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連載コラム とっておきのヨーロッパだより
辻調グループ校には、フランス・リヨン近郊にフランス料理とお菓子を学ぶフランス校があります。そこに勤務している職員が、旅行者とはまた違った視点から、ヨーロッパの日常生活をお届けします。
レストランを華やかに支えるプロのサーヴィス
お客様の到着を待つばかりのレストラン
今回は、日常生活から少々かけはなれた、レストランのサーヴィスマン達について、私の研修体験を通じてお話をお送りしたいと思います。

「美食の都」リヨン中心部から、車で10分ほどソーヌ川を遡ると、レストラン「ポール・ボキューズ」があります。ご存じかと思いますが、タイヤ会社で有名なミシュランが作っているレストランのガイドブックは、星の数でランクをつけているわけですが、最高の3つの星を1965年からずっと守り続けている名店中の名店です。料理がおいしく高い完成度を持つことはもちろんですが、「食べる環境」、すなわち店の内装や食器、サーヴィスマンの技術やもてなし方、全体の雰囲気など、すべて一流でないと3つ星にはなれません。今回はこのレストランで3つ星を支えているサーヴィスマンのプロ意識と根性をご紹介します。

レストラン「ポール・ボキューズ」には、MOFを持つ「料理人」が5名もいます! MOFというのはフランス最優秀職人賞という「職人」に与えられる最高の称号です。料理人をはじめ、製菓、製パン、食肉加工業など食に関係する職人だけでなく、フラワーアレンジや庭師、床屋、木工職人など180の部門があり、レストランのサーヴィスマンもそのひとつに数えられています。ここボキューズにもサーヴィス部門のMOF所持者が1名います。

ワイン試飲風景フランスではレストランサーヴィスも、料理と肩を並べる「職人」仕事であるという意識があります。ですから彼らはプロとして、料理、食材、ワインのことを初め、飾ってある絵についても、使っている食器に関しても、何でも答えられる準備をしています。暇があればワインを試飲したり、日本人客のために簡単な日本語を覚えようと僕に聞いたりと、お客様を楽しませるための知識を詰め込む努力を怠りません。

また、高い技術をお客様に提供して、非日常の世界を演出しますが、ひときわ目を引く技術が、お客様の目の前で鶏や魚を切り分ける「デクパージュ」です。ここボキューズではほとんどのメイン料理で行い、このパフォーマンスを通して気分を盛り上げる演出をセールスポイントのひとつにしています。鶏や魚のどこにどう包丁を入れて切り分けたらよいか、調理人と同じ知識と技術に加えて、流麗な身ごなしが求められます。賄いの食事には時々鶏のローストが用意され、若いサーヴィスマン達はその時にベテランから手ほどきを受けて練習したり、また実際のサーヴィスを見ながら、技術を受け継いでいきます。

写真はブレスの鶏のロティーを切り分けているところです。「ブレスの鶏のロティー」の場合、きれいに焼きあがった熱々の鶏をお客様に見せたあと、黒服を着たベテランサーヴィスマン達が切り分けます。鶏を切り分ける係(花形仕事です! みんな目立ちたがりやで、裏で取り合いしています)と、付け合せを皿に盛る係とに分かれて同時進行で作業し、温かいうちに1秒でも早くお客様のもとへ運ぶことを心がけます。鶏は腿肉2つ、胸肉2つの4つの部分に切り分け、もちろんソリレス(“ばかはそれを残す”という意味の美味な部位で、腰についている小さな肉)も忘れずに。包丁を入れると、鶏から熱い蒸気が立ち上り、食欲をそそります。切り分け始めてから1分とかからずに皿に盛り付け、ソースをかけてお客様へ。このときの手際のよさと早さには惚れ惚れします。出てきたお皿に触ると、やけどしそうなくらい熱いのです。盛り付ける器も、ソースの入れ物も普通の人では素手では持てないほどですが、彼らはトルションも使わず、しかも笑顔で平然と持つのです。「熱い料理だから当たり前!!」と彼らは笑っていいます。手の皮も厚くなっていくもの?とは思うけど、プロだなぁ、と感心します。調理場の熱気を失うことなくそのまま皿の中へ盛り付け、届けることの出来る彼らの高い技術の蓄積と手の皮の厚さに、3つ星レストランの40年の歴史を感じます。


コラム担当

辻調グループ フランス校
シャトー・ド・レクレール サーヴィス担当
人物 秋場直純
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