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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
え〜っ! これはフロマージュ・ブランじゃないんですか!!!
  フロマージュ・ブランfromage blanc、少し前から日本で流行っていますね。有名デパートのお菓子屋さんに行けば必ずと言っていいほど、フロマージュ・ブランが使われているお菓子が並んでいます。フロマージュ・ブランにラズベリーのジャムなどを入れてガーゼに包んだもの、フロマージュ・ブランで作ったレアチーズケーキ、ベークドチーズケーキ、フロマージュ・ブランのムースなどなど。でも、こちらフランスにはチーズケーキはありません。フランス人にどうしてチーズケーキがないのか聞いてみると、食後にチーズを食べてその後にデザートを食べるので、チーズ入りのデザートだと2度チーズを食べることになるから、だそうです。なるほど。
  フランスではフロマージュ・ブランをいつ食べるかというと、食後です。星付きのレストランに行けば、コースメニューを注文して料理が出てきた後に、「フロマージュ・セックfromage sec
レストランのデザートに出てきたフロマージュ・ブラン

レストランのデザートに出てきた
フロマージュ・ブラン

(発酵後、熟成させたチーズ。 フレッシュチーズ以外のチーズ)にしますか、それともフロマージュ・フレfromage frais(発酵させただけで、熟成させていないチーズ。フレッシュチーズ)にしますか?」と聞かれます。 ここでフロマージュ・フレを頼むとフロマージュ・ブランが出てきます。フロマージュ・ブランというのはフロマージュ・フレの一種です。たいてい生クリームと砂糖と一緒に出てきて、それらを好みの量だけかけていただきます。たくさん料理を食べてお腹いっぱいのはずなのに、おいしいのでぺろりと食べてしまいます。

セルヴェル・ド・カニュ

セルヴェル・ド・カニュ

フロマージュ・ブランはもう一つ食べ方があります。セルヴェル・ドゥ・カニュcervelle de canut、直訳すると《絹織り職人の脳みそ》です。この名前の由来はかつてリヨンの主要産業であった絹織物を作っていた職人たちが、好んで食べていたからのようです。これは水切りしたフロマージュ・ブランにエシャロット、シブレットなどのハーブ、にんにくなどを混ぜ、塩、こしょう、ワイン酢、オリーブ油で調味したもので、リヨンのビストロでは必ずと言いほどおいています。

一般的にも食後にフロマージュ・ブランを食べる家庭が多いようです。ヨーグルトに似ているので、朝食に食べてもよさそうなんですが、朝にはヨーグルトを食べることが多いようです。フロマージュはフランス語でチーズ、ブランは白、《フロマージュ・ブラン》とは《白いチーズ》という意味です。朝にチーズはあまり食べないんですね。
フランスにいるととても身近なフロマージュ・ブラン。どうやって作っているのか、知りたくて、ここ辻調グループ校のフランス校であるレクレール校、エスコフィエ校両校にチーズを届けてくれている、レリーさんのチーズ工房にフロマージュ・ブランの作り方を見せて欲しいと電話でお願いして、おじゃましてみました。

私 「おはようございます、フロマージュ・ブランを作る工程を見に来ました。」
レリーさん 「うちではフロマージュ・ブランは作ってないよ。」
私 「え〜っ!!! ど、どういうことですかぁ!」
レリーさん 「牛乳を原料として作るのがフロマージュ・ブランで、羊の乳を原料として作るのをフェッセルfaisselleと呼ぶんだよ。」
私 「じゃ、私たちが学校で食べているのはフロマージュ・ブランではないんですか?」
レリーさん 「フェッセルだよ。でも原料が違うだけで同じだよ。」


・・・と言うことで「ほとんど同じなら」と思い、フェッセルの取材に切り替えました。
まずは、美味しいチーズ作りにかかせない新鮮なミルクを提供してくれる、ご自慢の健康な羊たちのもとに、案内してくれました。


1頭ずつ誕生日、生誕地などが記された証明書が耳につけられている   餌は牧草、冬はそれを乾燥させた干草と、シリアルやミネラルなどがミックスされたグラニュレといわれるこの飼料を与える。

1頭ずつ誕生日、生誕地などが記された証明書が耳につけられている

 

餌は牧草、冬はそれを乾燥させた干草と、
シリアルやミネラルなどがミックスされたグラニュレといわれるこの飼料を与える。

塩分補給のための塩の塊。羊がペロペロなめるので、丸く穴が開いている   自慢の子羊たちをバックにレリーさんの笑顔

塩分補給のための塩の塊。羊がペロペロなめるので、丸く穴が開いている

 

