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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
モンテリマールのヌガー
リヨンから南へ向かう高速道路7号線(A7)は、通称「太陽道路」。夏のバカンス時期には、太陽を求めてプロヴァンスやコート・ダジュール、あるいはもっと先のスペインを目指す車で、お盆の日本の高速並の大混雑になります。
このA7をリヨンから南へ下ること1時間あまり、「太陽の門」というオブジェを過ぎると、プロヴァンス地方の入口に当たるモンテリマールの標識が現れます。今回のコラムの主役、ヌガーの町です。

コーヒーにもヌガーがついてくる(普通はチョコ)ヌガーは、砂糖と蜂蜜、水あめ、泡立てた卵白などを混ぜ合わせて煮詰め、アーモンドを加えて固めたお菓子です。昔ながらのお菓子らしく、見た目はシンプルですが、味は濃厚。口に入れると、まず豊かな蜂蜜の味と香りが、それからナッツの香ばしさが広がります。キャラメルよりもっと粘りがあって、噛むと歯にくっつきますが、すぐに柔らかく溶けていきます。

国道沿いのヌガーのオブジェ今ではフランス中どこでも売られているヌガーですが、モンテリマールはかつて、ヌガー作りの中心地でした。農学者オリヴィエ・ドゥ・セールが、17世紀初頭にこの地方でアーモンドの木の栽培を始め、それに目を付けた菓子職人たちが、昔からあったくるみのお菓子に、アーモンドを使うことを思い付きました。こうして、今の形に近いモンテリマールのヌガーが生まれたと言われます。現在でも、昔ながらの製法を謳った看板が、町のあちこちに掲げられています。
さて、高速を下りると国道沿いに「ヌガーあります」の看板やヌガーのオブジェが現れます。町はすぐそこ。お土産屋さんが並ぶ観光案内所近くに車を停めて、町を歩いてみましょう。小さな町なので、徒歩で十分回れます。

お店のディスプレイお店には形も色もさまざまなヌガーが並んでいますが、どんな種類があるのでしょう?いちばん目につくのは、「モンテリマールのヌガー」と呼ばれる白いヌガーです。この白いヌガーには、見た目は同じだけれど、固いものと柔らかいものの2種類があります。固いヌガーは、柔らかいヌガーよりも高い温度に煮詰めたシロップを生地に加え、この生地を火にかける時間も長くして作るそうです。

カラフルなヌガーたちこれらをベースに、ナッツ類やオレンジピールを混ぜたり、コーヒーやピスタチオ、フランボワーズなどで色付けしたもの、チョコレートでコーティングしたものなど、いろいろなバリエーションが作られています。商品用に切り分けたヌガーの「切れ端」を袋詰めにして売っているのも、特産地ならではです。

柔らかいヌガー(左)と黒いヌガー(右)ほかにちょっと目を引くものに、黒いヌガーがあります。カリカリした歯ごたえで、お店の人が言うには「歯が欠けるほど」固いヌガーです。白いヌガーよりも蜂蜜の風味が強く、黄金糖のような味がします。これは蜂蜜を高温で熱して色付け、泡立てた卵白は加えずに作ります。

お店や工場の中には見学OKのところがいくつもあります。目印は通りで見かける「VISITE」の看板。もちろん観光案内所でも教えてもらえます。製造工程の見学は作業時間のみですが、それ以外の時間でも作り方の説明を受けたり、スライドやビデオを見ることができます。 工房見学の看板(左のネオン看板上部のvisiteが目印)
工房見学の看板(左のネオン看板上部のvisiteが目印)

銅製のショードロン私が見学に訪れたお店は、こじんまりした工房で、銅製のショードロン(chaudron en cuivre)と呼ばれる大鍋が置いてありました。この鍋は二重構造で、内貼りと外貼りの隙間にお湯を入れ、湯煎でゆっくりヌガー生地を熱する仕組みになっています。昔から使われていて、手作りのヌガーには欠かせない器具だそうです。昔ながらの方法でヌガーを作る姿に、伝統を守り続けるフランスの職人さんの誇りを感じました。

切り分ける前のヌガーヌガーを食べると、学生時代に過ごしたプロヴァンスの夏を思い出します。独特の蜂蜜の香りと甘さが、あの夏の乾燥した熱い空気と、どこか似ている気がするのです。そして何度かモンテリマールを訪れたのも、いつも街路樹が濃い緑の影をつくる真夏日でした。私にとって、ヌガーは南仏の夏の匂い。独特の甘さがいつでも熱く乾いた風を運んでくれる。素朴だからこそ、ときどき無性に懐かしくなるお菓子です。


コラム担当

辻静雄料理教育研究所
人物 中尾 祐子
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