクラーで水を与えますが、イメージよりもはるかに自然に育てられていました。

 エスカルゴの種類
 フランスでは約20種類程生息しているそうですが、食用として出回っているのは以下の4種類です。
(1)グロ・グリ(Gros gris・学名Helix Aspersa Maxima)
大型灰色種の名前通り、身が灰色で、次のプティ・グリの倍ほど。フランス南東部ではこの種類の養殖がほとんど。今回見学したのもこの種類。
(2)プティ・グリ(Petit gris・学名Helix Aspersa Muller)
グロ・グリと同じ種類の小型灰色種。身が白色。南大西洋、東フランスでの養殖が多い。
(3)エスカルゴ・ド・ブルゴーニュ(Escargot de Bourgogne・学名Helix Pomatia)
昔はエスカルゴといえばこれが代表的でしたが、産卵数が他の種に比べて少なく、飼育期間も長い(3年)など養殖が難しく、現在フランスでは養殖されていないとの話。東ヨーロッパ、トルコ、インドネシアなど外国からの輸入品のみ。
(4)Helix Lucorum
トルコ・エスカルゴなどと呼ばれている。こちらもフランスでの養殖はなく、ギリシャ、トルコなどでの生産が多い。


 エスカルゴの一生(養殖のグロ・グリの場合)
◇産卵は3〜4月。約100〜120個の卵を産む。専用の容器(写真左)に土を入れて産卵させ、その後別の容器(写真右)に移し変え、温度管理をした部屋で孵化させる。温度は養殖業者により多少の差があり、アランさんの所では20〜22℃、8〜10日間で孵化。
 
◇孵化は4〜5月。孵化すれば外の囲いに放つ。餌は穀物とカルシウムを粉にしたものと、クローバー、菜種、カラシナ、イラクサなどの葉っぱ類。彼らを狙う天敵は多く、ネズミ、モグラ、ヘビ、トカゲ、コガネムシ、キツネなど。アリは卵を食べてしまう。
◇成長は9〜10月。約5ヶ月で大人になるが、成長は皆同じではない。大人になったかを見定める点は、まず
その@、殻の硬さを確認。ヤドカリが殻から殻へ引越しするのとは違い、エスカルゴは体と共に成長していくので成長途中の殻はとてももろく、強く握ると壊れてしまう。大人になると頑丈に。
そのA、殻の反り返りを確認。成長しきると、入り口の所がかすかに外側に反り返ってくる(写真左)。
◇収獲して、絶食。大人になった物から収獲し、外にある木枠の中(写真右)に移し、約1週間絶食させて体の中の余分な物を排出させる。
 
◇ストック。全てを製品用に加工してしまうと、次に卵を産んでくれるエスカルゴがいなくなってしまうので、産卵役にいくらかを残しておく。彼らは6〜7℃の部屋に入れ、冬眠状態にして、2月頃、温度18℃、湿度80%に上げて、光も当てながら徐々に目を覚まさせて交尾のできる春の状態にもっていく。
*知ってびっくり!*
エスカルゴは雌雄同体の生き物。1匹にオス・メス両方の機能が備わっているんです。
・・・とすると、1匹のメスをめぐっての争いなどはない平和な生き物なんですね。
◇製品化。絶食後、大きさ別に分け、5〜6回水を変えて洗う。⇒下ゆで⇒1個ずつ殻から身を取り出し、内臓部分(サザエでいう黒い所)を取り除き、再び大きさ別に分ける。ここで冷凍して製品とする物もある。⇒水に香味野菜や白ワイン、ハーブなどを加えた中で火を通す。⇒缶、ビン詰めにする。もしくはさらに料理をしてビン詰めする。

 エスカルゴ料理では、バターににんにく、パセリを混ぜたエスカルゴバターと共にオーブン焼きにするのが一番ポピュラーですが、アランさんの所ではそれを筆頭にトマト煮、コンフィ、パテ、酢漬け、スフレetc・・・バリエーション豊かな品揃えでした。

 フランスではスーパーに、殻に身とエスカルゴバターを詰めてアルミのトレーに乗せた商品があり(写真左)、オーブンで入れて焼くだけで手軽に食べられます。ビストロだと同じ料理でも殻を使わずに専用の容器で提供する事もあります(写真右)。身を食べた後に残る溶けたエスカルゴバターをパンにつけて食べるとこれがまた美味しい! ワインが進むこと受け合いです。
 

 ですが、レストランのメニューにあるエスカルゴ料理の値段を見ると決して安くはありません。今日ではエスカルゴは主にレストラン用の食材であり、クリスマスや宗教行事の時に食べることが多く、フォワ・グラ、トリュフとまではいきませんが、それに続く高級食材に入ります。フランスでは高級食材の養殖業者には生産物加工税が課せられているので、商品は当然その分高くなります。ですからグロ・グリやプティ・グリはフランスで養殖しているので値段は少々高めで、1缶(グロ・グリだと約60個入り)16ユーロ。輸入品の場合、税金はかからないので1缶8ユーロほどです。数件のスーパーに行き、種類や値段を見てみましたが、ほぼ輸入品ばかり。アランさんいわく「国産はほどよい弾力があるが、輸入物は柔らかめ」とか。フランス産を食べるなら、養殖業者から直接買うかレストランへ行く方が品は確かなようです。

 フランスのエスカルゴの美味しさを知ってしまった私は、「日本にも仏産エスカルゴを輸入したらいいのに」と願ってみたりもしますが、やはり産地で食べるからこそ美味しく感じるのかも知れません。皆さんもフランスへ来た際には是非お試しあれ。

 幼い頃は見かけたかたつむりは全てツノをつついて遊んでいた私。今は食べる対象となり、昔も今もお世話になっているエスカルゴをこんなにいろいろ知ることができ、とても興味深く有意義なエスカルゴ探検になりました。

 

コラム担当

辻調グループ校 調理部 現在フランス校勤務中
人物 高橋 真由美
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