自慢の子羊たちをバックにレリーさんの笑顔



乳搾り機を乳首にあてて自動で乳搾り。羊たちもすっかり慣れたもので、おとなしい

乳搾り機を乳首にあてて自動で乳搾り。羊たちもすっかり慣れたもので、おとなしい

羊は生後1年で親羊に成長し、その後は1年に1度子供を産み、ミルクを出していく。妊娠期間は5ヶ月で、その間はミルクは出ない。平均1頭か2頭の子羊を出産する。その後約半年の間ミルクが出る。それ以降はミルクの量が減っていくので、また子供を産ませてミルクが出るようにしていく。ここベルジェ・デ・ドンブでは親羊を、2月出産組と7月出産組の2つのグループに分け、いつでもミルクがまかなえるようにしている。朝7時と夕方6時に搾乳。寒い時期で平均1頭の羊から1.5リットル、春は平均2リットル採れる。羊は約5年から10年ここで妊娠出産を繰り返してチーズ用のミルクを提供し、その後は精肉用に売られていく。


フェッセルチーズの作り方

・ 搾ったミルクを80℃で30分温め、殺菌する。
・ 24℃まで冷却する。
・ ミルクの3%の凝乳酵素を加え混ぜる。
・ 約10℃の室温で4時間そのまま固まるまで置いておく。
・ 専用のチーズ型に山盛りに凝乳を入れる。1回で60個の型に入れていく。
・ 60個入れている間に、最初に入れていた型の水分が抜けてかさが少なくなるので、さらにその上に足していく。
・ そのまま置いて水分(ホエー)を軽く抜く。約3分。
・ 販売用のケースに入れて透明のふたをし、温度2℃の冷蔵庫に24時間入れておく。1日置くことでさらに水分と固形分に分かれる。

2℃の温度を保てば賞味期限は3週間。
凝乳剤。原料は子ヤギの胃の酵素。専門業者や薬局で販売   側面に穴が開いている専用のチーズ型。この型をフェッセルと呼ぶ

凝乳剤。原料は
子ヤギの胃の酵素。専門業者や薬局で販売

 

側面に穴が開いている専用のチーズ型。この型をフェッセルと呼ぶ

凝乳を型に入れているところ   凝乳   水分(ホエー)を抜いている

凝乳を型に入れているところ

 

凝乳

 

水分(ホエー)を抜いている

販売用の容器に入れている   4個入り(小売り用)と12個入り(レストランへの卸し用)がある

販売用の容器に入れている

 

4個入り(小売り用)と12個入り(レストランへの卸し用)がある



ル・ベルジェ・デ・ドンブの看板

ル・ベルジェ・デ・ドンブの看板

  今回おじゃました、レリーさんのチーズ工房Le berger des dombes(ル・ベルジェ・デ・ドンブ)はその名の通りドンブ地方にあり、エスコフィエ校からは約10km、車で10分の所にあります。リヨンからも25kmの所です。ル・ベルジェ・デ・ドンブのチーズはミオネーにある有名な2つ星レストラン、アラン・シャペルや、リヨンの2つ星レストラン、レオン・ドゥ・リヨン、1つ星レストラン、オーベルジュ・ドゥ・リル、その他多くのビストロにも卸しているそうです。週末はチーズ工房の敷地内にあるブティックで、一般の人向けに小売もしているとのことでした。チーズは今回取材したフェッセル以外にも数種類作っています。全て羊のミルクが原料ですが、凝乳酵素を入れる時の温度、凝乳酵素の量(フェッセルが一番少ない)、水分の抜き具合、菌を植える植えない、熟成させるさせない、熟成期間などの違いで色んなチーズに仕上げていくそうです。

レリーさんのチーズ工房でつくられているチーズ
レリーさんのチーズ工房でつくられているチーズ
レリーさんのチーズ工房で
作られているチーズ

1 DOMBISTE
2 CHAROLLAIS
3 CROTTIN FRAIS
4 CROTTIN AFFINE
5 SAINT-MARCELLIN
6 BERGER PLAT
7 P’TIT SEBERIN






  チーズ作りはレリーさんの奥さんが担当していて、レリーさんは羊の管理と配達&セールスを担当しているそうです。その他にチーズ作りで女性2人と、羊の世話と搾乳担当で男性1人が働いています。奥さんと従業員の女性は毎日新鮮なチーズを食べているからなのか、とても肌がつるつるしていました。奥さんにそのことを聞いてみたら、「そうかもしれない、この仕事をしていると休みがほとんど無いので大変だけど、肌荒れしないのは新鮮な乳製品を食べているからだわ。」と答えてくれました。それ以来私は毎日のようにフレッシュチーズを食べています。フランスに来てから乾燥気味だった肌が、なんとなくしっとりしてきたかも・・・ また今晩も食べようっと。




コラム担当

辻調グループ校 西洋料理
助教授
人物 大滝 絵美
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