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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
牛乳を飲もう!
   ようやく寒さも弱まり徐々に暖かくなり始めたとある土曜日、リヨンのソーヌ川沿いに軒を並べている朝市に出かけました。ガリゲットgariguette(フランスで一番早く出回るイチゴ)が出回り始めていたり、ホワイトアスパラガスが並ぶなど、春を感じさせる食材が多く見受けられた中、私の目が止まったのは一軒のフロマージュリー(チーズ屋さん)。山羊、羊、牛の乳を使ったもの、同じチーズでも熟成度合いの違うものが売られていて、どれにしようか迷っている時、ふと見慣れない文字が。
   「LAIT CRU(レ・クリュ)」。「生乳?」。
   とりあえずお店の人に聞いてみると、「絞ったまま、何も手を加えていない牛乳だよ」「加熱殺菌したり、成分を調整したりしてないってこと」。牛乳はお菓子を作る原材料の一つとして欠かせないもので、これは飲んでみないと! 試してみないと!
   牛乳の消費量減少に伴う搾乳制限によりバターが不足している日本同様、フランスでも牛乳の消費量が減少していると聞きます。牛乳の消費が少しでも増えることをパティシエの一人として願いつつレポートしたいと思います。

牛乳の種類
パック詰め牛乳3種はいずれも生乳(LAIT CRUの文字の下は黄色)。ボトル入りは、赤キャップは全脂乳、青キャップは低脂肪乳、緑キャップは脱脂乳。白キャップは山羊乳。

パック詰め牛乳3種はいずれも生乳
(LAIT CRUの文字の下は黄色)。
ボトル入りは、赤キャップは全脂乳、
青キャップは低脂肪乳、
緑キャップは脱脂乳。
白キャップは山羊乳。

   乳脂肪分の違いによって4種類あり、それぞれラベルまたはキャップの色が決められていて、一目でわかるようになっています(カッコ内はそれぞれの色)。
レ・クリュLait cru(生乳):無調整。牛の種類等によって違いがあり3.7〜4.5%(黄色)
レ・アンティエLait entier(全脂乳):3.6%以上(赤)
レ・ドゥミ・エクレメLait demi-écrémé(低脂肪乳):1.5〜1.8%(青)
レ・エクレメLait écrémé(脱脂乳):0.5%以下(緑)

フランスの牛乳殺菌方法5種類
生乳(Lait cruレ・クリュ)
文字通り無加熱のため無殺菌。厳格に衛生面をコントロールされた農場でのみ生産可能。搾乳後すぐに4℃まで冷却し、瓶もしくはパック詰め。4℃以下で保存。
消費期限:搾乳後48時間以内。成分無調整。
マイクロフィルター殺菌乳(Lait microfiltréレ・ミクロフィルトレ)
まず乳脂肪を分離し、乳脂肪のみ低温殺菌する。
乳脂肪を取り除いた脱脂乳をマイクロフィルターで濾過し、細菌を除去する。
その後、殺菌した乳脂肪を、製造する牛乳の種類に応じて調整しながら加えホモゲナイズ(均質化)、瓶詰め。
消費期限:15日(冷蔵)。全脂乳及び低脂肪乳に用いられる。
殺菌による味の変化を最小限にとどめながらも、日持ちのするフロマージュ(チーズ)、牛乳を作ることが出来る方法だそうです。
低温殺菌乳(Lait pasteuriséレ・パストゥリゼ)
72〜85℃まで加熱殺菌。
乳脂肪を取り除いた脱脂乳をマイクロフィルターで濾過し、細菌を除去する。
消費期限:4℃以下で7日間。全脂乳及び低脂肪乳に用いられる。
高温殺菌乳(Lait stériliséレ・ステリリゼ)
115℃で15〜20分間加熱殺菌。
消費期限:常温で150日間。全脂乳、低脂肪乳及び脱脂乳に用いられる。
超高温殺菌乳(Lait stérilisé U.H.T.レ・ステリリゼ・ユ・アッシュ・テ)
140〜150℃で1〜5秒間加熱殺菌。
消費期限:常温で90日間。全脂乳、低脂肪乳及び脱脂乳に用いられる。
殺菌法の違う牛乳を飲み比べ
生乳
 
日本で飲んでいた牛乳と比べ、透明感があり、ほんの少し赤みがかっています。脂肪量が一番多いので、ジャージー乳のような濃厚なものをイメージしていたのですが、さらっとした舌触りで後から脂肪の甘みが口の中に広がり、飲み込んだ後も長く残ります。俗に言う牛乳臭さはほとんどありません。「牛乳本来の味ってこんな感じか」って妙に感激してしまいました。
マイクロフィルター殺菌乳
 
フランス校で毎日実習時に使用している牛乳です。こちらもほんの少し透明感がありますが、白さが強くなっています。日本の牛乳に比べると牛乳臭さは少ないのですが、生乳よりは少し牛乳臭さが出てきています。脂肪分のみとはいえ加熱殺菌していることから来ていると思われます。脂肪分調整後、均質加工されているためか、口の中に入れるとすぐに脂肪の甘みが感じられますが、飲み込んだ後は余韻が長く続かず生乳よりあっさりした印象です。
低温殺菌乳
 
透明感が薄まって白さが強くなり、牛乳臭さが強まって牛乳好きの人が好むような一番牛乳らしい牛乳だと思います。牛乳全体が加熱されているため濃厚になり脂肪分の甘さがより舌にまとわりつく感じです。これが一番濃厚に感じられるかも知れません。
超高温殺菌法
 
牛乳嫌いの人が感じる牛乳臭さが強く感じられます。ほんの少しキャラメル臭も感じられるようです。日本で売られているごく普通の牛乳と同じようなものといえばわかりやすいでしょうか。
脂肪分の違う牛乳でプリンを焼いて食べ比べ
生乳
殺菌のための加熱をしていないためか一番火が通るのが早く、硬さも一番でした。一口目の印象は「軽っ!」でも、しっかりと牛乳の味、脂肪の甘さが感じられます。
全脂乳
生乳よりほんの少し軟らかく、滑らかに焼きあがりました。一番濃厚に感じられ、牛乳の味もしっかりと感じられます。
低脂肪乳
より軟らかくきめ細かくなっています。牛乳の味が和らぎ、癖がなくなっています。
脱脂乳
火通りが弱く、型から出すとプリン自身の重みでつぶれてしまうくらいです。脂肪分が減り、甘ったるくはないのですが無脂乳固形分の甘さが出てきて牛乳好きの人には物足りない、牛乳嫌いの人でもプリンとしては「?」って思うような味。
生乳   全脂乳   低脂肪乳   脱脂乳
プリン(左から生乳、全脂乳、低脂肪乳、脱脂乳で作ったもの)

   この比較をしてから、牛乳と一口で言っても殺菌法、脂肪含有量の違いだけでこのような差が出て、作るお菓子にどの牛乳が一番合うのかそんなことを考えるだけでもとても楽しく感じられるようになりました。

ちょっと注意!
   生乳を買ったお店で「どう使うのが一番?」って尋ねると、「もちろんそのままダイレクトに飲むのが一番!」って言われて試してみましたが、後で調べると「使用する前には5〜8分間沸騰させて使用」とあり、そのまま飲んでも私はなんともなかったのですが、おなかに自信のない方はきちんと使用上の注意を守ってお飲みください。おなかに自信があり、フランス滞在の日程に余裕のある方は一度試してみる価値はあります。ただし、何があっても責任は負いかねます、自己責任の下で挑戦してください。お店の人は「この牛乳は自然のまま。すべての細菌が入っているよ」って笑いながら言っていましたから。

   おまけですが、フランスではごく普通のスーパーマーケットでこんなものも普通に売られています。
   山羊乳です。日本ではほとんどの方が見たこともないと思いますが、こちらでは山積みになって牛乳売り場に置かれています。牛乳好きの人でもこのクセのある山羊乳は好きという人は少ないのではないでしょうか。フランスでは山羊乳を使用したフロマージュ(チーズ)が作られているため、一般の人でもあまり違和感がなく受け入れられているようです。


 

コラム担当

辻調グループ校 製菓部
人物 淺野 義明
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